私のアメリカ論:
昨26日の産経新聞の「正論」に「『日本の科学力が高い』は幻想だ」との中村祐輔氏の論文が掲載されたので、それに触発されて、私の経験から「アメリカの技術力の問題点」を振り返ってみようと思い立った次第。
アメリカは実質的に敵に塩を送っているのではないか:
ここでの議論は我が友YM氏の8年間に及ぶアメリカの有名私立大学のビジネススクールで教えていた経験談からの引用であるとお断りしておく。広く知られている事で、アメリカのIvy Leagueの大学のビジネススクールでは、多くの外国人を受け入れている。中でも学力に優れ英語力も高いのが中国人、インド人、韓国人、シンガポール人、中近東系等の順になるとかであるそうだ。だが、残念ながら、我が同胞の留学生が少ないのも問題だろうと、彼は指摘していた。彼らの問題点はどうやら英語力にもあるようだ。
YM氏が見てきた限りでは、中国人たちは嘗ては自国の政権を信用せず、MBA取得後もアメリカに止まって職を求める傾向があったのだったが、今や帰国する者が非常に多くなってきた由だ。。即ち、それだけアメリカ式の最先端の経営学を修得した若手が激増しているのだと言う事になる。その流れからすれば、もしかすると、理工系の留学生たちも学業を終えれば中国に帰っているのではないのだろうかと考えられる。
しかも、中国政府は留学生の高額な学費を援助しているとも別な佳路で聞かされた。私でさえ、この状況下ではアメリカは中国の若手をアメリカの頭脳の成果を活かして教育しているのと同じで、それでは後難を恐れずに言えば「アメリカは敵に塩を送っている」のと同じ事をしていると思えて仕方がない。懐が深いというか、あるいは人が良すぎるのかの何れではないか。
韓国勢は元々財閥のオウナーの子弟が圧倒的に多く、MBA取得後は必ず帰国して自社の経営に従事するそうだ。サムソンのこの度確か有罪になった副会長もハーバードのMBAであり、その縁でYM氏の知人であるとか。即ち、韓国にもアメリカ式最新の経営学を学んだ経営者が多いという事なのだ。現に、私がな長年交流してきた中小財閥の会長のご子息もお孫さんも全てUCのバークレーかLAのビジネススクールに留学していた。韓国は兎も角として、これでは、アメリカは中国にも韓国にも近代経営の粋を提供している事になっているのだ。インドにMBAが増加するのは当面の問題ではないとは思うが、「一方、我が国は・・・」ではないのか。
技術の面を見てみよう:
私は「アメリカの最大と言っても良い弱点はR&D、即ち新たに創造した技術(テクノロジーか)の分野でにおける開発能力はアメリカ人のみならず世界からも優れた人材が集まって、世界最高の水準を間違いなく維持していると見て誤りではないだろう。それだけではなく、アメリカの強みは技術開発には惜しむ事なく投資をする事だ」と見ている。しかしながら、その新技術も「商業生産の段階に降ろした場合に低質の労働力が禍して、屡々折角の製品が世界に通用する品質に至らずに終わる事がある」のが問題なのである。
解りやすい例を挙げれば自動車産業がある。自国で定めた排ガス規制すら達成できずに、日本車やドイツを主体とする欧州車に市場を席巻されてしまったではないか。この最大の敗因がUAWの労働力の質にあったのは遍く知られた紛れもない事実。我が製紙の分野でも既に世界の大勢に遅れてしまっているのも紛れもない事実。遅れていなければ、オバマ政権時代に中国とインドネシア等の新興勢力からの印刷用紙の輸入を100%を超える高関税を科して締め出す事などなかったはずだ。
尤も、そこにはアメリカ式経営方針である「十分に利益が上がらない場合には、近代化も合理化への設備投資はしない」との大原則を死守せざるを得なかった紙製品市場の過当競争で利益が上がってこなかったとの実態もあった。この為に、現在のように中国等の新興勢力の世界最新の設備と技術と労働力の質に負けて、大手のメーカーの多くがChapter 11(我が国の民事再生法)による保護を請願して倒産乃至は整理してしまっていた。
アメリカの方向転換:
そこで、アメリカの若き精鋭たちは方向を変えて、GAFAMのように自社では物を製造しない業界に進出したのだと、私は見させられてきた。そこにはビル・ゲイツやステイーブ・ジャブズ等々の優れた頭脳の持ち主が現れたのだった。以下はは単なる私の回顧談。何時の事だったか、シアトル市の南にある大ショッピングセンターの駐車場の外れに小さな建物があって、Microsoftと言う看板が出ていた。居合わせた同僚に「あれは何の会社」と尋ねると「確かコンピュータのソフトだったかを作っているとか」という答え。「そんなものが商売になるのか」と2人で訝り合ったのだ。
その後、何年経ったか、副社長所有のキャビン付クルーザーで何度もお客様の接待で、シアトル郊外のユニオン・レークでクルージングを楽しんだ。すると、何時も岸辺に見えるのが広大な土地(5万坪とか)に建築中の超超豪邸が何年かかっても工事が終わらないのだった。誰の家かと聞けば「ビル・ゲイツのだよ」だった。この家はクルージングの際に必ず近寄ってその凄さを鑑賞するようになった名物。シアトル市の南の外れには既に解体されたキングドームがあったが。その近所にあった汚いビルがスターバックスとアマゾンだった。
因みに、往年にはスターバックスは我が社の広大なカフェテリアの片隅で、旗を立てて小さなスタンドでコーヒー売り始めていた。「あれは何ですか」と副社長に尋ねると「苦いのが売り物のコージー屋だ」と教えられたのを未だに覚えている。
アメリカの現代の優秀な経営者たちが労働力の質の問題が、アメリカの海外市場における競争力を弱体化させた原因と意識していたのかどうかなどを知る由もないが、彼らの物を作らない事業を目指した方向性は間違っていなかったのだろう。それがGAFAMを今日あらしめたにだろうと、今になっては解る。
その流れから取り残された労働者階層の支持を巧みに取り付けたトランプ氏のやり方は素晴らしいとは思うのだ。トランプ大統領が彼らを如何に時代に取り残されないように教育していくかが課題だと思っていたのだが、あの落選の憂き目に遭ってしまった。課題とは、私が身を以て体験した識字率の向上や英語も良く出来ない者たちの初等教育の改善等にあるのと言えるだろう。私は事はそれだけでは済まないと危惧する。即ち、異邦人というか多くの少数民族が著しく増加したのも、組合員の技術と労働力の質の改善の為には、更なる負担となって行く事が容易に想像できるから。
ここまでに述べてきた労働力の質を改善するのは生易しい課題ではない。我が社と言うか我が事業部ではやり遂げるしか選択肢がないと解っていた。だが、当事者の一人だった外国人の私には、大いなる負担だったが事業部全員でやり遂げた。困難だった理由は簡単で、英語ももろくに解らない人たちに「国際市場における競争能力の強化」などを如何にかみ砕いても、1時間や2時間の話し合いでは徹底する訳がないのだから。彼らには「職の安定と安全」から説き起こしていくしかなかったのだ。
その我が社も既に紙パルプの事業からの撤退を数年前に完了してしまっている。矢張り、5Gかそれ以上の時代に向かっているのであれば、志向すべきはGAFAMのような方角なのかも知れない。永年の友人である元はと言えば電器会社だった世界的企業の元副社長は「うちは今では確実に電器の会社ではない」と振り返っていた。
昨26日の産経新聞の「正論」に「『日本の科学力が高い』は幻想だ」との中村祐輔氏の論文が掲載されたので、それに触発されて、私の経験から「アメリカの技術力の問題点」を振り返ってみようと思い立った次第。
アメリカは実質的に敵に塩を送っているのではないか:
ここでの議論は我が友YM氏の8年間に及ぶアメリカの有名私立大学のビジネススクールで教えていた経験談からの引用であるとお断りしておく。広く知られている事で、アメリカのIvy Leagueの大学のビジネススクールでは、多くの外国人を受け入れている。中でも学力に優れ英語力も高いのが中国人、インド人、韓国人、シンガポール人、中近東系等の順になるとかであるそうだ。だが、残念ながら、我が同胞の留学生が少ないのも問題だろうと、彼は指摘していた。彼らの問題点はどうやら英語力にもあるようだ。
YM氏が見てきた限りでは、中国人たちは嘗ては自国の政権を信用せず、MBA取得後もアメリカに止まって職を求める傾向があったのだったが、今や帰国する者が非常に多くなってきた由だ。。即ち、それだけアメリカ式の最先端の経営学を修得した若手が激増しているのだと言う事になる。その流れからすれば、もしかすると、理工系の留学生たちも学業を終えれば中国に帰っているのではないのだろうかと考えられる。
しかも、中国政府は留学生の高額な学費を援助しているとも別な佳路で聞かされた。私でさえ、この状況下ではアメリカは中国の若手をアメリカの頭脳の成果を活かして教育しているのと同じで、それでは後難を恐れずに言えば「アメリカは敵に塩を送っている」のと同じ事をしていると思えて仕方がない。懐が深いというか、あるいは人が良すぎるのかの何れではないか。
韓国勢は元々財閥のオウナーの子弟が圧倒的に多く、MBA取得後は必ず帰国して自社の経営に従事するそうだ。サムソンのこの度確か有罪になった副会長もハーバードのMBAであり、その縁でYM氏の知人であるとか。即ち、韓国にもアメリカ式最新の経営学を学んだ経営者が多いという事なのだ。現に、私がな長年交流してきた中小財閥の会長のご子息もお孫さんも全てUCのバークレーかLAのビジネススクールに留学していた。韓国は兎も角として、これでは、アメリカは中国にも韓国にも近代経営の粋を提供している事になっているのだ。インドにMBAが増加するのは当面の問題ではないとは思うが、「一方、我が国は・・・」ではないのか。
技術の面を見てみよう:
私は「アメリカの最大と言っても良い弱点はR&D、即ち新たに創造した技術(テクノロジーか)の分野でにおける開発能力はアメリカ人のみならず世界からも優れた人材が集まって、世界最高の水準を間違いなく維持していると見て誤りではないだろう。それだけではなく、アメリカの強みは技術開発には惜しむ事なく投資をする事だ」と見ている。しかしながら、その新技術も「商業生産の段階に降ろした場合に低質の労働力が禍して、屡々折角の製品が世界に通用する品質に至らずに終わる事がある」のが問題なのである。
解りやすい例を挙げれば自動車産業がある。自国で定めた排ガス規制すら達成できずに、日本車やドイツを主体とする欧州車に市場を席巻されてしまったではないか。この最大の敗因がUAWの労働力の質にあったのは遍く知られた紛れもない事実。我が製紙の分野でも既に世界の大勢に遅れてしまっているのも紛れもない事実。遅れていなければ、オバマ政権時代に中国とインドネシア等の新興勢力からの印刷用紙の輸入を100%を超える高関税を科して締め出す事などなかったはずだ。
尤も、そこにはアメリカ式経営方針である「十分に利益が上がらない場合には、近代化も合理化への設備投資はしない」との大原則を死守せざるを得なかった紙製品市場の過当競争で利益が上がってこなかったとの実態もあった。この為に、現在のように中国等の新興勢力の世界最新の設備と技術と労働力の質に負けて、大手のメーカーの多くがChapter 11(我が国の民事再生法)による保護を請願して倒産乃至は整理してしまっていた。
アメリカの方向転換:
そこで、アメリカの若き精鋭たちは方向を変えて、GAFAMのように自社では物を製造しない業界に進出したのだと、私は見させられてきた。そこにはビル・ゲイツやステイーブ・ジャブズ等々の優れた頭脳の持ち主が現れたのだった。以下はは単なる私の回顧談。何時の事だったか、シアトル市の南にある大ショッピングセンターの駐車場の外れに小さな建物があって、Microsoftと言う看板が出ていた。居合わせた同僚に「あれは何の会社」と尋ねると「確かコンピュータのソフトだったかを作っているとか」という答え。「そんなものが商売になるのか」と2人で訝り合ったのだ。
その後、何年経ったか、副社長所有のキャビン付クルーザーで何度もお客様の接待で、シアトル郊外のユニオン・レークでクルージングを楽しんだ。すると、何時も岸辺に見えるのが広大な土地(5万坪とか)に建築中の超超豪邸が何年かかっても工事が終わらないのだった。誰の家かと聞けば「ビル・ゲイツのだよ」だった。この家はクルージングの際に必ず近寄ってその凄さを鑑賞するようになった名物。シアトル市の南の外れには既に解体されたキングドームがあったが。その近所にあった汚いビルがスターバックスとアマゾンだった。
因みに、往年にはスターバックスは我が社の広大なカフェテリアの片隅で、旗を立てて小さなスタンドでコーヒー売り始めていた。「あれは何ですか」と副社長に尋ねると「苦いのが売り物のコージー屋だ」と教えられたのを未だに覚えている。
アメリカの現代の優秀な経営者たちが労働力の質の問題が、アメリカの海外市場における競争力を弱体化させた原因と意識していたのかどうかなどを知る由もないが、彼らの物を作らない事業を目指した方向性は間違っていなかったのだろう。それがGAFAMを今日あらしめたにだろうと、今になっては解る。
その流れから取り残された労働者階層の支持を巧みに取り付けたトランプ氏のやり方は素晴らしいとは思うのだ。トランプ大統領が彼らを如何に時代に取り残されないように教育していくかが課題だと思っていたのだが、あの落選の憂き目に遭ってしまった。課題とは、私が身を以て体験した識字率の向上や英語も良く出来ない者たちの初等教育の改善等にあるのと言えるだろう。私は事はそれだけでは済まないと危惧する。即ち、異邦人というか多くの少数民族が著しく増加したのも、組合員の技術と労働力の質の改善の為には、更なる負担となって行く事が容易に想像できるから。
ここまでに述べてきた労働力の質を改善するのは生易しい課題ではない。我が社と言うか我が事業部ではやり遂げるしか選択肢がないと解っていた。だが、当事者の一人だった外国人の私には、大いなる負担だったが事業部全員でやり遂げた。困難だった理由は簡単で、英語ももろくに解らない人たちに「国際市場における競争能力の強化」などを如何にかみ砕いても、1時間や2時間の話し合いでは徹底する訳がないのだから。彼らには「職の安定と安全」から説き起こしていくしかなかったのだ。
その我が社も既に紙パルプの事業からの撤退を数年前に完了してしまっている。矢張り、5Gかそれ以上の時代に向かっているのであれば、志向すべきはGAFAMのような方角なのかも知れない。永年の友人である元はと言えば電器会社だった世界的企業の元副社長は「うちは今では確実に電器の会社ではない」と振り返っていた。