新宿少数民族の声

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ドナルド・トランプ次期大統領の政治手法の考察

2024-11-14 06:11:14 | コラム
ドナルド・トランプ氏は予測不可能:

前任期中からトランプ氏は独自の発想に基づいた政策を打ち出して、世界を慌てさせる傾向があった。その点を「予測不可能」即ち“unpredictable”と形容されていた。その辺りを分析してみようと思う。

通常は保護貿易の一環として賦課してきた関税を、中国からの輸入品に高率の関税を賦課する政策を打ち出して、習近平政権との交渉の駆け引きに使ったトランプ大統領ならではの発想だった。結果的には中国との壮烈な関税賦課の争いを展開した。だが「関税を何らかのdealを成立させる為の強烈な駆け引きの材料に使う手法はところにあった」と世界を驚かせた。

あの大統領就任直後の時点で「メキシコからの輸入に100%の関税をかける」と打ち出した戦略は「メキシコに不法の移民等を送り込ませないようにする目的だった」のだった。メキシコには各国の自動車生産の拠点があり、アメリカへの輸出が多かった。メキシコはアメリカ向けの輸出が減少すれば大損害になるのは明らかだった。

13日のNY Timesでは「BMWがメキシコに大規模の自動車生産の基地を設け、殆どあらゆるヨーロッパ車を年間300万台生産させ、その中から200万台をアメリカに輸出しているので、その工場地帯からのアメリカ向け輸出が高率の関税で閉め出されれば、由々しき事態になる」と報じていた。即ち「、“tariff”は美しい」という手法は、あの8年前のdealの蒸し返しと読めるのだ。

メキシコには「移民を送り込むと、こういう報復が待っているぞ」と再度強調されたとも解釈できるが、メキシコと乃至はBMWに対して「生産の拠点をアメリカに移せ」という通告であるとも読める。だが、上記のようにトランプ氏の言動は予測不可能なのが特徴である。我が国は以前に素直にアメリカの要求に従って、車の現地生産を主力にしていた。

だが、このアメリカ国内の生産に切り替えの狙いを深読みすれば「生産拠点をアメリカ国内に移しても、工場の用地を定め、新工場を建設して必要にして十分な要員を集めても、稼働開始まで何年かかるだろうか」という問題に撞着する。さらに、メキシコにも劣る労働力の質で車を製造すれば、あのデトロイトを崩壊させたのと同じ結果を招かないと保証できるか。

アメリカの労働力の質が、今日までの製造業の衰退を招いた歴史を、トランプ氏とその側近は認識できているのだろうか。1994年のカーラ・ヒルズ大使の教訓を忘れたのだろうかと疑いたくなる。22年間、アメリカの職能別労働組合(Craft union)がどれほど国際競争力を損ねていたかを知り、改善して日本市場で成功したウエアーハウザーの担当者だったから言っているのだ。

ウエアーハウザーがどのように組合員を導いて日本市場に受け入れられる品質を達成したかを、ワシントンDCが認識できていたとは思えない。我田引水をしようと言うのではないが、海外の市場に受け入れられ、国産品並みの数量が輸入して貰える為の手法はdealではない。その製品が相手国の市場の受け入れ基準を満たし、価格競争にも負けないような次元に達していなければならないのだ。

換言すれば、自国で受け入れられている品質基準が、相手国の基準に合致するか、それを上回る次元に達していれば順調に受け入れられるのだ。そのような国際市場への進出はdealに依存しているだけではては進まないのではないか。正論であるが「海外との取引は正攻法で望むべきなのである」と強調する。

視点を変えて、トランプ次期大統領が関税を賦課して各国からの輸出を制約し、国内の産業を育成し、job(これをマスコミは「雇用」と訳したのは誤訳だ)を創り出そうと目論んでおられるのならば正常な戦略ではあるが、これとても一朝一夕には軌道に乗っていかないと危惧する。アメリカは「激しさを増す国際競争に耐えるだけの労働力の質の強化を図る手法から整えねばならない」のだから。

ここまで色々と経験から指摘してきたが、GAFAMが代表するように自国で製品を作らない態勢の産業が中核を成しているアメリカで、今更「物作り」に戻って、国際市場で競い合う時代は終わっているのではないだろうか。関税で自国の産業を保護できても、次なる手法というか新規の産業を創造しないと、EVのように中国や新興勢力に圧倒されてしまうのではないか。

強調しておきたい事は「生成AIの時代に80歳という製造業の経験もなく、国際市場に進出した事がない方が牽引できる時代だろうか」という率直な疑問である。言いたくはないが「ウエアーハウザーがアメリカ第2の対日輸出会社だったのだが、その製品は素材という一次産品だったのだ。それがGAFAMに移っていったのだから、”tariff“以外の次の手を考えるのは焦眉の急だろう。


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