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お着物Enjoy生活からバレエ・オペラ・宝塚etcの観劇日記に...

マリインスキー・バレエ2012 ロパートキナの「白鳥の湖」

2012-11-29 01:43:00 | BALLET
マリインスキーの、いや、バレエ界の「至宝」と言われる
ウリアーナ・ロパートキナの決定版「白鳥の湖」を11月27日、東京文化会館で観て参りました。



何度目・・でしょうか。
マリインスキーのJapanTourの度にチケットを取り、そして急遽プーチンの式典で踊るように要請されたから・・などなどの理由で来日中止になったことなど何度もあり、幻のバレリーナだった彼女の「白鳥の湖」を初めて見たときの衝撃といったら・・・

それ以来、どの名ダンサーの「白鳥」も、どこか世俗的だったり優美さに欠けているように感じたり、で、受け付けなくなってしまったほど・・・・(唯一の例外はアニエス・ルテステュです。彼女の白鳥の造型は、クールな中に情感があって好みなので)

何度も観ている彼女の「白鳥」ですが、この日の出来栄えは一際!素晴らしかったと思います。


チャイコフスキー ≪白 鳥 の 湖≫ 全 3 幕 4 場
2012年11月27日(火)6:45p.m.~9:45p.m.
東京文化会館にて

音楽: ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
振付: マリウス・プティパ,レフ・イワノフ
改訂振付: コンスタンチン・セルゲーエフ
台本: ウラジーミル・ベーギチェフ,ワシーリー・ゲーリツェル
装置: イーゴリ・イワノフ
衣裳: ガリーナ・ソロヴィヨワ
指揮: アレクセイ・レプニコフ
管弦楽: マリインスキー劇場管弦楽団

< 出 演>
オデット/オディール: ウリヤーナ・ロパートキナ
ジークフリート王子: ダニーラ・コルスンツェフ
王妃 (王子の母) : エレーナ・バジェーノワ
王子の家庭教師: ソスラン・クラーエフ
道化: ワシーリー・トカチェンコ
悪魔ロットバルト: コンスタンチン・ズヴェレフ
王子の友人たち: エカテリーナ・イワンニコワ、 アナスタシア・ニキーチナ、 アレクセイ・ティモフェーエフ
小さな白鳥: エレーナ・チミリ、スヴェトラーナ・イワーノワ、アンナ・ラヴリネンコ、エレーナ・フィルソーワ
大きな白鳥: アレクサンドラ・イオシフィディ、ヴィクトリア・ブリリョーワ、ダリア・ヴァスネツォーワ、アナスタシア・ペトゥシコーワ
2羽の白鳥: マリーヤ・シリンキナ、 アナスタシア・ニキーチナ
スペインの踊り: アレクサンドラ・イオシフィディ、アナスタシア・ペトゥシコーワ、イスロム・バイムラードフ、カミル・ヤングラゾフ
ナポリの踊り: アンナ・ラヴリネンコ、 イリヤ・ペトロフ
ハンガリーの踊り: オリガ・ベリク、 カレン・イオアンニシアン
マズルカ: リリア・リシュク,ユーリヤ・ステパノワ、 マリーヤ・シェヴィアコーワ,イリーナ・プロコフィエワ、 ドミトリー・シャラポフ,セルゲイ・コノネンコ、ソスラン・クラーエフ,イワン・シートニコフ
花嫁たち: ヴィクトリア・ブリリョーワ,ダリア・ヴァスネツォーワ,アリサ・ソドレワ,エカテリーナ・ボンダレンコ,ヴィクトリア・クラスノクツカヤ,ユリアナ・チェレシケヴィチ

【上演時間】 約3時間   【終演予定】 21:45
第1幕 75分 - 休憩 20分 - 第2幕 35分 - 休憩 20分 - 第3幕 25分

マリインスキー・バレエ団、そしてオーケストラ!の総力を結集した、贅沢な全幕物バレエの魅力を存分に味あわせてくれた舞台でした。

また、この日、特筆すべきは客席の集中力。
余計な拍手や声、雑音などがなく、舞台途中の拍手も時期を得た短いもので、それでいて、幕毎の(その幕だけの出演ダンサーなど)カーテンコールなどでの熱心な拍手、終演後の、帰りがけに幕が開いてしまったから流れでなんとなく・・・ではなく、3度目のカーテンコールで客席の総意で立ちあがって舞台を向いての熱烈なスタンディングオベーションなど、バレエを愛する観客を真に魅了した舞台と劇場空間が幸せな熱を帯びて満たされた、特別な公演となりました。


幕ごとに感想を。

<第一幕>

コルスンツェフの王子は、おだやかながらも鷹揚なノーブルさ加減が好ましい。
ソロは伸びやかで今、本当に心技体のバランスが取れている状態なのかも。
道化のトカチェンコは人懐っこい演技も超高速回転の技も役にピッタリ。
王妃のエレーナ・バジェーノワの美貌が素晴らしく、金襴緞子の衣装に映えます。
マリインスキ―の宮廷衣装は脇に至るまで豪華で、王子に賜る誕生祝いの弓も、王妃のお付きの女官2人が王妃に手渡し、それから、王妃がそれを王子に賜る・・・という手順の恭しさもさることながら、女官2名の衣装の豪華さにも注目してしまいました^^
友人たちとの楽しい一時・・の間にも、徐々に照明が暗く調節され、陽が落ちてくるのがわかります。
王子が先に帰っていてくれ、とお付きたちから離れての単独行では、すっかりブルーの薄闇に。
そこで湖畔の背景の湖上を滑る白鳥の頭に華奢な冠が
白鳥の王女、ロパートキナは、その動きのひとつひとつが、王女であって白鳥である、というバレエの世界にしかない造型を典雅に極めていて圧巻の美。
その様式美の中で、ロットバルトに白鳥にされてしまった身の上を語り、王子の愛の誓いに感激して心からの信頼を寄せて身を委ねる思わず守ってあげたくなるはかなさを見るにつけ、この誓いを破ることの重大さが想像できる、ストーリー性もしっかりと込められている踊りであることがわかります。
コールドバレエのチュチュの位置が、長い脚の上の腰の位置でキレイに揃った24人の並びの美しさもマリインスキーならでは。

王妃のバジェーノワさん。衣装とご本人のゴージャスさが伝わりましたでしょうか・・・・^^

<第2幕>

そして、今回殊更に楽しかったのが、第2幕。
王子の誕生日を祝い、お妃を選ぶための舞踏会。
各国からの賓客の踊りの披露もあり、黒鳥オディールと保護者ロットバルトが王子を籠絡します。

マリインスキーのソリストたちのキャラクターダンスはとても魅力的。
各国の踊りの衣装も、それぞれふんだんに金銀があしらわれていたり、デザイン・素材にゴージャスなクラシカルな美しさが溢れていていました。

配役表を見た瞬間から楽しみにしていたソリストたちもバッチリチェック^^
この2幕がこんなに楽しいなんて・・・民族舞踊も軽くは流さず、衣装もそれぞれとても可愛くてゴージャス。
マリインスキーの舞台ならではだわ!だと心浮き立つわたくし

スペインの踊りは衣装が金糸銀糸で飾られた赤と黒で、赤の男性と黒の女性、というようにそれぞれ男女ペアになって踊ります。
ベテランで味のある演技をするイスロム・バイムラードフさんはここに。赤い衣装が彼の濃さを増幅させて^^;相変わらず作り込んだ密度の濃い踊りで魅せてくれました。黒のお衣装のの男性は若手の カミル・ヤングラゾフで、金髪でさっぱりした美形。黒い衣装が映えて、このお二人は良い対比。

そして、とても良かったのがナポリの踊り!アンナ・ラヴリネンコが可愛い!彼女はコリフェなのですね。
そして、そして、 イリヤ・ペトロフくん!2009年のJapanTourの「イワンと仔馬」で、ボロボロのセパレーツの衣装に耳のついた帽子で仔馬役に抜擢されていた彼。当時と同じくコールド・バレエの階級ながら、ソリスト役を振られているあたり、やはり期待の若手なのだと思うのですが、フレッシュさとキレの良い踊りは健在。
金髪を撫でつけて黒い小さなトルコ帽を載せたこしらえはあまり似合っていませんでしたが^^;

ハンガリーの踊りのオリガ・ベリクはコールドからの抜擢?
コリフェの カレン・イオアンニシアンはその美形ぶりをいつも楽しみにしているのですが、今回のハンガリーの衣装はとても似合っていてステキでした!

と、脇だけでもこんなに楽しめたのですが、今回オディールのロパートキナがいつにもましてステキで・・・。
オデットに定評のある彼女ですが、オディールの役作りも・・・好きです
なんと言いますか、王子を罠にはめようとか、女性の手練手管で籠絡しようとかという小手先の悪ではなく、あやつっているのはロットバルトで(コンスタンチン・ズヴェレフ、原形をとどめない^^;怖いメイクでお顔立ちがわかりませんが、細身のしなるような長身でダイナニックに暗躍し、出すぎず程よい存在感で好演)。
彼女自身は意志的な活き活きとした輝く瞳と活力溢れる身ごなしで、煌めくような生命感溢れる女性の魅力で王子を魅了している・・・という感じ。そのお役目を楽しんでいる風情のオディールでした。
はかなくもどこまでも優美で、高貴なオデットと対極の魅力を発散する、オディールの表現が新鮮。
一方、心惹かれて、どんどん夢中になり、母王妃に彼女こそ理想の!と花嫁候補たちを断るときの申し訳なさそうな気まずさとは真逆の熱情に王妃も快諾・・・という流れをその裏できっちりと演じていたコルスンツェフを始め、その場に居合わせるすべてのダンサーが宮廷内での自分の役割をしっかりと演じていて、なんとも密度の濃い2幕、でした。

<第3幕>

湖に帰ったオデットは仲間の白鳥たちに王子の裏切りを伝えます。
そこに、オデットを探しに走ってきた王子。傷心のオデットに赦しを乞うも、ロットバルトが登場。
オデットを巡っての激しい攻防があり、遂に王子がロットバルトの羽根をもぎ取り、悪魔はのたうちまわって言切れます。
暗いブルーの照明が、温かみのあるオレンジの光に変わり、朝が来ても白鳥の姿にはもう戻らないオデットと王子が光を受けて・・・幕。

もう、ドラマチックなマリインスキー管弦楽団の演奏を浴びつつ、美しいバレエ・ブランの白鳥たちと息をも継がせぬ展開にどっぷりと浸りきる・・・そんなマジカルなときでした。

そして拍手と充実感いっぱいのカーテンコールに続くのですが・・・。
今回の客席の反応、集中、全てが素晴らしかったのですが、ひとつだけ残念だったのは、せっかくの音楽、最後の弱音が消えるまで、拍手を控えていただきたかった・・・。
ハープのソロなど、聴きなれた曲なのにハッとさせられるほど、演奏が美しかっただけに、総合力のマリインスキー劇場では、もっと音楽も楽しんで尊重して欲しかった・・・とそこだけが、この完璧な公演で惜しまれました。

JapanArtsさんのブログによると、終演後かなりたってから、サイン会が催されたようですね。
雨上がりでとても寒い夜でしたので、わたくしはくじけてしまいましたが、寒空の中大勢のファンが待っていたことにロパートキナも感激されていたそうです


マリインスキー・バレエ2012 ロパートキナの「アンナ・カレーニナ」

2012-11-27 08:56:07 | BALLET
ヤプログの不具合で、UPが遅れましたが、
2012年11月25日(日)
東京文化会館にて、

マリインスキー・バレエ団 2012年日本公演の、「アンナ・カレーニナ」を観て参りました。

以下、JapanArtsさんのHPよりの作品紹介です:



<舞台の紹介>
《アンナ・カレーニナ》はトルストイの同名の長編小説に基づき、ロディオン・シチェドリン(作曲)、マイヤ・プリセツカヤ(演出・主演)夫妻が創作したバレエで、1972年にボリショイ劇場で初演された。
原作では高級官僚カレーニンの美貌の妻アンナが、青年将校ヴロンスキーと恋に落ち、ついには鉄道に飛込み自殺するまでのドラマが、当時のロシアの世相や作者自身の社会思想をまじえて綿々と描かれる。トルストイは都会や社交界におけるアンナとヴロンスキーの禁断の愛と農村におけるリョーヴィンとキティ夫妻の家族愛の世界を対置させ、むしろ後者に自らの倫理観を見出したが、プリセツカヤはアンナの自由な愛と世間との孤独な戦いを強調した。シチェドリンは弦と金管を中心にした鋭角的で不協和な響きの中にチャイコフスキーの憂いに満ちたメロディを引用して、トルストイの文学世界を巧みに表現した。
今回マリインスキー・バレエが上演するのは、近年、ショスタコーヴィチの《明るい小川》(2003)やシチェドリンの《イワンと仔馬》(2010)、デシャトコフの《幻滅》(2011)など現代音楽によるバレエに積極的に取り組んでいるアレクセイ・ラトマンスキーが演出したヴァージョンで、2004年、デンマーク・ロイヤル・バレエによって初演された(マリインスキー初演は2010年)。
ラトマンスキーはバレエを全2幕構成とし、前半はアンナがヴロンスキーと恋に落ちるまで、後半は夫により愛する息子と引き裂かれ、社交界からも拒絶されたアンナがヴロンスキーとの些細な諍いによって行き場を失い自殺するまでを、現代的な振付と自然なマイムによって綴った。背景に舞踏会場や書斎、競馬場、劇場などの情景をスライドで映し交替させることによりスピーディな場面転換を図っている。そして幕切れのアンナの死の情景では白煙を立てて迫りくる機関車を動画で映写し、破滅に向かって加速度的に突き進むアンナの姿をはかなくも美しく表現している。
文:赤尾雄人

<あらすじ>
舞台は19世紀末のロシア。
青年将校ヴロンスキーは母を出迎えに訪れた鉄道駅でサンクトペテルブルグから来た美貌の貴婦人アンナ・カレーニナに出会う。
ヴロンスキーはアンナに一目で惹かれ、アンナにとってもこの出会いは忘れ難いものとなった。
厳格で保守的な夫カレーニンとの日々の倦怠から逃れるように、アンナもヴロンスキーに心奪われ、舞踏会で再会した2人は激しい恋に落ちる。
世間体を重んじ、アンナの不貞を責める夫。
アンナは欺瞞(ぎまん)に満ちた社交界と家庭を捨て、ヴロンスキーとの“破滅的な愛”に溺れていく…

シチェドリン≪アンナ・カレーニナ≫全2幕
レフ・トルストイの小説に基づく
2012年11月23日(金・祝) 2:00p.m.~3:55p.m.

音楽: ロジオン・シチェドリン
振付: アレクセイ・ラトマンスキー
音楽監督: ワレリー・ゲルギエフ
装置・衣装デザイン: ミカエル・メレビー
ビデオ映写: ウェンドール・ハリントン
照明デザイン: ヨルン・メリン
台本構想: マルティン・トゥリニウス
振付アシスタント: タチヤーナ・ラトマンスカヤ
台本構想: リュドミーラ・スヴェシニコワ
指揮: アレクセイ・レプニコフ
管弦楽: マリインスキー劇場管弦楽団

<出演>
アンナ・カレーニナ: ウリヤーナ・ロパートキナ
アレクセイ・カレーニン(アンナの夫、ペテルブルグの高級官僚): ヴィクトル・バラーノフ
セリョージャ(アンナの息子): ルスラン・シデルニコフ
アレクセイ・ヴロンスキー伯爵(ペテルブルグの近衛騎兵大尉): アンドレイ・エルマコフ
ヴロンスカヤ伯爵夫人(アレクセイの母): エレーナ・バジェーノワ
エカテリーナ・シチェルバツカヤ公女(キティ、シチェルバツキー公爵の娘): スヴェトラーナ・イワーノワ
シチェルバツキー公爵(モスクワの貴族、キティの父): アンドレイ・ヤコヴレフ
シチェルバツカヤ公爵夫人(キティの母): オリガ・バリンスカヤ
ステパン・オブロンスキー(スティーヴァ、アンナの兄): アレクサンドル・セルゲーエフ
ダリヤ・オブロンスカヤ(ドリー、ステパンの妻でキティの姉): ダリア・ヴァスネツォーワ
コンスタンチン・リョーヴィン(オブロンスキーの友人): アレクセイ・ティモフェーエフ
ベッツィ・トヴェルスカヤ公爵夫人(アンナの友人でヴロンスキーの従妹): アレクサンドラ・イオシフィディ
エゴールシュカ・コルスンスキー: ミハイル・ベルディチェフスキー
皇帝: ピョートル・スタシュナース
皇帝の副官: ソスラン・クラーエフ
トゥシュケーヴィチ: カレン・イオアンニシアン
大臣夫人: ヴィクトリア・クラスノクツカヤ

カレーニン家の使用人-
セリョージャの乳母: エレーナ・セラピナ
カピトーヌイチ: ウラジーミル・ポノマリョフ
アヌーシュカ: ナターリヤ・ドゥゼヴリスカヤ
若い男性の召使: ヴィクトル・リトヴィネンコ
若い女性の召使: オリガ・ベリク

イタリア人カップル: オリガ・ミニーナ,ドミトリー・ヴァデネーエフ
新聞とレモネード売り: キリル・レオンティエフ
女性の乞食: アナスタシア・ペトゥシコーワ
駅の男性の乞食: アレクセイ・コピエフ=ニコラエフ
憲兵: マキシム・ブィストロフ

【上演時間】 約2時間    【終演予定】 15:55
第1幕 40分 - 休憩 25分 - 第2幕 45分



いや~素晴らしかった!
トルストイの大河小説をコンパクトにまとめ上げながら、運命の恋に翻弄される美しいアンナの破滅に向かうドラマを息をもつがせず、ただただひたすらに見守る・・・そんな舞台でした。

原作では、キティとリョ―ヴィンの牧歌的な愛と、アンナとヴロンスキーの破滅的な愛を対比させて紡いでいる物語ですが、ラトマンスキーはスピーディかつコンパクトに、アンナに比重を置いて2時間のドラマとして描き切った感じです。
バレエの全幕物としては2時間とはかなり短い感じもしますので、ちょっとここまでまとめなくても良かったのではないか・・と思うほどではありましたが・・・^^;

舞台全体の印象は、装置は、奥行きに向けてドーム状に半円形のスクリーンを設けて、そこにネオ・クラシックな感じの色を押さえた背景の映像を投影した省エネ?版でしたが、それなりに効果を上げていたかと^^;
印象的なのは1幕の客車のセット。リアルな2両の車両にアンナとヴロンスキーが乗り込むと、それが盆を使ってそのまま反転。丁度、片面が切り取られた風の客車の内部の様子が見える・・・という趣向はここに舞台装置予算のほとんどを投入したのではないかと思われるほど精緻^^;

あと衣装がとても趣味が良く、極々淡いグレー、アイボリー、ベージュ、ピーチ、ラベンダーなどの婦人たちのバッスルスタイルのドレス、紳士たちのライトグレーや黒のスーツや燕尾、士官服、その中にあって際立つ、アンナのチャコールグレーのつつましやかな既婚婦人の服装とヴェネチアのオペラハウスに現れたのち、心やぶれて飛び込み自殺・・・に至る真紅のドレスが舞台効果抜群で、重厚なドラマを惹きたてていました。

ダンサーたちの演技も素晴らしく・・・。

アンナ役のロパートキナ、こういう役はヴィシニョ―ワの方がハマるかしら?と思いつつ、敢えての彼女の日を選んだのですが、アンナの恋に落ち浮き立つ心、幼い息子への慈しみ、妻に無関心な夫とのすれ違い、とめることの出来
ないヴロンスキーとの情熱、そしてヴェネツィア社交界での孤独、息子とも引き裂かれ、孤立した彼女の絶望と死への誘惑・・・すべての心の流れが、顔の表情によってではなく、踊りそのものの中に表現されていて、その抽象化され、純粋化された思いが強く心を打つ・・・そんな演技でした。
それにしても、チュチュでのバレリーナとしてのスタイルの美しさには見慣れていましたが、こういう貴族の婦人としての一般のドレス姿で舞う彼女の際立つ美しさたるや・・・息をのむほどで、その冷たい美貌がヴロンスキーとの運命的な恋に説得力を与えていました。

そのヴロンスキーにはまだ若いエルマコフが抜擢されていたのですが、彼も素晴らしく、ロパートキナをして、存分に踊らせるパートナー力もしっかりとしていて、スラリとした長身の2人によるダイナミックなリフトの連続は、実にドラマチックで流れるような動きとともに、作品の神髄に観客の気持ちを集中されるに足るものだったと言えましょう。

夫カレーニンはベテラン、バラ―ノフ。
冷たく世間体を重視する夫、として、熟年紳士の風格もあり、踊りのサポートも万全でした。

あと、キティ役のスヴェトラ―ナ・イワ―ノワの可愛らしさと、落胆ぶりも役に入っていて良かったと思います。
ドレスが周囲の貴婦人たちより少しだけ濃い水色で、パステル調の花でデコルテを縁どった可愛らしいもので、金髪でやや小柄な彼女に良く似合っていましたし、艶やかなレッドブロンズの髪にチャコールグレーのドレスのアンナの成熟した魅力と良い対比になっていて・・衣装もまた、踊り手と作品に合っていたと思います。

マリインスキーの総合力をまたしてもしみじみと思い知った、「アンナ・カレーニナ」でした










ダニール・シムキン「インテンシオ」 初日

2012-11-23 12:58:05 | BALLET
「ダニール・シムキンのすべて」のガラ公演、
「インテンシオ」(INTENSIO)の初日、に行って参りました。



2012年11月22日(木)19:00~

五反田のゆうぽうとホールにて

ダニール・シムキンのすべて
<インテンシオ>


〈オープニング〉

「Qi (気)」
ダニール・シムキン

「葉は色あせて」
ジュリー・ケント、コリー・スターンズ

「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」
イザベラ・ボイルストン、ホアキン・デ・ルース

「白鳥の湖」より グラン・アダージオ
イリーナ・コレスニコワ、ウラジーミル・シショフ

「椿姫」より 第3幕のパ・ド・ドゥ
ジュリー・ケント、ロベルト・ボッレ

「海賊」より 第2幕のパ・ド・ドゥ
マリア・コチェトコワ、ダニール・シムキン

-休憩-

「雨」
イザベラ・ボイルストン、ダニール・シムキン

「ジゼル」より 第2幕のパ・ド・ドゥ
マリア・コチェトコワ、ホアキン・デ・ルース

「クルーエル・ワールド」
ジュリー・ケント、コリー・スターンズ

「白鳥の湖」より 黒鳥のパ・ド・ドゥ
イリーナ・コレスニコワ、ウラジーミル・シショフ

「ロミオとジュリエット」より 第1幕のパ・ド・ドゥ
吉田都、ロベルト・ボッレ

「レ・ブルジョワ」
ダニール・シムキン

〈フィナーレ〉

※音楽は特別録音によるテープを使用

◆上演時間

第1部 19:00 - 20:00 <休憩  20分> 第2部 20:20 - 21:15

内容は、ダニール・シムキンと彼が所属するABTを中心とした新旧のダンサーによるGALA公演、なのですが、
日頃から映像や写真に興味があり、TWITTERなどを活用しているシムキンくんと、映像作家に転身を図るプロフェッショナルバレエダンサーのお父上のコラボレーション、ということで、冒頭からTwitterのつぶやきがリアルにぐるぐる回っている映像が、上演前の舞台に映し出されており、いつものバレエ公演とはちょっと様子が異なる雰囲気・・。

2演目登場予定のロベルト・ボッレが「遅刻した!30分遅らせてもらえる?」などと冗談交じりに書きこんでいるものなど、読むともなしに眺めていたら、ドラマチックな流れる水のような画像処理がなされた、シムキンくんの巨大画像がスクリーンいっぱいに映し出され、その紗幕の向こうで、リハーサルをしているらしきペアたちが次々にスポットをあてられ、どこまでな現実でどこまでが録画映像なのか・・・と混沌としたムードで開幕。

実際のパフォーマンスが始まると、それぞれの演目ごとに目次のページのようにタイトルと演者の名が映し出される他は、通常のバレエ・ガラとさして変わらず。

ただ、映像でつないでいるからか、会場の照明が全体的に暗め設定で、連日仕事帰り劇場へダッシュ!の身としては つい、睡魔に襲われる瞬間が・・・
というわけで、穴だらけながら、これぞ!という瞬間だけはちゃっかり凝視するといういささか変則的な観賞となってしまいましたが、印象に残ったペア毎に感想を。。。


■「Qi (気)」
ダニール・シムキン

今回、4演目で大車輪の活躍のシムキンくん。
アナベル・ロペス・オチョアの振付で、シンプルな白いナイトシャツのようなシンプルな衣装で踊りますが、先述の画像演出で作り込まれたオープニングに続いて、、、ですので、作品としての輪郭が曖昧になってしまったかも?
画像の演出そのものは面白いと思いました。

■「葉は色あせて」
ジュリー・ケント、コリー・スターンズ

ABTの名花ジュリー・ケントも大ベテランながら、3演目とフル出場。
どの作品も丁寧に踊りこんでいながら軽やかな持ち味に円熟とちょっと枯れた味わいが加わって・・・。
ちょっと見る方の体制が整っていなかったのですが、今の彼女にあった演目だと思いました。

■「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」
イザベラ・ボイルストン、ホアキン・デ・ルース

うーん、とても健康的なボイルストンととにかく身体能力が高くて身体が効いてしまうデ・ルースのチャイパド。
実に踊れてはいるのですが、、、、この演目に春風のような軽やかさと若々しいエレガンスを求めてしまうわたくしの美意識からするとちょっとこの2人は違うのですよね・・・^^;
特にデ・ルースは、技巧を見せようとする試みとアレンジが、見た目の美しさを損ねているように見える部分が気になりました。トム・クルーズのようなハッキリしたお顔が目立つ筋肉質の中背のダンサー、という外見が単に好みではない、ということなのかもしれませんが^^;(ゴメンナサイ)

■「白鳥の湖」より グラン・アダージオ
イリーナ・コレスニコワ、ウラジーミル・シショフ

サンクトぺテルブルク・バレエ・シアターのプリンシパル、コレスニコワを見たのは初めて。
非常に表情豊かなアームスを持ち、軸のしっかりとした安定感抜群の踊りに目を惹かれました。
シショフは伸びやかな踊りをするダンサーですね。
マリインスキーから移籍して、今、ウィーンでルグリ先生の薫陶を受けているだけのことはあります。
このお二人はともにワガノワ出身長身ペアで安定のクラシックダンサー、という感じ。

■「椿姫」より 第3幕のパ・ド・ドゥ
ジュリー・ケント、ロベルト・ボッレ

ボッレを見るのは久しぶりです。
フェレの引退公演以来?それまではNBSの公演に、東バのゲストで呼ばれたり、バレフェスに出たり、頻繁に観る機会があったのに・・・。
相変わらずの美丈夫ぶりですが、青年期の甘い美貌からちょっとおじさんっぽくなったかな(笑)?
踊りの方は、ジュリー・ケントは往年の美女が病魔に襲われて・・・の風情にぴったり。細いですし。演技が細やかで情感もあり、ステキなマルグリットでしたし、ボッレのアルマンもニンに合っているはず・・・なのですが、ノイマイヤーの振りが入り切っていないのか、2人の呼吸を合わせるリハーサルが充分でなかったからか、ちょっとリフトのタイミングなどが取りづらそうな場面がチラホラと。
それより気になったのは、後半、客席に聞こえるレベルでボッレの息遣いが荒くなっていたことですね。
劣化?調整不足?
公演を重ねて行くと調子が出てくるのかもしれません^^

■「海賊」より 第2幕のパ・ド・ドゥ
マリア・コチェトコワ、ダニール・シムキン

バレフェス初登場のときに話題をさらったフレッシュペア再び・・・!
やっぱりコチェトコワとシムキンは合いますね!
白と金の目映い衣装で、小柄で均整のとれた2人が技巧を凝らしつつ余裕綽々で魅せてくれました。
コチェトコワ、最後の高速フェッテ、ダブルも繰り出しつつ、45度ずつ角度を変えてきれいに一周しながらのパフォーマンスが圧巻。
この2人は、オリジナルをいじって難易度を上げるアレンジをしても、それが美しく、音に合う収まり加減をわかってやっているところが素晴らしい。
クラシックの晴やかなPDDで、ガラ公演にふさわしい演目と踊り。

■「ジゼル」より 第2幕のパ・ド・ドゥ
マリア・コチェトコワ、ホアキン・デ・ルース

コチェトコワはクールなジゼルでした。髪を耳隠しに結うと雰囲気が随分と変わって大人っぽくなりますね。
ホアキン・デ・ルースは端正に踊ると良いダンサーだということが良く分かります。

■「ロミオとジュリエット」より 第1幕のパ・ド・ドゥ


吉田都、ロベルト・ボッレ

諸々すっとばして(失礼)いきなりここですが・・・。
この演目のために、ゆうぽうとに来て本当に良かった!と思える演技でした!!

都さんはクリーム色のシフォンの衣装に髪には繊細なラインストーンの連を飾った技巧的なまとめ髪。
少女らしい上気したピンクの頬と艶のある肌が、まさに16の乙女。
バルコニーでうっとりとして舞踏会の出会いを思い出している・・・ところでまさかの機器トラブルによる演奏中断。
ドキッとする客席を尻目に、眉ひとつ動かさず夢見る表情の都さんを見ていると一瞬の無音の後に音楽復活。
何事もなかったかのようにそのままロミオ登場~バルコニーの階段を駆け降りる・・・と続き、2人の初恋のときめきと歓喜をともに味わう至福のひとときを・・・。
胸にロミオの手を導き、恥じらうジュリエットに、歓喜の踊りを見せるロミオ。
これが、あのゼイゼイ息を切らしていたアルマンと同じ人とは思えないくらいニッコニコでパワー全開のロベルトロミオ。ソロで踊っていても、常に相手を感じて視線を絡める幸福感いっぱいの2人・・・。
ふわっとシフォンの裾が翻り、体重がないのではないかと思えるほどの軽やかなリフト。
ボッレの伸ばした腕の上で幸福な笑顔で揺れる都さんは今にもさえずりだしそうな小鳥のようでした。

ボッレはABTの前、ミラノスカラ座在籍中に長身のプリマのお相手として、各国の一流ダンサーと組んできたキャリアの中で、ロイヤルバレエへの客演もあったわけですが、小柄な都さんと組んだことはなく・・・。
今回の協演は初で、両者ともに熱望していたプロジェクトらしく、とても幸せそうなお二人で・・・。
とりわけボッレがカーテンコールでもとても嬉しそうに都さんを観ていたのが印象に残りました。

観られて良かった!シムキンくんのおかげですわ!ありがとう!

■「レ・ブルジョワ」

で、〆は座長が・・・。
やさぐれた男がシャンソンに乗せて、酔っぱらってよろよろしつつも豪快に踊る、というこの演目。
この演目はシュツットガルトの男くささが魅力のフィリップ・バランキエヴィッチの十八番という印象があるのですが・・・。
シムキンくんが、白シャツ、ネクタイ、黒ズボンにメガネ、くわえたばこでやってくれました。
うーん顔をしかめたり表情豊かに盛大にやさぐれているのだけれどもどうみても少年のいたずらだわ^^;

はい、別物ではありましたが、上半身を固定して下半身だけで蹴上がって脚をぐるりと空中で回す・・など、彼ならではのダイナミックな軽業満載のサービス精神溢れるパフォーマンスに会場は沸き、ドヤ顔の座長でありました^^;


そのまま、OPENINGではブルー基調に深海で揺れているような画像だったのが、
ラストは黄金色~オレンジの炎のような画像で、その紗幕の向こうに透けて見えるのは、この公演の衣装を身に付けたペアが次々と映し出される瞬間、そのPDDのキメのポーズなり、場面を演じるなりしているのが見える・・・という趣向。

最後、映像作品を観賞しているような感覚に陥って、どこで拍手を入れたらいいのか、観客側としては一瞬とまどうところもありましたが試みとしては面白いものでした。
もっと客席と呼応するような形で進化していけば、一層盛り上がるのではないかしら?と思ったことでした


*追記*
シムキンくんが、11月29日付でABTのプリンシパルに昇格したそうですね^^
WonderBoyもいつしか25歳のプリンシパルに。
今後の活躍も楽しみです






Filage Quintet 東京芸大生のコンサート

2012-11-23 11:57:15 | MUSIC
2012年11月21日(水)19:00~
虎ノ門のJTビル、アフィニスホールにて

現役の東京藝大の学生5人による、フィラ―ジュ・クィンテットの第65回定期演奏会に行って参りました。

以下は、今回のプロデュースを手掛けられた元N響の首席ヴァイオリン奏者、川崎助教授の御挨拶。

「今回登場するのは、ヴァイオリンの石田紗樹と下田詩織、ヴィオラの松村早紀、チェロの山本直輝、ピアノの小塩真愛の5人からなるFilage Quintet(フィラージュ クインテット)。若さ溢れる5人の気の合った演奏をお聴きいただきます。
前半の曲目は、「冗談」と名付けられたウィットに富んだ仕掛けが楽しいハイドンの「弦楽四重奏曲 第38番 変ホ長調 Op.33-2 Hob.Ⅲ‐38」と、フランス室内楽作品を代表するラヴェルの「弦楽四重奏曲 ヘ長調」。後半は知名度こそないものの作曲家の資質が遺憾なく発揮されたフォーレの「ピアノ五重奏曲 第2番 ハ短調 Op.115」。
若い団体にありがちな力で押すタイプではなく、どちらかといえば繊細な表現が得意な彼らがこれらの難曲にどのようにアプローチするのか、どこまで作品の持つ内面に迫れるのかとても楽しみです。ぜひ会場に足をお運びいただき、若い演奏家の挑戦をご覧になっていただければ幸いです。

第65回プロデューサー:川﨑和憲」



Filage Quintet】
石田紗樹(ヴァイオリン)
下田詩織(ヴァイオリン)
松村早紀(ヴィオラ)
山本直輝(チェロ)
小塩真愛(ピアノ)


ハイドン : 弦楽四重奏曲 第38番 変ホ長調 Op.33-2 Hob.Ⅲ‐38 「冗談」
ラヴェル : 弦楽四重奏曲 ヘ長調
フォーレ : ピアノ五重奏曲 第2番 ハ短調 Op.115

ハイドンではまだやや硬さが見えたものの、ラヴェルでは瞬間4人の音色が混然と溶け合ってうねりを見せる素晴らしい瞬間などもあり、確かな技量を持つ若手による真摯な音楽への取り組みとラヴェルらしい華やかな色の4重奏でまずは前半。

第2部は、ピアノも加わり、フォーレらしい幻想的で華やかな作品を、地に足のついた演奏で、互いの音を感じながらの緩急もしっかりと見えて、息のあったグループ公演ならでは、でした。
5重奏曲自体が そうたくさん選択肢があるものではないと思うのですが、その中で、このフォーレの晩年の傑作を選んだ、という選曲のセンスの良さは、プロデューサーの手腕なのか、演奏者らの趣味をも反映しているのか、いずれにしても、構成の良さが際立って、音楽好きを満足させる演奏会だったと思います。

始まりのピアノのアルペジオから、弦が絡んで、雄大でちょっとノスタルジックな哀感もあるこの作品、大河ドラマや精細な心理を描いたフランス映画などにも合いそうだなぁと思いましたら、
1984年のフランス映画、ベルトラン・タヴェル二エ監督の佳作「田舎の日曜日」のラストに使われていたのですね^^
あの頃はフランス映画社配給で、受け皿としての芸術映画を上映するミニシアターも降盛を極めていた頃・・・で、わたくしも次々と上映され良質なヨーロッパの新作・名作に心奪われていた時期だった・・・と思い出したことでした


宝塚宙組「銀河英雄伝説@TAKARAZUKA」 東京公演・千秋楽

2012-11-18 11:10:53 | TAKARAZUKA
通いに通った「銀英伝」
本当にどんどん進化する舞台に毎回ドキドキしながらの幸せな1か月でした。
遂に千秋楽。

これから行きます。
帰ったら・・・ご報告できるかしら、自分^^;
毎度、通いつめてコンテンツがキャパシティオ―バ―になった公演ほど、書けずに終了することの多い自分の傾向に気付いて今回こそ!と。

思っております



行って参りました!

集大成、と言って良いのではないかと。
より熱く繊細なラインハルト様、キルヒアイスとの銀橋での2重唱は息がピッタリ合っていて、今までで一番、強いきずなを感じました。
アンスバッハによるラインハルト暗殺未遂でキルヒアイスが身代わりになる場面、ラインハルトの衝撃と静かな息絶え絶えのキルヒアイスの今際の際の言葉に思わずツ―と涙が・・・・;;
また、貴族連合との対立が深まる中、姉・アンネローゼが連合の手先に襲撃されそうになるのを守りつつ、貴族連合はその名に値しないとして「彼らを貴族連合などと呼ぶな。賊軍でいい!」というセリフ、「賊軍でいい」の見下し加減と怒りが素晴らしくラインハルトでした!

群衆芝居の充実ぶりが、公演が進む毎にどんどん深まっていたのですが、ジェシカの支持者、トリューニヒトの演説に熱狂する人々、ヴェスターラントの強制労働に従事させられる市民、そして彼らの暴動に至る場面、などなど、1人1人が自分のドラマを生き始め、芝居の深みが増していました。

メインのお話とは離れた部分も充実。
子供時代の回想シーン、キルヒアイスのアンネローゼへのときめき振りが細やかに作られ、いじめっ子たちとの喧嘩、その後の2人の友情がはぐくまれる場面の自然な流れが活き活きとしてきたのが、後のドラマに生きていたと思います。
男役の見せ場が多く、なかなか娘役が活躍する場面の少ない今回の作品の中で、「娘役救済場面」と言われる、出撃前の夜を将校たちが恋人や妻と過ごす、しっとりとしたカップルたちのシーン、「オーディンの夜」、皆それぞれのカップルに、そのキャラクターのバックグラウンドにふさわしいドラマを考えた設定でのダンスになっているのですが、新人公演主役ペアである、蒼羽りく・花乃まりあの2人が毎回、少しずつ振りや表情を違えて、子供が出来た妻といたわる夫を演じていましたが、今回も後方での踊りながら、しっとりとした雰囲気やダンスの充実ぶりで、さすがは新公カップル!と観ごたえのあるものをみせてくれました。

如何にも優等生、で最初からそつのない歌と演技のヒルダ役の実咲凛音ちゃんでしたが、公演途中から、ラインハルトの日々変わる演技に呼応するように熱く感情をこめるようになってきて・・・。
最後、片腕キルヒアイスを亡くし、姉アンネローゼにも別れを告げられて孤独に慟哭するラインハルトに声をかける場面、普通なら、声をかけるのもためらわれる状況を察知しつつも、それでも「心の扉を叩く」ヒルダならではの存在感で、そっと声をかける間合いに舞台上で過ごした2カ月の集積が現れていて、ホロリとしました。


退団者はお二人。
雪乃心美ちゃんは可愛らしく、ブラウンシュヴァイク公の甥、フレーゲルを妖しく優雅にちょっとイヤミに表情豊かに演じた月映樹茉ちゃんは、「月映樹茉@TAKARAZUKA」と公演に絡めた心のこもった挨拶で会場を惹きつけて、最後まで2人ともとても可愛い笑顔でした。

TOP凰稀かなめさんの御挨拶も、前TOPの大空さんが挨拶KINGだっただけに、どうかしら~とやや心配^^;していましたが、公演の成功で自信がついたのか、伸び伸びと、博多とドラマシティのPRもしつつ、晴やかな笑顔での御挨拶、でした。

オーベルシュタインの悠未ひろさんが「逆転裁判」の主役で二手に分かれての2013年宙組最初の公演、となるので、博多座(行きます!)でまた「銀英伝」に会えるとはいえ、この並びを眼にするのは最後か・・・と感慨深く。
とても気に入った伶美うららちゃんのユリアン姿も最後なのですよね・・・。
思わずキャトルで、ユリアンとヤンの2ショットの舞台写真を予約(今回の銀英伝のGOODSや写真の売れ行きが凄くてほとんどSOLD OUT!)してしまいました^^;

ちょっと、東京公演については書き足りない気がしますので、また改めて場面語りをしたいと思います