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2021 四月大歌舞伎「桜姫東文章」

2021-04-23 03:03:44 | Musical
2021年4月21日(水)歌舞伎座、第三部「桜姫東文章」
行って参りました。

前半後半、2回に分けて、後半を6月上演予定という形式で。
玉三郎、仁左衛門での上演は36年ぶりとのことで、話題の作品です。

わたくしは、2004年の玉三郎桜姫、清玄・権助を段次郎、残月が今回と同じく歌六、葛飾のお十を春猿、粟津七郎を門之助で観ており、その時も、お姫様のUPDOWNの激しい奇想天外なピカレスクロマンに度肝を抜かれ、これは再演するなら必ず観たい!と思っていた演目。

である上に、今回は、大好きな仁左衛門様と玉三郎様の並びで観られるというこの幸せよ・・・。

記事にしそびれてしまいましたが、2月にも「於染久松色読販」の悪党夫婦、そして「神田祭」の粋で清々しいカップルの踊りを堪能しており、やはり、わたくしにとっての歌舞伎は「玉孝」なんだなぁと。

さて、この「桜姫」、
鶴屋南北の悪の華が咲き誇り、美しい姫が転落する様を華麗に見せて飽きさせない、そのストーリーとは・・

清玄/釣鐘権助 片岡仁左衛門
入間悪五郎 中村鴈治郎
粟津七郎 中村錦之助
奴軍助 中村福之助
吉田松若 片岡千之助
松井源吾 片岡松之助
局長浦 上村吉弥
役僧残月 中村歌六
白菊丸/桜姫 坂東玉三郎 

「江の島稚児ヶ淵の場」からのスタート。
美しい僧侶清玄と、稚児の白菊丸が心中を決意して、香箱の蓋と本体にそれぞれの名前を入れて持ち、当に飛び込み自殺を図ろうとする場面です。白菊丸が飛び込むも、清玄は怖気づいてしまいます・・・。

そして時は流れて17年後、「新清水の場」
清玄は高僧となりました。今や、鶴岡八幡宮の阿闍梨。
一方、父と弟と家宝を失い、賊に襲われその子を密かに産み落とす・・・というずらりと居並ぶ腰元たちにかしづかれる美しいお姫様にしては過酷な人生を既に歩んでいる桜姫。出家を希望して高僧清玄に十念を授けられますと、生まれたときから開かなかった左手が開き、香箱の蓋が・・・。
それを観た清玄は桜姫が白菊丸の生まれ変わりと確信。
一方で、お家乗っ取りを企む一派、松井源吾と左手が解けた桜姫を妻にと文を用意する悪五郎が、桜姫の父と弟梅若を手にかけて家宝都鳥の一巻を奪った実行犯、釣鐘権助(じつは信夫の壮太)に文を託す。

「桜谷草庵の場」
権助が向かったのは、剃髪の準備をする桜姫のいる草庵。
話の流れで腕まくりした権助の釣鐘の入れ墨をみたとたん顔色を変えて皆を下がらせる桜姫。なんと、同じ入れ墨をわたくしも・・・とお姫様が腕まくりするとそこに釣鐘、という衝撃の展開。更に、手籠めにされたとき、その男が忘れられず、手がかりを自らに彫ったという更なる衝撃。
にやりと告白を聞き悪い顔をする権助。姫の胸元に手を差し込み、帯を解く・・・という様式美の型の中に濃密な色気が立ち上ります。
ここ、型の美しさと悪い男と崩れ落ちる姫の妖艶さが見事に両立し、客席の息を奪う様、さすがのお二人・・・と。
御簾が落ち、そこから姫の着物の裾がはみ出ているのがなんとも想像力をかきたてます・・が。清玄の寺の後釜を狙う僧侶残月と密会を重ねていた腰元長浦が通りかかり、御簾の隙間からのぞき見るが、この時、長浦に書かされた起請文が落ちたのに気づかない。
戻らぬ権助にしびれを切らして草庵に踏み込む悪五郎と源吾。
権助は素早く逃げおおせ、残されたのは恥じ入る桜姫ひとり。
そこに、剃髪のために清玄一行も現れる。桜姫をかばう清玄に、先程左手が解けた時に転がり出た香箱に書かれた清玄の名を持ち出して、相手は清玄ではと疑いがかかる。
白菊丸との縁から、否定できない清玄と、権助をかばって真実が言えない桜姫。
これに乗じて清玄の後任を名乗り出る残月だが、起請文を拾った忠義な家臣粟津七郎により、長浦との不義が露見し、追放されます。

「稲瀬川の場」
稲瀬川堤で、百杖の刑を受ける桜姫と清玄。
赤い衣の姫君と、高僧が公開処刑を受ける、これまた衝撃の場。
そこに、長浦がひそかに預けていた権助との赤子を、この先施しを受けるにも子供連れの方が実入りが良かろうと身もふたもない理屈で桜姫におしつける百姓夫婦。哀れに思って布施として薬を与える清玄。白菊丸=桜姫との思いから、かくなる上は夫婦にと、数珠を切るという破戒行為を。
自らのせいで巻き添えに・・・と申し訳なさでいっぱいだった偉大な僧の思わぬ変身に驚愕する桜姫。そこにしつこい悪五郎が現れて赤子を奪い、七郎がそれを追いかける。源吾が桜姫を連れ去ろうとすると清玄との争いとなり、桜姫のちぎれた片袖とともに稲瀬川に転落する清玄。七郎との書状の奪い合いで赤子を置いていった悪五郎。岸に這い上がった清玄がその赤子を見つけて桜姫を見つける手立てにと連れて行く。

「三囲の場」
都の外れのうらぶれた三囲神社。春雨の夕暮れ時に、赤い振袖にくるんだ赤子をあやしながら、物思いにふける清玄。暗闇迫る中、そこに通りかかった桜姫、赤子の泣き声を耳にして、乳を与えようかと思うが、鳥居にまで尋ね人の人相書きが貼られる身故、そうもいかない。
くすぶる焚火の跡と破れ傘を見つけた清玄、せめて衣を乾かそうと火をおこす。その破れ傘に書かれた恋歌を読む桜姫。清玄からもらった薬をせめてもと投げよこす桜姫。その袱紗を観てもしやと思う清玄だが、その瞬間火が消えて、暗闇の中すれ違っていく二人・・・・。

と、ここまでが上段。下段は6月。楽しみです!

しかし、お二人とも、70過ぎにはとうてい思えない若々しさ、瑞々しさ。
玉三郎の可憐なお稚児と姫君。
片肌脱いで肌を魅せてもなお清潔感のある仁左衛門。
また、それぞれが演じ分ける、愛ゆえに、絶壁から身を投じることも厭わないまっすぐな稚児、世間知らずのようでいて、それゆえに大胆な姫。
若き美青年である僧侶、立派な阿闍梨として多くの僧を従え、仏門を極めた高僧、そして愛欲故に身を持ち崩す転落の破戒僧、赤子を連れてなすすべなくうらぶれた姿・・・と、悪事の相談を聞きとがめられるや、かんたんに首をひねって端女を殺すことも朝飯前の悪党ながら姫を前ににやりと笑う色悪としての顔も持つ悪党の極端な2役。
なんとも演者の魅力と力量が迫る演目であり、舞台も、桜咲く春爛漫の寺、草庵から、罪人をさらし者にする川べり、そして街外れの雨の神社の闇の深さ。。。と、華やかな表舞台と陰影深い業の世界と、光と闇を極端に描き出す南北の世界を駆け巡るこの演目。通しで見るとアップダウン、そしてアップのジェットコースター振りの凄まじさに目がくらくらするのだけれど、今回は2回にわけて、その世界観をじっくりと味わう趣向故、6月大歌舞伎のチケットも必ずや確保しなくては、と誓って客席を後にしたのでした。

今回、開演前と幕間に、イヤホンガイドで玉三郎、仁左衛門それぞれのインタビューが聴ける趣向との情報を得て、普段は使わないイヤホンガイドを借りたのですが、おふたりの役への想い、また、互いへの感想などが・・・
若い頃は、役の解釈について、幕が引けたらすぐに言い合いをしたり、ということもありましたが、今は阿吽の呼吸で・・・とおっしゃる仁左衛門様のお言葉が聴けたので、満足です^^





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