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仁和寺の紅葉をパチリ (2018年11月5日撮影)
京都在住の折、共に自主稽古に励んだ茶友Yさまの茶事にお招き頂きました。
播磨・コルトレーン茶会の後にスウェーデンから帰国中のOさんとFさんをお連れしたく茶事をお願いしたのです。
月釜の開催でお忙しいにもかかわらず快諾してくださり、心から感謝しています。
京都を離れてからYさまの茶事は4年ぶりでしょうか?
11月3日(土)、京都駅からタクシーで東寺の畔にあるYさま宅へ向かいました。
広い道からの曲がり角は覚えているのですが・・・心細い思いをしながら玄関横に置かれている水桶を見つけ安堵しました。
そこはYさまが小さな家を改築なさった素敵なお茶空間・・・茶事や茶会で人をもてなすだけでなく、茶の湯の修練の道場であり、ほっとする癒しの空間であり、きっとYさまにとって特別な場所なのだろうと思います。
玄関を入ると三畳の待合があり、壁床に掛物がありました。
「紅葉に山鳥」というような日本画ですが、色とりどりの紅葉が緑楓の中にひときわ鮮やかです。
一瞬、京都の大好きな紅葉名所(真如堂、栄摂院、南禅寺と塔頭・・・)が頭をよぎって行きました。
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「紅葉に山鳥」(・・・と勝手に名付けました。掬水画)
詰Fさんが喚鐘を3つ打つと、白湯が運ばれ、腰掛待合へご案内がありました。
染付汲み出しの白湯を頂くと、見込みに寿の字を発見・・・もしや炉開きのご趣向かしら? 期待に胸が膨らみました。
炉の準備だけは済ませて旅へ出ましたが、11月初めの茶事は風炉か炉か微妙なところです。
腰掛待合で待ちながら、最初に伺った茶事から歳月が経っていることを実感しました。
露地の様子は変わりませんが、杉苔が青々と伸び、フトイが太く長く成長していました。
ご亭主が向い付けに出られ、一同、無言の挨拶を交わします。
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待合の煙草盆・・・火入の灰形が美しく調えられて
4畳半の茶室に席入りすると、炉にどっしりと大きな釜が掛けられ、濡れた釜肌が目に飛び込んできました。
炉の時季の一番の御馳走です。
「きっと炉開きのご趣向だわ!」はやる心を落ち着かせながら床を拝見すると、「う~ん・・・」一目で魅せられました。
壽
の一字、余計なものが全てそぎ落とされた清々しさを感じる御筆、紫野 八十六翁 大綱とありました。
「表装は元のものではありませんが・・・」とご亭主。
紺地揉み紙、簡素な押風袋が寂びた御軸にぴったりと寄り添っていました。
点前座に廻ると始めて見る棚(こちらの道具組は濃茶の時に詳しく・・・)があり、麗しき濡れ釜をじっくり拝見して席へ着き、Yさまへお招き頂いた喜びを伝えます。
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阿弥陀堂釜と古材の炉縁
初炭が始まり、客3人がそれぞれの事情で目を皿のようにしてYさまの炭手前を見詰めました。
下京するとすぐに暁庵の教室の炉開きの会があり、Fさんが炉の初炭を担当、暁庵もまだ炉の炭手前の稽古をしていません。
スウェーデンへ帰国前にOさんは今日庵の講習会で炉の初炭を見て頂くことになっているとか・・・。
すらすらと炭手前が進み、釜は阿弥陀堂、炉縁は松(?)の古材です。
炭斗は瓢、鐶は初めての釘鐶、羽箒は白鷹でした。
皆で炉を囲み、湿し灰の撒かれる様子、炭の置き方、羽箒の清め方をしっかり目に留めます。
香が焚かれ、すぐに薫りが部屋を馥郁と満たしていきます。
香合は丁寧な造りの萩焼・分銅亀、十二代田原陶兵衛作、香は黒方(薫玉堂)でした。
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乾山色絵竜田川図向付 (MIHO MUSEUM提供)
初炭のあと、Yさま手づくりの懐石が出され、どれも期待通り美味しく頂戴しました。
器も素敵でした・・・鯛昆布締めを乾山写の鮮やかな色絵竜田川図向付で頂き、こちらもまさに京都の秋です。
本職が作ったような京風懐石に舌鼓を打ち、特に蟹真蒸の煮物椀と炊き合せ(いもぼうと菊菜)が絶品でした。
御馳走さま!
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東寺の畔・炉開きの茶事へ・・・その2へつづく