台北から帰国した翌8日、自宅で昼食にギョーザを食べていた時、右上の奥歯の詰め物がポロッと取れてしまいました。歯肉炎と虫歯に苦しんだところです。食べたのはギョーザみたいに硬くないものなのに、なんで取れちゃったんだろう…確かに台湾旅行に行く前は〈吟醸王国しずおかパイロット版〉編集の疲労がたまって歯肉炎の痛みがぶりかえしたけど、旅行中は支障もなかったしなぁ・・・。腑に落ちないまま、「ギョーザ食いの後はまずいかな」と後ろめたさも抱きつつ歯医者へ行ったところ、「歯茎が炎症し、奥歯が前後に真っ二つに割れている、抜くしかない」と言われてしまいました。
詰め物をつけ直す程度だと思ったのに、いきなり抜歯~!?とドギマギし、心の準備がないまま、麻酔を打たれ、学生時代に親知らずを抜いて以来の・・・。顔半分がドヨ~ンと麻痺した状態で、そのまま取材仕事に行く羽目になり、すっかり凹んでしまいました。
歯肉炎にさいなまれてから、アメリカで看護師をしている妹からわざわざ電動歯ブラシを送ってもらって、一生懸命磨いていたのに、「磨き過ぎて歯茎が痩せている」「歯ブラシだけではダメ、歯間ブラシや糸楊枝でまめに掃除するように」と言われてしまいました。歯のケアがこれほど難しくて面倒だとは…、みなさんもお気をつけくださいまし。
この日の取材は、(社)静岡県ニュービジネス協議会の定例サロン。講師は08年度静岡県ニュービジネス大賞を受賞したやまと興業㈱の小杉昌弘社長です。同社は浜松市旧浜北にある創業65年の自動車部品メーカーで、二輪や四輪のコントロールケーブルやパイプ部品を得意とし、高齢者や女性を積極的に雇用して天竜には工場長以下全員女性という工場も設置するなど、県西部の優良中堅メーカーとして知られています。
ニュービジネス大賞を受賞したのは2度目。2度とも自動車部品製造とはまったく異なる、文字通りの「ニュービジネス」。2度とも「農業」がキーワードになっています。画期的な農機具でも開発したのかと思ったら、1度目の受賞は、次世代発光ダイオードLEDを活用した植物の発芽・育成促成装置の開発でした。
同社では景気に左右されがちな下請部品製造だけに依存せず、自社開発製品づくりを目指そうと、超高輝度LEDを利用した光事業をスタートさせました。店舗ディスプレイ商品、クリスマスのイルミネーショングッズ、アイドルのコンサートでは必需品のペンライト等を商品化してきましたが、赤、青、黄緑など色や波長のバランスによって植物の成長を促進させる効果がある点に着目し、ビニールハウスの天井に付ける植物育成ロープライト、LED照射育成室と冷暗育成室がセットになった〈花芽誘導装置バーナリくん〉を開発しました。
このバーナリくんのおかげで、春しか採れないチンゲンサイの花芽・青菜花(チンツァイファー)の周年収穫が可能となりました。青菜花はチンゲンサイに比べてビタミンCと鉄分が4倍、βカロテン・レチノール・ビタミンEが2倍含まれ、抜群の甘みと加熱時の色の鮮やかさが特徴で、静岡県西部発の新野菜として農業関係者を大いに勇気づけました。これが大賞受賞理由となったわけです。
昨年2度目の受賞理由は、200ナノメートルという超微粒子の粉末緑茶の開発です。
200ナノメートルと聞いてもピンと来ませんでしたが、100ナノメートルになると人間の血管の中を自在に移動できる大きさだとか。受賞発表と表彰式を兼ねた昨年の静岡県ニュービジネスフォーラムにたまたま参加していた焼津水産化学工業さんが、「うちでは500ナノが限界だったのに…」と驚愕し、さっそく取引を始めたとか。食品を微粉砕するには含有水分がネックになり、無理に乾燥させると風味や色や栄養分を損ないます。やまと興業には、どんな金属でも細かく砕く刃物を作る特殊技術があるので、これを応用し、一般の食品加工メーカーでは実現不可能な高精度の粉砕刃を開発。ネックとなった水分は、実験を重ね、減圧状態では水が40~50℃で沸騰することがわかり、高温乾燥で色や風味を損なってしまう今までの課題をクリアできたそうです。
伝統的な石臼挽きの抹茶は、20~30ミクロンという大きさで、茶の細胞膜の大きさに相当します。この細胞膜の中に、SODという有効成分があるため、小杉社長は細胞膜を壊して1ミクロンまで細かくすることに。いざ細胞膜の粉砕に成功したら、今度はその中に活性酸素を吸収するORACという抗酸化成分が1700μmoLも含まれていることが判明しました。このORAC、ブルーベリーに多く含まれていると言われていましたが、それでも50μmoL。ハンパじゃない数値でした。
このように、お茶にはまだまだ解明されていないスゴい有効成分があり、血管吸収できる100ナノに近い超微粒子にできれば、身体にすぐに効果が出るとわかった小杉社長は、ミクロン(100万分の1)からナノ(10億分の1)の世界へ果敢に挑戦したのでした。
完成した200ナノメートルの超微粒子粉末緑茶を、北京オリンピック女子バレーチームに提供したところ、「疲れが貯まりにくくなった」「フルセットまで身体がよく動く」と高い評価を受けたそうです。テストマーケティングの相手としてはこの上ない方々ですよね!
この日も、実際、500mlのペットボトルウォーターに溶かして飲ませていただきましたが、さらっと水に溶けて底に貯まらず、緑茶本来の風味が十分楽しめました。「既存のペットボトル茶よりも美味しい」「静岡らしい特産品になる」と参加者も大絶賛でした。
小杉社長は「価格が落ちる二番茶や三番茶の廉価品に付加価値を付け、少しでも茶農家の収益につながれば」と、主力品種のやぶきた茶で商品化しました。
そこへ、ある茶業者から「べにふうきで作ってみないか」という提案。花粉症に効果が期待される注目のべにふうき、もともと紅茶用(=醗酵茶)品種で、抗アレルギー成分メチル化カテキンを活かすために緑茶仕上げ(=不醗酵)で売り出しましたが、味がイマイチという評判です。
そこで200ナノの超微粒子化したところ、お湯で溶かして飲めば紅茶らしいまろやかな味わいが楽しめ、繊維に織り込めば花粉用マスクに変身。この春、東急ハンズのマスクコーナーで売上ナンバーワンとなり、新型インフルエンザのニュース以降は品切れ状態になりました。
「お茶を一生懸命細かくしようとやっていたら、細胞膜の中からお宝のような有効成分が出てきた。他の農作物にもまだまだ秘めた成分があるかもしれないし、超微粒子化することで新しいモノが生まれるかもしれない。出口(用途)が見つかればすごい技術になると思う」
「農家の方と知り合って、日本の農業の問題点が見えてきた。一生懸命作ってもJAは形の良いものしか引き取ってくれず、結果的に半分は廃棄するという。こんなに歩留まりの悪いモノづくりでは、後継者が育たないのも無理ない。我々の技術が生かせるならなんとか役立てたい」と熱く語る小杉社長。実際、社長のもとには、いろいろな農作物が持ち込まれています。
大葉は大きさが揃わないものは廃棄されますが、これを200ナノまで細かくしたところ、なめらかで風味の良いドリンクに変身しました。わさびの葉は良質の染料に、折れて商品にならない大和芋はソバやお好み焼きのつなぎに、青島みかんは皮に香りがあるので、粉末にして廉価な蜂蜜にまぜると、高価なオレンジ蜂蜜に変身しました。
いちごのべにほっぺとあきひめは、微粉末にしたところ、これだけ色に違いがあることが判明しました。
話を聞きながら、「(栄養成分の塊の)酒粕を微粉末にして、アルコール度ゼロの健康冷酒ができないかなぁ」なんて想像しちゃいました!
気が付くと、超微粒子粉末緑茶をいただいた後は、抜歯後の鈍い痛みがスーッとなくなったような…。緑茶には優れた抗菌効果もあるので、ぜひワンランク上の口腔ケア商品を作ってほしいなぁ!
やまと興業の〈超微粒子粉末緑茶スーパーミクロン健康緑茶〉は通信販売していますので、興味のある方はぜひお試しを。こちらを参照か、フリーダイヤル0120-039604へ。
「これを超微粒子化したら面白い」というアイディアをお持ちの方も、ぜひお問い合わせしてみてください。