新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

甲子園の野球に思う事:

2022-03-29 09:04:54 | コラム
私は前世紀の遺物かな?

目下甲子園で開催されている高校野球を適当に見ている。そこで、今回は野球の質を離れた視点から高校野球、ひいては我が国の野球を色々な面から観察してみることにした。

名前:
姓名の「名」の方のことであるが、決して「下の名前」などという戯けた言い方はしない。私はNHKの中継放映で先に守る方の学校の選手の氏名をその漢字の表記と共に紹介するのを、興味を以て聞いている。そこに表記される生徒たちの名前の過半数は読めないというか、漢字(当て字?)と聞こえてくる音とは一致しないので困る。それらは最早「キラキラネーム」の域を脱していて、親御さんたちの想像力というか物語を創り上げている能力に感心するだけだ。

私はこれまでに繰り返してこの種の「読めない」か「理解不能」な命名を、国語力の低下か教養不足と看做して批判してきた。だが、事ここに至れば新時代の若き親御さんたちの「名前の新時代を築き上げよう」との意図の表れと解釈すべきだろうかと考えるようになった。即ち、20世紀を生き抜いてきた私のような年齢層にある者が批判すべき問題ではないのだ、と考えるべきかとすら見ている。恐らく、新時代の親御さんたちは「前世紀の遺物は時代の変化に付いてきていないのだから、黙っていろ」などと言っているのかも知れないのだから。

野球界の仕来り:
もう何十年も前のことだが、野球部以外に属する高校生が「野球って何のかんのと、うるさい仕来りというか決め事があって面倒だ」と言うのを聞いたことがあった。その空気は今でも連綿と続いていて、例えば甲子園に登場する生徒たちは、ごく僅かの例外を除けば、皆丸刈り(坊主頭?)なのだ。昭和一桁生まれの私でさえ「もう戦時中ではないのだから、普通に髪を伸ばすことを認めても良いのでは」と感じてしまう。私には丸刈りと野球技術の進歩と向上が結びついているとは思えないし、全員打って一丸となって同じ髪型とするのを、仕来りとするべきことかなと思って見ている。

古い話になるが、我が湘南高校の野球部がたった一度だけ夏に登場して優勝してしまった昭和24年(1949年)には、「湘南には長髪の者がいる」という話題を提供していたのが忘れられない。丸刈りでなくても優勝できたのだった。

「お辞儀」も取り上げてみたい。試合が終了すると「野球は教育の一環である」とされているので、両校は係の方の先導の下に控え室へと一列に並んで去って行く。その前に全員が必ず脱帽して球場に一礼している。美しい礼儀であり美風であると思う。だが、我々の頃には(「蹴球界には」と言うべきか)こういう礼節を尊ぶ習慣はなかったと思う。高野連はあの礼儀を義務化しているのだろうか、それとも自発的に決め事にしたのか。中にはおざなり礼をする者もいるので、そう言いたくなったのだ。

また、余り注意して見ていなかったが、あの負けた方の学校の生徒たちが涙ながらに甲子園の砂をかき集めている絵が出なくなった。私は個人的にはあの情緒的な習慣を歓迎はしていないのだ。聞いた話では、あの場の砂は鳴尾浜から運ばれているらしい。

校歌:
NHKの決まりか高野連の要望か、必ず2回には対戦中の両校の校歌が紹介され、試合終了後には「勝利校の栄誉を称えて」校歌が演奏される。その仕来りを云々するのではない。私が取り上げるのは「約半数の学校の校歌に母校という熟語が入っていること」なのだ。母校とは「出身校」のことで、現在在籍している学校のことではない。作詞家の誤認識か、熟語の美しい語感に惹かれたかの何れかだろうと思って見ている。だが、困ったことに東京六大学の校歌の中でも三大学では間違いなく「我が母校」となっているのだ。「学び舎」にすれば良いのだと思うが。

甲子園球場の芝生:
余談だが、野球とは何の関係もない私は、あの非常に良く手入れされた素晴らしい芝生を歩いたことがあるのだ。「何でかっ」てか。1980年代の初期に甲子園ボウルでグラウンド内に観客用のスタンドが設けられたことがあったし、その後にもフットボール観戦でグラウンドを横切ったことがあったのだ。私がここで採り上げたいのは「何故甲子園球場は未だに内野を土の儘にしておくのか」という点だ。今や、人工芝が普及したことも手伝って内野が土だという休場は少なくなったし、一般的に全体が芝生であるのが普通だ。

甲子園のグラウンドの整備の良さは恐らくworld classだと見ているし、あれほど見事に美しく外野の芝生を仕上げているグラウンド整備の会社があるのだから、もう好い加減に「内野を土で」から脱却しても良いのではと言いたくなる。甲子園がそうしているのを真似たのか、芝生の経費を節約したのか、地方の野球場には未だに「内野が土」となっている例が多い。尤も、高校で野球部専用のグランドを設けて芝生にしているところは少ないのではないか。それでも、人工芝にしている都内の私立校はあるが。