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クマガイソウ (季節の花300)
4月26日、Tさまの「庭の花でのお持て成しの茶会」へお招き頂きました。
茶道教室のことで頭がいっぱいのある朝、ふと見た真MLメルマガ(朝刊)のお客様の募集。
「庭の花でのお持て成しの茶会」とあり、10日前のお知らせでした。
「急なお知らせにつき・・・一名様にてもお出かけ頂ければ実施いたします」
という言葉が心に留まり、その心意気に共感しました。
ちょうど私も「一人でも生徒さんが来てくだされば始動いたします・・・」
そんな心境だったのです。
予定のない日だったので、すぐにTさまの茶会へ申し込みをしました。
申し込みが殺到し、茶会はすぐに満席になりました。
客は全員真MLの会員ですが、席順に苦慮された様子が伺えました。
正客はご亭主と同じ裏千家流で一番茶歴の長いYさま、次客は表千家流のAさま、三客Yさま、四客暁庵、お詰めSさまと裏千家流が並びました。
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四畳半の茶室へ席入すると、床には
「放牛ニ桃林ノ埜}
読み下しは、桃林の埜(野)に牛を放つ (牛とは・・・ご亭主さまかしら?)
点前座へまわると、古武士の趣の裏鏊釜に華麗な花筏炉縁の取り合わせに思わずため息が・・・。
裏鏊釜の羽の力強さ、ごつごつした釜肌に魅せられ、古釜好きの血が騒ぎます。
ご亭主のお出ましを固唾をのむようにお待ちしていると、
Tさまのご挨拶があり、お召し物が何とも粋でびっくりです。
十徳にねずみ色系の着物、ちらりと見える裾回しが紅色のぼかしで色気が・・・。
まじめで怖い方かしら?と想像していた印象が私の中で変わりました。
全員女性客が見つめる中、初炭手前が始まりました。
暁庵を除く皆様は30年以上のベテランばかり、きっと初炭では緊張されたことでしょう。
でも、私はご亭主の緊張感が最高のもてなしと感激し、感謝しております。
主客の緊張の中の初炭、次いで別室での一献と昼食の懐石弁当、
手作りの煮物椀、向付、つぼつぼまでご用意いただき、御馳走さまでした。
次第にお互いの緊張が良い感じにほぐれてきて、庭への中立の頃には客同士もすっかりなじんでまいりました。
腰掛待合のある庭は惜春と初夏の花が咲き、中でも清々しいクマガイソウの群落が目を惹きます。
野の花でお持て成し・・・というご亭主の心を感じながら皆でしばしくつろぎました。
後座に席入りすると炭が真っ赤に熾り、裏鏊釜から湯気が立っています。
びっくりするほど暑く、すぐに障子を開け放ってくださって助かりました。
季節は確実に風炉へ移っていますね。
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後座の床には飛青磁の花入のみ・・・。
クマガイソウが目に焼き付いていたので、後座の床のご趣向は絶妙でございました。
茶銘は松籟の昔、益子の作家さんの茶碗(粉引のような)で甘みのある濃茶をたっぷり頂戴し、
続き薄茶でワイワイお話しながら楽しゅうございました。
客一同、幸せな晩春のひと時を味わうことができ、お持て成しの数々に感謝しております。
ご亭主Tさまと奥様に見送られ、名残惜しく帰途に着きました。
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