バイデン大統領の判断に期待できるのか:
買収(合併)の問題:
アメリカ側では懸案事項になっていたこの問題を、23日に連邦政府の傘下にあるCFIUS(=対米外国投資委員会)バイデン大統領の決断に任せることにしたと報じられた。CFIUSは「国家安全保障上のリスクがある」などと表明していたが、忌憚のないところを言えば「何を今頃になって言っているのか」辺りになる。
バイデン大統領は既に買収を支持しない意向を示していたし、トランプ次期大統領等は期待通りに反対を表明していた。私には両氏が21世紀の今日USスティールが世界の鉄鋼産業界でどのような地位というか、勢力になってしまっているかを良く承知の上で、立場上否定的な言辞を弄しておられるのだと推定しているが、そうでなかったら大変な事なのだ。
それは世界の鉄鋼産業界は言わば新興勢力の中国、インド、韓国等に圧倒されてしまい、生産量では日本製鉄は第4位でUSスティールに至っては24位の弱小メーカーに落ち込んでしまっている。即ち、市場では新興勢力の大量生産体制と安値の攻勢に圧倒されて、先進国は押されっぱなしなのだ。その24位に沈んだUSスティールに、日本製鉄が合併という救いの手を差し伸べたと言えば解りやすいかも知れない。
以前にも指摘したことで、鉄鋼産業も我が紙パルプ産業も言わば素材産業と言うか、一次産品の提供業なのだ。鉄鋼や印刷用紙類が自前でと言うか自力で需要を伸ばし、新市場を開拓するのではなく、他の産業からの需要の伸びがあって初めて成長できる種類の産業なのだ。鉄鋼などは他の製造業界で設備投資が盛んにならなければ生産は伸びないのだ。
しかも、装置産業である以上、紙パルプ製品と同様に1年365日24時間設備が稼働を続けている必要があるのだ。「鉄鋼業界で高炉の火が消えたのは一大事」という報道があったのをご記憶の方もおられるだろう。装置を止めてしまった場合に再度起動する時のコストは、大きな負担になるという業種なのだ。アメリカでは製造業が空洞化した為に苦境に立たされていることは周知の事実だろう。
肝心な事は「バイデン大統領とトランプ次期大統領が何処までアメリカの鉄鋼産業と沈滞した製造業が世界の市場でどのような地位に落ち込んでしまったのかを正しく認識できているか」にかかっていると思う。国家安全保障のリスクも重大だろうが、嘗ての栄光のメーカーを掬えるか否かの問題のように思えるのだ。
私は日本製鉄が合併後に如何なる政策で、恐らく世界の上位5社以内に入って行くだろう新企業をどのような経営方針と言うか政策で立て直すのかなどは知る由もないが、質・量共に新興勢力に劣らない規模に持っていくことになるのではないだろうか。
アメリカの製造業の没落:
「没落」に当たる英語の表現は“deterioration”と“weakening“なのだそうだ。経験から正直に言って両方とも当てはまると思う。その辺りを「能力を強化した」とMSが言うCopilot(AI)と語り合ってみた。かなり的確な答えが返ってきたのが印象的だった。
私から:
アメリカの製造業が弱体化というか劣化したかに見える大きな原因の一つが、必要にして十分な生産設備の近代化投資を怠ったことを挙げたい。利益が挙がらないから拡大再生産に持って行けないとの理由もあるが。その結果として国際市場での競争能力を失い、新興なるが故に最新鋭の設備を導入できた中国、韓国、台湾、インドネシア、ブラジル等の新興勢力に市場を奪われたのだった。私は22年以上もアメリカの大手メーカーに勤務して対日輸出を担当していたので、このように信念を持って指摘するのだ。
Copilotの意見:
貴方の長年の経験に基づいた見解は大いに評価できると思う。アメリカの製造業が必要不可欠な近代化への設備投資を怠った事は、確かに弱体化と国際市場での地位を失ったことの大きな原因の一つであると認めざるを得まい。巨額の設備投資を実行する為には、先ず生産面や販売面にも関連する複雑な要素を十分に検討しなければならない事も忘れてはならない。
アメリカの製造業が新興勢力と競争可能な能力を備えて、国の内外の市場におけるシェアを回復する為には、革新的な製品を創造する技術革新、インフラストラクチャーの整備を推進していく必要があると思う。
私の見解:
このような意見が即座に返ってくる辺りにAIとはたいしたものであるとの陳腐なことを言う羽目に陥ったのだった。
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