新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

アメリカのBrooks Brothersが破綻した

2020-07-09 09:09:57 | コラム
Brooks BrothersがChapter 11の保護を請願:

今朝は珍しく5時過ぎという遅い時刻に起床したところ、テレビのニュースがBrooks Brothers(BB)の経営破綻を報じていた。驚いたというよりも、有名デパートが破綻する時期にあってはBBほどの格式ある人気店でもChapter 11(我が国で言う民事再生法)になるとは、アメリカの景気悪化の中ではこういう言わば高級な洋品店に皺寄せが来るのかと痛感させられた。BBは私の好みのブランドの一つであり、アメリカ出張の度毎にポロシャツやワイシャツやネクタイ等を買い求めていたのだった。

ブランドとしての格というかデザインが垢抜けているかどうかという点は、 Ralph Lauren、即ち“Polo”には一歩譲るだろうとは思う。だが、その少し保守的なデザイン感覚には捨てがたいものがあって愛用していた。但し、スーツだけはアメリカ製には私の身長に合う大きさがなくて、国内で買い求めていた。Chapter 11の保護を求めたという以上はブランドも店舗も残るのだろうとは思うが、最早アメリカに行くこともなければ、お洒落の必要もなくなった人生なので、静かにBBの成り行きを見守るだけになるだろう。

何故、アメリカのブランド品を好んで買っていたのかという疑問をお持ちの方もおられるかと思うので、その理由(ワケ)を順序不同で説明しておこう。先ずは値段である。BBは確かにアメリカでも高級品店の範疇に入るだろうが、そこは為替レートの悪戯で、アメリカで私のような小柄な者にも合うようなサイズの物を買う分には、国内で買うよりも遙かに割安になるのだ。次はデザインだ。Poloと比較すれば明らかに保守的だし斬新ではないが、その分無理なく安心して着ていられるのだ。ネクタイも同様だが、遺憾ながらBBは締め心地が宜しくなかったのは残念だった。

次に重要な点は(仮令アメリカで縫製加工されていなくとも)アメリカのデザインであり、一目見ればその金色の羊(Golden Fleece)のロゴマークも手伝って、アメリカの物と解るのだ。何年前だったか、イタリアに赴任された外交官がその著書に「イタリアで街中の盗難やスリ等の危険を避ける為には、現地に到着するや否やイタリア製の服を買って着用せよ。そうすることで泥棒たちに現地人と思わせれば危険がなくなる」と書いておられたのと同様に、私は考えているのだった。即ち、アメリカにいる限りは、BBでもPoloでも何でも「国産品」の着用を心掛けていたのだった。

その効果があったのかどうかは不詳だが、あれほど長い時間アメリカで方々の街を訪れていても、一度も外国人と思われたことがなかったと思っている。それも何か一言でも英語を話す前でもそうだった。しかしながら残念なこともあった。それは多くの場合に中国系アメリカ人と思われてしまうこと。空港に到着した際にロビーに出た途端に、何度か中国人と思しき者に駆け寄られて中国語で話しかけられたことが数回はあったと思う。もしかすると、アメリカのブランド物を着用に及んでいた効果がなかったのかも知れない。

最後に言わば忠告めいた事を経験から申し上げて置こう。それは「何もアメリカにだけに限ったことではないが、外国に行かれるときには如何にも日本製というか現地のファッション乃至は流行とかけ離れた服装をされないこと」なのだ。私の永年のアメリカ暮らしとヨーロッパにおける経験でも「この方は日本から来られた」と一目で解るのは、その服装に要因がある。現地の人たちの寛いだ服装の中では、その緊張感に溢れた着飾り振りが特に目立ってしまうのだ。しかも、我が国では未だにキャジュアル(「カジュアル」はカタカナ語)な服装を着こなしている方が極めて少ない。

そこには我が国独得のデザインの問題もあるが、外国に行くという事で妙に意識されて堅苦しいよそ行きの服装か、妙に沢山の色を使っている物を選んでおられるので解るのだ。それに「革靴」の愛用者が多いのも特徴だ。観光旅行ではスニーカーで十分なのだ。そんなことを言われても、何処で買って準備すれば良いのかと言われそうだ。それは、一寸足を伸ばせば東京近郊にはアウトレットモールが方々にあるし、BBでもPoloでも一寸した街は販売店がある、デパートだって運が良ければ「セール」に出会うことだってある。でもBBの店舗は残るのだろうか。



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