“slang”と“swearword”は違う:
先日“swearword”の説明をした際に「遺憾ながら、我が国では屡々“slang”即ち「俗語」と混同されている」と指摘した。そこで、今回は「俗語」とは如何なるものかを解説しようと思う。
最初に確認しておくと「“slang”(スラング)は「俗語」乃至は「隠語」か「符丁」か「記号」のことであって我が国で遍く“swearword”=「汚い言葉」と混同されるか誤解されている」ということである。即ち、困ったことにスラングとswearword(「汚い言葉」)とを混同されていることが多いという意味だ。その結果、アメリカ人は「下品なスラングを多用する」という誤解が生じていた。松本清張氏が「アメリカ兵が下品なスラングで話し始めた」と書いておられたのは良い(悪い?)であろう。アメリカ兵隊たちには確かに両方を多用する者が多いが、松本氏がこの二つの違いをご存じではなかったし、聞き分けるだけの英語についての理解が出来ていなかったようだ。
日本語にも勿論「符丁」も「隠語」も「記号」もあるし、それらを「汚い言葉」と看做す習慣もないと思う。例えば、昭和20年代の三越には隠語があって店員同士ではお客様を「前主」と呼び、「手洗い」を「遠方」などと称していた。これはお客様の前で「お手洗いに行って来ます」などと聞こえるように言うのは失礼であるとされ「遠方に行って来ます」などと同僚に断るように教育されていた。因みに、お客様用の手洗いは「前主遠方」となる。
ここでもOxfordの助けを借りて「スラング」とは如何なる言葉を言うかを考えて見よう。この辞書には“Very informal words and expressions that are more common in spoken language, especially used by a particular group of people, for example, children, soldiers, criminals, etc.”とある。ジーニアス英和には「特定の社会や職業の通用語、専門用語。隠語、符丁、合い言葉」とある。何だ、犯罪者も使うのならば下品ではないか-と言いたいだろうが、それは別途swearwordの解説を読んで頂ければ解って貰えると思う。
slangの例を挙げて見よう:
booze=酒というかアルコール飲料を言う。「私は酒は嫌いだ」と言いたければ“I don’t care for booze.”のようになる。
buzz.=ブザーを鳴らすと言う意味だが、“Give me a buzz.”で「電話をくれ」なのだが、“buzz”が俗語である。この代わりに“ring”を使っても同じことになるので、ringも俗語に入れて良いだろう。勿論、正式には“call”と言うべきだ。
bookie=私設馬券屋、所謂「ノミ屋」のこと。
cabby or cabbie=「タクシーの運転手」。タクシーは“taxi cab”というから“cab”を縮めたのだろう。
cop=「警官」なのだが、その謂われは警官のバッジが銅製なので、“copper”(「カパー」であって残念ながら「コッパー」ではない、念のため)を短縮したと聞いたことがあった。
Fedex=正式にはFederal expressという宅配便の固有名詞だが、これをこのように動詞に使って“Fedex it.”などと言えば「急ぎだから宅配便で送っておけ」となる。“courier service”のことで「クーリエ」などとも言われている。
gas=ガソリンで、元は“gasoline”なのは言うまでもあるまい。故に、「ガソリンスタンド」はgas stationとなる。「ガソリン・スタンド」はカタカナ語だから要注意。
goody=お菓子だのキャンディのこと。
newsstand=街頭などの新聞雑誌売り場のことだが、「ガソリンスタンド」はここにある「スタンド」を取り入れたのだと推定している。
pop=炭酸系飲料のことで些か古い言い方だ。soft drinkの代わりに使われている。
rookie, rooky=「新入り」、「新米」、「新兵」の意味になる。カタカナ語では「ルーキー」となっているが、これはカタカナ語製造業者の表記の誤りであり「ルッキー」か「ルキー」の方が英語の発音に近いのだ。大体からして、“book”と書いて「ブーク」と言うかという話だ。
私は以下は一寸趣が違うが、アメリカの硬貨の俗称もslangの範疇に入ると思っている。
buck=ドルである。10㌦ならば複数の“s”を付けねばならない。
quarter=25セント。すなわち、4分の1である。
dime=10セントなのだが、“a dime”とすると否定的に使って“I don’t care a dime about that matter.”で「そんなことちっとも気にしない」となって、ややidiom的な感も。
nickel=5セントになる。
penny=1セントである。
gotcha=(相手が言うことが)「解った」であり、誰かを「見付けた」ないしは「捕まえた」という意味に使う。I’ve got you.を短縮した形。これは上品ではないだろう。
ここまでの例で「汚い言葉」とは全く異なっている種類の表現であると理解して頂けただろうか。
先日“swearword”の説明をした際に「遺憾ながら、我が国では屡々“slang”即ち「俗語」と混同されている」と指摘した。そこで、今回は「俗語」とは如何なるものかを解説しようと思う。
最初に確認しておくと「“slang”(スラング)は「俗語」乃至は「隠語」か「符丁」か「記号」のことであって我が国で遍く“swearword”=「汚い言葉」と混同されるか誤解されている」ということである。即ち、困ったことにスラングとswearword(「汚い言葉」)とを混同されていることが多いという意味だ。その結果、アメリカ人は「下品なスラングを多用する」という誤解が生じていた。松本清張氏が「アメリカ兵が下品なスラングで話し始めた」と書いておられたのは良い(悪い?)であろう。アメリカ兵隊たちには確かに両方を多用する者が多いが、松本氏がこの二つの違いをご存じではなかったし、聞き分けるだけの英語についての理解が出来ていなかったようだ。
日本語にも勿論「符丁」も「隠語」も「記号」もあるし、それらを「汚い言葉」と看做す習慣もないと思う。例えば、昭和20年代の三越には隠語があって店員同士ではお客様を「前主」と呼び、「手洗い」を「遠方」などと称していた。これはお客様の前で「お手洗いに行って来ます」などと聞こえるように言うのは失礼であるとされ「遠方に行って来ます」などと同僚に断るように教育されていた。因みに、お客様用の手洗いは「前主遠方」となる。
ここでもOxfordの助けを借りて「スラング」とは如何なる言葉を言うかを考えて見よう。この辞書には“Very informal words and expressions that are more common in spoken language, especially used by a particular group of people, for example, children, soldiers, criminals, etc.”とある。ジーニアス英和には「特定の社会や職業の通用語、専門用語。隠語、符丁、合い言葉」とある。何だ、犯罪者も使うのならば下品ではないか-と言いたいだろうが、それは別途swearwordの解説を読んで頂ければ解って貰えると思う。
slangの例を挙げて見よう:
booze=酒というかアルコール飲料を言う。「私は酒は嫌いだ」と言いたければ“I don’t care for booze.”のようになる。
buzz.=ブザーを鳴らすと言う意味だが、“Give me a buzz.”で「電話をくれ」なのだが、“buzz”が俗語である。この代わりに“ring”を使っても同じことになるので、ringも俗語に入れて良いだろう。勿論、正式には“call”と言うべきだ。
bookie=私設馬券屋、所謂「ノミ屋」のこと。
cabby or cabbie=「タクシーの運転手」。タクシーは“taxi cab”というから“cab”を縮めたのだろう。
cop=「警官」なのだが、その謂われは警官のバッジが銅製なので、“copper”(「カパー」であって残念ながら「コッパー」ではない、念のため)を短縮したと聞いたことがあった。
Fedex=正式にはFederal expressという宅配便の固有名詞だが、これをこのように動詞に使って“Fedex it.”などと言えば「急ぎだから宅配便で送っておけ」となる。“courier service”のことで「クーリエ」などとも言われている。
gas=ガソリンで、元は“gasoline”なのは言うまでもあるまい。故に、「ガソリンスタンド」はgas stationとなる。「ガソリン・スタンド」はカタカナ語だから要注意。
goody=お菓子だのキャンディのこと。
newsstand=街頭などの新聞雑誌売り場のことだが、「ガソリンスタンド」はここにある「スタンド」を取り入れたのだと推定している。
pop=炭酸系飲料のことで些か古い言い方だ。soft drinkの代わりに使われている。
rookie, rooky=「新入り」、「新米」、「新兵」の意味になる。カタカナ語では「ルーキー」となっているが、これはカタカナ語製造業者の表記の誤りであり「ルッキー」か「ルキー」の方が英語の発音に近いのだ。大体からして、“book”と書いて「ブーク」と言うかという話だ。
私は以下は一寸趣が違うが、アメリカの硬貨の俗称もslangの範疇に入ると思っている。
buck=ドルである。10㌦ならば複数の“s”を付けねばならない。
quarter=25セント。すなわち、4分の1である。
dime=10セントなのだが、“a dime”とすると否定的に使って“I don’t care a dime about that matter.”で「そんなことちっとも気にしない」となって、ややidiom的な感も。
nickel=5セントになる。
penny=1セントである。
gotcha=(相手が言うことが)「解った」であり、誰かを「見付けた」ないしは「捕まえた」という意味に使う。I’ve got you.を短縮した形。これは上品ではないだろう。
ここまでの例で「汚い言葉」とは全く異なっている種類の表現であると理解して頂けただろうか。
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