彼女は、勤務先の同僚だった。
学校を出て、初めて就職し、横浜に住んだ。
勤務先が用意した同じアパートの1階に
彼女が住んでいた。
3ヶ月の研修期間が終わって、
同期の女子数人と、同じ部署に配属された。
頼りがいがあって、いつも、人の中心に居た。
大学の水産学部で、男子の中でただ一人、
実習船に乗って長い航海をしていたという彼女は、
女性とか、男性とか、人との垣根がない人だった。
裏表のない、さっぱりした、一緒に居て楽しい人であり、
一緒に働いて気持ちのよい人だった。
人見知りの私には、羨ましい存在だった。
一升瓶抱えて、遊びに来てくれたこともあったね。
同期達と、大阪の彼女の実家に泊まって、
甲子園も行ったし、新世界にまで連れて行ってもらった。
楽しかったね。
私の結婚式には、函館まで来てくれた。
嬉しかった。
寿退職なんてして、函館に引っ越して、
しかも、仕事辞めてまでした結婚もうまくいかず、
なんて説明してもよいのかもわからず、
会わせる顔をなくした私は、
心配してくれた人の手紙にも返事を書かず、
気がついたら、それまでの知り合いの殆どと、
疎遠になってしまった。
見栄っ張りだから、かもしれない。
彼女のことも、
きっと元気にやっているだろうなと思いながら、
連絡もとれないままになってしまった。
まさかね、死んじゃったなんてね。
WEBにかすかに残った足跡から、
彼女が、変わりなく、たくさんの人に好かれて、
過ごしていたことが伺われた。
変わらないね、会いたかったな。
今さら遅いことだけれど、なぜ、もっと、
人と関わることを、大切にできなかったのだろう。
・・・