何処をどうすれば良いのか:
改革すべき点は多々ある。しかも、思い切った手法を採れば如何なる結果となるかを事前に十分に検討しておく必要があると思う。私はもしかすると容易ならざる結果が生じるのではないかとまで考えている。そこで、先ず結果を怖れずに挑戦していきたい事柄を考えて見た。
二重構造(いや十重二十重構造か)の解消:
製造業を始めとして多くの産業界では、製造業や元請けから最終需要家や消費者までに数多くの段階を踏んで製品が流れていると思う。先ほども例に挙げた事で、印刷業界には今でもか嘗てというべきか不明だが、得意先を持たずに大手の業者からの外注だけで成り立っている中小の優れた技術を持つ印刷業者がある。建設業界には元請けから曾孫請けやその先もあるようだ。
そういう産業構造をデイヴィッド・アトキンソン氏が繰り返して指摘していたように整理統合して、少なくとも「小」をなくして中企業のみに収斂していくというのも一つの方策だろう。だが、私が夢想している改革は「大手メーカーか元請け会社の傘下にある子会社や下請け業者を全て吸収させてグループ化し、ホールデイング会社となり、全責任を以て運営して貰う構造にする」方式である。傘下にある全企業を吸収しきれない場合には、ホールデイング会社を幾つかに分岐させれば良いだろう。こうすれば不当な下請けいじめなど解消出来るのではないのかな。
その再編成が完成した後では、ホールデイング会社は、元は下請け会社だった企業に対しては自社の経営規模を活かして原材料等を購入して支給し、人件費もグループ内で平準化し、製造原価に適正な利益を付けて購入するようにするようにしていけば良いのではないか。
営業面では、グループ内の各社はコストの上昇分を躊躇う事なく製品価格に盛り込んで販売していく事が肝要だ。こうする事で十分な利益が確保出来るので、その中から社員の給与も遅滞なく増額して行かねばならない。更に設備の合理化と近代化の投資も怠ってはならないのだ。給与を十分に潤沢に上げていけば、可処分所得も増加して消費に回っていくだろう。
中小企業の整理・統合・再編成:
私はアトキンソン氏の主張というか指摘は極めて尤もな事だと思って聞いている。整理・統合してある程度以上の規模に再編して纏めていくのも必要だと思う。問題は都内の各地に見られるように、一つの地域内に多種多様の業種の従業員が単数の小企業を、どうやって物理的に纏めて行くではないのか。その為には似通った技術を備えた小企業を何処か一ヶ所にでも纏めない事には、再編成はなり立たないと危惧するのだ。
しかしながら、小企業集団が一社に纏まっても、取引先の大手企業が複数に分かれていては価格交渉も容易ではないと思えてならない。即ち、親企業や元請け会社が素直に中小企業の原価構成を認めて、それに応分の利益を加えた価格で購入しない限りは、再編成の効果は挙がってこないと思う。それ即ち、大手企業がコストの上昇分を末端までに遅滞なく転嫁せねば成り立たない事なのだ。そういう類いの一斉値上げを最終の消費者が受け入れる為には、新卒の初任給が20年も上がっていないようでは、成り立たないだろう。
結論:
上述のようにして、安い国日本から脱却して良い國になって、国民が良い生活を楽しめるようになったとすれば、諸物価は少なく見積もっても現在の倍以上になってしまうのではないのかと危惧するのだ。俗には「鶏が先か卵が先か」などと言われているが、十重二十重構造を改革して、中小企業を整理統合して再編成する事から先に着手すると、大変な物価上昇になるだろうという事。しかも、我が国のように多くの分野で一次産品から非耐久消費財を輸入に依存していては「為替リスク」も織り込んでおかねばならない事を考慮して置く必要がある。
大幅な物価上昇は困るのは確かだが、このまま「安い国・日本」のままでいて良いとは到底思えない。そこを新資本主義だけで乗り越えていけるのだろうか。眼前にロシアのウクライナ侵攻で色々な不都合が生じている。それに素早く効率的に対応する事も絶対必要だが、安くなってしまった国への抜本的な対策も喫緊の課題だろう。