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お着物Enjoy生活からバレエ・オペラ・宝塚etcの観劇日記に...

2018 世界バレエフェスティバル FUNNY GALA

2018-08-19 20:07:35 | BALLET
世界最高のバレエフェスティバルの最期を飾るのはいつもこれ。
バレエフェスティバル千秋楽の第5部。

通称「FUNNY GALA」

かつては構成力のあるジョゼ・マルティネスやアイデア豊富でサービス精神旺盛なウラジーミル・マラーホフが牽引して驚くべき祝祭空間を作り上げていたのですが、今回はプロデューサー役を買って出るような人材はいたかしら?と
若干不安を持っていたのですが・・・・。

さすがのパフォーマーぞろいのメンバー。
バラバラな個性を無理やり(笑)つなぎ合わせる力業も楽しい、スペシャルナイト、でした。

一応、配役表は以下の通り。

『眠れる森の美女』より「ポロネーズ」

入場する王(笑顔の可愛いシルヴィア・アッツォー二)と王妃(お澄ましした頬紅がフェミニンなマチュー・ガニオ)。
ゲストの入場時に杖を突く式典長はなんと指揮者のオブジャニコフさん。
基本、オーロラ姫の婚礼の場に集ったゲストのパフォーマンスをお楽しみください、なのですが・・・。

『フォー・ミー・フォーミダブル』

マチアス・エイマン、ダニール・シムキン、デビッド・ホールバーグ

1階を前後に分ける通路から登場のピンク尽くしのドラッグクイーン、歌ってます。
ノリノリで、後方の演説壇?のような手すりに寝そべります(近くてあせりました^^;)
ひきつれているのはツインテールに赤リボンの二人のセーラームーン?
日本アニメ通のシムキンくんの発案かと思われます・・。
デビッドはお付き合い。

「佐々木さんのために」
マリア・アレクサンドローワ、ウラディスラフ・ラントラートフ

ステージ上で、初めのゲストのパフォーマンスが。
次からは結構コメディ色が強まるのですが、このペアは、一つの作品をしっかりと踊り上げる感じに。
レモンイエローのチュチュに小さな黒リボンをアクセントにしたマーシャと同じ配色で蝶タイのラントラートフさんの並びはちょっとファニーな可愛らしい雰囲気。
フェリーニ映画やフィギュアスケートのイタリアペアのイメージ。
音楽がジブリの「ハウルの動く城」だったと後で友人に教えてもらいました。
タイトルと言い、この日のために準備してくれたのだなと胸が熱くなりました。

「ジゼル」
マリア・アイシュバルト
レオニード・サラファーノフ

アイシュバルトは本当にイケメン。
繊細な目鼻立ちで、ボロ家の扉をノックするところから、完璧マイム。でもちっこいのです。
大きなジゼル、サラファーノフもブルーと白のジゼルの清楚なお衣装がとてもお似合い。
二人で花占いまで忠実に、大真面目に男女逆転を演じるのがおかしくて。
時々サラファーノフジゼルが男らしくふるまう塩梅が絶妙。
でも、わたくしはアイシュバルトアルブレヒトが優しくジゼルをエスコートしたり、誓いのポーズをとったりするその一つ一つの仕草の美しさにキュンキュンきておりました。
コメディなので、帽子をとったら波平さん、というベタなギャグも仕込まれていましたが、アイシュバルトのあまりのイケメンぶりに笑うのを忘れて見とれてしまいました^^
サラファーノフも見た目だけでなく、しっかりとポアントでジゼルを踊りこなしていてさすが!

「カルメンズ」

イサック・エルナンデス、ジェルマン・ルーヴェ

えーと、ふたりのカルメンなのですが、お化粧が濃くてどちらがどちらだか・・。
ショートボブでアイシャドウ濃い目のカルメンが震い付きたくなるような洗練された美女で・・・。
シャープな面立ちからわたくしはエルナンデスかと思ってみていたのですが、感想がUPされているのを見ると皆さんルーヴェがきれいだったとおっしゃるので、そうなのかも・・。
明らかにギャグを狙っているにも関わらず美しさに驚くカルメンでした。

「ホセ」
ヴェイングセイ・ヴァルデス

誰だろう、とずっと思いながら見ていたのですが・・・
女性の男装は、おひげをつけたりするのでちょっとわかりづらい上に、
結構筋肉質なしっかり目の体形のダンサーでも、男装するととても華奢にみえるんですよね。
皆、とても小さくとても美形な男性っぷりでした^^

『眠れる森の美女』より「猫」

レオノール・ポラック、フリーデマン・フォーゲル

あのコケティッシュな白猫ちゃんと長靴をはいた猫がじゃれ合うシーン。
白猫フォーゲルくんの扮装が抱腹絶倒。1メートル四方ではきかない巨大なキティちゃんの被り物に全身白タイツ姿なのですから・・・@@
登場時の衝撃はアレですが、音楽もチャイコフスキーでフルに踊り、あの白猫ちゃんの脚を愛でる長靴をはいた猫の手をぴしゃりとたしなめるところとか、二人で揃ってのパ・ド・シャとか、振り付けは原典に忠実でそれがまたおかしい。ポラックのネコちゃんも可愛かったです。

『ドン・キホーテ』より「パ・ド・トロワ」

タマラ・ロホ、ダニール・シムキン、デヴィッド・ホールバーグ

おじさんっぽいタマラはその場では判別不可能。あとで配役表をみてあれタマラだったのねと。
シムキンくんとホールバーグはセーラー服のまま軽快に踊っていました。というか、ここはほぼお笑い場面。
とはいえ、何気にレベル高いのはこのメンバーならでは。

『眠れる森の美女』より「青い鳥」

マリア・コチェトコワ、エドウィン・レヴァツォフ

コチェトコワが青い鳥のお衣装でふわりとジャンプすると・・・背後から大きな黒子がお手伝い!
すごいアイデア!黒子の助けで空中にとどまったままあの青い鳥の振り付けを忠実にコチェトコワは実に綺麗に踊っていましたが・・・^^;
レヴァツォフはフロリナ王女のコスチュームを付けていたので、踊るのかなと思ったらまさかの黒子。
お似合いだったので、次回は是非。

「スパルタクス」

エリサ・パデネス、ダニエル・カマルゴ

フリーギアをカマルゴが、パデネスはスパルタクス。あの雄大な音楽にのせて・・・の愛のPDD.
ま、まさかあのフリーギアが倒立したような体制でのリフトをするんじゃ・・と思いきや、この胸に飛び込んでおいで!の体制のパデネスに向かって猛ダッシュのカマルゴ、ギリギリのところでかわされてズゴーと倒れこむなど、
ギャグ要素多め。
カマルゴは黒髪ロン毛のウィッグを撫でつけたりフェミニンな仕草など、なりきり度高し。脇の付け毛にドッキリ。
そこまでしていただかなくても・・・でも、そんなところにもサービス精神を感じます。
A.Bプロ、SASAKI GALAでまったくちがった役柄をそれぞれはまり役と思わせた彼はなかなかの演技派なのかもしれません。

『白鳥の湖』より「三羽の白鳥」

ロベルト・ボッレ、フェデリコ・ボネッリ、ウラディスラフ・ラントラートフ

なんとも・・大きな白鳥ですが、結構本気のポアントでの踊りで。ボッレは白鳥としての役作り?も。
ラントラートフさんはダイナミックで軽快な持ち味をここでも発揮!マーシャの特訓があったに違いなし、の完成度。
ボネッリは本気の二人に挟まれてちょっとはにかみながらも嬉しそうでした^^

『白鳥の湖』より「黒鳥」

ドロテ・ジルベール、マルセロ・ゴメス

ドロテの王子もまたイケメン。男装すると女性はより華奢に、女装した男性はより大きく見えるので時空がゆがんでいるのですが(笑)女性ダンサーの王子っぷりはなかなかのもの。
王子のマネージュもダイナミックで素敵!
でも、そんなドロテもゴメスが踊り始めると一気にかすんでしまいます・・・。
もう、ポアントテク完璧!いつこんなに踊りこんだの?!と驚愕の黒鳥っぷり。
ガチな黒鳥(でも筋肉質で巨大)に息をのんでいると最後はなんとグランフェッテまで!しかもダブルも入れての大健闘です!
ヒュー!
今年のファニーガラ大賞はゴメス様。
銀賞サラファーノフ。

名前がない?とお思いになりましか?
サーシャ(アレクサンドル・リアブコ)は救急班の扮装で倒れたダンサーの介護で活躍されていました^^
気づいたときに観たら結構細かく演技していましたが、なにせ舞台のセンターがすごかったので・・・。
脇に退いたダンサーたちが色々とリアクションしているのも面白く、まったくもって目が足りない濃厚で楽しすぎる時間でした。

最後はなぜかリンボーダンス。
巨大な頭のKITTYフォーゲルくんの番では固唾をのみましたが、成功!さすがはダンサーの腹筋。

グランフィナーレでは、FUNNY GALAのお衣装のダンサーとちゃっかり着替えてくるダンサーの比重が、前者が少ないとなんとなくお気の毒な感じになるのですが、今回はFUNNYのままでカーテンコールを迎えるダンサーが多くて和みました。

3年後の開催に向けて、今回COSME DECORTEの試供品を会場で配布されていた大口パトロン小林コーセーさんに高橋氏がアピールされていましたが(笑)オリンピックと重なるのですよね。
ホテルの確保など、いつも以上にハードルが上がりそうですので、一年ずれても構いませんが・・・
とにかく、世界バレエフェスティバルという素晴らしい文化遺産がずっと続きますようお祈りしています。
もちろん、次回も客席参加いたします!





2018 世界バレエフェスティバル SASAKI GALA

2018-08-16 08:46:05 | BALLET
2018/08/15 (WED)17:00
【第15回 世界バレエフェスティバル】ガラ - Sasaki GALA - 8/15(水)

― 第1部 ―

◆「ドリーブ組曲」
振付:ジョゼ・マルティネス
音楽:レオ・ドリーブ

レオノール・ボラック
ジェルマン・ルーヴェ

お馴染み、アニエス・ルテステュデザインのブルーの濃淡が爽やかなお衣装で登場の若い2人。
初演の時は男性の上着はVに沿う白い襟が付いていたような。ジェルマンが着るのはスッキリしたノーカラーで、クリムト風にランダムに配されたラインストーンが華やか。レオノールのドレスも肩のストラップに軽やかなフリルが付いて若々しく愛らしい雰囲気。
見るたびにダンサーによってデザインが微調整されているように思います。
PDDの作品としてはさほど傑作だとは思わないのですが、他のバレエ団と被らないこともあって、このバレフェスにおいては定番のひとつに。

◆「ライムライト」
振付:カタジェナ・コジルスカ
音楽:ニュー・タンゴ・オルケスタ

エリサ・バデネス

エリサのソロ。バンドゥータイプの黒がアクセントに使われたイエローのミニドレスのお衣装。
キュートなでシャープな持ち味は活かされていました。

◆「白鳥の湖」より グラン・アダージオ
振付:レフ・イワーノフ
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー

オレシア・ノヴィコワ
デヴィッド・ホールバーグ

小顔黒髪正統派ロシアンプリマバレリーナのノヴィコワにぴったりなのはやはりこういう演目。
ホールバーグも金髪長身の持ち味を生かして納得のパフォーマンス。

◆「アリシアのために―アリシア・アロンソに捧ぐ」
振付:タニア・ヴェルガラ
音楽:フランク・フェルナンデス

ヴィエングセイ・ヴァルデス

アリシア・アロンソの在りし日の姿が時折背景のスクリーンに映し出され、その圧倒的なスターオーラのよすがを伝える。
白いシンプルなチュチュドレスのヴァルデスは陽気な超絶技巧の遣い手としての顔を封印し、アリシアという神殿に仕える巫女のよう。
キューババレエ界における彼女の存在の重さと、この演目をこのバレフェスのガラで踊る意味をヴァルデスが全身で伝えようとしていることに感動。

◆「タイス (マ・パヴロワより)」
振付:ローラン・プティ
音楽:ジュール・マスネ

マリア・アイシュヴァルト
ロベルト・ボッレ

この世で最も美しい時間を今、自分は過ごしているのではないか、と、陶酔の中で一瞬たりとも見逃さないように集中。
胸下のベルト部分に金ラメが散りばめられた女神のような白ドレスで高々とリフトされながら優美に手脚を花開かせているアイシュバルトのエレガンス。
支えるボッレはウエストにアイシュバルトのお衣装に呼応するように施された金のビーズ刺繍だけが唯一の装飾のベージュの足首までのタイツで。それにしても、クラスレッスン見学時にも思いましたが、ボッレほど陰影に富んだ美しい上半身の持ち主はそうそういないのでは。
華奢なアイシュバルトと長身でギリシャ彫刻になぞらえられることも多い逞しいボッレの並びは、しかしどこまでも紳士的に仕える柔らかなサポートと、アイシュバルトの存在感の強さによって、思いがけない程調和のとれた美を創り出して。
このような奇跡的な組み合わせを観られるのはバレフェスならでは!
このガラ後半で同じ感想を再び抱くのですが、それもまたボッレ絡みなのですよね…


◆「グラン・パ・クラシック」
振付:ヴィクトル・グゾフスキー
音楽:フランソワ・オーベール

ドロテ・ジルベール
マチアス・エイマン

ドロテがBプロで故障したミリアム(お大事に!)の代役を務めます。
白いチュチュのシンプルなお衣装のウエスト下と髪に一輪ずつアシンメトリーに紅バラを配して。
グラン・パ・クラシックってガラの中心的存在のペア(ルグリとか)が踊るイメージなので、
本当に世代交代したのだなぁとしみじみ。
身長バランスはミリアムがぴったりのマチアスではありますが、手脚の長い華やかな笑顔のドロテと
陽性のマチアスのPDDも魅力的。
ジャンプしての滞空時間の長さ、粘るような弾力を感じさせる動きがマチアスのトレードマークかと思うのですが、
今回はそれを全面に出すのではなく、あくまでさりげなくスマートに超絶技巧をこなすあたりにベテランに足を踏み入れた風格のようなものが感じられて。

― 第2部 ―

◆「ロミオとジュリエット」より 第1幕のパ・ド・ドゥ
振付:ケネス・マクミラン
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ

サラ・ラム
マルセロ・ゴメス

あまり期待していなかったというと失礼なのですが、本当に素晴らしかったです。
マクミランの振り付けなので、ロイヤルダンサーにはやはりアドバンテージがあるのでしょうか。
ラムの少女っぽいほっそりとした容姿と意外な(といってはあれですが)演技力の発露で初恋のときめきと
儚さが伝わり、リフトでの形も美しく、小柄なダンサーでみることが多く先入観がありましたが、
改めて長身バレリーナの良さを再確認。
ゴメスも心のこもった演技と力強いロミオで素晴らしく、素敵な一幕でした。

◆「デグニーノ」
振付:マルコス・モラウ
音楽:アレクサンドル・クナイフェル

マリア・コチェトコワ

あまり印象に残っていないかも・・・。

◆「タチヤーナ」
振付:ジョン・ノイマイヤー
音楽:レーラ・アウエルバッハ

アンナ・ラウデール
エドウィン・レヴァツォフ

出窓のセット。アンナがその出窓に座って何かを待つような。
これはたぶん、恋文を書きながら寝落ちしたタチヤーナが見る夢のような・・・
彼女の恋の対象であるオネーギンが部屋に入ってきて彼女を圧倒する場面ですね。
アンナは素晴らしいダンサーで、やはりこれは全幕でみたいなと。
Bプロでは長めの金髪をファサっとさせていたレヴォツォフはスキンヘッドに近い短髪に。
Bプロ後、カットに行ったのかしら。
あまりダンサーのスキンヘッドに近い短髪って好きではないのですよね・・・。労働者役などなら別ですが。

◆「モノ・リサ」
振付:イツィク・ガリリ
音楽コンセプト・作曲:トーマス・ヘフス、イツィク・ガリリ

アリシア・アマトリアン
フリーデマン・フォーゲル

ちょっとフォーサイス風の作品。
この二人はこういうコンテンポラリーを退屈にならずに見せる資質がありますね。
アリシアのシャープな踊りと体型は特にピッタリ。

◆「ワールウィンド・パ・ド・ドゥ」 世界初演
振付:ティアゴ・ボァディン
音楽:ルドヴィコ・エイナウディ

ドロテ・ジルベール
マチュー・ガニオ

ティアゴ・ボアディンってハンブルグダンサーだった、あの?
振付の仕事をしているのですね、良かった^^
黒のシースルー遣いのシンプルなレオタードのドロテと黒の足首までのタイツのマチュー。
ゴージャスな二人が踊るコンテンポラリーは悪くないけど・・・
正直ちょっと物足りない。
ミリアムは不運だったけど、ドロテはこの一作でGALAを締めくくることにならず、華やかなグランパがあってよかったなと思ってしまいました。
そしてマチューは・・このあとが真骨頂!

◆「ローレンシア」
振付:ワフタング・チャブキアーニ
音楽:アレクサンドル・クレイン

マリーヤ・アレクサンドロワ
ウラディスラフ・ラントラートフ

黒白のでもクラシックなお衣装で激しい超絶技巧を連続で繰り広げるダンス。
否が応にも盛り上がるドラマチックな音楽とアクロバティックな振り付けを余裕でこなすお二人。
パリの炎とエスメラルダを足して2で割ったような作品。
超絶技巧てんこ盛りで、洗練されているとは言い難いがサービス精神満点のボリショイペアを体現するような作品で、嫌いになれませんでした^^;

― 第3部 佐々木忠次へのオマージュ ―

黒いロングドレスに赤い薄手のロングジャッケットを羽織ったアレクサンドラ・フェリが
佐々木氏の思い出を語るスピーチから始まり、背景のスクリーンには在りし日の佐々木氏の
オペラ・バレエ界の大物と渡り合う笑顔の写真の数々が・・・。
彼の成し遂げた偉業を観ながら、そうそう、ベルリンのリングのチクルス、3周上演してくれたおかげで、一週間に2夜ずつじっくりと鑑賞出来てありがたかったなぁ・・とか、思い出もいっぱい蘇り、改めて感謝。

◆「月に寄せる七つの俳句」より パ・ド・トロワ
振付:ジョン・ノイマイヤー
音楽:ヨハン・セバスティアン・バッハ

シルヴィア・アッツォーニ
アレクサンドル・リアブコ
エドウィン・レヴァツォフ

世界の一流振付家に東バのためのオリジナル作品を次々と依頼していた佐々木氏。
当時は来日公演目当ての「バレエの祭典」会員の対象演目に、さりげなく東バの演目が挿入されているのを
しぶしぶ見に行ったものですが、何度も見るうちに愛着がわき・・・(術中にはまってますね)
今、こうして、ハンブルグ・ダンサーの粋で上演されているのを見ると感慨深い。
白い着物をひっかっけて幽玄を踊るアッツォー二が素晴らしく、この作品の世界観をとらえていました。

◆「リーフ(葉)」 世界初演
振付:大石裕香
音楽:アルヴォ・ペルト

ジル・ロマン

ジルといえばアダージェットですが・・・。
新作「リーフ」も上体をメインに使ってはいますが、味わいとしてはアダージェットに近いかも。
それにしても、ジルは確か1960年生まれ。
その年齢で舞台人として確かなベジャールダンサーのパフォーマンスを見せているということに感動。
若いころは何かが足りなく、本人もそのことを歯がゆく思っている感があったのですが、年齢を重ねるごとに大人のセクシーさを醸し出すようになって。
最高だ・・とため息をついたのはベニエス・コピエテルスとマイヨ―振付「フォーブ」を踊った2009年第12回バレフェス。
エリザベット・ロスといい、ジルといい、生粋のベジャールバレエのセンターを踊ってきたレジェンドが
時を受け止めながらも見事なパフォーマンスを見せてくれる・・・。
このバレフェスという場が、ひとつの家のような感覚を持ちました。

◆「ボレロ」
振付:モーリス・ベジャール
音楽:モーリス・ラヴェル

上野水香
東京バレエ団

上野さんのすばらしい身体能力とプロポーション、
強い精神力を感じさせる研ぎ澄まされた素敵なボレロでした。
東フィルの演奏もとても良かったです。

― 第4部 ―

◆「ウルフ・ワークス」
振付:ウェイン・マクレガー
音楽:マックス・リヒター

アレッサンドラ・フェリ
フェデリコ・ボネッリ

英語で女性の声でのナレーションが荒波の音に被る。
それがBGMで、喪失をテーマとしているようなコンテンポラリーを踊る二人。
フェリはもちろん、ボネッリの粘りのある着実なステップ、誠実なパートナーシップが光りました。
フェリはもちろん、とこのバレフェスの間に「大丈夫かな、復帰してどんなかんじなのかな?」の懸念を払しょくして
「フェリはもちろん」と観客に言わせるフェリがすごい。安定の表現力・・というか、彼女は生まれながらの表現者なのだなと。

◆「マルグリットとアルマン」より
振付:フレデリック・アシュトン
音楽:フランツ・リスト

アリーナ・コジョカル
ヨハン・コボー
デヴィッド・ホールバーグ

幸せな田舎での甘い生活から一変、アルマンの厳格な父親が訪問。
妹の縁談に差し支えるとの親心で別れを決意するマルグリット・・の場面。
引き裂かれるような気持のマルグリットは女優バレリーナコジョカルの面目躍如。
肩見せの白いドレスも華奢な彼女に似合い、物語世界に引き込まれました。
王子様としてのパートナーはもうむずかしいコボーですが、オペラではバリトン役の父ジェルマンは風格もあってぴったり。
何も知らないアルマンは、演じ手によってはイラっとしますが、ホールバーグの清廉な品の良さは説得力がありました。

◆「プルースト―失われた時を求めて」より"モレルとサン・ルー"
振付:ローラン・プティ
音楽:ガブリエル・フォーレ

ロベルト・ボッレ
マチュー・ガニオ

ここで観客のオペラがザっとあがる!!
いやいや、そんな、あざとい配役・・・とワクワクしながら冷静を装っておりましたが(笑)
やはり、良いものは良い!イタリア・フランスをそれぞれ代表する美青年ダンサー二人の競演。
若々しい容姿ながらも、ベテランの域に達してまさにダンサーとして円熟期を迎えた二人だからこその青年二人の関係性を余すことなく、品格を保ちながら見せてくれます。
彫の深い美形の黒髪の二人。
ボッレはどちらかというと硬、マチューは揺れ動く心情も時折ちらと見せながらのパフォーマンスで、踊りそのものの瑕疵もなく、本当に素晴らしい時、でした。
バレフェスならではの、誰もが納得する、でも簡単には実現しない組み合わせでの「モレルとサンルー」
次の公演のハードル、上がりましたね・・・

◆「アー・ユー・アズ・ビッグ・アズ・ミー?」
振付:ロマン・ノヴィツキー
音楽:ハズマット・モディーン

レオニード・サラファーノフ
ダニール・シムキン
ダニエル・カマルゴ

ため息に満たされた会場の空気をガラっと変える、若きテクニシャン三人組。
カジュアルなスタイルで3人横並び。
基本その場で全力疾走しているのですが、順番に超絶技巧のバリエーションを踊るという展開。
お互い牽制しあい、自分が前に出て、でも、仲間というコミカルな味わいのあるとても面白い作品。
皆、けっこう苦虫を嚙み潰したようなポーカーフェイスで面白いことするんですよね。
ちょっとジム・ジャームッシュ監督の初期の作品のようなスタイリッシュでもオフビートでもある独特の味わいを思い出す演目でした。

◆「ドン・キホーテ」
振付:マリウス・プティパ
音楽:レオン・ミンクス

タマラ・ロホ
イサック・エルナンデス

Aプロのパリオペ組のエレガンス、Bプロの若きテクニシャンのコントロールの行き届いた自信あふれるパフォーマンス・・・を観た後に
ベテランと新星のペア。さて、と思ったら、タマラは芸監兼務が信じられない完璧なバランスとフェッテの鬼っぷりに変化なし!
いくらでも自立できるといわんばかりのバランス。
扇も持っているのにトリプル・ダブルを必ず2回に1回は入れてくる余裕。
もちろん、バレフェス常連のベテランとして、そしてスペイン人としての誇りを感じさせる堂々たる演技に観客熱狂。
エルナンデスも、タマラが連れてきた見どころのある若手ね、というフェス前の認識からすでに素晴らしいパフォーマンスを重ねることで観客の信頼を得た自信がみなぎる演技でまったく遜色なく。
観たことないほどのハイスピードのフェッテを決めて、ロホのパートナーとしてしっかりと存在感を示していました。

指揮:ワレリー・オブジャニコフ  
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
ピアノ:フレデリック・ヴァイセ=クニッテル (「マルグリットとアルマン」より)

素晴らしい演奏でバレフェスを盛り上げてくださったオケの皆様のお時間はここまでで・・・
NBSの高橋氏が時間稼ぎの(笑)スピーチをされています。
そう、次はお待ちかねのFUNNY GALA。

続きます。


◆上演時間◆

第1部  17:00~18:00 (休憩15分)
第2部  18:15~19:15 (休憩10分)
第3部  19:25~20:20 (休憩15分)
第4部  20:35~21:25

このあと、
第5部 通称FUNNY GALAが続きますが、こちらは別記事を立てます。


第15回世界バレエフェスティバル Bプロ

2018-08-13 09:53:42 | BALLET


世界バレエフェスティバルBプロは最終日の一回鑑賞です。

【第15回 世界バレエフェスティバル】Bプログラム 8/12(日)
― 第1部 ―

◆「眠れる森の美女」
振付:マリウス・プティパ
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー

オレシア・ノヴィコワ
デヴィッド・ホールバーグ

クラシックのGALAの定番、手堅い演目をしっかりと見せてくれました。
ノヴィコワは、彫の深い黒髪黒目の小顔美人なので、役にぴったりで表情もオーロラ姫らしく愛らしく作りこんでいて好印象。彫が深すぎてその可愛らしい目線が伝わりづらいのがやや残念。
ホールバーグには文化会館の舞台はちょっと狭すぎるようですね。
マネージュのラスト、ほぼ袖に入ってしまっていました^^;


◆「ムニェコス(人形)」
振付:アルベルト・メンデス
音楽:レムベルト・エグエス

ヴィエングセイ・ヴァルデス
ダニエル・カマルゴ

ヴァルデスが大きな石付きのお衣装の野性的なキトリの超絶技巧で観客の度肝を抜いたのは2006年の第11回でしたね。
あれから10年・・・。
可愛らしい、原色のお衣装でちょっと頭の弱い?お人形さんを演じています。
シャープな体つきと物堅い端正な表情のカマルゴは兵隊さんのお人形。
まずヴァルデス人形が目覚め、兵隊さん人形も目覚め、二人で不器用に踊ります。
が、ぜんまいが切れたのか、動きが止まり・・・。それから二人は別々のタイミングで目覚めるのですが、相手が止まっている・・というのがなんとも切ない、物語性のある小品でした。
人形ぶりでのアクロバティックな動きが絶品ながら、不思議な余韻を残す佳作でした。

◆「ソナチネ」
振付:ジョージ・バランシン
音楽:モーリス・ラヴェル

レオノール・ボラック
ジェルマン・ルーヴェ

淡いブルーグレーのネオクラシックなシンプルなお衣装のルーヴェと淡いピンクの胸元でラインストーンのひもがクロスするだけの装飾のやはりシンプルな薄物ドレスのボラックの演ずる爽やかな作品。
ラヴェルのピアノ演奏もよく、清々しい雰囲気は若い二人にぴったりでした。

◆「オルフェウス」
振付:ジョン・ノイマイヤー
音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー、ハインリヒ・ビーバー、ピーター・プレグヴァド、アンディ・パートリッジ

シルヴィア・アッツォーニ
アレクサンドル・リアブコ

息のあった二人の演技。
リアブコは黒Tシャツに黒燕尾。バイオリンを片手に登場。
途中で黒いサングラスを装着したり、これはもっとこの演目について予習してから観たほうが味わえたかも・・。
とはいえ、クオリティの高い難易度の高いリフトも自然にこなして、作品世界に没頭させる二人のパフォーマンスはやはり圧巻。


◆ローラン・プティの「コッペリア」
振付:ローラン・プティ
音楽:レオ・ドリーブ

アリーナ・コジョカル
セザール・コラレス

コジョカルは白にくすみピンクの村娘衣装で編み込みヘア。どこから見てもコッペリア。
なのですが、コラレス!シャープで強い顔立ちとダイナミックすぎる力強い超絶技巧の連続で、
なんとも素晴らしいのですが・・・フランツじゃないよね??
コラレスは故障で来られないかもと聞いていたのですが、故障?どこが悪かったの?と
まったく不調を感じさせない圧のある演技でした。
コジョカルとの並びは・・・同じ作品の登場人物にはちょっと見えませんでしたが(笑)


― 第2部 ―

◆「シンデレラ」
振付:ルドルフ・ヌレエフ
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ

ドロテ・ジルベール
マチュー・ガニオ

星空の下、プロコフィエフの幻想的な音楽に合わせて浮遊するドロテが美しくて・・・。
羽のついたエグレットつきのラインストーンのヘアバンドに流れるような20年代風の白いドレスのほっそりとした長い手足、華やかな笑顔。
対するマチューはあまり踊らず、ドロテをサポートすることに専念している感がありましたが、ペーズリーのラメ模様のはいったベストにニッカボッカは光沢のあるイエローベージュ、白いイタリアンカラーのシャツがことのほかお似合いで。ヌレエフ版のシンデレラは映画スターを夢見る少女で王子は映画スターなのですよね。
その昔は映画スターのような美男と有名だったエトワール、カデル・ベラルピのイメージが強いのですが、マチューにもぴったりのお役。
最後下手から扇風機の風で白く長いストールが現れ、それを頭上に掲げたドロテをリフトする姿がなんとも一幅の絵画のようで素敵でした。

◆「HETのための2つの小品」
振付:ハンス・ファン・マーネン
音楽:エリッキ=スヴェン・トール、アルヴォ・ペルト

タマラ・ロホ
イサック・エルナンデス

男性の衣装が斬新。Tバックでお尻があらわになった黒のパンツに足首までのタイツと腰のラインを絞ったノースリシャツは黒のシースルー。エルナンデスの引き締まった肉体美にはぴったり。
対するロホはグレーのシュミーズドレスに黒のシースルーワンピを重ねたような、シンプルないでたち。
シャープなラインを強調するようなスピーディでモダンな演目。Aプロのカルメンでは、ホセはカルメンの付き人のように見えましたが、ここでは、エルナンデスを売り出すやり手の女興行主タマラといった風情に見えました^^;

◆「白鳥の湖」より 第3幕のパ・ド・ドゥ
振付:マリウス・プティパ
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー

アシュレイ・ボーダー
レオニード・サラファーノフ

う~ん・・。テクニックと音楽性に優れた二人だから、もちろん悪いはずはないのですが・・・。
個人的にサラファーノフはいわゆる王子よりも抽象バレエのほうが似合うし、アシュレイは弾むゴムまりのような陽性の魅力が持ち味だと思うので、モダンが続いても良かったのではと思いました。

◆「椿姫」より 第2幕のパ・ド・ドゥ

振付:ジョン・ノイマイヤー
音楽:フレデリック・ショパン

アリシア・アマトリアン
フリーデマン・フォーゲル

フォーゲル君がピッタリですね。
恋に夢中で何も見えていない若者。
夏の日のひと時の幸せ。
アマトリアンはワッフルにしてダウンスタイルにおろした金髪が、白いオフショルのフリルドレスに映えて、でも、痩せたお顔が病を隠している風にもちょうどよく見えて、なんだかリアルな椿姫2幕、で物語世界に没頭できました。
ショパンの演奏も良かったです。

― 第3部 ―

◆「ロミオとジュリエット」より 第1幕のパ・ド・ドゥ
振付:ケネス・マクミラン
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ

メリッサ・ハミルトン
ロベルト・ボッレ

幕開き早々、あのジュリエットのバルコニーが高く作られているのに感動。
文化会館大道具方、手抜かりなしです。
夜空を眺めてため息をつくメリッサジュリエット。ほっそりとした長身で、いわゆるジュリエット役としてはやや大人びて見えるかもしれませんが、美しいです。
ボッレ、マントを翻して登場。
このヒトもまた、体が出来上がった青年で、初恋にしては貫禄があるのですが、甘いマスクの若々しさは健在なのと、長身のメリッサを並んでさらに大きく包み込むことのできる体格なのでなんともゴージャスなロミジュリ。
愛情表現もたっぷりのラテンラバーで、清潔感ある美人のメリッサとの並びは本当にお似合い。
技巧の必要なリフトからの体制移動もメリッサが長い手足が形作るフォルムを存分に生かしてボッレの頭上でまさに花開くあでやかさをみせ、ため息を誘います。
ラスト二人が手を伸ばし合うギリギリの高さのバルコニー、いい仕事をしていました^^
ボッレと組むメリッサ・ハミルトン、だれ?という開幕前の印象が覆され今後楽しみなダンサーがまた増えました。

◆「ジュエルズ」より "ダイヤモンド"
振付:ジョージ・バランシン
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー

ミリアム・ウルド=ブラーム
マチアス・エイマン

Aプロではオオトリのドンキを務めたオペラ座ペア。
バレフェスの定番の一つ、バランシンのジュエルズ「ダイヤモンド」
今まで、ロパートキナ、ヴィシニョーワ、ルテステュと、長身ダンサーで観た印象が強い演目なので、小柄な二人はちょっと新鮮。
お衣装も、白が純白だったりアイボリーベージュだったり、また、背景の青空も曇り空風だったり雲がたなびいていたりバレエ団によって異なるのがまた趣深いのですが、
今回のパリオペお衣装はラくロワデザインのゴージャスなもの。純白ベースに大きなラインストーンがゴロゴロついていて、ティアラも幅がありとても大きいもの。
頭身バランス的にミリアムにはもう少し繊細なdesignのもののほうが・・とも思いましたが、貫禄の表情で着こなしていました。
空はマチアスの持ち味にあわせたのか、雲一つない青空でした^^
オーボエをはじめとする東フィルの演奏も良くやはり、「ダイヤモンド」はバレフェスに欠かせませんね!

◆「マノン」より 第3幕のパ・ド・ドゥ
振付:ケネス・マクミラン
音楽:ジュール・マスネ

アリーナ・コジョカル
ヨハン・コボー

マノンの最期。沼地のPDDです。
南米ジャングルの逃避行、ボロボロの二人ですが、最後の命のきらめきを見せようとして力尽きるマノンをコジョカルが見事に演じました。リフトからの体を水平に保っての回転も綺麗なフォルムで。
その後ぐったりとする演技、薄幸そうな雰囲気も合わせてとてもこの場面に似合っていたアリーナですが、
がっちりとそのリフトをサポートするコボーの安定感は良いのですが、一緒に逃避行でボロボロになった青年感は薄めなのは仕方のないこと。
最期、脈をとって絶命をしって絶望の慟哭をするまでの最期の演技は細やかで心のこもったものでしたが
なぜか、わたくしはフェリーニの「道」を思い出してしまいました。。。
マクミランの振り付けをこなせるコジョカルの、これはGALAの定番にしても良いと思いますが、相手役は別の方でも観てみたいですね。

◆「アポロ」
振付:ジョージ・バランシン
音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー

サラ・ラム
フェデリコ・ボネッリ

うーん、これまた微妙な・・・。
ギリシャの若者風でもあるボネッリは意外と言ってはあれですが、お衣装も踊りも自然と似合っていました。
ラムは、考えてみると、THEバランシンダンサータイプ、なのですね。
金髪細身長身。ただ、ちょっと目立つダイヤ風のイヤリングをつけていて、ニンフのお衣装に違和感でした。
踊りは端正で思いのほか良かったです。
個性とスターオーラの強い出演者が続くバレフェスにあってはやや地味な存在なのは否めませんが、
度の演目も安定感のある演技でこなせるのはさすがだなと改めて思った二人でした。


◆「椿姫」より 第3幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・ノイマイヤー
音楽:フレデリック・ショパン

アンナ・ラウデール
エドウィン・レヴァツォフ

ハンブルクバレエの実力派長身ダンサーによる「椿姫」
黒いドレスの女が訪れます。
ヴェールをとるとそれはマルグリット。
惹かれ合う気持ちが止められない二人の哀切にして情熱的な場面ですが、
ノイマイヤー作品を完全に理解している二人は細やかな振り付けのニュアンスの表現も見事で
見ごたえのある演目でした。
レヴァツォフの長い金髪はロマンチックな雰囲気を盛り立てるのに役立っていましたが、
ラウデールはパリの社交界の華というにはちょっと・・・
とりわけ、華やかな女性ダンサー目白押しのバレフェスにおいてはやや不利だったかもしれませんが
踊りと感情表現のクオリティは高く満足。


― 第4部 ―

◆「じゃじゃ馬馴らし」
振付:ジョン・クランコ
音楽:ドメニコ・スカルラッティ
編曲:クルト・ハインツ・シュトルツェ

エリサ・バデネス
ダニエル・カマルゴ

これが傑作!
これは大好きな演目で、とりわけフィリップ・バランキエビッチの名演で深く記憶に刻まれているのですが・・・。
カマルゴが!
第一部で無表情の兵隊人形を演じていた人と同一人物とは思えないくらい豪快な表情と演技。
プレパレーションのほとんどないところからのジャンプが高くて。
よくボリショイダンサーがその場でジャンプして肩の位置に脚が来る!と驚かされるのですが、
カマルゴは頭の位置まで飛んでましたよ・・・。
じゃじゃ馬をめとり、どんなに足を踏まれたり無体な扱いを受けても優しく手を差し伸べ包み込み・・・からの
息の合ったデュエットに、の流れ。
バデネスのキツイ怒りんぼからのエレガントで堂々としたパートナーへの変貌の演技も見事で
喜びに満ちた客席の盛り上がりも凄かったです。
興奮冷めやらぬ・・で、長時間のプログラムをおもんばかってカーテンコールはどんな大御所でも一度、の原則が徹底されていた今回のフェスで異例の2回コール。
Aプロ初日に観たディアナとアクティオンで、なかなか良いダンサーたちだな、レベルの感想が
今や、今度の来日では必ずこのペアの日を選ぼう!となる。
これぞバレフェスの醍醐味ですね。


◆「ヌレエフ」より パ・ド・ドゥ
振付:ユーリー・ポソホフ
音楽:イリヤ・デムツキー

マリーヤ・アレクサンドロワ
ウラディスラフ・ラントラートフ

とてもシンプルな肌色の薄手のレオタードにピンクベージュのボリュームチュチュをつけたマーシャと、白いハイネックのシンプルなトップスのラントラートフによる、激しくもドラマチックなコンテンポラリー。
マーゴ・フォンティンとヌレエフのPDD.
ラントラートフはこの全幕で2018年のブロワ賞をとっているので、選んだのでしょうが、
ガラのPDDとしては切り取るにはちょっと伝わりにくいかも・・・。
この二人にはやはりゴージャスなお衣装だったり、ユーモラスな愛嬌を披露できるタイプの作品のほうがと思います。


◆「アダージェット」
振付:ジョン・ノイマイヤー
音楽:グスタフ・マーラー

マリア・アイシュヴァルト
アレクサンドル・リアブコ

心が洗われるような美しい音楽と舞踊のコラボレーション。
どこか遠くまで見透かすようなミステリアスなアイシュバルトの瞳と、抽象的な作品でも魂のこもった演技でドラマを生み出すサーシャの完璧にコントロールされた踊りの深さと完成度に見入りました。


◆「オネーギン」より 第3幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・クランコ
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー

アレッサンドラ・フェリ
マルセロ・ゴメス

50歳を過ぎたフェリが、この激しくも難易度の高い振り付けに挑む!
タチアナがかつて愛して手ひどく振られたオネーギンからのラブレターを手に書斎に一人。
そこに恋に盲目となった彼がやってくるが、公爵夫人として分別のついた彼女は初恋の思いに心引き裂かれながら、彼にされたと同じ、手紙を破って手に押し付ける行為をもって拒絶する・・の場面。
大人通しの切なくもドラマチックな名場面ゆえ、成熟したキャリア後半のダンサーが
心技体揃った状態で演ずるという印象。
女優バレリーナとして名をはせたフェリに、確かにふさわしい演目で、時折、端折った?と思わせる振り付けもありましたが、最後、一人になったタチアナの慟哭はフェリならではの激しさと哀切さを内包して心動かされました。
ゴメスはオネーギンにとてもお似合いな持ち味とキャリアがあるダンサーなのですが、今回はフェリのナイト役に徹しているのか、オネーギンとしてがっぷり四つに組んだ感じがやや乏しかったかも。
フェリが踊っている間に歩いてる場面があって、わたくし、この場面でダンサーが歩いている、と認識した瞬間はなかったので、彼はちょっと常にオネーギンとして舞台にいるのではなく、フェリをサポートするゴメスが見えてしまっていると気になりました。
なので、観客の熱狂にはちょっと距離を感じてしまいましたが、舞台に帰ってきて、バレフェスに来てくれてありがとう、という気持ちで拍手しました。

◆「ドン・キホーテ」
振付:マリウス・プティパ
音楽:レオン・ミンクス

マリア・コチェトコワ
ダニール・シムキン

小柄なテクニシャンによるドンキでの締めくくり。
Aプロのパリオペペアに負けじと、Bプロはシムキンくんとコチェトコワペアが締めてきます。
シムキンくん・・・。実に頼もしい。
小柄さを感じさせない大きく指の先足先までがきれいに伸びた完璧なフォルム、テクニックをひけらかすことで作品を壊すことのないように抑制された中にところどころ効果的に彼にしかできないテクニックを混ぜてくるという構成力にクレバーさと緻密な演技プランを感じました。
キメのポーズの美しさとにじみ出るドヤ感(笑)
・・・シムキンくん、好き!
コチェトコワは小作りな素をキトリに寄せるべくアウトライン気味に引いたアイラインと大きくカールを付けたシケがちょっとやりすぎ?気合を感じました。
パリオペ伝統の大き目のアバニコ(扇)を駆使するソロ部分はあえての扇なしで。
安定したテクニックと息の合った演技が素晴らしく、盛り上がりました。

アポテオーズも・・・。
Bプロ最終日で、あとはSASAKI GALAを残すだけなので、恒例の手ぬぐい投げも。
7列目くらいまでしか届いていなかったような・・・。
カーテンコール最後のほうで、後方席から舞台近くに異動してくる観客がいるな~と思ったのですが、
好きなダンサーに近づきたいのかな?とボケてました。
センターブロック通路席だったので、ちょっと前に動いたらキャッチできたかも?

素晴らしい演技を終えてリラックスした表情のダンサー一人一人に感謝の拍手を。
何度か、女性ダンサーを前方に送り出し、男性陣は一歩下がる、という場面があったのですが、
マーシャを恭しく送り、自らは誰よりも後方に下がるラントラートフさんの舞台マナーが大好きだなぁと思ったり、最後、コジョカルの腰をもって高く持ち上げて前方まで運ぶ(笑)コボーの茶目っ気に笑ったり・・・。
なんとも幸福感に満ち溢れた千秋楽でした。

あと残すはSASAKI GALAのみ。楽しみです。

指揮:ワレリー・オブジャニコフ、ロベルタス・セルヴェニカス  
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
ピアノ:フレデリック・ヴァイセ=クニッテル(「ソナチネ」「椿姫」)




◆上演時間◆

第1部 14:00~15:05(休憩15分)
第2部 15:20~16:05(休憩 15分)
第3部 16:20~17:10(休憩10分)
第4部 17:20~18:20


第15回世界バレエフェスティバル Aプロ

2018-08-12 08:17:36 | BALLET
お久しぶりです!
長らくの休眠をフォローすべく色々と考えている間に時が経ってしまいました。
3年に一度の世界バレエフェスティバル。
思いおこせばわたくしが本格的な(笑)バレエファンとして過ごしてきたのも、
1997年の第8回世界バレエフェスティバルのBプロで、思い立ってNBSに電話してチケットを問い合わせ、ちょうどタケノコ席1列目のお席を頂いたのがきっかけで・・・。
観るべきダンサーを新書館の書籍で事前にチェック、当日も参考書籍を膝に、幕間にメモを取りながらの鑑賞でしたが、ベジャールの「バクチ」をシルヴィー・ギエムとローラン・イレールで観たのがある意味決定的瞬間、でしたね。
あれから20年、NBSさんにはずっとお世話になりっぱなし。
会場で故・佐々木忠次氏の名インプレサリオとしての生涯を描いた桜沢エリカによる「バレエで世界に挑んだ男」を購入して読みましたが、今度お墓参りに行かなくては!と思うレベルで感謝しています。

さて、初日8月1日(水)と千秋楽5日(日)に観ましたAプロ、ざっと感想を。

2018/08/05(日)
【第15回 世界バレエフェスティバル】Aプログラム 

― 第1部 ―

◆「ディアナとアクテオン」
振付:アグリッピーナ・ワガノワ
音楽:チェーザレ・プーニ

エリサ・バデネス
ダニエル・カマルゴ

引き締まった体躯とシャープな面立ちが黄土色のギリシャ風衣装にぴったりのカマルゴと
アップヘアを数本のカチューシャを重ねたようなヘッドドレスでまとめたアレンジが白い薄物のディアナの衣装にぴったりのバデネス。
二人ともそれぞれに資質にあった役を軽快かつダイナミックに踊りこなし、二人の美しいプロポーションと疾走感のある演技で一気に引き込まれました。
今回はギエムを始め、常連メンバーがごっそり抜けて世代交代を感じさせるラインナップで、ちょっとテンション低めスタートだったのですが、期待値あがります!


◆「ソナタ」
振付:ウヴェ・ショルツ
音楽:セルゲイ・ラフマニノフ

マリア・アイシュヴァルト
アレクサンドル・リアブコ

白のゆったりとしたシンプルなブラウスにライトグレーのタイツのリアブコ、淡いピンクのちょっと長めのフレアスカートのお衣装のアイシュバルト。シンプルの極みのようなお衣装ですが、心技体揃った二人には音楽さえあればよい・・・といった極めて純度の高い美しさを堪能させていただきました。
初登場からその精緻な踊りであれは誰?となり、その後どのパフォーマンスにおいても期待を裏切ることのないリアブコと、シュツットガルト随一の演技巧者にしてミステリアスな小鳥のような存在感が際立つアイシュバルト、この二人のPDDが見られるというのもバレフェスならでは、ですね。
今回はアイシュバルトのパートナーとして予定されていたマリイン・ラドメーカーが休場という残念なニュースからの急遽のペアでしたが、思いがけず、ファンとしてはたまらない天からのご褒美のようなプログラムでした。
Aプロ全体を振り返ってみても、この演目が一番心に残りました・・・・。

◆「ジゼル」より 第2幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジャン・コラーリ、ジュール・ペロー
音楽:アドルフ・アダン

マリア・コチェトコワ
ダニール・シムキン

シムキンくんも大人になりました・・・。
金髪で小柄な均整のとれたスタイルゆえなんとなく童顔なイメージのあるシムキンくんですが、幕切れの、ジゼルとの別れのシーンゆえ終始沈痛な表情。テクニック的にも体型バランス的にもベストパートナーと思われるコチェトコワのジゼルも申し分のない出来で、新境地開拓?
ただ、世界の名ダンサーの競演の場で選ぶには、最高に似合う演目とは言い難いかも。
Bプロのドンキを楽しみにしています。

◆「アポロ」
振付:ジョージ・バランシン
音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー

オレシア・ノヴィコワ
デヴィッド・ホールバーグ

ノヴィコワがテレプシコーラ。
「アポロ」は演目が、イレールのアデュー公演を思い出させるので、つい比較してしまう・・・。
長身で端正なホールバーグに似合った演目ではありました。

◆「コッペリア」
振付:アルチュール・サン=レオン
音楽:レオ・ドリーブ

サラ・ラム
フェデリコ・ボネッリ

ラムがお人形のように可愛い。
ま、コッペリアはお人形なのですが^^
ほっそりとした長い手足にちょっと目が離れている薄口のお顔立ちに小さなパフスリーブのついた金白のチュチュがとてもお似合い。ボネッリは安定感と温かみのあるパートナー振りで、バレフェスならではの外連味には欠けますがロイヤルらしいほっこりペアでした。

― 第2部 ―

◆「瀕死の白鳥」
振付:ミハイル・フォーキン
音楽:カミーユ・サン=サーンス

ヤーナ・サレンコ

サレンコは観る度に評価の上がっていくダンサー。
常に進化している、という印象があります。
「瀕死」は長身のカリスマプリマがキャリアの後半で演じる演目というイメージがついているので、小柄な赤毛の職人系バレリーナのサレンコが選ぶ演目としては正直意外でした。
・・が。
アームスの動きの微細な震えからすべての作りこみと構成が素晴らしく、とても見ごたえのある美しい白鳥でした。
サレンコ、これからも目が離せません。

◆「カラヴァッジオ」
振付:マウロ・ビゴンゼッティ
音楽:ブルーノ・モレッティ(クラウディオ・モンテヴェルディより)

メリッサ・ハミルトン
ロベルト・ボッレ

とても美しいダンサーによるとても美しい作品。
ボッレの彫刻のような陰影のあるボディと、ハミルトンの金髪夜会巻きに胸元と腰にドレープを入れたシンプルなベージュのレオタードがギリシャ・ローマ彫刻のドレープを想起させ、全体に黄昏時のようなはちみつ色に染める照明の効果と相まって、動きのある絵画作品のような趣のある演目でした。

◆「くるみ割り人形」
振付:ルドルフ・ヌレエフ(マリウス・プティパ、レフ・イワーノフに基づく)
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー

レオノール・ボラック
ジェルマン・ルーヴェ

オペラ座の新星。オレリー・デュポン芸術監督により任命された若きエトワールペア。
長身で均整の取れた実に美しいプロポーションの二人。パリオペラ座ならではの豪華なお衣装(男性の胸元のボウの縁飾りの繊細さ、胴着のゴブラン織の豪華さなど)に、この演目には金白の柱とシャンデリアの背景も付き、華やかそのもの。
ボラックの大きなティアラに負けない自信を感じさせる堂々とした演技も良いですが、マチューに似たエレガントなヘアスタイルと細部まで丁寧さを心掛けているのが伝わるフレッシュで誠実感のあるルーヴェのこれからが楽しみでなりません。個人的に無駄に細かい(笑)振り付けのヌレエフ版の全幕が大好きなのでその抜粋が見られただけでも嬉しくて頬が緩みっぱなし。

◆「・・・アンド・キャロライン」
振付:アラン・ルシアン・オイエン
音楽:トーマス・ニューマン

オレリー・デュポン
ダニエル・プロイエット

からの、その芸監ご本人によるコンテンポラリー。
現役時代から、デュポンのコンテンポラリーは絶品で。
個人的に、コンテンポラリー専門のバレエ団によるパフォーマンスより、クラシックバレエの主役を務められる要素を兼ね備えたダンサーによるコンテンポラリーのほうが好みです。
オペラ座のコンテンポラリーのもう一つの楽しみは、普段着設定のときのお衣装がとにかく可愛いこと!
今回のデュポンも淡いピンクに白と赤の柄が入ったフレアースカートにゆったりとした広めのVネックにドルマンスリーブの生成のニット。無造作に頭頂部でまとめたシニヨン。
オペラ座の多様性と魅力をアピールする2演目が続きました。

◆「ファラオの娘」
振付:ピエール・ラコット(マリウス・プティパに基づく)
音楽:チェーザレ・プーニ

マリーヤ・アレクサンドロワ
ウラディスラフ・ラントラートフ

ボリショイも負けていません!
退団が本当にショックだったボリショイの名花アレクサンドロワの観客アピールの強いおおらかで堂々とした演技がまた観られるなんて・・・。
神様ありがとうございます(おおげさ)
そして羽が生えているのではと思うほどダイナミックなのに軽快なラントラートフさん・・・好き^^
ファラオの娘は演目としてさほど好きなわけではないのですが、ブルーのチュチュのマーシャとエジプト風のお衣装のラントラートフペアの観客と劇場に対する愛情溢れる幸福感いっぱいの演技を観られてお腹いっぱい。
なのに、ここまででまだ半分とは!
バレフェス恐るべし。


― 第3部 ―

◆「カルメン」
振付:アルベルト・アロンソ
音楽:ジョルジュ・ビゼー、ロディオン・シチェドリン

タマラ・ロホ
イサック・エルナンデス

黒レースの長袖レオタード。頭頂部に赤いバラ。
肌色の脚がいやが上にも目立ちます。
スペイン人であり、いくらでも回転していられる^^;驚異のバランスキープ力を持つロホはどちらかという中肉中背で脚もしっかりとしています。
過去に観たベストカルメンはイザベラ・シアラヴォラ。ほっそりとした美脚であるだけでなく、全身が白く発光するような肌の持ち主で、その脚で誘惑するカルメンの説得力と言ったらなかった。。。
とつい過去の鑑賞の記憶が呼び起こされるのも鑑賞歴が長くなった観客あるあるですが。
タマラのカルメンは力強く、大地に根をおろした存在感があって良かったです。
彼女もENBの芸監として辣腕をふるっていることを考えるとダンサーとしての鍛錬も欠かさずで素晴らしい。

◆「ルナ」
振付:モーリス・ベジャール
音楽:ヨハン・セバスチャン・バッハ

エリザベット・ロス

ロスはベジャールのミューズ。
赤毛のボブとしっかりとした骨格の美貌がはっきりとした黒い眉と赤口紅に映えて、ハンサムなTHE ベジャールダンサーとしての強さを舞台で見せてきた彼女。
舞台を降りると思いがけずほっそりと優しい風情のGAPがまた魅力的な彼女が、現役時代しかも若いころのシルヴィー・ギエムの定番だったこの作品を踊る・・・。
とても興味深く、プログラムが発表されてから楽しみにしていた演目のひとつでしたが。
全身を白のユニタードで覆い、赤毛を夜会巻にまとめたロスは今までの舞台姿よりもオフ寄りのたおやかな風情。
ちょっとしたニュアンスもベジャールの言語が染みついた彼女が踊ると実に雄弁で。
ギエムの美しい「ルナ」は正直観ているうちにこちらの集中力が途切れることもあったのですが、今回は最後まで目が離せませんでした。
先程の発言とは矛盾するようですが、ベジャール作品に限っては、ベジャールの集めたベジャール・ダンサーの表現がやはりしっくりくることが多いと感じます。

◆「アンナ・カレーニナ」
振付:ジョン・ノイマイヤー
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー

アンナ・ラウデール
エドウィン・レヴァツォフ

二人ともハンブルクバレエ団を代表するノイマイヤーダンサーで、素晴らしい全幕を見せてもらったこともあるのですが・・・。
ノイマイヤー作品で、古典を現代に置き換えて普段着で演じさせる演目については、実はGALAで観るのが苦手です。全幕で見るとまた違うのですが、なんとも地味でその場面だけで感じ取れるものが近くに迫ってこないというか・・・。

◆「タランテラ」
振付:ジョージ・バランシン
音楽:ルイス・モロー・ゴットシャルク

アシュレイ・ボーダー
レオニード・サラファーノフ

というモヤモヤを一掃してくれる爽やかな二人!
ナポリ風のお衣装でタンバリンを持ってのスピーディな振り付け。
二人とも愛嬌があって音感が良いので、軽快な音楽にぴったりの爽快感。
ただ、タンバリンを使う演目すべてに言えるのですが、アクセントで響かせるタンバリンの音が期待するほど大きくなかったりならなかったり。で、ちょっと、う~~と歯がゆい思いをすることもあるのですが、これは、ダイナミックなジュテや高速フェッテの合間に曲とタイミングをバッチリ合わせてという至難の業ゆえ、いつも致し方ないと思うのですが・・・。
赤いスカーフを頭に巻いて白シャツ黒い膝丈パンツのナポリ男は、ちょっとオデコな親しみやすい容姿と長身なのに持ち味である切れのある動きのサラファーノフにぴったり。
アシュレイ・ボーダーが生き生きとしていて、目線の配り方とかちょっとしたところがコケティッシュで、観ていてどんどん楽しくなるという。
普通、ナポリものってこじんまりと地味になりがちなのですが、二人のオーラでリフレッシュされました。

◆「アフター・ザ・レイン」
振付:クリストファー・ウィールドン
音楽:アルヴォ・ペルト

アレッサンドラ・フェリ
マルセロ・ゴメス

MeTooの流れで告発されたというNEWSに驚かされたゴメス。
過去のダンスパートナーたちからの擁護もありましたが、あれからABTを離れたのでしょうか。
プログラムには2017年まで在籍、近年は振付家として活躍とあるので、彼のキャリアプラン通りの流れであることを祈念します。
それにしても、いったんは引退を表明したフェリがまたバレフェスに戻ってきたという、驚きの展開。
長い髪をそのままに、ほぼノーメイクなのではという、素をさらしたフェリのシンプルなレオタード姿でのパフォーマンスは女優バレリーナとして名をはせた現役時代そのままに、抽象的な作品に込められた豊かな感情に目を惹きつけられる。
ゴメスの安定感と互にリスペクトしていることが感じとれる二人のパートナーシップも見事。


― 第4部 ―

◆「ドン・ジュアン」
振付:ジョン・ノイマイヤー
音楽:クリストフ・ウィリバルド・グルック、トマス・ルイス・デ・ヴィクトリア、トマス・ルイス・デ・ヴィクトリア

シルヴィア・アッツォーニ
アレクサンドル・リアブコ

肘から大きなフリルになっているクラシカルなシルエットの白いドレスの金髪ダウンヘアのアッツォー二と白いレース付の襟をのぞかせた黒いスペイン風のシルエットのお衣装の黒髪のリアブコが好対照。
漁色家のドン・ジュアンが唯一なびかぬ女性を追いかけるが実は彼女は死の象徴・・という場面らしいが、空気のような重力から解放されたアッツォー二の存在感と、時折髪を撫で上げるリアブコのステロタイプな色男演技が新鮮。
ノイマイヤー作品は、こちらや「椿姫」のようなエレガントなお衣装での表現のほうが好みと再認識。

◆「シェエラザード・パ・ド・ドゥ」【世界初演】
振付:リアム・スカーレット
音楽:リムスキー・コルサコフ

アリーナ・コジョカル
ヨハン・コボー

シルエットはアラビア宮廷風ながら、ウォッシュデニムのような素材のお衣装で、どう「シェエラザード」を料理してきたのだろうかと世界初演に興味津々。
予想外に正統派のシェエラザードの世界、だったかと。
コジョカルの情感あふれる演技はいつもながら素晴らしい。コボーとのプライベートでも培われた互いの信頼関係がどの瞬間でも伝わってくる。
作品そのものには驚きはなかったが、魅惑的なメロディーながら繰り返しが多用され、よもすれば単調になりかねない音楽を活かした振り付けで演奏の美しさも堪能。東フィルはこの手の音楽はお手の物ですね。

◆「ヘルマン・シュメルマン」
振付:ウィリアム・フォーサイス
音楽:トム・ウィレムス

ポリーナ・セミオノワ
フリーデマン・フォーゲル

書き終わらないうちにBプロに出かける時間が近づいてきました。
一旦筆をおきます。
続きから。
これはギエムの若いころの動画でしかみたことがないので、今回観られて楽しみ・・というのと、フォーサイスものの特徴として緊張と緩和、瞬発的な動きの妙と全体に漂うスタイリッシュでモダンな中に一抹のユーモアが・・といった魅力が表現できていない上演率が高く。
このお二人は・・・。
黒の襟元の詰まったシースルーのお衣装に女性は黄色のチュチュとスカートの中間のようなものを身に着けて。
ポリーナはキュートな童顔と広い肩幅バレエダンサーにしては存在感のあるお胸で、とてもスポーティな魅力があり、こういった作品は似合いそう。夜会巻でまとめたヘアスタイルは、ギエムのショートボブのお洒落感には及ばず。
後半、男性もこの黄色いスカート?をつけて、ちょっと腰蓑風?
フォーゲル君はこういうちょっとユーモラスなニュアンスが似合いますね。そもそも、バレフェスデビューがピンクのストレッチロングTの「太陽に降り注ぐ雪のように」だったわ。2003年第10回。あれから14年、バレエダンサーとして成熟しつつも若々しさを失わないのは素晴らしいなと。
バレフェスを観ているとつい、記憶の旅に出かけてしまいます^^;
好演でした。

◆「マノン」より 第1幕のパ・ド・ドゥ
振付:ケネス・マクミラン
音楽:ジュール・マスネ

ドロテ・ジルベール
マチュー・ガニオ

甘々な若くて美しい恋人たち。
「寝室のPDD」ブラウス姿で羽ペンを走らせるマチューも生成のコルセットでクシュっと髪をまとめたドロテも
役どころとしてはぴったり。
・・ですが、初日はマクミランならではの技巧的なリフトの振りができていない!とついもどかしく。
「マノン」って役に合うかどうかはまた別として、ギエムの十八番としてもう、展開が脳裏に焼き付いていて、本当はここはもっと細かくリフトされていながらにして脚を小刻みに動かさなくてはならないのに・・端折った↓;;
などと感じてしまい。
2回目、Aプロ最終日に観たときには踊りなれての二人のパートナーシップの深まりからか、マノンとデグリュ―としての演技が素晴らしく、満足度が急上昇。

◆「ドン・キホーテ」
振付:マリウス・プティパ
音楽:レオン・ミンクス

ミリアム・ウルド=ブラーム
マチアス・エイマン

オオトリを務めるお二人。
オペラ座若手と思っていた彼らがオペラ座代表、バレフェス重鎮としてこの位置に。
このところ安定感と貫禄が増してきたマチアスのバジルが立派にトリを務めてくれるだろうというのは想定内でしたが、
ミリアムの堂々たる貴婦人っぷりが感慨深かったです。
オペラ座のキトリは黒レースのチュチュで貴婦人風味なのですよね。
大き目の扇をバサッと使って優雅に見える風格はもはやキトリらしいのかどうかは別として、金髪のミリアムが最大限美しく見えて素晴らしい出来栄えでした。


指揮:ワレリー・オブジャニコフ、ロベルタス・セルヴェニカス
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
チェロ:伊藤悠貴(「瀕死の白鳥」)
ピアノ:原久美子(「瀕死の白鳥」、「タランテラ」)


演奏がとても良かったです。
全体にセット付の演目が少なく、舞台美術にお金をかけない分、音楽に重きを置いたのだなと解釈しました。
(故・佐々木氏が初めてバレフェスで東フィルをオケボックスにおいたとき、「東フィルを奮発しました」とおっしゃっていたのが忘れられない^^)
過去には素晴らしい踊りを披露した名ダンサーが、ミスタッチだらけのピアニストを称えて観客の拍手を促したのになんとも苦い心持になったこともあった・・・と思うと、音楽と融合して一体感のある素晴らしい時間を過ごす喜びをありがたく思います。
指揮者も御一人ですべてをこなしておられましたが、今回はお二人で分担されているのも負担軽減で良いと思います。


◆上演時間◆

第1部 14:00~15:00(休憩15分)
第2部 15:15~16:00(休憩15分)
第3部 16:15~17:05(休憩15分)
第4部 17:20~18:25




バレエ・スプリーム Bプロ

2017-08-02 04:41:08 | BALLET

<バレエ・スプリーム>Bプロ (7/30 14:00開演)

Bプロは、オペラ座の趣味の良さが全面に感じられたプログラム構成でした。

― 第1部 ―

「グラン・パ・クラシック」
振付:ヴィクトル・グゾフスキー
音楽:フランソワ・オーベール

オニール八菜、ユーゴ・マルシャン

長身ペアによる華やかなオープニング。
マルシャンはサポート上手ですね。
八菜さんは手の表情のつけ方が上手いと思いました。指が長いきれいな手の形もあるのかもしれないのですが、
粋なのですよね。

「ロミオとジュリエット」 第1幕よりパ・ド・ドゥ
振付:ルドルフ・ヌレエフ
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ

レオノール・ボラック、ジェルマン・ルーヴェ

手足の長い伸びやかな長身に若々しい表情の小顔のペアにぴったりの演目・・・と思ったのも束の間。
うーん、ロミジュリに関していえばヌレエフ版はテクニックにこだわり過ぎて情緒を犠牲にしているように見えてしまいました。それぞれのソロのパートの難易度が高く忙しく見える振りのせいなのか、それを見守る側がボーっとしているように見えてしまうのですよね。
もちろん、フェリのように熱視線を全身全霊で表現できる女優バレリーナなら、その間を埋めてつなぐこともできるのでしょうが、いかんせん、恋に浮き立つ可愛いカップルには見えても運命の歯車が動き出してもうとまらない・・というようには見えませんでした。残念ながら・・・。

「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」
振付:ジョージ・バランシン
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー

ミリアム・ウルド=ブラーム、マチアス・エイマン

待ってました!真打登場です。
成熟したテクニシャンのためのグランパ・クラシック、若手の技巧派のためのチャイコパというなんとなくのイメージがありますが、この二人は、若々しい外見と成熟した踊りが両立した素晴らしいパフォーマンスを見せてくれました。
テクニシャンペアですと、つい音が走ってしまったり最後崩れんばかりになってしまったり・・という舞台も何度か見てきましたが、マチアスの余裕を持っての音の取り方とミリアムの落ち着きが相乗効果で過不足ない完成度の高い舞台を作り上げていたと思います。
お衣装も、通常女性はサーモンピンク男性は水色基調のことが多いのですが、男性が極淡いグレイッシュホワイトで、女性が淡いピンク、そして背景がティファニーブルーという洒落た取り合わせで、ミリアムがまとめた髪に配したキラキラのピンクのストーンも素敵でした。

― 第2部 ―

「真夏の夜の夢」
振付:フレデリック・アシュトン 
音楽:フェリックス・メンデルスゾーン

高田 茜、ベンジャミン・エラ

ロイヤルの「真夏の夜の夢」タイターニアやオベロンがアジア・アフリカ系のダンサーであると、そのちょっとエキゾチックな風貌が妖精らしく異世界感をうまく演出できる要素になっているなと思うことがあります。王子様にはちょっと違和感のあるエラのオベロンは似合っていました。
高田さんは浮遊感のある美しいアームスがぴったりなのですが、実はAプロでも冒頭ちょっと気になっていた、脚を引き上げるときの軌跡が滑らかでなく、ちょっとギアチェンジが入るような感じになるのが惜しいと思いました。
彼女のプリンシパルとして全幕通しで踊る姿をまだ見ていないので何とも言えませんが、もしかしたら万全ではなかったのかしら。

「タランテラ」
振付:ジョージ・バランシン
音楽:ルイ・モロー・ゴットシャルク

フランチェスカ・ヘイワード、マルセリーノ・サンベ

フランチェスカ・ヘイワードの良さがとてもよく出た演目でした。マルセリーノ・サンベも見た目は二人そろってナポリ人らしい風貌でぴったりなのですが、タンバリンをもって音楽にあわせてアクセントを入れなくてはならないところ、サンベは踊りに専念して音はおろそかになっているのか、決めるところが決まらずに歯がゆかったです。

「白鳥の湖」 第2幕よりパ・ド・ドゥ
振付:レフ・イワーノフ
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー

金子扶生、フェデリコ・ボネッリ

今回帯同するはずだったサラ・ラムが怪我で降板。
本来、ラムとボネッリが踊るはずだった「コンチェルト」の差し替えと聞けば仕方ないと思うしかないのかもしれませんが。
日本人ソリストの金子さんは長身で現代的な美人さんですが、夢々しさは皆無。幻想の白鳥を踊るタイプには見えず・・。彼女に合ったモダンよりの演目を選んでも良かったのではないかなと思ってしまいました。
ボネッリは本当に安定していますね。粘りのある端正な動き、王子としてのふるまいなどベテランならではのしっかりとした見せ方ができていて安心して観られました。

「ドン・キホーテ」よりパ・ド・ドゥ
振付:マリウス・プティパ
音楽:レオン・ミンクス

ヤーナ・サレンコ、スティーヴン・マックレー

今回はやはりペアではサレンコ・マックレーの炸裂する花火のようなパフォーマンスが全体を締めてくれました。
小柄だけれども引き締まって洗練されたショーマンシップあふれる二人。
何度も組んでいるので阿吽の呼吸で相手を活かし自分の見せ場も作れます。
驚くほどバリエーション豊かで、なおかつ奇をてらいすぎないマックレー。
軽やかにキトリとしての粋な表情を作りながらも、素晴らしいバランスの妙で魅せるサレンコ。
お衣装も定番の黒白赤ですが、マックレーのジャケットは金糸の刺繍のベスト付で豪華、サレンコのチュチュは赤いクラシックチュチュの内側にたっぷりと白いペチコートを重ねて縁のラインが動きにつれて揺れる感じが素敵でした。
もうこれだけで、大満足。

―第3部―


「眠れる森の美女」 ディヴェルティスマン 
振付:マリウス・プティパ 
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー

序曲: 全員
リラの精: オニール八菜
ローズ・アダージオ: 高田 茜、スティーヴン・マックレー、ベンジャミン・エラ、 
                              ジェルマン・ルーヴェ、ユーゴ・マルシャン
オーロラ姫: ミリアム・ウルド=ブラーム
王子: フェデリコ・ボネッリ
オーロラ姫と王子のパ・ド・ドゥ: ミリアム・ウルド=ブラーム、ジェルマン・ルーヴェ
青い鳥(パ・ド・ドゥ): フランチェスカ・ヘイワード、マルセリーノ・サンベ
青い鳥(コーダ): フランチェスカ・ヘイワード、マルセリーノ・サンベ、ユーゴ・マルシャン
オーロラ姫と王子のパ・ド・ドゥ: ヤーナ・サレンコ、スティーヴン・マックレー
王子: マチアス・エイマン
オーロラ姫: レオノール・ボラック
コーダ: 全員

えーと、これは次々と場面ごとに主役が変わっていく感じでの眠れる森の美女ダイジェスト版といったところですが。
いかにもリラの精タイプのオニール八菜さんは期待通りの物語の導き手。
からの高田さんがパリとロイヤルの美しい王子に囲まれて。。。の場面。
最初プログラムを見てさぞかし・・と楽しみにしていたのですがちょっと微妙でした。
まず、パリの王子二人が長身でお衣装もいかにもパリオペラ座の洒落ていてさりげなく手の込んだ刺繍の入っているクールパステルの美しいものに対し、ロイヤルの王子二人は小柄でお衣装も古風。
何より高田さんのお衣装が、これしかなかったの??と言いたくなる中途半端な丈のピンクでジョーゼットの長袖にアクセントとして濃いピンクのバラのつぼみが随所にあしらわれたもの。
きれいなアームスが隠れて、淡いパステルのパリオペ王子と並ぶとピンクの色調が濃くて野暮ったい。
踊り自体は破たんなかったものの、オペラを使わずとも高田さんが普通以上に汗びっしょりになってしまわれていることが見て取れて、そうでなくてもハの字眉で(これが抒情的な演目だと非常に効果的なのですが)ちょっと自信のない姫に見えてしまいました。

続いてのミリアムは元から小柄でウエーブの美しい金髪をきれいに結い上げてのダブルのティアラがゴージャス。
もちろん手の込んだ美しいパリオペ衣装。そろそろ貫禄が出てしまうベテランに差し掛かったミリアムですが、先ほどの不安を払しょくしてくれました^^;

白眉はマックレーとサレンコのPDDと、マチアスのソロ。
とりわけ、マチアスは存分に自分の良さを発揮する身体能力だけでない生命の輝きと王子としてのノーブルさを兼ね備えた素晴らしい演技で、若く美しい新人エトワールたちにまだ備わっていないものを見せつけてくれました。

この日は東京公演の千秋楽でしたので、カーテンコール時に上から金のコンフェッティが降り注ぎ、ダンサーたちも満足気で、客席も個々の場面全てが大満足とはいかないものの、これからの可能性や、オペラ座とロイヤルのスタイルの違いをこうして打ち眺めることのできた楽しさに心躍らせている様子で。
実際に始まる前には、行き当たりばったりな企画で、どんなものかしら・・とあまり期待をしていなかったのですが、
心楽しく良い雰囲気で見終えることができました。

バレエ団に限らず、どんな団体にも栄枯盛衰、良い時と困難な時があるものですし、黄金のヌレエフ世代のパリオペラ座、吉田都さんや熊川さん、ジョナサン・コープにダーシー・バッセル、そしてギエムの時代を観てきての今はちょっと物足りない感じがしないでもありませんが、恵まれた素質を持ったこれからも楽しみに見ていきたい人たちを観られた公演でした。

※音楽は特別録音によるテープを使用。
◆上演時間◆
第1部 14:00 - 14:40
休憩     15分
第2部      14:55 - 15:40
休憩          15分
第3部        15:55 - 16:35