新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

果たして経済は回るのだろうか

2020-06-14 10:09:42 | コラム
経済の見通しには極めて悲観的である:

政府は緊急事態宣言を解除したことであり「経済を回す」事に力点を置いておられると思う。悲観論者の私でさえ、そのように事が運んでいくことを切に望んではいる。だが、偽らざる所を言えばそれほど景気回復というか経済が動き出すか否かについては余り楽観的にはなれないのだ。マスコミ報道では「都内を始めとして方々で人の動きが新型コロナウイルス(念の為に強調しておくが、私は「コロナ」という表現は採らない)感染が激しくなる前の状態に戻りつつある」と歓迎しているようだが、そんな程度で「経済が回る」のであれば苦労はない。

簡単に言ってしまえば、感染者が増加している一方の時には、多くの工場(例えばトヨタ自動車等)で生産活動が停止し、企業の大中小を問わずに解雇や雇い止めのような現象が生じていたし、全般的に所得が減少する傾向が顕著だった。その他にはマスコミがしきりに同情して見せた、外食と外飲産業界では存続の危機に瀕した店が多かった。そこに加えるに、外出の自粛が要請されて民度が高い我が国の国民はキチンとその要請に従い、都内の百貨店などは先走った小池都知事の要請に従って閉鎖までしてしまった。

私はこういう現象の他に強調したいことがあるのだ。それは2月辺りから消費というか一般の国民が物を買わずにと言うか、買いに出ていく機会を抑えていたのではないかという点だ。即ち、自動車のように生産を調節できる業種は良いが、装置産業的な業界では生産を止める訳には行かなかったところがあったと見ているのだ。即ち、生産過剰に陥って在庫を軽減する為には価格を下げてでも売りに出ていったと見ているのだ。こういう現象が起きれば、それでなくてもデフレ傾向から脱し切れていない我が国の経済では、一層の悪循環に陥っていたのだろうと思って見ていた。

それでなくとも、我が国には360万社もの会社があり、その90%以上が中小の規模であれば、私が危惧して見せたようなデフレ傾向が激しくなり、受注先として依存してきた大手製造業業界が生産短縮をせざる状況に立ち至っていれば、新型コロナウイルス感染が始まる前の状態よりも一層苦境に追い込まれているのだろうと見ている。マスコミ報道は一向にその危機的な状況には触れずに、ただただ外食と外飲業界の苦境ばかりに焦点を絞っている間抜け振りだ。この業種が動き出しても経済が回る訳ではないくらい、彼らとても承知しているだろうに。

私が本気で懸念していることは「我が国のGDPの中で重要な部分を占める内需というのか最終消費者の出費が何時になれば動き出すか」という点だ。現時点では所得の上昇が望めず、雇用も安定せず、10万円の給付が新宿区のように4%台に止まっていたり、持続化給付金の支給が70%を超えたという報道もあるが、未だに書式がどうのと言って支給されていないような給付金支給の態勢の不備があっては、人はマスクをして外に出て行くことはしても、大いに買いまくって景気回復に貢献するとは思えないのだ。

当方のような高齢者の場合を、個人的な例かも知れないが考えて見よう。正直に言って基礎疾患を抱えているからだけではなく、新型コロナウイルスが猛威を振るい始める前から、買い物を伴う外出などは極めて希だった。と言うのも終活とやら言うことを聞くまでもなく、今更何か新規に物を買う必要がなくなったのだ。手持ちで十分だし、迂闊に外に出て感染でもすればと考えれば、家に籠もってPCと戯れているのが唯一の楽しみかも知れない。現に、感染発生以降の最大の出費は医療費で、中でも¥9,000の「ニー・ブレイス」が最高金額だった。

皆様に良くお考え願わずとも解ることだろうが、我が国では1億2千万人のうち25%が高齢者であるとされているではないか。恐らくその25%の大部分を占めておられる方々は「今となっては買う物はないか、買う必要を認めない」のだろうと密かに思っている。何か支出しようと思っても、精々近隣の温泉にでも行って身体のあちこちが年齢相応に衰え且つ痛むのを癒そうとする程度ではないのかな。その程度では経済は回るまいと思うよ。私はジッと嵐が去るのを待って、その間に国民が内需を盛り上げてくれるような政策を考えておく方が無難だと思うのだ。

私はそれ以上にも必要かも知れないと考えていることは、内部留保だけに専念してきたような劣化したとしか見えない「経営担当者」(今や往年の信念がある経営者や、自営の事業創設者がほとんど見当たらない)の質の改善というか、困難な新時代に相応しい人材の養成を心掛けるべきだと本気で考えている。何故、ビル・ゲイツもステイーブ・ジャブズ等も出てこないかを検討する時期が来ているのではないのか。伝統的な世界にも知られた我が国の優れた企業を傾けた経営担当者がどれほどいたかを、本気で考えるべきではないのか。



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