新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

11月10日 その2 ドナルド・トランプ氏(President elect)について

2024-11-10 15:31:21 | コラム
如何なる準備態勢を整えておくべきか:

我が国ではトランプ氏の再選が確定したところでは、祝福する声よりも各方面で、それに伴う不安材料が取り沙汰され始めていた。即ち、我が国が色々な点で困難な事態に直面する事になりそうだと言う事。それに加えるに、石破首相のトランプ氏の相性を懸念する見方もまた多かった。特にゴルフが出来るかとの不安があったが、首相は慶応高校時代にはゴルフ部所属だったので、心配ないとの説も聞こえた。

東国原英夫士などは「トランプ氏はもう次期大統領を目指す必要がなくなったから、やりたい事を思い切りやってくるだろう。例えば、アメリカファーストを徹底して標榜されているのだから、台湾有事などの際には日本は自力で戦って国を守れと言うだろう」とまで予測して見せた。何分にも前任期中にはアメリア駐留軍の経費負担の更なる増額を言い出していた実績があるお方なのだ。

関税:
関税問題だが、トランプ氏は「私の辞書には関税という最高に美しい字が載っている」と言っておられたとか。要するに、中国だけではなく、我が国からの輸入にも15~20%をかけるとまで言及された。

トランプ氏は前任期中には「関税とは輸出国が負担する」という誤った認識をしておられたし、今回のキャンペーン中にも中国だけではなく我が国その他にも掛けて、財政的な負担をかけてやるとの意向を示しておられた。未だに学習しておられないのだ。

先ほど不慣れなAIを活用して確認してみたところ、トランプ氏は「関税は輸出国が負担する」と思い込んでいるとの見方を否定していなかった。トランプ氏は以前から目の敵にしてきたメキシコからの輸入の車には100%と言明されたので、日本車にも適用される事になると、自動車産業界を悩ましている。

トランプ大統領との交渉では:
石破首相はトランプ大統領との正式な交渉の席に座れば、このような誤認識に基づいた政策を撤回させるだけの説得力がある議論を展開して頂きたいものである。国際的にして自国の命運がかかるような重大な交渉をする場合には、容易に崩される事がない確固たる論旨を組み立てて、対峙しない事には、目的の達成は困難な事になってしまうし、説得できない事態さえ生じるかも知れない。

アメリカではトランプ氏の方針の通りに輸入品に高率の関税をかければ、国内の物価が上昇するだろうし、日本では円安が進むので、対日輸出不振になって行くだろう。トランプ大統領はその事態を回避すべく、日本に対しては更なる別種の圧力をかけるだろうと、専門家筋が懸念を表明していた。

トランプ氏に理論や理屈が簡単に通用するかしないかは容易には見通せないが、アメリカとの折衝では「落とし所を探るとか、双方の主張を足して二で割るかのような議論をしてはならない」のが鉄則なのである。我々というか、彼等アメリカ人の交渉事には「勝つか負けるか」の結果したしかあり得ないので、少しでも譲歩したら即ち負けになる。この辺りは文化比較論の範疇に入るだろう。

手前事で恐縮だが、そういう交渉の席に付く経験をして、怖れる事なく自社の主張を展開できるようになるまでには、経験が「慣れと度胸」が自然に身に付けさせてくれた。「経験が必須である」と痛感した。その「慣れ」も「度胸」も一朝一夕には身につかない点が難しい問題なのだ。石破首相が恙なくトランプ大統領と腹蔵なき意見を交換出来る、故安倍元総理のような間柄を築き上げる事を願うものだ。

現時点では、トランプ氏が何時如何なる新規の政策を打ち出して、それに基づく新たにして厳しい要求を突きつけてくるかの見通しは不明だろう。予見できる事は「トランプ氏は前任期中でも予測不可能で、受け入れ乃至は実行が容易ではない要求を突きつけてきた」実績がある。そういう大統領であると充分に認識して、可能な限りの備えをしておく事が、石破内閣と自民党にとっての焦眉の急になるのだろう。



世論とその調査の功罪を考えて見よう

2024-11-10 07:52:47 | コラム
頼りにして良いものだったか:

私は今日まで「私が政治を論じる時には、全てマスコミの論調またはその報じるところに基づいている」という断り書きを入れてきた。新聞やテレビの記者でもない以上、当たり前の事だと思っている。

アメリカでは:
この度のアメリカ大統領選挙ではトランプ氏とハリス氏の争いが白熱し、アメリカ国内の世論調査では両者と僅差の争いであり、全く勝敗の見通しなど立たない模様であるが如きであると報じられていた。このような状況だったので、我が国のマスコミ報道では「史上初の女性大統領誕生か」と「トランプ氏の返り咲きか」と過熱気味で、視聴者も読者も興味津々で結果が出るのを待っていたようだった。

だが、結果はあのトランプ氏の圧勝で、懸念されていた獲得した票の計算などでの混乱など一切生じる事なく、ハリス氏の敗北宣言に至っていた。そこで話題になった事が「世論調査が果たすべき役割」だった。即ち、アメリカ国内での「接戦」ないしは「極々僅差の争い」という世論調査だったので、我が国の世論まで期待感に満ち溢れ、沸き立ってしまっていたのだった。いや、世論に振り回されていたのではなかったか。

振り返ってみれば「視聴率を稼ぎ、新聞の販売量が伸びていた」のか、あるいは「そこを目指した報道機関の巧妙な誘導作戦だったのではなかったのか」と疑いたくなるほどだった。しかし、有識者からは「人口3.3億人のアメリカ合衆国で、3,000人ほどから採った意見がアメリカの民意を表しているのか」との疑問も批判も出ていた。「それだったら、早く言って置いて貰えれば」という気がしないでもない。

その3,000人を無作為で選んだ場合に、トランプ氏の岩盤の支持層の「労働者階層(トランプ氏はworking classと呼んでいる)」が多ければトランプ氏有利と出るだろうし、その反対に高学歴の富裕層が多ければ、ハリス氏有利と出る事は想像できる。調査対象をアメリカ全土の50州にしたかどうかは知らないが、州によっては明らかに民主と共和支持に分かれているので、結果も異なる気がする。

私は理論も理屈も何もなく「低学歴層と非富裕層」の支持を確保していると見えるトランプ氏が「高学歴層と富裕層という少数派の支持」では民主党のハリス候補より無有利だろうとは閃いていた。だが、世論の流れを傍観しているだけだった。

我が国では:
翻って、我が国の総選挙を見れば「裏金問題」と「政治と金の問題」が際立った議論の対象となり、野党側が自公政権を責め立て、批判する絶好の材料となっていた。結果的には自公の過半数割れとなって、石破内閣は苦難の道を歩まざるを得ない立場に追い込まれた。

私見では「裏金は朝日新聞が創作した名称と言うだけの事で、事の内容を正確に表していない。自民党内部の安倍派の失態であっても、国家を揺るがすような深刻な問題とはとても思えない。我が国が喫緊の課題として直面している多くの国内外の諸問題は裏金(政治資金規正法の収支報告書不記載)などとは比較にもならないほど重い」のである。

だが、自民党は我を失っていたかの様子で「小異を捨てて大同につく」のではなく「小異を拾いに出る」失態を演じて敗北した。「小異」とは、即ち「石破首相と森山幹事長は、ただひたすら旧安倍派を処罰するという策に出て、民意を得ようとしていたとしか見えない作戦に出たこと」だった。

この作戦は有権者には支持されなかったようで、「裏金は怪しからん」という方向に世論を誘導した野党とマスコミ連合の作戦と世論に流れには抵抗できずに、敗北する結果になったのではないかと、私は見ている。世論調査では具体的には未だ何もしていない石破内閣の支持率が下がっているのは、おかしいのではないかという気もする。

勝利した立憲民主党と国民民主党は現時点では、夫々「1回の表で、無死走者1・2塁」のような絶好のチャンスに恵まれている。だが、そこから先の作戦が「政権奪回」と「103万円の壁の打破」の策だけのように見えるのでは、世論という名の応援団を沸き立たせるまでには至ってないのではないか。