杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

陶芸家と酒匠のお花見会

2009-04-05 20:08:59 | しずおか地酒研究会

 桜の見ごろピークを迎えた週末、お天気にやきもきさせられましたが、各地のお花見スポットは大いに賑わったことと思います。

Imgp0781  私は今日(5日)、友人を誘って伊豆の国市三福にある福厳院座禅堂・無畏庵のお花見の会に行ってきました。

 福厳院は、陶芸家&料理人の安陪均さんの実家で、無畏庵というのはかやぶき屋根の風情ある寺の母屋。ふだんはここで一日一組の懐石料理をふるまっています。

 

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 その安陪さんのもとへ、4年前、静岡県の女性酒匠第一号として知られる長沢絹子さんが嫁がれました。長沢さんといえば、沼津市で静岡吟醸を呑ませる名店「一時来(ひととき)」の主人として、地酒ファンにはおなじみ。私のことも、妹のように可愛がってくれて、長沢さんのところへ寄りたくて、沼津に取材があるときはわざわざ電車にし、終電に間に合わなくて「ムーンライトながら」にお世話になったこともしばしば…。わがしずおか地酒研究会でも再三お世話になり、「一時来」の閉店の報を聞いた時は、沼津で一杯やる場所がなくなってしまったことをとても残念に思いました。

 

 それでも女手ひとつで店と子育てを切り盛りし、息子たちを成人させ、やっとつかんだ第二の人生の門出。しかも尊敬する陶芸家&料理人に見染められての再婚です。私もわがことのように嬉しくなり、しずおか地酒研究会でささやかなお祝いの会をさせてもらいました。このとき初めてお会いした安陪さんは、長沢さんのことを「絹ちゃん、絹ちゃん」と呼び、御両人とも幼なじみ同士のように自然にじゃれ合っていて(…失礼!)、熟年同士の再婚が、こんなに初々しいのかと目を当てられっぱなしでした。

 今年2月のしずおか地酒サロン英君酒造見学会に、久しぶりにお2人で参加されたときも、まるで新婚さん状態(笑)。お酒があまり強くない安陪さんは、奥さまの膝枕で気持ちよさそうにうたた寝してました。

 

 

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 無畏庵を訪ねるのは2回目です。庵の裏山に登り窯「中尾窯」があり、一度窯入れの時に遊びにうかがったことがありました。安陪さんのお仲間やお弟子さんには、有名人も多くて、「〇〇〇〇さん(日本が世界に誇る某プロスポーツ選手)が焼いたものだよ」という器を触らせてもらったりしました。

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 陶芸家が、自作の器に自作の料理を盛り付けて、もてなしてくれるなんて、ふだんはなかなか経験できません。しかも安陪さんの料理は陶芸家の趣味の領域ではなく、若かりし頃、大阪の「吉兆」で修業した本格派。

 さらに奥さまは静岡吟醸の名酒匠。一時来で使用していた特注の日本酒冷蔵棚は、裏庭の蔵に設置され、カウンターも取り付けてありました。ここで酒 友を招いて即席の「復活・一時来」を開くこともあるそうです。

 

 

 今日は、座禅堂の大広間でエレキバンドのライブも開かれて、大勢の安陪&長沢ファンでにぎわいました。もっともエレキの音色はちょっぴり頭が痛くて、私たちは母屋の無畏庵に陣取って、ひたすら食べて呑んで、同じくエレキサウンドから逃れてきた方々と、芸術談義・酒談議に花を咲かせました。

 

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 料理は、中伊豆産のイワナの燻製(過去ブログで紹介した柿島養鱒さん謹製)、米こうじをまぶしたイワナとサワラのかぶら寿司、ふきのとう、アワビ椎茸煮、木の芽風味の厚焼卵、牛スジ田楽、有機野菜マリネ、春菜寿司、玄米雑穀むすび、けんちん汁等などが次々に並びます。Imgp0789_2

 

 庭の山桜の大木は、残念ながら花がすでに散ってしまっていましたが、こんなに素敵なお花見料理はめったに味わえないでしょう。

 

 

Imgp0784  酒は、絹子さんが高嶋酒造から取り寄せた白隠正宗の無ろ過生原酒、少汲水純米、誉富士純米原酒、山廃純米、純米吟醸等など。いろんな銘柄をあれこれ並べず、白隠正宗だけに絞って、造りのタイプによって料理と合わせる楽しみを演出するあたり、さすが酒匠です。

 

 

 

 安陪さんの作品は、昨年2月、三島広小路で絹子さんが開いたアンティークショップ『絹路土(シルクロード)』でいつでも手に取ることができます。…ここで一時来みたいに一杯呑めたら最高なんだけどな。

◆絹路土(シルクロード) 三島市芝本町7-2 TEL 055-971-2477

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