杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

ブレずに応援し続けること

2009-06-27 12:43:41 | 国際・政治

 25日(木)は知り合いの社長さんに声を掛けられ、静岡県知事選挙に立候補した某氏の“市民勝手応援団”のランチミーティングに参加しました。某氏には、過去2度ほど取材でお会いしたことがあり、思想や信条や静岡県の地域づくりに対する考え方をいわば“代筆”した経験があるので、立候補者4人の中では、なんとなく親近感を持っていました。ランチミーティングに本人は来ませんでしたが、立候補を直接うながしたという勝手応援団の団長Aさんが、某氏の人となりを熱く語り、20人余りの参加者は、立候補表明までの“裏話”に興味シンシンで聞き入りました。

 

 私は衆議院議員の上川陽子さんが2000年に初当選した時に、選挙ボランティアをした経験があります。その時は、初めての体験だったこともあって、「選挙って、武器を使わない戦争みたいだ」と実感しました。小選挙区制だけに、狭いエリアの濃密な力関係をまざまざと見せつけられ、国政を担う国会議員を選ぶのに、地元のせせこましい話に左右されるなんて…と不条理に感じたこともあります。

 

 それに比べると、県知事選挙は全県エリア対象で、立候補者を直接知る人よりも、知らずにイメージだけで選ぶ有権者が圧倒的に多い。近づく総選挙の情勢に影響される人も多いでしょう。ここに来て、急に地方首長の言動が注目され始めていますしね(他県のタレント知事が国政に出ようが出まいがどーでもいーけど、過去、知事選に出た時と、主張や公約にブレはないんですかねぇ?)

 

 あるイメージや先入観を持たれた人やモノの本当の価値を、多くの“傍観者”に伝えるのに、かなりの時間や根気が要ることは、地酒の応援活動を通して身に染みています。

 消費右肩下がりの日本酒、しかも酒どころのイメージがまったくない静岡の酒のネガティブイメージを変えようと走り回ったこの20余年、まだまだイメチェンに成功したわけではありませんが、このところ、自分よりも若い世代や、地酒を重要視していなかった行政が静岡の酒に注目し始めた例が少しずつ増え、自分が応援していたものが、真に価値あるものなんだと、嬉しい手応えを感じています。

 

 

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 25日夜は、焼津松風閣で、志太平野美酒物語2009の反省会があり、私は今回運営のお手伝いはせず、むしろ映画上映で負担や手間数をかけたにもかかわらず、メンバーに呼んでいただきました。

 

 今年の美酒物語は蔵元ブースを中央に配置したり、きき酒クイズ方式を変えるなど、運営方法を変えた部分もあり、来場者からはさまざまな意見が寄せられたようですが、おおむね好評だったとか。「真弓さん、総括して」と言われ、そんな立場じゃないのにと焦ってしまい、ロクな意見が言えませんでしたが、“市民勝手応援団”みたいな自分を、こういう場に呼んでくれて、立場を尊重してくれる蔵元さんたちを見ていたら、「利害関係のない人たちに、真価を伝え、理解してもらう努力を、ブレずに続ける努力」を理解してもらえたようで、とても嬉しく思いました。

 

 この、ブレずに応援する・させてもらえるという人間関係は、利害関係よりも薄いように見えますが、実はとても密度は高い。万人が許容できる程度のメリットを共有するだけで、後は信頼です。最後にモノをいうのは、「この人は信頼に足る人物かどうか」なんですね。

 

 

 そこで今回の県知事選。立候補4氏のマニフェストや政見放送の内容自体は、どの候補も“もっともらしい、絵に描いたモチ”状態で比較優劣はつけられません。最後は「信頼できる、ブレない人物か」で選ぶしかないんじゃないか…と思えてきます。

 前述の立候補者某氏は、4年前に自分がインタビューして書いた地域づくりビジョンの内容とほとんどブレがなく、また立候補表明時の“筋の通し方”にも、信念や一貫性が感じられました。

 

 ちなみに、ランチミーティングの時、応援団長にこのインタビュー記事を見せたら、「すごいお宝記事!」と大喜びされました。代わりに持たされた某氏のパンフレットには、「もっとも好きなもの―酒・もっとも嫌いなもの―酒」と書いてありました。某氏が見事当選したら、今度は酒を愛憎する理由をインタビューさせてもらいたいなぁ。