ヒトリシズカのつぶやき特論

起業家などの変革を目指す方々がどう汗をかいているかを時々リポートし、季節の移ろいも時々リポートします

貴志祐介さんの新作ミステリー「鍵のかかった部屋」を楽しみました

2011年09月05日 | 
 ミステリー作家の貴志祐介(きしゆうすけ)さんの単行本「鍵のかかった部屋」を読み終えました。8月上旬に都内の大型書店に行った際に、緑陰で読む本として買い求めたものの1冊です。

 単行本「鍵のかかった部屋」はミステリーの主題である“密室殺人もの”です。



 四つの短編で構成されており、各短編の長さは電車などでの移動中にお手軽に読むのにちょうどいい長さです。「佇む男」「鍵のかかった部屋」「歪んだ箱」「密室劇場」の4編が収録されています。すべて密室殺人事件で、その密室トリックを解くミステリーです。

 一番分量が多い「鍵のかかった部屋」の密室トリックが一番気に入りました。その一方で、何となく密室ミステリーを書くために、つじつまの合う密室トリックを考え出したという感じが強く、あまり現実感はありません。4番目の短編の「密室劇場」は無理矢理つくったトリックらしきものという印象を受けました。

 この単行本「鍵のかかった部屋」は2011年7月30日に発行された貴志さんの新作です。この新作を買った理由は、密室トリックの短編集「狐火の家」を読んでいたからです。



 密室ミステリー短編集の「狐火の家」の主人公は、弁護士の青砥純子と防犯コンサルタントの榎本径の迷コンビです。特に、防犯コンサルタントを名乗る榎本は、実は以前は腕の立つカギを開ける泥棒だったことを匂わせるストーリーになっています。なかなかの巧妙な設定です。当然、単行本「鍵のかかった部屋」の主人公も青砥と榎本の名コンビです。

 このミステリー短編集の「狐火の家」はとてもスラスラと読めた記憶があります。ミステリー作家の貴志さんは見かけ以上に名文家だと思います。いろいろと、よく調べているなとも感じます。

 2008年3月に発行された短編集「狐火の家」を購入した動機は、長編の「硝子のハンマー」を読んでいたからです。この単行本が青砥と榎本の名コンビが初めて登場したミステリーでした。「硝子のハンマー」の文庫版が発行された2007年10月ごろに読んだ記憶があります。密室トリックを「ああだこうだ」と長々と書いてあった記憶があります。

 この数年、貴志さんが書いた単行本はほとんど読んでいます。SFの単行本「新世界より」の上・下(2008年1月発行)はなかり面白かったです。また、話題を集めたホラー大作の「悪魔の教典」の上・下(2010年7月発行)もまあまあでした。「新世界より」は2008年の第29回日本SF大賞受賞作品を、「悪魔の教典」は第1回山田風太郎賞受賞作品をそれぞれ受賞するなど評判もよく、よく読まれた作品です。

 最初の新作ミステリー「鍵のかかった部屋」に話を戻すと、電車の中でスラスラと読めます。ところが密室トリック自身は難解なので、トリックを理解するためにもう一度読み返えざるを得ないという辺りが、貴志さんの本当にすごいところだと感じています。短編は気分転換にちょうどいい長さです。