公式の場に臨むときの心得:
私は先ごろ石破首相がトランプ大統領との初首脳会談に臨まれた際の「スリップオンの靴に問題あり」と指摘した。この点については、この分野に精通された東海大学のKS教授も「疑問である」という見解だった。要するに「あのような公式の場には少なくとも紐を結ぶ方の靴を着用すべきである」というのが服装学の原則なのである。
私には教授の「首相は長距離の長時間のフライトの後で足がむくんでしまったので、やわらかい靴を選択されたのではないか」との推論が興味深かった。
ところが、再三再四放映されるあの首脳会談の画面を見ていた私は、もう一つの疑問点を発見してしまった。それは、首相がシャツの袖口にcuff links(カタカナ語では「カフスボタン」または「カウスボタン」となっている)をされていたのを発見した。しかも、もしかすると装飾用に「(宝)石」がついているものだった。不味いなと思った。これも宜しくないのである。
袖口の装飾につけられるカフリンクスはカフスとは、注文シャツを専門にするAtelier BERUNによれば、
>引用開始
日本ではカフリンクス・カフスボタン、またはカウスボタンとも呼ばれたりしますが、正式にはカフリンクス(cufflinks)といいます。 もともとはドレスシャツやワイシャツ、ブラウスの袖口(カフ/cuff)を留める(リンク/link)ためのアクセサリーでした。
<引用終わる
ところが、ビジネスマンの服装学にも適用されていることで、カフリンクスは公式の会談・懇談・交渉事の席に着く際につけて行ってはならない性質なのである。まして、首脳会談の場に臨む時などにはあってはならないことなのだ。カフリンクスだけではなく、飾りがついたタイバー(「タイピン」は別の装飾品)の着用も避けるべきなのだ。
この点についても、以下にKS教授の見解を引用してみよう。
「カフリンクスは夜の宴席(=タキシードを着るか、それに準ずる装いがもとめられるoccasion)でつけるのが原則で、昼間の式典やビジネスシーンでつけるのはあまり望ましくない。モーニングとかディレクタースーツとか、格式のたかい礼装をした場合は例外になるが、そのケースでも石の入っていないカフリンクスをするほうがよい。
米国大統領と会談する日本の首相の装いとして、黒い石の入ったカフリンクスは理想的とはいえません。たぶん石破氏のスタッフに、服装にくわしいひとがいないのだと思います。」
となっていて、明快なのである。
このくらいのことにも側近の気配りは必要だったのではなかろうか。私は外務省の担当部局もここまでのことに気が回らなかったのではなかったと、何となく同情したい気もしないではない。以前にも指摘したことで、服装については、我が国で「紳士の国」と崇めている英連邦よりも、アメリカ合衆国の方が厳格なのである。そのアメリカの大統領との会談の席だった。
以上、揚げ足取りと非難されることを承知で疑問点を取り上げた次第である。Mead社のパルプ部副社長は日本に来る時でも「タキシードに黒いエナメルの靴を持参して、夕食の席には着用に及んでいた。夕食の席に昼間のスーツにネクタイの儘という姿は略式なのである。服装とはそういう事なのだとご承知おきを。
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