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お着物Enjoy生活からバレエ・オペラ・宝塚etcの観劇日記に...

宝塚花組「近松・恋の道行」 日本青年館

2012-05-28 07:43:27 | TAKARAZUKA
2012年5月27日(日) 11:00~

日本青年館大ホールにて

宝塚花組公演
上方絵草紙「近松・恋の道行」 を観て参りました。





主な配役 出演者


一つ屋嘉平次(松屋町の茶碗屋『一つ屋』の跡取り息子): 愛音 羽麗
柏屋さが(嘉平次と相思相愛の『柏屋』の見世女郎): 実咲 凜音

一つ屋五兵衛(嘉平次の父親): 汝鳥 伶
お香(『柏屋』の遣り手、元『天満屋』の遊女): 光 あけみ
近松門左衛門(当代一の人気を誇る浄瑠璃作家): 夏美 よう
竹田出雲(竹本座の座本兼浄瑠璃作者 ): 悠真 倫
早水清吉(忠清)(小間物の行商人、赤穂浅野家家臣・原家に代々仕えた足軽の息子) : 華形 ひかる
寺坂吉右衛門(赤穂浪士の生き残りとして、遺族の援助に尽くす): 紫峰 七海
ふさ(塩町に嫁いだ嘉平次の姉): 初姫 さあや
杉森鯉助(近松景鯉)(浄瑠璃作家を目指す近松門左衛門の二男): 春風 弥里
柏屋半兵衛(『柏屋』の主) : 夕霧 らい
茂蔵(番頭)/紺屋利左衛門(出店の家主): 彩城 レア
お園(水茶屋『清水屋』の女房)/
美津(小弁の母、討死にした赤穂四十七士の一人・原惣右衛門の妾): 梅咲 衣舞
印伝屋長作(嘉平次から金をだまし取る性悪の商人): 瀬戸 かずや
幾松(目の不自由な嘉平次の弟、きはを秘かに慕っている): 鳳 真由
お蝶(女郎) : 春花 きらら
楓(女郎): 鞠花 ゆめ
芳沢あやめ(上方を代表する女形)/定吉(手代): 天真 みちる
播磨屋与三郎(鯉助の遊び友達): 銀華 水
平太(境内で遊ぶ子供)/庄介(丁稚): 神房 佳希
竹(『一つ屋』の飯炊き女)/吉三(境内で遊ぶ子供): 菜那 くらら
小弁(喜世)(さがの妹女郎、浅野家家臣・原惣右衛門の妾の娘): 桜咲 彩花
中村源吾(鯉助の遊び友達): 航琉 ひびき
おみよ(境内で遊ぶ子供): 美花 梨乃
初音(女郎): 花奈 澪
きは(嘉平次の許嫁) : 華雅 りりか
おりん(女郎): 夢花 らん
徳兵衛(浄瑠璃人形)(『曽根崎心中』の主人公、醤油問屋平野屋の手代): 柚香 光
お初 (浄瑠璃人形)(『曽根崎心中』の主人公、天満屋の見世女郎): 乙羽 映見
おせん(さがの小女): 朝月 希和


美しく、完成された舞台が観られました。

人形浄瑠璃で曽根崎心中を演じる一組の男女。
当代随一の劇作家、近松門左衛門の大ヒット作、それを観て我が人生を振り返り
まだ未体験の命をかけるまでの恋に漠然とした憧れを持つ・・・。

平凡で誠実な主人公。
ハッキリ言って、宝塚の主役には珍しい設定。
わたくしは決して みわっち(愛音羽麗)のファンではありませんが(失礼)、でもこのカッコ良くない設定なのに
綺麗な声と似合いすぎる青天の優男っぷりは、MY BESTみわっちでした。
男役にしては小柄で、顔立ちが女性的、おでこの広さが気になるVISUALが全て問題にならない和物、
もっと演じるチャンスがあれば良いのに。

茶碗屋、の3代目。
偶然出会った女郎に岡惚れ。
もともとは誠実な商人。
なのに、その女郎を 身請けしたいの一心で判断力も分別もなくなり、
幼馴染の陰謀にまんまとハマって秘蔵の品も代金もだまし取られ、
親・得意先の信頼も失い、更にまたその男からむしり取られそうになり・・・

恋ゆえに弱く、恋に溺れて足をすくわれ転落の道をまっさかさま・・・
歌舞伎には良くあるタイプ。金と力なき色男。
TOP男役には珍しいある意味タカラヅカを逸脱した設定。
その誠実さと真っすぐな恋心をキチンと表現できているからこそ、
その転落が口惜しく、哀れであるとの客席の共感を呼ぶ力を見せてくれました。


その女郎を演じたみりおんちゃん(実咲凛音)。
はい、My贔屓の相手役としてこの公演の千秋楽の翌日から宙組に次期TOP娘役として組替予定の彼女のチェックが今回の観劇の主目的(どれだけ姑目線なの~←自分^^;)。
歌が上手くて、穴のない正統派な娘役さん。
組配属直後から新公独占、華やかな美貌の先輩をごぼう抜きの実力派。
・・・ではありますが、整った容姿なのに華がなく、演技にも心に残るところがない、水のような個性というのはいかがなものだろうかと思っていたのですが。

しっとりとした情感あふれる女郎で。
妹格の、武士の娘だった小弁ちゃんをなぐさめるところ、水飲み百姓で食べるものにさえ苦労していた頃を思えば今の境遇でも幸せ・・・と語る落ち着いた諦念と優しさに、こんな空気を醸し出せるヒトなんだ、と。
小柄なみわっちに、膝折りしてそっと寄り添う姿も、相手の男役を立てる、タカラヅカ伝統の娘役芸をしっかりと見せて、安心のクォリティ。

この主役カップルと同時進行でみせる、もう一組の男女が準主役。
妹女郎、もと武士の娘の小弁ちゃんと、小間物商人として生計を立てながら、陰から彼女を支える足軽の息子清吉。

清吉があくまで忠義なオトコで。
不幸な姫に仕えるナイトとしてのポジションは正しくタカラヅカ的。

この清吉のみつるくん(華形ひかる)が上手い。
もともとキラキラしたアイドル的な華のあるヒト。熱いキャラではありましたが、路線として大成するには身長と何かが足りず、伸び悩んでいる感があったのですがxxx
ここにきて、ぐっと味のある演技のできる脇役者としての成長が著しく。
そういえば、3組に分かれての花組次次回のラインナップで、轟さんとの専科公演、「おかしな2人」退団された名優未沙のえるさんの後釜に抜擢されましたね。
今のみつるくんを観ると、この抜擢にも納得です。

べーちゃん(桜咲彩花)は可憐ですね。
ヒロイン さがが、大人っぽい女性なので、悲劇のヒロイン、姫タイプの小弁ちゃんは美味しい役どころ。
ただ、せっかくの花組なので、もっと美少女タイプはいなかったのか(あ、わかりました、全ツにとられたのね^^;)と。上手ではありましたが、みつるくんが学年の割に若々しくてキラキラの若者なので・・・^^;。

宙組から組替え後お初のみーちゃん(春風弥里)にも注目。
近松の息子。その名を利用して表層的な人生しか送っていない。
そんな自分を客観的に観る目を持っているがゆえに時折焦燥感に苛まれる。
軽口を叩いて、心中騒ぎの原因を作り、偉大な親に迷惑をかける2代目の辛さをしっかり見せて。
宙組ではその飄々とした芝居の上手さが抜きんでていた観がありましたが、この花組の芝居巧者のアンサンブルの中にあっては、さりげな~く溶け込んでいました^^;

1人悪役のあきらくん(瀬戸かずや)。
長作は、主人公の信頼を裏切り、万座の前で罵倒し、愚弄し、そして再び現れてまた金子を奪おうという情け容赦ない悪者。
でも、だます相手が幼馴染の小商人、というあたりが小物な悪。
そんなチンピラっぽさをきちっと演じてスッとハマっているあたりが配役の妙でしょうか。
色っぽいワルというよりも、1人黒塗りの悪党という歌舞伎的な人物造型で、作品に合っていました。


そして、実に良く書き込まれたこの作品での見せ場、第3のカップル。
主人公の弟、目を患う幾松(鳳月杏鳳真由)。
兄のいいなずけ、きは(華雅りりか)へ、密かに想いを寄せており、女郎にいれあげた挙句に兄が、店と婚約者、長子としての相続権を幾松に譲ると、激情から発した言葉を受けて・・・。
なんと、彼は、眼病の治療薬を捨てていたのですよ。兄の言葉にふくらむ希望を自分の中で殺めるために・・・;;
まゆちゃん(鳳)は、こういう繊細な役が上手い。
幾松がけなげであるがゆえに、いつもは誠実な兄の軽率さがヒトを変えてしまうほどの恋の力の恐ろしさとなって胸にせまります。

きは役、華雅りりかちゃんは、星組から組替後、お初の花組舞台。
路線の娘役で元気な現代的なイメージでしたがこのところ、すっかりしっとりとしたお姉さまポジに移行しましたね。
組替直前の星組舞台では「天使のはしご」のたおやかな長女の役がハマっていたことを思えば、今回の、弱いものに優しく、奥ゆかしい、親も納得の婚約者としての役作りは自然な設定なのかも。

自らの描いた心中が流行る世の中を、俯瞰する作家近松を、花組組長を勇退するはっちさん(夏美よう)が。
品格溢れる知識人としての造型が、小市民的な息子・鯉助との好対照をなして、ここでも偉大な親を超えることのできない息子の葛藤と見守り叱り育てる親心のドラマがあり・・・。

嘉平次の姉ふさを演じる初姫さあやさんは、「復活」でも暴走する貴族の弟をいさめる姉役だったような。
今回もまた、恋人への誠実さゆえに家族を泣かせる(;;)弟を案じ、いさめようとする真っ当なお姉さま。
きれいで落ち着いているけれど若々しく、上品きれいな姉キャラが似合いますね。

女狂いで身代をつぶしたう先代の信用を取り戻すべく、地道に商売に精を出した父親は植田景子センセイ信頼の専科さん、汝鳥伶さん。
ホントにこの方が親として登場するとその情の厚さ、深さに泣けますね・・・。

この家族は 父と言い、姉と言い、弟と言い、皆 実に真っ当で嘉平次への思いやりに溢れている。
そしてその真っ当さが、彼の運命の哀しさを際立てるという。
実に良く書き込まれた良い脚本と、演じ手の力量に、思わず引き込まれた2時間半でした。

最後に一言。
この舞台、物語の主役は嘉平次=みわっちだったけれど、
舞台の主役は、実は、浄瑠璃人形徳兵衛=柚香光くんだったのでは?


幕が開いた瞬間、彼がお初人形(乙羽映見)と並んで暗い照明の中に浮かび上がったときの存在感たるや。
線でスッと描いたような、いっさいの無駄のないクールな美貌。
人形なので、表情一つ動かさずに心中物の悲劇を舞い踊る。

一幕最後に、劇中の3組のカップルに加えてこの人形カップルが踊る、4組の男女の踊りの場面があるのですが、その4組中もっとも存在感が際立っていたこの人形こそが、この舞台の美しさを象徴的に表していたのではないかと思うほど。

照明の使い方、赤い竹と紐を使った踊り、舞台美術もセンスが良く、
タカラヅカの和物の美しさを堪能できる舞台でした。


東宝「エリザベート」 春野・マテ 

2012-05-18 07:26:50 | Musical
2012年5月17日(木)13:30~
帝国劇場にて

ミュージカル「エリザベート」を観て参りました。

本家ウィーンで初演されてから20周年記念の年、東宝でも、2000年の初演以来、8回の上演という人気作(ちなみに宝塚の初演は1996年)。

わたくしも、さほどミュージカルファン、というわけでもありませんが、それでも歴代エリザ(一路・瀬名)と山口さんト―ト&城田くんでも観ていますし・・・。
今までは、お誘いいただいて、という観劇でしたが、今回はちょっとCASTに興味を惹かれて、自らチケットを手配しての観劇です。



エリザベート(オーストリア皇后) 春野寿美礼
トート(黄泉の帝王) マテ・カマラス
ルイジ・ルキーニ(皇后暗殺者) 髙嶋政宏
フランツ・ヨーゼフ(オーストリア皇帝) 石川禅
ゾフィー(皇太后) 杜けあき
マックス(エリザベートの父) 今井清隆
ルドルフ(オーストリア皇太子) 古川雄大 /子供ルドルフ 加藤清史郎
ルドヴィカ(エリザベートの母) 春風ひとみ
エルマー 岸祐二
マダム・ヴォルフ 伊東弘美

19世紀末のウィーン。
若き皇帝フランツ・ヨーゼフ(石川禅)が我が妻にと選んだのは、自由な心と魂を持つシシィ(エリザベート:春野寿美礼)だった。
一目で惹かれ合い、固い絆で結ばれたかに見えた2人だったが、その愛はハプスブルク王朝の破滅への序章であった。
自由を愛するエリザベートにとって、宮廷での暮らしは苦痛以外の何ものでもない。
姑の皇太后ゾフィー(杜けあき)が取り仕切る宮廷では、自身の子供を自ら養育することも叶わなかった。
ある日、自分の美貌が武器になることに気付いたエリザベートは、自らを完璧に磨きあげ、ハプスブルク帝国の皇后として栄華を極めていく。
エリザベートが念願としていた望みを叶えたのも束の間、彼女のまわりには、夫の不義、国民の誹謗中傷、愛する皇太子ルドルフ(古川雄大/加藤清史郎)の死と、いつも不幸の影がつきまとう。
"トート(マテ・カマラス)=死"は、エリザベートが少女の頃から彼女の愛を求め続け、彼女もいつしかその愛を意識するようになっていた。
しかし、その禁じられた愛を受け入れることは、自らの死を意味することであることも、エリザベートは知っていた。
滅亡への帳が下りる帝国と共に、エリザベートの"運命の日"は迫っていた・・・。

以上、公式HPより転載。


春野さんのエリザベートは娘時代は厳しいかもしれないけれど、晩年に観ごたえがありそう・・・と期待。
実際のところ、確かに少女時代には美少女オ―ラは不足^^;していましたし、とてもほっそりしているので、おてんば設定にもやや無理がありましたが、降ろした前髪とシンプルな衣装が似合っていて、ピュアな少女という雰囲気は出ていました。
一度死を考えたところで飛びかかってきた(スミマセン、そう見えました^^;)ト―ト閣下のお誘いを毅然と跳ねのけたところから突如、男役TOPスター時代の真ん中オ―ラが・・・
めまいを起こして倒れるところ、自分自身に余裕がないため、ルドルフを拒絶してしまうところなどの弱さ・脆さ・はかなさの表現も、そのドレスの似合う細面&ほっそりとした長身でムリなくこなしてお似合いでした。
歌は・・・。
少女時代の歌の滑舌の良さを強調したような歌い方はスタッカートが一言ずつに指定されているのかと思うほどで、演出上の指示なのかもしれませんが、やや不自然。
大人になってからのまろやかな歌声はさすが。
TOTALでは、一路さんほどの張り詰めたオ―ラはありませんでしたが、健康的な瀬名さんとも違う、エレガントなエリザベートでわたくしは良かったと思います。



マテ・カマラスさんのトートは、ひとり胸板が厚く(笑)、青白き黄泉の国の帝王・・・というよりも、肉食男子でお顔もCUTEで、独得の存在感。
日本語に挑戦!の歌は、始めのうちは母音を強調する歌い方(「おまぁえをぅ」という感じ^^;)がいかにもガイジンの日本語に思えて気になりましたが、歌い方もロック調ですし、きちんと感情を載せて一言ずつのイントネーションが正確なこともあり・・・。
見た目も違うし、異界のヒトだし・・・と納得したのか(笑)次第に気にならなくなりました。
しなやかな身ごなし、存在感の出し方はさすが。
春野さんが小柄に見える大きさとお顔立ちからは、城田くんのトートをちょっと思い出しました。

古川さんのルドルフは、周囲に祭り上げられて、気が付いたら・・・という巻き込まれ感、未熟さゆえに自分ではどうすることも出来ずに孤立してしまった皇太子の苦境に至る流れが上手く表現されていましたし、全身のスタイルの良さと上品な顔立ちはピッタリでしたが、歌がマテさんと拮抗するくらいの力があれば・・と。
加藤清史郎くんの演技・歌ともとても良かったと思います。
金髪の鬘も可愛かったです^^



高嶋さんのルキー二は、あまり小芝居を入れすぎず、狂言回しとしての役を逸脱しない役作りに好感が持てました。
ただ、顔を塗りすぎ?ちょっと小汚く見えてしまうので・・・^^;すっきりさせても良いのでは。
あと、ルキー二もシングルキャストではなく役変わりで観たいですね。

杜けあきさんのゾフィーは実は初見。
(今まで寿ひずるさんで観ていたらしい^^)
美しく、品の良いゾフィーさまでしたが、歌声が軽いのか、あまり威圧感がありませんね。
皇太子を陥れる悪だくみも、彼女が主導した、というよりも、側近たちのアイデアに乗った、というライトな感じ。

石川禅さんのフランツは安定感抜群。
板挟みになって、苦しみつつも、善良な彼がよかれと思ってしたことが全てウラ目に・・。
不幸な物語の中でもっとも不幸な登場人物の1人ですが、温かみのある歌声が、救いを感じさせるとともに、歩み寄れない夫婦の哀しさも際立ちました。

再演を繰り返しながらも、新キャストで観るとまた新鮮。
どうしようかと迷いましたが、観て良かったです








「アーティスト」

2012-05-11 08:23:38 | FILM
映画つながりで・・・

4月に公開されて、今も人気上映中の新作白黒映画^^、
「アーティスト」
4月13日に銀座シネスイッチで観ました。



1927年のハリウッドが舞台。
ルドルフ・バレンチノ風味の無声映画の銀幕のスターが、トーキーへと向かう時代の変化に背を向けて人気失墜。
その一方、ファンとして出会ったエキストラ女優が、スターからのアドヴァイスを得て、チャンスをものにし、時代の寵児となる。
全く立場が逆転した2人が再び出会って・・・。

大きな瞳と気どらないBIG SMILE、くるくる変わる表情とスレンダーな容姿が活発なお嬢さん、というムードのぺピ―・ミラー役のべレ二ス・べジョが魅力的。



憧れのスターの楽屋にしのびこんで、そっと彼のタキシードに腕を通して1人芝居・・・
こんな芝居がかった情景も、白黒映画で無声映画仕立てのテンポにはぴったりハマります。



カリスマ2枚目スター、転落しても誇りを失わないジョージ・ヴァレンティン役のジャン・デュジャルダンは無声映画時代の神秘的なスターの端正な美貌と、トーキー時代のミュ―ジカルスターの気さくでチャーミングな笑顔を併せ持ち、時代の雰囲気をよく出していました。現代の俳優なのに、タップを踏む姿はまるでジーン・ケリー。
往年のスターのムードを醸し出せるものだと感心。
チャンスを与えられても気づかず、自分の築き上げた栄光とその手法に執着し、転落を招く・・・という設定も、27年から29年の間のトーキー革命を忠実になぞっているだけではありますが、その教訓は現代的で身につまされます。
デュジャルダンの古き良き時代のスターっぷりはどこか映画ファンの郷愁を誘う風情がありますね。
主演映画のスチールやタイトルにも、無声映画マニアの心をくすぐるオマージュが散りばめられていて、そのメッセージを受け取れるマニアにはもちろん、知らなくても雰囲気は味わえるので、マニアックな映画にありがちな排他的な嫌みもなく、ミシェル・アザナヴィシウス監督の手腕の確かさを感じます。
ちなみに監督が挙げた、この作品を撮るにあたって影響を受けた映画監督が、ヒッチコック、ラング、フォード、ルビッチ、ムナウ、ワイルダー・・とはまた豪華な^^
わたくしは、タッチはルビッチですが、それほどウィッティでも洗練されすぎてもおらず、ワイルダー的な素朴な温かさもある映画だなと思いました。

スターの愛犬アギ―、忠実な運転手など、脇を固める役者(&役者犬?)も存在感あり。

第84回アカデミー賞の作品賞、監督賞、主演男優賞、作曲賞、衣装デザイン賞など5部門制覇。
2011年フランス映画。





イタリア映画祭2012 「ジョルダ―二家の人々」

2012-05-06 14:11:40 | FILM
毎年のGWの恒例行事と言えば、有楽町朝日ホールでの「イタリア映画祭」

イタリア語学校「Bell'Italia」の文学のクラスに長く通っているのですが、
イタリア人の先生が大変な映画通で、毎回、この映画祭のラインナップが出ると、知る限りの情報をくださることもあり、この時期になると楽しみにしている催しです。


今年は、5月4日(金・祝)の13:00~6時間半(休憩20分)の長きにわたって上映された
Le cose che restano(仮題:そこにとどまるもの)



2010年RAIでTVの4回シリーズとして放映されたローマのインテリ一家の大河人間ドラマ。
映画祭では一度限りの上映とあって朝日ホール満席御礼の盛況でしたが
7月21日(土)から、「ジョルダ―二家の人々」という邦題で岩波ホールにての一般上演も決まっているとか。

実は、イタリア映画で印象深いのが近年では「輝ける青春」
La Meglio Gioventù (2005年7月9日より岩波ホールで公開)があり、自分の評を読み返そうと思ったら、ブログに残してなかったことに気が付きがっかり(笑)
いや、いい映画だったのです。
マルコ・トゥーリオ・ジョルダ―ナ監督作品。
1966年から2003年までのイタリアを、2人の対照的な性格の兄弟の半生を軸に描く6時間6分の大河ドラマ。
フィレンツェの大洪水と書庫修復のための学生ボランティア、赤い旅団、精神病院の廃止運動など、時代が個人の生活を左右しながら、2人を同時に身近に感じながらともに生きているような感覚を味わった秀作でした。

今回、その撮影に関わったスタッフチーム(脚本・撮影)が手掛けた同じく6時間超の大河ドラマ、というので、是非観に行きたい!となった次第。

監督 Gianluca Maria Tavarelli
脚本・演出 Sandro Petraglia 、 Stefano Rulli
撮影  Roberto Forza

<CAST>
Nora   Paola Cortellesi
Andrea  Claudio Santamaria
Nino  Lorenzo Balducci
Pietro   Ennio Fantastichini
Francesca   Antonia Liskova
Alina  Leila Bekhti
Shaba   Farida Rahouadj
Anita   Daniela Giordano
Lorenzo   Alessandro Sperduti
Valentina   Valentina D'Agostino
Vittorio Blasi   Enrico Roccaforte
Alberto   Maurilio Leto
Lila   Karen Ciaurro

e con la partecipazione di Vincenzo Amato (professor Nicolai)
Thierry Neuvic (Michel)
Francesco Scianna (Cataldo)



今回の主役は、ローマに暮らす、熟年夫婦、技術者の父と元医師の母、それに、20代から40代の4人兄弟、外務省勤務の長兄アンドレア、臨月の心理カウンセラーの長女ノ―ラ、卒業間近の建築科の学生、次兄二―ノ、そして末っ子の学生ロレンツォ。
幸せそのものの一家が、ロレンツォの交通事故死をきっかけにバラバラになり、また、赤の他人を含む新しい家族の形態を取り戻していくまでの道筋を、1人1人のエピソードを積み上げてじっくりと描いた作品。
不倫、記憶喪失、親子の葛藤、夫婦のすれ違い、ゲイのカップル、血のつながらない家族、マフィアと薬物、外国人娼婦、東欧・アフリカからの移民問題などを盛り込みつつ、人と人との係わりあいを丁寧に描いて、長丁場を飽きさせない手腕はさすが。

問題を抱えたカップルを見て、身近な家族や友人は直接相手に話すべきだとアドヴァイスするのですが、自分が当事者である問題については、なかなか頑なな姿勢を崩せないのがリアル。

魅力的な人物の多い中で特に好きなのは、気難しいイケ面次男二―ノの幼馴染、ヴァレンティーナ。
実はなかなかの才女らしいのですが、とにかくチャーミング!
二―ノが好きなのに振り向いてもらえない設定。
引っ越し荷物で手いっぱいの二―ノに突然キスして、「ごめんね!一度してみようと決めてたの!ホントごめん!」と言いながら手を振って去って行った次に会った時には自分の婚約で幸せいっぱい。二―ノは煙にまかれるばかり・・・
ユーモアたっぷりの彼女が折に触れて登場するだけで場面が明るくなります。

ちなみに原題の「Le cose che restano」は、二―ノと彼女がローマ郊外の団地を眺めながら、そこにある生活をつぶやく二―ノに対し、ヴァレンティーナがつぶやきかえすエミリー・ディッキンソンの詩の一節。
何?と訊く二―ノに「女性の詩人が書いたのよ・・・野蛮な男どもには理解できないでしょうけど」と切り返すのですよね^^

もちろん、繊細なアンドレアとクールな二―ノはそれぞれに共感できる部分を持つ魅力的なキャラクターで素敵ですし^^
6時間なんてあっという間!
おススメです





ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2012

2012-05-05 05:55:45 | MUSIC
1995年にフランス、ナントで始まり、日本でも、2005年から、ゴールデン・ウィークのお楽しみとして定着した観のあるクラシックの一大イベント「ラ・フォル・ジュルネ」(熱狂の日)

毎年、作曲家やテーマを違えて、連休中の3日間、有楽町の国際フォーラムを中心とした大小さまざまなコンサートホールで朝から晩まで演奏会が開かれている・・・というもの。

今年のテーマはなんと!
「サクレ・リュス(Le Sacre Russe=ロシアの祭典)
バレエはもとより、最近興味のあるものすべてがロシアへロシアへと向いているような気がしている今日この頃、長年通っていたイタリア語学校”BELL'ITALIA”に別れを告げ、この4月からロシア語を学び始めたわたくしにピッタリのテーマではありませんか

実は一番好きな作曲家がプロコフィエフであるという・・・



でも、連休中も、通常と変わらぬ勤務形態ゆえ、一日中音楽三昧、と言うわけにもいかないのよね・・と
あきらめているのが毎年のスタンスだったのですが、今回、友人に声をかけられ、気乗りしないまま調べたところ・・・

なんと!(2度目)
ボリス・べレゾフスキ―が参加しているではありませんか!



ちょっとこわいですけど・・・(笑)
モスクワ音楽院卒。1990年チャイコフスキー国際コンクールの覇者。
超絶技巧派で、ラフマニノフに定評あり。
ふむふむ、夜の9時10時スタートのコンサートもあるのですね^^
仕事帰りに、友人と待ち合わせてオープンエアーのカフェで軽食を取り、余裕で行けるではありませんか

というわけで、行って参りました

2012年5月3日(木)22:00~22:45
東京国際フォーラム ホ―ルA

グリンカ:「ルスランとリュドミラ」序曲
チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第2番 ト長調 op.44

シンフォ二ア・ヴァルソヴィア、との共演です。
指揮はジャン=ジャック・カントロフ。

第2番を生で聴くチャンスはそうそうありませんので・・・貴重な機会でした^^
緻密で華やかな名演。

ただ・・・惜しむらくはやはり、S席1階前方センターブロックと言えども、この会場はクラシック・コンサート向けではないですね^^;
音が拡散してしまうような印象がxxx

とはいえ、会社帰りに都心の便利な場所で遅い時間に1時間弱の良質な演奏での気分転換ができる、というのは
なかなか良いものでございました

5日にもまた、べレゾフスキ―目当てで行くつもりです^^

あ、新丸ビルなど、有楽町・丸の内のあちらこちらにて、「サクレ・リュス」絡みの無料コンサートや展示が開催されていますので、是非、脚をお運びになってみてはいかがでしょうか?

ちなみに新丸ビルの3階の展示会場でのストラビンスキーとプロコフィエフの展示はなかなか観ごたえがありました

最後にちょっとお口直し(?)の可愛いチェブラーシカをば





2012年5月5日(土・こどもの日)21:00~22:00

再び、東京国際フォーラム HALL A 

チャイコフスキー:イタリア奇想曲 op.45
ボロディン:だったん人の踊り(オペラ「イーゴリ公」より)
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 op.18

ウラル・フィルハーモニー管弦楽団
指揮:  ドミトリー・リス
合唱:  カペラ・サンクトぺテスブルク
ピアノ: ボリス・べレゾフスキ―

なんと!
あのだだっ広い国際フォーラム ホ―ルAが満席!!ですよ~@@

確かにキャッチ―な演目、べレゾフスキ―のラフ2、明日も日曜日で休み、夜の公演とはいえ、10時始まりよりはハードルの低い9時始まり、合唱付きでお得感あり?と条件は揃っておりますが。
決して音響が良いとは思えないホールで、ここまでヒトが入るとそれだけでちょっと興奮します。


カプリッチョでちょっと温まってきたところで・・・
だったん人の踊り・・・これは有名ですから、聴けばあぁあぁ、という。
オペラでバレエつきで上演される派手やかな場面で、コンサートなどでも演奏されることが多いですから。
それにしても、ロシアこてこてのエキゾチックピースをこれでもか、と情熱を叩きつけるような力のこもった演奏は大いに会場を沸かせました。
そこで、合唱隊が退出、オケの編成も変わって、下手すみに追いやられていたグランドピアノがセンターに設置されて・・・御大べレゾフスキ―登場。

待ってました!のラフマニノフ2番。
往年のハリウッド映画のロマンスシーンのクライマックスなどで流れていたかも・・・とほとんどの方は記憶にあるメロディーですが、改めて聴くと、その臆面もなく堂々と壮大に展開するロマンティシズムにとにかく圧倒されます。
あぁ~ロシアだわ!

と、陶酔させつつも端正で力強い演奏で、さすがべレゾフスキ―。
はい、ロシア人によるロシア人の曲のロシア人らしい演奏を堪能致しました。
いや、ロシアにしては、コテコテではなく、サンクトペテルブルク系といいますか、スッキリしてますね。
オケも繊細で上品な響きですし、好みが分かれるかもしれませんが、べレゾフスキ―氏の演奏も、抒情におぼれるでもなく、程よく抑制の聴いたスピード感のあるモダンな味わいがありました。

満場の聴衆からの熱い拍手を受けて、まさかのアンコールもあり・・・。
22時始まり公演ですと、会場の閉館時間の絡みもあり、出来なかったのかもしれませんが、
そこも21時始まり公演の余裕ですねv
さびの部分をオケ付きで再度味わうことができてありがたいことでした

VIVA「熱狂の日(La Fole Journee)」

http://www.youtube.com/watch?v=5bNSRAxbB1U&feature=relmfu
http://www.youtube.com/watch?v=lnq60WOb5Tk

(YTでUPされたラフマニノフ2番By べレゾフスキ―を貼っておきます^^)