2018年11月23日(日)
11月14日梅田芸術劇場での初日、そして12月7日北九州ソレイユホールで楽を迎えるまでの間、関東を通過する前橋、神奈川、八王子のどこかで必ず観なくては・・・と、23日の11:00,15:00公演を神奈川県民ホールでダブルで観劇しました。
午前は上手、午後は下手ともに4列目での観劇でしたが、見える風景とそこからくる印象がかなり異なったのが面白かったです。
レット・バトラー: 紅 ゆずる
スカーレット・オハラ : 礼 真琴
アシュレ・ウィルクス: 華形 ひかる
*~*~*
スカーレットII: 夢妃 杏瑠
メラニー・ハミルトン: 音波 みのり
マミー : 美城 れん
ピティパット: 毬乃 ゆい
プリシー/令嬢 : 紫 りら
ピーター: 輝咲 玲央
ミード夫人: 万里 柚美
ミード博士: 美稀 千種
フィル/青年: 音咲 いつき
ルネ: 如月 蓮
メイベル : 妃白 ゆあ
ワイティング夫人: 大輝 真琴
メリーウェザー夫人: 珠華 ゆふ
エルシング夫人 : 毬愛 まゆ
ジョージ: 漣 レイラ
チャーリー: 紫藤 りゅう
スタンレー: 桃堂 純
司会者/青年: 凰羽 みらい
ウィリー : 天華 えま
ファニー: 白鳥 ゆりや
ベル・ワットリング: 天寿 光希
リンダ : 紫月 音寧
マリリン: 真衣 ひなの
ベティ : 逢月 あかり
駅員: 湊 璃飛
星組2番手、紅ゆずるさん率いる全国ツアー、全ツは過去の名作、だれもが知っているタイトルで・・というのが定着していますね。華やかなドレス姿と知名度の高いストーリーで初めての宝塚、かもしれない地方のお客様にアピール、という主旨からすると間違いではありませんし、古典作品の主役を務めることで、次期トップや2番手の男役に自覚と成長を促す、という意味でも良い興行なのかもしれません。
・・・が、凰稀さんのバトラーが未だ忘れられないわたくしとしては、他のスターのバトラーは観る気がしない・・・と主演が発表された時点では全く興味がわかなかったのが一転、チケット取りに本格的に乗り出したきっかけは・・・
琴スカ。下級生ながらも歌・ダンスに抜きんでた実力を有し、高身長の星男の中では小柄で可愛らしい丸顔の容姿が男役としては理想的とは言えないまでも、演技と男役芸にもメキメキと成長を見せている期待の逸材、礼真琴ちゃん
彼女が演じるスカーレットは?と、それを観るためだけでも、チケットを取る価値はある!といきなり前のめりに。
そして、振り分け発表された時点で盛り上がったのが、夢妃杏瑠ちゃんとみっきー(天寿光希)。実際とは逆の配役を想像して盛り上がっていたのですが・・・。杏瑠ちゃんのベル、みっきーのスカⅡ、のほうが良かったのでは・・・と思わないでもありませんが。
作品に関しては、宙組の大劇場、東京宝塚劇場合わせて15回は観ているので、とにかくその印象が刻み込まれていて・・・。全ツで、銀橋がないこと、舞台機構(盆、セリなど)が使えないこと、大階段が低いことなど、の制約から来るスケールダウンもありますが、舞台装置そのものがフラットなために立ち位置に制約が出て、スカーレットに帽子をプレゼントする場面でのバトラーの壁ドンが省略されていたり、メラニーの臨終後、バトラーをスル―してアシュレーに行くスカーレットで、奥まっていた宙バトラーの位置に対し完全に並列なのに気付かないわけないでしょう!と突っ込みたくなる仕様になっていたり・・・。
そこは全ツ版として致し方ないところではありますが、ちょっと衝撃的だったのがオープニングの場面の地味さ加減・・・。
宙では朝夏まなと、七海ひろきの長身男役スカーレットをセンターに、長身の宙組路線男役がずらりと取りまくというパッと華やかな幕開きだったのに対し、琴スカの押し出し(美女力、身長)が思いのほか弱く、取り巻きの青年も星組自慢の真風涼帆、まおポコ(麻央侑希、十碧れいや)がそれぞれ武道館ライブ、バウ公演に取られてしまい、上級生職人系か芸達者系の下級生が中心でなんだか・・・地味!
ただ、それを痛感したのは午前の部、で、午後は、琴スカの他の場面でもっと似合うドレスや鬘の姿も観て、可愛く見えるバイアスがかかってきたのと(笑)下手の方が美形が多かった、という単純な事実により、取りあえず解消。
その他、南部の青年たちが全般に地味、なのは半分の人数からのピックアップゆえに仕方ないとして、ちょっと残念だったのは、宙でNEWナンバーとして第二幕冒頭で使われたNEWジェネレーションがなくなってしまっていたこと。南北戦争後、新旧に分かれて価値観の対立を歌う南部の人々・・・の場面で、とても好きな場面だったので残念。
フィナーレショーは、やっぱりとてもステキ
これを観るだけのためにも通えるレベル。
とりわけ、タキシードジャンクションでの娘TOPポジに華やか美人の音波みのりちゃんが出てきたこと、セントルイスブルースでのみつるくん(華形)の花男スキル炸裂の粋さ、ナイトアンドデイの琴ちゃんの小生意気な可愛さとダンス!!
特にタキシードジャンクションのみつるくんは宙組より断然良い。宙組バージョンよりも圧勝と思ったのはここ。
こういう粋なアメリカンなダンスって、フレッド・アステアも決して大男ではないですし、このサイズ感と背中を向けたときの肩の角度とか、帽子のつばをさっと撫でるありがちな動きもその手をスライドさせるのに合わせてニヤリスマイルを入れてくるとか、みつるくん、本当に密度が濃くてステキでした・・・
後は個々に目立つところの感想を・・・
■レット・バトラー: 紅 ゆずる
VISUALはハマって良くお似合い。多分、植田伸爾先生、榛名由梨さんの演技指導が厳しく入ってと見えて、大げさ?な型芝居がしっかりと入っていて、台詞回しから目線の配り方までの作り込みが出来ていると思いました。
・・・が、一方でスカーレットをはじめとする他の生徒たちにはその指導を施す時間がなかったのか、割合他の生徒のセリフ回しがナチュラルなので、バトラーが悪目立ち?している感あり。
かなめバトラーがとびきり繊細でヨーロッパにお城を持っていそうな(笑)雰囲気だったのに対し、胡散臭さや品のなさも含めて寧ろ 映画のクラーク・ゲーブルに近いかも。ただ、ゲーブルにあって紅バトラーにないもの、それは余裕感。商売で上手く立ち回り、行動力もある一方で、スカーレットにはとことん惚れこんでいて、彼女の浮気を疑って荒れる場面の荒れっぷり、その後スカーレットの死を心配し、メラニーの死後、スカーレットがアシュレ―を求める姿に失望する流れの中で、完全に壊れたのは、実は2人の関係だけではなく、紅バトラーそのものなのではないか・・・と。
凰稀バトラーはもとより孤独な一匹狼で、それがふと心を寄せたスカーレットと生きて行くつもりで南部に腰を落ち着けたものの、やはり相いれないものを感じて再び一人に戻る・・というストーリーに見えたのに対し、紅バトラーは実は内面がもろくて繊細で、「壊れたものは壊れたものさ・・・」のセリフも、自分語りをしているように聞こえ。
「壊れたものをじっと眺めていたいんだ」のセリフでは、あぁ、紅バトラーが立ち直るまでには時間がかかりそうだなぁ・・と思ってしまいました。逆に琴スカは歴代一の立ち直りの早さのような気が・・・^^;
■スカーレット・オハラ : 礼 真琴
くるくると動く瞳と身体。クシャっと笑うと鼻に皺が寄るのと、「ばかばかしい」というところを「バカバカしッ」と短く早口で言ったりするのが現代っ子な感じを強めています。南部の令嬢、社交界の華かというとちょっと・・・というのはその部分かなと。
喪服で登場の場面、赤毛の厚い前髪を深く下ろして後は黒レースのベール、という鬘がその前髪の下で動く大きな瞳を引き立てて、とてもCUTE。小悪魔的な魅力が男性を惹きつける源だったのだな、という納得がいきました。
歌は圧巻。一幕最後のボロボロな姿でタラに帰り、母を探すもマミーにその死を告げられる場面、さすがは宝塚イチ「ママ」という台詞の似合う男役(笑)。これまでのスカーレットに感じたことのない、強い母への思慕が涙を誘いました。続く「明日になれば」の熱唱は圧巻。これだけで、神奈川に来た甲斐があると思わせるクオリティ。
根は純真な子どもの素直さ・清らかさを持ちつつ、現実的で、ヒトの痛みを理解できず、立ち直りは人一倍早そうな そんなスカーレット、でした。
慣れない娘役なれど、差し出された手に手を重ねるところとか、丁寧に所作に娘らしさを醸し出す意識が高いなと。杏瑠ちゃんと並ぶと娘役芸ってやっぱりキャリアの違いってあるのだなとわかりますが(笑)
ショーでの弾けた生命力溢れるダンス、CUTEな笑顔は絶品
■アシュレ・ウィルクス: 華形 ひかる
専科さんからのご登場。花組時代には感じたことがなかったほど、芝居上手で流石専科さん!とうなりました。
また、甘くて青年の爽やかさと湛えた風貌が年齢を経ても変わらず「世界の彼氏」との別名を持つ通り、スカーレットが無条件に憧れるのも納得のVISUAL.明るい黄色みの強い金髪が大変お似合い。
一方で、夢見る男というよりも、その知性から戦地に赴きつつも南部の敗北を状況的に予測できているのに、その諦念を押し隠して愛国的な南部の人々に同調し、かつ、スカーレットの恋心を知ってそれを利用してメラニーを託すなど、意外と現実的で打算的な一面も・・・。頭の回転が速そう。それだけに、メラニー逝去の後のスカーレットに甘える場面でずっと一緒に待っていたにもかかわらずその場にいたバトラーへの配慮のなさ、はちょっと疑問。まぁそれだけメラニーへの思いが強くて余裕がなかったのでしょうけれど。
先に書いてしまいましたが、フィナーレナンバーが絶品、でした
バトラーの演技指導にもれなく榛名由梨さんがクレジットされているように、これからセントルイスブルースを踊る男役はかならず華形さんにみてもらうと良いと思います。(真顔)
■ スカーレットII: 夢妃 杏瑠
今回のBEST3はアシュレー、メラニー、そしてスカⅡ.
杏瑠ちゃんの歌唱力、ドレスを着こなすスタイルの良さが100%活きていました!
杏瑠ちゃんってスタイル良いですよね。特にドレス姿の上半身はマネキン人形のように完璧。
琴スカも勿論歌が上手いので、この2人の「裏表」は至上最高かも?
娘役さんだけあってドレスさばきがとてもきれい。輪っかのドレスで流れるように動くのと、スカーレットの立場にたってその場の人々の言動に即応してくるくるよく動く表情が、小造りで控え目なお顔立ちのおかげで悪目立ちせず、まさに「影のスカーレット」
2幕最後でスカーレットが自分の気持ちに気付く流れ、2人が交互に前に後ろになってひとことずつ台詞を言うところ、琴スカは後ろから前に出てくる時、チョコチョコチョコ・・・と走り出て、そこから台詞、となるのですが、杏瑠ちゃんは前に出てくる時に腕を回して主張を強めるようなジェスチャーこみでの一連の動きとともに現れるので、流れがとぎれず、とてもスムース。琴ちゃんのチョコチョコ・・もとても可愛いですし、杏瑠ちゃんの優雅さも、それぞれの持ち味が楽しめます^^
色々な意味で、「娘役ってスゴイ」と実感できるスカⅡです。
■ベル・ワットリング: 天寿 光希
お芝居上手のみっきーならではのちょっと上品で自分を押さえて情感を秘めたベル。
もとは品の良い暮らしをしていたのであろうわけありマダム。色々な感情をあまりあらわには出しませんが、メラニーへの傾倒が、出会いでの握手、それを嬉しそうにバトラーに報告するさま、ウィルクス家を訪問して寄付金を渡すところなど、きちんと描いています。ただ、スカーレットへの対抗心、お金を渡して脚を組みかえてちょっとはすっぱに粋がるところなどに酒場の女の矜持と強さを見せていたオヅキベルに対し、おとなしい印象。
町のお歴々に突き飛ばされて転んだところも憤りというよりは自分の中で固まってしまっている感じ。
その辺りはそれぞれの役作りだなぁと興味深く思いますが、唯一つとても残念だったのは、ベルの独唱、「人は皆~さすらう旅人よ」のところ、口を大きく開けて正しい発声法を実行しているように見えるのだけれども、それが声として聞こえてこなかったこと。マイクの調子がおかしいのでは?とまで心配しました。
なんでもできる頼れる優等生のイメージが強いので、この聞かせる歌を歌えていなかった?キ―があわない?理由はさておき、とても意外で残念でした。
フィナーレの冒頭、娘役さんに囲まれての天寿・如月並び立って・・・の場面では活き活きと歌えていたので、やはり女役歌唱が難しい・・ということなのでしょうか?普通にルネあたりに配役されていた方が活きたかな・・・。
■メラニー・ハミルトン: 音波 みのり
はるこちゃん(音波)のBESTアクトではないでしょうか?
ドレス姿の美しさ、澄んだ声の美しさ、優しく微笑むお顔の美しさ、全てがメラニーという南部の理想的な女性を体現していた音波メラニーでした。
登場シーンの全てで目を惹き、役にぴったりと合った動きと表情、温かみもあり女性らしい優しさもたっぷりで、上品で、本当に良かったです。
今回お歌がなかったのが勝因かと言ってしまうとアレですが、この役を完璧に演じたことで彼女自身が娘役を全うしたと満足しきってしまったりしないかとハラハラするほど・・の出来でした。
星組において、本当に貴重なお芝居が出来て活き活きと踊れる美女。上級生になってますます可愛らしさに磨きがかかっているはるこちゃん、みつるくん(華形ひかる)との並びの美男美女感も素晴らしく、もし彼女が夢咲さん長期政権の星組ではなく花組に配属になっていたら・・・とたれればを考えてしまったほど、でした。
フィナーレのタキシードジャンクションで、黒と金のドレスで彼女が現れた瞬間の「美女キタ」感は、本当に・・・。
歌えないとなみちゃんみたいでした(褒めているのか?^^;いえ、美女でTOPオーラもあると言う意味で^^;)
■マミー : 美城 れん
汝鳥さんの皮膚のぶあつそうな、ちょっと愚鈍そうにみえて実は本当の意味での賢さのあるマミーよりも、ちょっと若いイメージ?気遣いが細やかで、全力で紅バトラーを心配して、普段からなにくれとなく面倒を観ているのだろうなと思わせる優しさのあるマミーでした。今回台詞を一部変えている?翻訳独特の黒人語「~ですだ」が少し減って普通の話し方になっている部分が増えたように感じたのは気のせいでしょうか?
■ピティパット: 毬乃 ゆい
可愛らしい大オバサマ。台詞回しも動きも上手いです。歌手なのにお歌がない役か・・と思いきやエトワールの歌手も勤めていらっしゃいましたね^^
■プリシー/令嬢 : 紫 りら
小柄で芝居上手なりらちゃん、宙のあきなちゃんは同じ小柄でもダンサー特有の針金とバネの細工の人形のような戯画化された動きがコミカルでアクセントになっていましたが、りらちゃんは素でかわいい少女、という感じ。
■ピーター: 輝咲 玲央
ピーターは一応プリシ―のお兄さん格で、イメージとしては少年から青年になったばかり、くらいの感じだったのですが、輝咲さんのお声がとても低くて、落ち着いているので、なんだかとても頼りになる忠義なベテランという感じ。
台詞回しもナチュラルで上手だなと思いました。
■ワイティング夫人: 大輝 真琴
今回まいける(大輝)が大活躍。夫人連の中でも一際パワフル、戦場のアルバイトでも熱く演技をしていて目を惹きました。南部の夫人連、宙ではベテラン女役の大海さんとか、美声で美女、長身の男役風羽玲亜ちゃんとか、個性的な風貌と強い眼力で宙のアクの強い役おまかせな天玲さんとか、のインパクトの強い奥様軍団に比べると、全体にソフトでナチュラルで大輝さん以外のメンバーがちょっとさびしかったかなと。
後は、南部の青年・令嬢では紫籐くんの爽やかな風貌、妃白ゆあちゃんの丁寧な演技と娘らしさが印象に残りました。
梅芸初日はかなり皆さん固い感じだったのが、だんだんほぐれて来た中日の神奈川、あと南下して最後は九州なのですよね・・・。お稽古期間が短かった分、公演毎に進化していくような気がして、千秋楽のあたりでどうなっていくのかがとても気になります
11月14日梅田芸術劇場での初日、そして12月7日北九州ソレイユホールで楽を迎えるまでの間、関東を通過する前橋、神奈川、八王子のどこかで必ず観なくては・・・と、23日の11:00,15:00公演を神奈川県民ホールでダブルで観劇しました。
午前は上手、午後は下手ともに4列目での観劇でしたが、見える風景とそこからくる印象がかなり異なったのが面白かったです。
レット・バトラー: 紅 ゆずる
スカーレット・オハラ : 礼 真琴
アシュレ・ウィルクス: 華形 ひかる
*~*~*
スカーレットII: 夢妃 杏瑠
メラニー・ハミルトン: 音波 みのり
マミー : 美城 れん
ピティパット: 毬乃 ゆい
プリシー/令嬢 : 紫 りら
ピーター: 輝咲 玲央
ミード夫人: 万里 柚美
ミード博士: 美稀 千種
フィル/青年: 音咲 いつき
ルネ: 如月 蓮
メイベル : 妃白 ゆあ
ワイティング夫人: 大輝 真琴
メリーウェザー夫人: 珠華 ゆふ
エルシング夫人 : 毬愛 まゆ
ジョージ: 漣 レイラ
チャーリー: 紫藤 りゅう
スタンレー: 桃堂 純
司会者/青年: 凰羽 みらい
ウィリー : 天華 えま
ファニー: 白鳥 ゆりや
ベル・ワットリング: 天寿 光希
リンダ : 紫月 音寧
マリリン: 真衣 ひなの
ベティ : 逢月 あかり
駅員: 湊 璃飛
星組2番手、紅ゆずるさん率いる全国ツアー、全ツは過去の名作、だれもが知っているタイトルで・・というのが定着していますね。華やかなドレス姿と知名度の高いストーリーで初めての宝塚、かもしれない地方のお客様にアピール、という主旨からすると間違いではありませんし、古典作品の主役を務めることで、次期トップや2番手の男役に自覚と成長を促す、という意味でも良い興行なのかもしれません。
・・・が、凰稀さんのバトラーが未だ忘れられないわたくしとしては、他のスターのバトラーは観る気がしない・・・と主演が発表された時点では全く興味がわかなかったのが一転、チケット取りに本格的に乗り出したきっかけは・・・
琴スカ。下級生ながらも歌・ダンスに抜きんでた実力を有し、高身長の星男の中では小柄で可愛らしい丸顔の容姿が男役としては理想的とは言えないまでも、演技と男役芸にもメキメキと成長を見せている期待の逸材、礼真琴ちゃん
彼女が演じるスカーレットは?と、それを観るためだけでも、チケットを取る価値はある!といきなり前のめりに。
そして、振り分け発表された時点で盛り上がったのが、夢妃杏瑠ちゃんとみっきー(天寿光希)。実際とは逆の配役を想像して盛り上がっていたのですが・・・。杏瑠ちゃんのベル、みっきーのスカⅡ、のほうが良かったのでは・・・と思わないでもありませんが。
作品に関しては、宙組の大劇場、東京宝塚劇場合わせて15回は観ているので、とにかくその印象が刻み込まれていて・・・。全ツで、銀橋がないこと、舞台機構(盆、セリなど)が使えないこと、大階段が低いことなど、の制約から来るスケールダウンもありますが、舞台装置そのものがフラットなために立ち位置に制約が出て、スカーレットに帽子をプレゼントする場面でのバトラーの壁ドンが省略されていたり、メラニーの臨終後、バトラーをスル―してアシュレーに行くスカーレットで、奥まっていた宙バトラーの位置に対し完全に並列なのに気付かないわけないでしょう!と突っ込みたくなる仕様になっていたり・・・。
そこは全ツ版として致し方ないところではありますが、ちょっと衝撃的だったのがオープニングの場面の地味さ加減・・・。
宙では朝夏まなと、七海ひろきの長身男役スカーレットをセンターに、長身の宙組路線男役がずらりと取りまくというパッと華やかな幕開きだったのに対し、琴スカの押し出し(美女力、身長)が思いのほか弱く、取り巻きの青年も星組自慢の真風涼帆、まおポコ(麻央侑希、十碧れいや)がそれぞれ武道館ライブ、バウ公演に取られてしまい、上級生職人系か芸達者系の下級生が中心でなんだか・・・地味!
ただ、それを痛感したのは午前の部、で、午後は、琴スカの他の場面でもっと似合うドレスや鬘の姿も観て、可愛く見えるバイアスがかかってきたのと(笑)下手の方が美形が多かった、という単純な事実により、取りあえず解消。
その他、南部の青年たちが全般に地味、なのは半分の人数からのピックアップゆえに仕方ないとして、ちょっと残念だったのは、宙でNEWナンバーとして第二幕冒頭で使われたNEWジェネレーションがなくなってしまっていたこと。南北戦争後、新旧に分かれて価値観の対立を歌う南部の人々・・・の場面で、とても好きな場面だったので残念。
フィナーレショーは、やっぱりとてもステキ
これを観るだけのためにも通えるレベル。
とりわけ、タキシードジャンクションでの娘TOPポジに華やか美人の音波みのりちゃんが出てきたこと、セントルイスブルースでのみつるくん(華形)の花男スキル炸裂の粋さ、ナイトアンドデイの琴ちゃんの小生意気な可愛さとダンス!!
特にタキシードジャンクションのみつるくんは宙組より断然良い。宙組バージョンよりも圧勝と思ったのはここ。
こういう粋なアメリカンなダンスって、フレッド・アステアも決して大男ではないですし、このサイズ感と背中を向けたときの肩の角度とか、帽子のつばをさっと撫でるありがちな動きもその手をスライドさせるのに合わせてニヤリスマイルを入れてくるとか、みつるくん、本当に密度が濃くてステキでした・・・
後は個々に目立つところの感想を・・・
■レット・バトラー: 紅 ゆずる
VISUALはハマって良くお似合い。多分、植田伸爾先生、榛名由梨さんの演技指導が厳しく入ってと見えて、大げさ?な型芝居がしっかりと入っていて、台詞回しから目線の配り方までの作り込みが出来ていると思いました。
・・・が、一方でスカーレットをはじめとする他の生徒たちにはその指導を施す時間がなかったのか、割合他の生徒のセリフ回しがナチュラルなので、バトラーが悪目立ち?している感あり。
かなめバトラーがとびきり繊細でヨーロッパにお城を持っていそうな(笑)雰囲気だったのに対し、胡散臭さや品のなさも含めて寧ろ 映画のクラーク・ゲーブルに近いかも。ただ、ゲーブルにあって紅バトラーにないもの、それは余裕感。商売で上手く立ち回り、行動力もある一方で、スカーレットにはとことん惚れこんでいて、彼女の浮気を疑って荒れる場面の荒れっぷり、その後スカーレットの死を心配し、メラニーの死後、スカーレットがアシュレ―を求める姿に失望する流れの中で、完全に壊れたのは、実は2人の関係だけではなく、紅バトラーそのものなのではないか・・・と。
凰稀バトラーはもとより孤独な一匹狼で、それがふと心を寄せたスカーレットと生きて行くつもりで南部に腰を落ち着けたものの、やはり相いれないものを感じて再び一人に戻る・・というストーリーに見えたのに対し、紅バトラーは実は内面がもろくて繊細で、「壊れたものは壊れたものさ・・・」のセリフも、自分語りをしているように聞こえ。
「壊れたものをじっと眺めていたいんだ」のセリフでは、あぁ、紅バトラーが立ち直るまでには時間がかかりそうだなぁ・・と思ってしまいました。逆に琴スカは歴代一の立ち直りの早さのような気が・・・^^;
■スカーレット・オハラ : 礼 真琴
くるくると動く瞳と身体。クシャっと笑うと鼻に皺が寄るのと、「ばかばかしい」というところを「バカバカしッ」と短く早口で言ったりするのが現代っ子な感じを強めています。南部の令嬢、社交界の華かというとちょっと・・・というのはその部分かなと。
喪服で登場の場面、赤毛の厚い前髪を深く下ろして後は黒レースのベール、という鬘がその前髪の下で動く大きな瞳を引き立てて、とてもCUTE。小悪魔的な魅力が男性を惹きつける源だったのだな、という納得がいきました。
歌は圧巻。一幕最後のボロボロな姿でタラに帰り、母を探すもマミーにその死を告げられる場面、さすがは宝塚イチ「ママ」という台詞の似合う男役(笑)。これまでのスカーレットに感じたことのない、強い母への思慕が涙を誘いました。続く「明日になれば」の熱唱は圧巻。これだけで、神奈川に来た甲斐があると思わせるクオリティ。
根は純真な子どもの素直さ・清らかさを持ちつつ、現実的で、ヒトの痛みを理解できず、立ち直りは人一倍早そうな そんなスカーレット、でした。
慣れない娘役なれど、差し出された手に手を重ねるところとか、丁寧に所作に娘らしさを醸し出す意識が高いなと。杏瑠ちゃんと並ぶと娘役芸ってやっぱりキャリアの違いってあるのだなとわかりますが(笑)
ショーでの弾けた生命力溢れるダンス、CUTEな笑顔は絶品
■アシュレ・ウィルクス: 華形 ひかる
専科さんからのご登場。花組時代には感じたことがなかったほど、芝居上手で流石専科さん!とうなりました。
また、甘くて青年の爽やかさと湛えた風貌が年齢を経ても変わらず「世界の彼氏」との別名を持つ通り、スカーレットが無条件に憧れるのも納得のVISUAL.明るい黄色みの強い金髪が大変お似合い。
一方で、夢見る男というよりも、その知性から戦地に赴きつつも南部の敗北を状況的に予測できているのに、その諦念を押し隠して愛国的な南部の人々に同調し、かつ、スカーレットの恋心を知ってそれを利用してメラニーを託すなど、意外と現実的で打算的な一面も・・・。頭の回転が速そう。それだけに、メラニー逝去の後のスカーレットに甘える場面でずっと一緒に待っていたにもかかわらずその場にいたバトラーへの配慮のなさ、はちょっと疑問。まぁそれだけメラニーへの思いが強くて余裕がなかったのでしょうけれど。
先に書いてしまいましたが、フィナーレナンバーが絶品、でした
バトラーの演技指導にもれなく榛名由梨さんがクレジットされているように、これからセントルイスブルースを踊る男役はかならず華形さんにみてもらうと良いと思います。(真顔)
■ スカーレットII: 夢妃 杏瑠
今回のBEST3はアシュレー、メラニー、そしてスカⅡ.
杏瑠ちゃんの歌唱力、ドレスを着こなすスタイルの良さが100%活きていました!
杏瑠ちゃんってスタイル良いですよね。特にドレス姿の上半身はマネキン人形のように完璧。
琴スカも勿論歌が上手いので、この2人の「裏表」は至上最高かも?
娘役さんだけあってドレスさばきがとてもきれい。輪っかのドレスで流れるように動くのと、スカーレットの立場にたってその場の人々の言動に即応してくるくるよく動く表情が、小造りで控え目なお顔立ちのおかげで悪目立ちせず、まさに「影のスカーレット」
2幕最後でスカーレットが自分の気持ちに気付く流れ、2人が交互に前に後ろになってひとことずつ台詞を言うところ、琴スカは後ろから前に出てくる時、チョコチョコチョコ・・・と走り出て、そこから台詞、となるのですが、杏瑠ちゃんは前に出てくる時に腕を回して主張を強めるようなジェスチャーこみでの一連の動きとともに現れるので、流れがとぎれず、とてもスムース。琴ちゃんのチョコチョコ・・もとても可愛いですし、杏瑠ちゃんの優雅さも、それぞれの持ち味が楽しめます^^
色々な意味で、「娘役ってスゴイ」と実感できるスカⅡです。
■ベル・ワットリング: 天寿 光希
お芝居上手のみっきーならではのちょっと上品で自分を押さえて情感を秘めたベル。
もとは品の良い暮らしをしていたのであろうわけありマダム。色々な感情をあまりあらわには出しませんが、メラニーへの傾倒が、出会いでの握手、それを嬉しそうにバトラーに報告するさま、ウィルクス家を訪問して寄付金を渡すところなど、きちんと描いています。ただ、スカーレットへの対抗心、お金を渡して脚を組みかえてちょっとはすっぱに粋がるところなどに酒場の女の矜持と強さを見せていたオヅキベルに対し、おとなしい印象。
町のお歴々に突き飛ばされて転んだところも憤りというよりは自分の中で固まってしまっている感じ。
その辺りはそれぞれの役作りだなぁと興味深く思いますが、唯一つとても残念だったのは、ベルの独唱、「人は皆~さすらう旅人よ」のところ、口を大きく開けて正しい発声法を実行しているように見えるのだけれども、それが声として聞こえてこなかったこと。マイクの調子がおかしいのでは?とまで心配しました。
なんでもできる頼れる優等生のイメージが強いので、この聞かせる歌を歌えていなかった?キ―があわない?理由はさておき、とても意外で残念でした。
フィナーレの冒頭、娘役さんに囲まれての天寿・如月並び立って・・・の場面では活き活きと歌えていたので、やはり女役歌唱が難しい・・ということなのでしょうか?普通にルネあたりに配役されていた方が活きたかな・・・。
■メラニー・ハミルトン: 音波 みのり
はるこちゃん(音波)のBESTアクトではないでしょうか?
ドレス姿の美しさ、澄んだ声の美しさ、優しく微笑むお顔の美しさ、全てがメラニーという南部の理想的な女性を体現していた音波メラニーでした。
登場シーンの全てで目を惹き、役にぴったりと合った動きと表情、温かみもあり女性らしい優しさもたっぷりで、上品で、本当に良かったです。
今回お歌がなかったのが勝因かと言ってしまうとアレですが、この役を完璧に演じたことで彼女自身が娘役を全うしたと満足しきってしまったりしないかとハラハラするほど・・の出来でした。
星組において、本当に貴重なお芝居が出来て活き活きと踊れる美女。上級生になってますます可愛らしさに磨きがかかっているはるこちゃん、みつるくん(華形ひかる)との並びの美男美女感も素晴らしく、もし彼女が夢咲さん長期政権の星組ではなく花組に配属になっていたら・・・とたれればを考えてしまったほど、でした。
フィナーレのタキシードジャンクションで、黒と金のドレスで彼女が現れた瞬間の「美女キタ」感は、本当に・・・。
歌えないとなみちゃんみたいでした(褒めているのか?^^;いえ、美女でTOPオーラもあると言う意味で^^;)
■マミー : 美城 れん
汝鳥さんの皮膚のぶあつそうな、ちょっと愚鈍そうにみえて実は本当の意味での賢さのあるマミーよりも、ちょっと若いイメージ?気遣いが細やかで、全力で紅バトラーを心配して、普段からなにくれとなく面倒を観ているのだろうなと思わせる優しさのあるマミーでした。今回台詞を一部変えている?翻訳独特の黒人語「~ですだ」が少し減って普通の話し方になっている部分が増えたように感じたのは気のせいでしょうか?
■ピティパット: 毬乃 ゆい
可愛らしい大オバサマ。台詞回しも動きも上手いです。歌手なのにお歌がない役か・・と思いきやエトワールの歌手も勤めていらっしゃいましたね^^
■プリシー/令嬢 : 紫 りら
小柄で芝居上手なりらちゃん、宙のあきなちゃんは同じ小柄でもダンサー特有の針金とバネの細工の人形のような戯画化された動きがコミカルでアクセントになっていましたが、りらちゃんは素でかわいい少女、という感じ。
■ピーター: 輝咲 玲央
ピーターは一応プリシ―のお兄さん格で、イメージとしては少年から青年になったばかり、くらいの感じだったのですが、輝咲さんのお声がとても低くて、落ち着いているので、なんだかとても頼りになる忠義なベテランという感じ。
台詞回しもナチュラルで上手だなと思いました。
■ワイティング夫人: 大輝 真琴
今回まいける(大輝)が大活躍。夫人連の中でも一際パワフル、戦場のアルバイトでも熱く演技をしていて目を惹きました。南部の夫人連、宙ではベテラン女役の大海さんとか、美声で美女、長身の男役風羽玲亜ちゃんとか、個性的な風貌と強い眼力で宙のアクの強い役おまかせな天玲さんとか、のインパクトの強い奥様軍団に比べると、全体にソフトでナチュラルで大輝さん以外のメンバーがちょっとさびしかったかなと。
後は、南部の青年・令嬢では紫籐くんの爽やかな風貌、妃白ゆあちゃんの丁寧な演技と娘らしさが印象に残りました。
梅芸初日はかなり皆さん固い感じだったのが、だんだんほぐれて来た中日の神奈川、あと南下して最後は九州なのですよね・・・。お稽古期間が短かった分、公演毎に進化していくような気がして、千秋楽のあたりでどうなっていくのかがとても気になります