ヒトリシズカのつぶやき特論

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日本経済新聞紙の「VW縛った『世界一』 鬼門・米戦略」を拝読しました

2015年10月04日 | 日記
 2015年10月1日に発行された日本経済新聞紙の朝刊中面に掲載された見出し「ニュース解剖 VW縛った『世界一』 鬼門・米戦略 トップに焦り」を拝読しました。

 ドイツの大手自動車メーカーのフォルクスワーゲン(VW)がディーゼルエンジン車の排ガス試験を不正なエンジン制御ソフトウエアによって逃れていたと報道されている大事件の中身がまだよく理解できません。
 
 毎日のように報道されるフォルクスワーゲンの不正問題は、いろいろな情報からモザイクのように全体像がおぼろげにみえているようですが、まだ分かりません。
 
 今回の10月1日に発行された日本経済新聞紙の朝刊の解説記事は、フォルクスワーゲンがディーゼルエンジン車の排ガス試験の不正を冒した背景を解説しています。
 
 日本経済新聞紙のWeb版である日本経済新聞 電子版では、見出し「VW縛った『世界一』 鬼門・米戦略 トップに焦り」と報じています。


 
 この解説記事は、このディーゼルエンジン車の排ガス試験を不正なエンジン制御ソフトウエアによって隠す不正は2006年前後に起点があったと推定しています。

 この解説記事に載っている自動車メーカーの米国ゼネラルモーターズ(GM)と日本のトヨタ自動車、ドイツのフォルクスワーゲンの3社の世界市場での新車販売台数の推移が背景の一つを伝えています。
 
 2005年から2006年にかけては、ゼネラルモーターズは約900万台、トヨタ自動車は800万台から900万台と成長し、販売台数世界一の座を争っていました。これに対して、フォルクスワーゲンは500万台から600万台へと、まだ首位のゼネラルモーターズを脅かす存在ではありませんでした。

 その理由は、フォルクスワーゲンは米国市場で販売台数が伸び悩んでいました。その一方で、新興市場である中国やインドでは販売台数を伸ばしていました。この中国やインドでの販売台数の伸びを加速し、鬼門とされた米国市場で販売台数を増やす決め手が「環境性能に優れたディーゼルエンジンを開発する」という『ブルー・モーション・テクノロジー戦略』でした。

 ライバルとなる日本のトヨタ自動車はハイブリッド車の「プリウス」を販売し、米国市場で環境性能の良さを訴えていました。

 このような状況の時に、米国政府は「排ガス対策を強化する環境規制『Tier2Bin5』という厳しい規制を2009年から導入する」と発表します。この環境規制は1キロメートル走る際に、窒素酸化物(NOx)の排出量が0.0044グラム以下という厳しいもので、当時の欧州規制の約4倍以上厳しいものでした。

 この新環境規制をクリアするには、フォルクスワーゲンは『ブルー・モーション・テクノロジー戦略』を成功させ、環境性能に優れたディーゼルエンジンを実現するしか道はありませんでした。

 この環境性能に優れたディーゼルエンジンを開発する研究開発は予想以上に難問だったようです。

 この結果、ドイツの自動車部品大手がエンジン試験用に作成したエンジン制御ソフトウエアを、実車に不正に搭載することを2005年から2006年ごろに決めたようです。最近、この不正問題で辞任した、フォルクスワーゲンの前社長のマルティン・ヴィンターコーンさんが社長に就任したのは2007年です。

 この前社長のマルティン・ヴィンターコーンさんは2008年に「世界販売台数で、2018年までに1000万台を達成し、トヨタ自動車を抜いて世界一になる」と宣言します。

 フォルクスワーゲンの「環境性能に優れたディーゼルエンジン」搭載車はその性能の良さから販売台数を伸ばし、2007年以降に急成長し、2014年にはゼネラルモーターズとトヨタ自動車とほぼ肩を並べ、フォルクスワーゲンは1000万台を達成します。

 2007年からフォルクスワーゲンは販売台数をほぼ倍増させます。ものすごい成長率です。最初はCTO(最高技術責任者)などの技術系幹部が行った不正だったようですが、次第に戻れなくなった図式が読み取れます。経営陣からの販売台数の目標達成の圧力が大きく、不正の温床になった模様です(この辺の具体的なことは、今後の報道を待つしかありません)。

 この結果、フォルクスワーゲンは米国でのリコール費用の引当金として65億ユーロ(約8700億円)を計上したそうです。そして、米国でのフォルクスワーゲン車の買い控えなどによる販売利益の減少などが予想されています。米国では、集団訴訟という問題も起こりそうです。

 最近、評価を上げているのは日本の自動車メーカーのマツダです。同社は、日本で販売している“クリーンディーゼル”搭載車の米国販売を延期しました(フォルクスワーゲンの不正事件以前です)。マツダによると、「世界一厳しい米国の環境規制『Tier2Bin5』に対応させる技術は完成しているが、車としての走行性能などとの両立という面で、さらに技術開発を続けている」ようです。

 このことは、米国の環境規制『Tier2Bin5』対応の技術開発の難易度を伝える話になっています。

 フォルクスワーゲンのディ-ゼルエンジンでの不正問題の実態はまだ多くが霧の中です。今後の、報道などを読み続けたいと思います。

(追記)
 フォルクスワーゲンが米国市場で販売した自動車(乗用車)の中で、違法なソフトウエアを搭載していたとされている車は2009年型から2015年型までの「ゴルフ」「ジェッタ」「ビートル」と、2014年型から2015年型までの「パサート」と、報じられています。またフォルクスワーゲン傘下のドイツのアウディが販売した2009年型から2015年型までの「A3」のディーゼル仕様車を含めると、合計約48万2000台にのぼるそうです。

 米環境保護局(EPA)の発表資料によれば、これらの車種に搭載されているエンジンECU(電子制御ユニット)のソフトウエアには、ある種の“スイッチ”が組み込まれており、このスイッチが「ステアリングの位置」「車速」「吸気圧」などからEPAの排ガス試験中であると判断すると、ECUが「試験用」の制御ソフトウエアを走らせて、排ガスに含まれる有害物質のレベルを基準値以下に抑えるのだそうです。