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お着物Enjoy生活からバレエ・オペラ・宝塚etcの観劇日記に...

2013年ベジャールバレエ団日本公演「ライト」

2013-03-30 05:48:30 | BALLET
モンテ・クリスト伯のムラでの初日(3/15)に行けなかったので、代わり(?)原作本を読み始めました。
岩波文庫で全7巻!
でも、これは流石は天下の大娯楽小説の古典だけあって、次はどうなるの!とついつい読み進めてしまい・・・。
なので、ブログを放置しておりました^^;

ベジャールバレエの感想が半分のまま!「ライト」についても残さなくては・・・。

ベジャール・バレエと言えば、小林十市さんが、4月からフランスに戻られるそうですね。
渡仏前最期のダンサーとしての公演「HamletParade」が2日間、27,28日に新宿であったようですが。
その前の「中国の不思議な役人」も観ておけばよかった・・・。
軽妙な語りと「ブログ・ジャンプ」が魅力的だったブログ「J11茶飲み話し」も3月31日をもって終了とされるそうです。
目白の御近所ネタなどもあって楽しく愛読していたのですが・・・。
2012年の秋に、フランスのバレエ教師の資格が取れたのを機に、ご家族のために(奥さまも元ベジャールダンサー、クリスティーヌ・ブランさん。8歳になるお嬢さんの正果さん)決心されたとか。
また、ベジャール・バレエ団とのコラボなど、舞台での小林さんを観られる機会がありますように。

さて、「ライト」
こちらは途中休憩なしの90分。
1981年、森下洋子さんのために振りつけられた作品ですが、なぜか、日本では未公開だったという幻の作品。
初日に行って参りました。

2013年3月8日(金)19:00開演 / 会場:東京文化会館


モーリス・ベジャール・バレエ団 2013年日本公演
<Bプロ>


「ライト」
振付:モーリス・ベジャール  音楽:アントニオ・ヴィヴァルディ、ザ・レジデンツ、タキシードムーン


ライト:カテリーナ・シャルキナ
女:エリザベット・ロス
ヴェネツィア:リザ・カノ
貧しき者(聖フランチェスコ):ジュリアン・ファヴロー
富める者(侯爵): ガブリエル・アレナス・ルイーズ
赤毛の司祭※:オスカー・シャコン(※ヴィヴァルディのあだ名)
ジラルーチェ: マルコ・メレンダ


7つの色:
那須野圭右、大貫真幹、ローレンス・リグ、エクトール・ナヴァロ、
ハリソン・ウィン、ウィンテン・ギリアムス、ドノヴァン・ヴィクトワール

プルチネッラ:アンジェロ・ムルドッコ、ジャスミン・カマロタ、コジマ・ムノス

デュエット:大貫真幹、ローレンス・リグ

他、ベジャール・バレエ団



◆上演時間◆ 90分(途中休憩はありません)


内容・感想は後ほど。。。



2013年モーリス・ベジャール・バレエ団日本公演「ボレロ」他

2013-03-05 14:13:49 | BALLET
3月1日から10日まで、東京文化会館で8公演が行われるBejart Ballet Lausanneの来日公演です。

A、B、2種類のプログラムのまずはAプロ。
2013年3月4日(月)19:00~
上野の東京文化会館に行って参りました。

今回の目玉?は、ジュリアン・ファブローが初めてのメロディを踊る「ボレロ」
ベジャール・バレエ団の押しも押されぬ中心人物、スターダンサーとして揺るぎない信頼を得ているダンサーですが、ボレロの円卓の上、1人踊る「メロディ」としてベジャールさんから指名されることはなく・・・。
過去には映画「愛と哀しみのボレロ」での名演でこの作品の代名詞ともなっているジョルジュ・ドン、を始め、シルヴィー・ギエムなど、名ダンサーが任されてきましたが、ベジャールバレエ団内では、今回も踊る、女性のエリザベット・ロスや他にもカトリーヌ・ズアナバ―ルらも踊りましたし、東バでは、上野水香さんや後藤晴雄さんも指名を受けて踊ってきたことを考えると、その基準は?と首をかしげたくなりますが・・・。
多分ジュリアンはあまりに健康的なのかも?ちょっと魔性というか、シャーマン的なものが求められるのかも、とは思いますが。

本人はそれは踊りたかったと思います・・・。
ということで、満を持しての彼の「MELODY]を目当てに選んだこの日、ですが、同時に上演された2作品もそれぞれに面白く・・・。
ベジャールさんが2007年に亡くなってもう5年。ジル・ロマンの体制のもと、ベジャール作品を守るだけでなく、ジルによる新作の発表など、この先このバレエ団はどうなっていくのか・・と退団者が相次いだ時期には不安に思ったこともありましたが、今回のベテラン、新人ともにベジャールバレエ団ならではの魅力を発散させてくれた今夜の舞台を見て、なんだかホッと安心するものがありました。

それは、ジルの新作が、べジャ―ルさんのCOPYや焼き直しではなく、彼独自のアイデアで魅力的に彩られていて、しかもベジャールダンサーにぴったりだったから!

では、個々の感想を・・・。

2013年3月4日(月)19:00開演 会場:東京文化会館



モーリス・ベジャール・バレエ団 2013年日本公演
<Aプロ>


■「ディオニソス組曲」
振付:モーリス・ベジャール  音楽:マノス・ハジダキス

ディオニソス: オスカー・シャコン
ギリシャ人: マルコ・メレンダ
ゼウス: ハリソン・ウィン
セメレー: ポリーヌ・ヴォアザール
マヌーラ・ムウ*: リザ・カノ(*ギリシャ語で"私のお母さん"の意)

タベルナ(居酒屋)の人々
ギリシャの女: リザ・カノ
上流社会の婦人: マーシャ・ロドリゲス
アナーキスト: フロレンス・ルルー=コルノ
娘: キアラ・パペリーニ
二人の水夫: 那須野圭右、ヴィタリ・サフロンキーネ
労働者: フェリペ・ロシャ
ジゴロ: ローレンス・リグ
学生: ウィンテン・ギリアムス、エクトール・ナヴァロ
船長: アンジェロ・ムルドッコ
ならず者: ファブリス・ガララーギュ
ギリシャの農民: ホアン・ヒメネス
若者: 大貫真幹
他、モーリス・ベジャール・バレエ団

横尾忠則の大きな抽象画をセンターに据えた舞台で、
ギリシアの人々が互いに行き来し様々なドラマが繰り広げられる・・という場面と、男性ダンサーが輪になっての”ダンス・バトル”的な祝祭場面で構成された、「ディオ二ソス組曲」。
1984年に初演された、ワーグナー、コジマ、ニーチェの関係性を描いた大作のギリシャ的エッセンスだけを抽出したものとして1985年に発表されたものだそう。
ベジャール・バレエ団の男性ダンサーが踊りたい曲NO.1なのだそうですが、これは後半のダンス・バトルがまさに古代から続く「祝祭」の熱を帯び、円陣を組んだメンバーのその中心に踊り出て、ファナティックな野性的なダンスを見せる・・・・という「オトコ祭り」ゆえそれは踊っていても楽しいであろう(笑)と納得。
赤い、たっぷりとしたドレープで太腿の部分が大きく、膝下がスリムになったパンツだけを着用しているダンサーたちが、古代ギリシャのフォーン(半神半獣の牧神)のように見えるところがポイントか。
衣装はヴェルサーチなんですよね・・・。
「娘」役のキアラ・パペリーニの黒いクチュールっぽいピッタリしたノ―カラ―ジャケットにひらひらした黒白プリントのマーメイドタイトが彼女のパンッと若々しく張り詰めたゴムまりのような肢体を惹きたてているところとか、アナーキストのルルー・コルノの濃紺の柔らかなハリのある素材のビッグシルエットのトレンチ風コートとか、80年代のヴェルサーチのエッセンスが凝縮されていて、とても懐かしい気分が蘇りました^^
個人的には、ゼウスとセメレ―の場面、白いユニタードの長身の2人が美しく、印象的。
この上半身は細いストラップで背中の開いたキャミソール状で足首までのタイツで真っ白・・・の衣装ってとてもベジャール的で、それにキチンとした目鼻立ちがくっきりとして見えるメークに金髪の夜会巻き・・・ベジャール・ダンサーだなぁとタメ息。
金髪に白肌長身のダンサーもいれば、ラテン系の筋肉質のブルネット、黒髪を艶やかになでつけた黒人、ナチュラルメイクでストレートヘアの日本人など、国籍・人種は様々なれど、皆、どこか面長でくっきりした目鼻立ちですらりと伸びやかな筋肉質の体型を持ち・・・というベジャール・ダンサーの風情を纏っている。
ベジャールさんが亡くなっても片腕だったジルのもと、バレエ団が存続してることの意味を嬉しく確認したオープニング、でした。

-休憩-


■「シンコペ」
振付:ジル・ロマン  音楽:シティ・パーカッション

序曲: ガブリエル・アレナス・ルイーズ-エリザベット・ロス
水滴の踊り:
カテリーナ・シャルキナ-オスカー・シャコン
キャサリーン・ティエルヘルム-ホアン・ヒメネス
シモナ・タルタグリョーネ -マルコ・メレンダ
リザ・カノ-イケル・ムリーリョ・バディオラ
フロレンス・ルルー=コルノ-ウィンテン・ギリアムス
ソロ: ガブリエル・アレナス・ルイーズ
トリオ: カテリーナ・シャルキナ-オスカー・シャコン-ホアン・ヒメネス
パ・ド・ドゥ: アランナ・アーキバルド-ガブリエル・アレナス・ルイーズ
パ・ド・ドゥ: カテリーナ・シャルキナ-オスカー・シャコン
白衣の踊り:
キャサリーン・ティエルヘルム、シモナ・タルタグリョーネ、フロレンス・ルルー=コルノ、
キアラ・パペリーニ、リザ・カノ、イケル・ムリーリョ・バディオラ、マルコ・メレンダ、
ウィンテン・ギリアムス、ホアン・ヒメネス
パ・ド・ドゥ: コジマ・ムノス-アンジェロ・ムルドッコ
若者の踊り:
ガブリエル・アレナス・ルイーズ、オスカー・シャコン、イケル・ムリーリョ・バディオラ、
マルコ・メレンダ、ウィンテン・ギリアムス
ソロ: エリザベット・ロス
フィナーレ:全員



ドラマの効果音のような断続的な音楽をバックに、不可思議でユーモラスな世界が展開します。
ジル・ロマン新監督の新作は、ベジャールバレエ団に振りつけた前作「アリア」の闘争と衝突のテーマとは打って変わって軽快で日常生活からちょっとズレた世界。

ガブリエル・アレナス・ルイーズが、50年代のアメリカンコミックにでてくるひきこもり気味のマザコン少年のような風情。目を見張り、膝を抱えて安楽椅子に吸い込まれる半袖シャツに短めチノパンの主人公。
しゃなりしゃなりと頭にかぶったおドンブリのような帽子を時折点灯させつつつ、息子?の安楽椅子をナースが車椅子を動かすように押しながらも白のパイピングの紺のクロップトパンツとジャケットで、まるで、ランウェイを歩くモデルのようなエリザベット・ロス。
そこに、白いトランスペアレントな軽快な衣装の男女の群舞が現れては消え・・・。
トリオやパ・ド・ドゥで中心的な役割を演じるカテリーナ・シャルキナが金髪を眼の上で切りそろえたロングのポブで、柔らかな赤口紅でなんともコケティッシュ。今最旬のモデルのミランダ・カ―のような愛らしさ。
彼女ってこんなにカワイイキャラクターだったかしら・・・?
それをいうなら、G・A・ルイーズの首をちょっと前に出してびっくりしたような表情を顔に張り付けた少年はどうでしょう?
いえ、彼は前回の来日ツアーで観た時には、一応イケメンダンサーズの部類にカテゴライズしていたもので・・・・^^;

ベジャールさん亡き後、求心的なカリスマを失って、団を離れるダンサーも多かったけれども、カトリーヌ・ズアナバールのようなベテランも残り、ガブリエルやカテリーナのような若いダンサーが頭角を現し、個性を発揮している姿を観ると、新体制のベジャールバレエ団が、ベジャールの遺産を大切に守るだけでなく、健康的に生きて、進化している有機体であるのだなぁと。
そんな確信を与えてくれた、ジル・ロマンの新作でした。
そして、嬉しいことに、彼の作風はべジャ―ル作品とは全く異なる個性を持ちながら、べジャ―ルダンサーに良く似合います!

-休憩-

■「ボレロ」
振付:モーリス・ベジャール  音楽:モーリス・ラヴェル

メロディ: ジュリアン・ファブロー
リズム: 那須野圭右、マルコ・メレンダ、アンジェロ・ムルドッコ、イェー・ルッセル
他、モーリス・ベジャール・バレエ団

協力:東京バレエ団、東京バレエ学校

ジュリアンが本当に体を絞っていて、この作品のセンターを踊ることへの意気込みを感じました。
孤高のカリスマや憑依する巫女のようなタイプではなく、どちらかというと台の下で盛り上げるリズムのリーダー的存在、「良い兄貴」のような彼は、台の上からリズム隊を煽り、呼びかけ、最後は一体となって燃え尽きようとする祭の神輿の上にいるような存在感でもって、ジュリアンのメロディを見せてくれました。

基本ベジャールバレエ団の男性舞踊主が台を囲んでリズム隊を構成しているのですが、人数が足りなかったのか、勉強のためなのか、東京バレエ団のソリストクラスが後方に配されていて、センターにいる長瀬くんが目立っていました。
ところで、彼は東バの公式サイトのダンサーリストに載っていないのですが、いつ退団されたのでしょう?
このところ、松下・高橋と実力派の男性ダンサーの退団が続いている東バですが、オネーギンでレンスキー役にクレジットされていたほどのクラスにいた長瀬くんまで・・・。ちょっと心配です@@


※音楽は特別録音によるテープを使用。


◆上演時間
「ディオニソス組曲」 19:00 - 19:55
休憩  20分
「シンコペ」 20:15 - 20:55
休憩  10分
「ボレロ」 21:05 - 21:25

※終演後に芸術監督ジル・ロマン、「ボレロ」主演のジュリアン・ファヴローによるポストトークがバレエ評論家の佐藤友紀さんの司会で開催されました。
10時まで、という会場の都合で、とても巻きが入っていましたが、「シンコぺ」日本初演なのに舞台に姿を見せなかったジル・ロマンの姿を観られて良かったです。
ただ、今回のトークは火曜日と2夜連続の企画ゆえ、「シンコぺ」については明日・・・と振られていて、ジルの口から自作の作品についての解説を聴きたかったわたくしとしてはちょっと残念でした^^;


◆◇----------------------------------------------------◇◆


「ディオニソス組曲」 より バレエ作品には珍しく、台詞のある場面があるのですが、
その台詞の対訳が当日のCAST表の裏面に載っていました。
哲学的・神話的、かつ、地中海人的な、実にベジャールさんらしい一節だと思いましたので、転記しておきます^^

タベルナ
ヤーサス※1!ティカニス※2......カラ※3?
われらギリシャ人、われらには必要なのだ...
ワインが、音楽が、太陽が、海が、そしてわれらの神々が必要なのだ。
ご存知か、ギリシャの古代の神々は、一度もわれらの国を離れたことはない。
とくとご覧あれ、神々はわれらと共にいる。どの村にも、どのタベルナにも、
どのダンスのなかにも!
神々は永遠に生きているのだ!

※1ギリシャ語で"こんにちは"の意
※2ギリシャ語で"お元気ですか"
※3ギリシャ語で"元気?"

パ・ド・ドゥ「ゼウスとセメレー」
神々の王であるゼウスは、人間に姿を変えている。
だが彼女、人間の女である彼女は、神に会いたがる。
彼は拒否する!
でも一人の女が、一人のギリシャ人の女があることを望むとき...
彼女はその愛のために命を奪われ、雷に打たれる。
でもその子どもは永遠に生き続ける。

ディオニソスよ!


IBC ガラ

2013-03-04 05:10:09 | BALLET
元・東京バレエ団プリンシパルで、現在バレエスタジオとカンパニーを主宰していらっしゃる井脇幸江さん、
2012年12月のゆうぽうとホールでの「ジゼル」全幕に続いてのカンパニーの今回はGALA公演、ということで、新宿文化センター大ホールへ行って参りました。

井脇さんの豊富な人脈がそのまま・・・のバラエティに富んだ布陣で、モダンありコンテンポラリーの新作あり、クラシックあり・・と飽きさせない意欲的な内容の濃いGALAで、オープニングとフィナーレの構成にもこだわりが^^
照明や衣装もセンス良く、楽しい一夜でした。
「一夜限りの・・」と銘打っていらっしゃいましたが、国内の私設のバレエ団で発表会形式でなく、商業的な公演を実質的に打てるバレエ団は限られている実情もありますが、それを乗り越えて是非!続けていただきたい企画だと思いました。

2013年3月2日(土)19:00~

IBC(Iwaki Ballet Company) GALA

【第1部】

■「チャイコフスキー・スイート~opening~」
振付:西島千博(振付補佐:井脇幸江)
衣装: DRESS705

プロローグ(ゲスト出演者全員)
Ⅰ.「エレガンス・イン・ザ・パッション」(チャルダッシュ)
 柴田有紀/正木亮/IBCメンバー
Ⅱ.「ネオ・ロマンス」(パ・ド・ドゥ)
 井脇幸江/西島千博
Ⅲ.「クラシカル・アンド・ニュー・ステップス」(コーダ)
 井脇幸江/西島千博/IBCメンバー

シャンデリアのようにも街灯のようにも見える段違いに配された照明だけがSETの簡素な舞台に
ゴージャスなシフォンフリルが連なるロングチュチュ?テールの長いデザインのスカート部分・・・にシンプルなベアTOPのお衣装。羽根飾りのヘッドドレス、チョ―カ―状に配された黒リボンが首元に・・・というスタイルの女性陣。幸江さんが黒で、他の方はチャコール、シルバーの濃淡グレー。
4人の若手(Kバレエ、元・東バなど)男性ダンサーがそれぞれのバレリーナさんのエスコートを務め、井脇さんの相手役の西島さんは、ロングヘアーをひとつにまとめたヘアスタイルにノースリーブのロングテールジャケットというこだわりのスタイル。
このプロローグは西島さんがプロデュースされた、とのことで、とても華やかでミュージカルかショーか・・という、でもとても大人っぽくてスタイリッシュな幕開けでした。
ちょっとオーストラリア・バレエ団の演出に似た匂い?(笑)を感じ、期待が高まります。

■「Wings to Fly」(新作)
振付: 小尻健太
音楽: ニルス・オークランド、J.S.バッハ

わ、小尻健太さんってローザンヌでスカラシップ賞をとられたとき以来。あれって1999年なのですね・・・。
コンテンポラリーで清冽な踊りをする人だ、と印象に残っていました。
すっかり大人になられて・・・って当たり前ですが(笑)
NDTでキリアン作品を踊っていたんだ・・・今はフリーランスで金森譲さんと踊ったり・・なるほど。
で、ご本人の新作の自作自演。
とてもポジティブな自分探し、という感じの作品で、爽やかな作風。

■「リベルタンゴ」
振付: Karina Sarkissova
音楽: アストル・ピアソラ
針山愛美/ライナー・クレンシュテッター

ベルリン国立バレエ団からゲストのお二人。
針山さんはボリショイバレエスクールを首席で卒業後、海外でずっと御活躍ゆえ、なかなか噂には聞けどもお姿を観られず・・・のバレリーナさんゆえ、IBCで観られて本当にラッキー。
ほっそりとした手足の長いエレガントなダンサー。小顔でお雛様のような小作りなお顔立ちがCUTE。
クレンシュテッタ―さんは「マラーホフの贈り物」で来日されたときのスキのない精緻な踊りが思い出され、期待大のペア。
これは作品としても面白く、バレエダンサーがタンゴを踊ったら・・・という妄想?を形にして見せてくれた作品で。
タンゴの粋さとバレエの浮遊感の融合とでも申しましょうか・・・美しかったです

■「海賊」よりグラン・パ・ド・ドゥ
原振付: マリウス・プティパ
音楽: ルドルフ・アダン、レオン・ミンクス
柴田有紀/浅田良和

元Kバレエソリスト、IBCの講師としても御活躍の柴田さん、元Kバレエソリストの浅田さんのペア。
浅田さんはテクニックと勢いのある若手ダンサーでそのやる気満々なテンションの高さが清々しい。
柴田さんは、ちょっと表情が硬いかな?と気になっていたら、フェッテの見せ場で2度ほど確かめるようにトライしたあと、あきらめてその数小節を流してしまわれたので、すわ、捻挫?と心配になりました・・がコーダはきれいに決めていらして、ホッ。また、万全の状態でいらっしゃるところを拝見したいです。


■「眠れる森の美女」よりグラン・パ・ド・ドゥ
原振付: マリウス・プティパ
音楽: ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
井脇幸江/菅野英男

うーん、フレッシュなバレリーナの専売特許のような演目を敢えて大人なお二人が・・・。
ちょっと意外でしたが美しかったです。キラキラしていらして、少女マンガの主人公のような幸江さん。
ピーチピンクのお衣装にWのティアラがステキ。
照明も心なしかピンク味をいれていて、華やいだムードが
菅野さんは新国立のファーストソリスト。落ち着いた雰囲気の安定感ある王子でしたが、GALAのためのペア・・の限界か、フィッシュのポ―ス3連発のラストはきれいに成功したのは最初だけで、あとはちょっとなんとか、という感じも。
もっとおふたりで躍り込むお時間があれば・・・・と。そこだけ少し残念でした。
幸江さんは、改めてクラシックのチュチュ姿がとても美しく、とりわけアームスの手首から先の表情がとても繊細。
この手の美しさ、壊れやすい陶器のような繊細さ加減は東バの小出領子さんが随一だと思っていたのですが、幸江さんもそうだということに今更のように気付きました^^;

< 休憩15分>

【第2部】

■「Doctor Doctor!」(新作)
振付: 高橋竜太
音楽:ジョルジュ・ビゼー マイケル・シェンカ―
衣装: 中島美保子

Lady: 美踊 Gentle,man: 氷室友
Doctor: 高橋竜太 Nurse: 工藤加奈子 IBCメンバー

元・東バで、ベジャール版「くるみわり人形」のビムなど、飄々とした持ち味の高橋さん、退団後の活動が気になっていたところでの振付作品で、興味駸々。
これは2人の男女の恋愛・・を精神的なトラウマ、脅迫観念などが邪魔しつつも精神科医の助け(邪魔?)もあって最期HappyEnd・・という流れで良いのでしょうか?
コンテンポラリーの新作の筋をたどろうとするのも野暮ですが、なんとなく^^;
ヒロインがブルーにアシンメトリカルな位置に配された隠しフレアーの布が白、群舞はその逆の配色の構築的なデザインのAラインのワンピースに自在に小道具にもなる赤いスカーフが舞台に映えます。
カルメン、アルルの女をモチ―フにしたモダンバレエパートと、Mシェンカ―の音楽に切り替わってのストリートダンス系のパ―トがムリなく融合。ドクターに会うとき、案内の看護婦のポニーテールを呼び鈴かわりに鳴らしたり、医者の肩を掴んで揺さぶっているつもりが、いつの間にかスルリと本体がぬけ出して白衣だけがそのままの形で手に残っていたり・・・。
様々なアイデアが巧まざるユーモアに昇華していて、観ていて楽しいチャーミングな作品でした。
一方で、ブレイクダンス的なパートでは目まぐるしくフォーメーションを変えながらも丹田の位置が空中で固定されているように見える・・など、観ていてカッコいい!と思えるショーアップされたセンスもあり・・・
で、思ったのですけど。いつか、タカラヅカの振付をしていただけませんでしょうか、高橋さん!(突如ヅカオタ発言
東バの氷室さんが、いつもとちょっと違ったキャラクターを演じていらして新鮮でした

■「シンデレラ」(マラーホフ版1幕より)
振付: ウラジーミル・マラーホフ
音楽: セルゲイ・プロコフィエフ
針山愛美/ライナー・クレンシュテッター

美しい・・・実に美しい作品でした。
プロコフィエフの音楽も大好きなのですが、落とした照明に映える、シックなお衣装・・ブルーグリーンのチュチュの内側に仕込まれたダークパープルのぺチにダークブルーの胴着部分・・・もさることながら針山さんのなめらかで長い手足を自在に使った表現が優美。
なかなか日本で観られないのが本当に残念なダンサーですね。

■「Lilly」
+81 青木尚哉/柳本雅寛

初めて見たダンスユニット。
横たわった相手の頭、両手を検死するように持ち上げてポトッと落とすゴン、と音がなる、それをリズミカルに繰り返すところから始まるプロローグを見たところでお隣の方が(知らない方)ボソッと「あ、これ観た・・・」とつぶやかれたので、ダンスファンにはある程度知られた存在なのかも。
2人で身体でかわす会話のようなやり取りがまるで漫才のように思えてくる、新鮮なユーモア感覚に溢れた小品。
面白かったです^^

■「Home」(新作)
振付:篠原聖一
音楽: ガブリエル・フォーレ、クリント・マンセル
井脇幸江/菅野英男

情感溢れるモダン。ブルーの濃淡の簡素な衣装で夫婦の別れ?と失ってわかる喪失感・大切なものをあらわしているのだそうですが、しみじみとしたチェロの音楽も相まって安らぐ感じ。


■「ドン・キホーテ」よりグラン・パ・ド・ドゥ
原振付: マリウス・プティパ
音楽: レオン・ミンクス

グラン・パ・ド・ドゥ: 米澤唯/厚地康雄
第一バリエーション: 工藤加奈子
第二バリエーション: 松村みどり
IBCメンバー

新国立バレエの、米澤さんはソリスト、厚地さんはファースト・ソリストの華やかなお二人。
厚地さんは、お正月のキエフ・バレエの来日公演で、吉田都さんのパートナーを務めていらしたのですね。
長身で白いお衣装なので、バジルというよりはエスパ―ダ、という印象。
米澤さんは、このところ新国立バレエ団の公演を観ていないので初見、だと思うのですが、驚くほど見せ方が上手い魅力的なバレリーナ。
テクニックが素晴らしいのですが、それを技のオンパレード、新体操?というような方向性ではなく、美しく、ためるところはキチッとためて見せ場を明確に見せるところが若さに似ず?とてもプロフェッショナルな印象を受けました。
とりわけフェッテで脚をダブルやトリプルにするだけでなく、扇を頭上からひらひらと大きくおろしながら・・・というアレンジがとてもきれいで印象的でした。
IBCメンバーから抜擢されてヴァリを踊ったお二人もフレッシュで、特に松村さんは踊りのディテールがきれいで目を惹かれました。

■「フィナーレ」出演者全員

最期までスタイリッシュで笑顔が満開の舞台。
こういう、新進気鋭の振付家が作品を見せる場でもあり、モダンとクラシックのバレエ作品を現代的(モダンに落としこんだ、という意味ではなく)な美意識で構成したプログラムとしてバレエファンも納得する公演を、海外のスターダンサーを座長とした企画公演以外で観られる機会はそうないと思います。

キリアン、ノイマイヤー、ベジャールなど、錚々たる振付家とのコラボレーションの機会を持ち、古典全幕で重要な役を担い続けてきたキャリアを持つ井脇さんならではのGALA公演、今後も続きますように