ヒトリシズカのつぶやき特論

起業家などの変革を目指す方々がどう汗をかいているかを時々リポートし、季節の移ろいも時々リポートします

日経ビジネスonlineの「現場ルポ:シリア難民と横断したギリシャ」を拝読しました

2015年10月05日 | 日記
 2015年9月30日にWebサイトの日経ビジネスonlineに掲載された「現場ルポ:記者がシリア難民と横断したギリシャ本土560km」を拝読しました。

 日経ビジネス編集部の記者が、ギリシャのエーゲ海の代表的な観光地であるミコノス島の港で知り合ったシリア難民と数日間にわたって行動をともにした現地ルポの記事です。ギリシャ北部のマケドニア(旧ユーゴスラビア共和国)国境までの道程を共にした現場ルポです。

 最近のニュースの中心テーマの一つは、中東やアフリカなどから欧州に押し寄せる難民問題です。ギリシャやオーストリアなどの国境付近で繰り広げられる、国境を越えようとする難民問題などが伝えられます。しかし、その実態はあまりよく分かっていません。

 今回拝読した、シリア難民と一緒に横断した現場ルポは、「前編」「後編」で構成され、両方ともに2015年9月30日にWebサイトに公開されました。



 現場ルポは、日本でもギリシャの観光地として人気のリゾート地であるミコノス島の港から始まります。観光シーズンが終わり始めた9月に、その港に到着するフェリーは観光客と一緒に、難民が下りてきます。この難民の多くはリュックサックを背負い、スーパーのビニール袋をぶら下げているので見分けられるそうです。

 下船した難民に向かって、ギリシャの“旅行代理店”の男性が話しかけ、その店に向かいます。このギリシャの“旅行代理店”は、難民相手に向かいたい国境行きの専用バスを手配していました。
 
 経済危機に悩むギリシャの中で、この“旅行代理店”は毎日、数100人を国境行きの専用バスを仕立て、一人当たり約50ユーロの運賃を取り、日本円に換算すると1日当たり約65万円を稼いでいます。
 
 興味深いのは、到着する難民たちは、ギリシャの“旅行代理店”の信用度をフェイスブックやツイッターなどの口コミによって優劣をつけている点です。スマートフォンを30分程度使えるSIMカードを購入し、その“旅行代理店”の信用度を調べるからです。

 日経ビジネス編集部の記者は、その“旅行代理店”の外で、シリアから来た難民の一人と話をし、一緒に国境まで向かう話をまとめます。

 このシリアから来た難民がギリシャに“入国”する話の実態には驚かせられます。トルコからボートでエーゲ海を渡り、目指す島に近づくと、乗ってきた船を自分たちで壊し、転覆させます。そして、ギリシャの警備隊に救援してもらいます。こうすると、勝手にギリシャに入国したことにはならず、ギリシャ警察に保護された難民の一部(たぶんテロリストではないと判定された者は)は、顔写真と指紋を採取され、国境までの移動が許された身分証明書が発行されます。この証明書が、いわばギリシャを移動する通行証になるという仕組みです。

 一方、エーゲ海を渡る難民はおぼれ死ぬ方もいます。痛ましい事実です。島に到着する前に、悪徳ブローカーが仕立てたオンボロの難民船の転覆事故が増えているそうです。

 今回知り合いになった、約50ユーロを支払ってバスで次の国境に向かう難民は、裕福な方々だそうです。
 
 今回の現場ルポは、難民の通過国となっているギリシャの実態です。難民相手の“ビジネス”によって、経済問題を抱えているギリシャ国民の一部は仕事を得ています。こうした事態に対して、EU加盟国の一部は、流入する難民が減らない理由の一つが、ギリシャの国境管理の甘さにあると考えています。このために、多数の難民流入の「窓口」となっているギリシャなどの国境管理も強化する計画です。
 
 日ごろのEU加盟国で繰り広げられている難民問題のニュースでは分からなかった現地の実態の一部を、この現地ルポから知りました。現在、欧州各地を揺さぶっている難民問題は、抜本的な解決策が見いだせないという実態を知っただけです。紛争国から避難する難民問題は底なしの問題です。