杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

「駿府から始まる江戸の町」その6~新宿・杉並

2012-04-29 18:15:51 | 歴史

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 皇居東御苑の後は、区立新宿歴史博物館に向かいました。区で歴史博物館を持っているって、さすが新宿! 静岡なんて県にも博物館がないんですよねえ・・・。

 

 

 

 それはさておき、なぜこの旅で新宿かというと、もともと新宿は、前日に訪ねた浅草阿部川町の名主さんたちが、日本橋(江戸の起点)~高井戸(甲州街道の第一宿)の区間が17㎞もあって遠くて不便だということで、新しい宿場の開発を代官に願い出たからなんですって。私は東京へ行くのに、家から比較的近い三松から乗車できる駿府ライナー静岡―新宿線という高速バスをよく使うので、新宿にはすごく馴染みがあるんですが、まさか静岡と新宿がそんなご縁でつながっていたなんて・・・目からうろこでした。

 

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 以前、NHKのブラタモリでもやっていましたが、1698年に出来た新しい宿場は、大名・内藤家の敷地の一部をあてていたので、「内藤新宿」と呼ばれていました。ちなみに内藤家は信州高遠を治めていた大名で、初代内藤清成が家康の江戸入りの先乗りを務め、その功績で江戸の西の守りを任せられ、今の新宿御苑周辺に広大な屋敷を拝領したとのことです。もともと駿府静岡にもご縁のあった人なんですね。

 

 

 内藤新宿が造られた場所は今の四谷四丁目交差点付近(四谷大木戸)から、新宿三丁目交差点付近(新宿追分)までの約1㎞区間。並行して玉川上水が流れていました。

 

 通りには旅籠や商店のほか、玉川上水沿いには桜が植えられ、遊郭、社寺もあって大変賑わったそうです。なんで浅草阿部川町の人が?と思いますが、たぶん浅草のサービス商売のノウハウを新天地で試そうと、起業家精神でこの地の開発に挑んだのでしょう。ちょくちょく火事に遭ったり風俗規制の取り締まり強化で廃止に追い込まれた時期もあったそうですが、明治初頭まで長く繁栄し、1885年に新宿駅が出来ると駅周辺に繁華街が移って、内藤新宿の“使命”は終わった・・・とのことです。

 

 

 

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この建物は今の四谷駅近くにあった江戸期の菓子店を復元したもの。防火のため、蔵を漆喰で厚く塗り固める「蔵造り」で建てられたそうです。でも1923年の関東大震災で地震に弱いことが露呈し、東京の町からは姿を消したとか。日本人は昔から災害に強い家づくり・町づくりを必死に模索していたんですね・・・。

 

 

 館内には明治~昭和の新宿の生活文化を紹介する展示がズラリ。中でも新宿は夏目漱石、坪内逍遥、小泉八雲、尾崎紅葉、島崎藤村、田山花袋、永井荷風、林芙美子などそうそうたる文学者が多く居住していたので、展示物には事欠かないようです。

 

 

 

 

 

 

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 午後は杉並区今川にある観泉寺と荻窪にある井草八幡宮を回りました。

 観泉寺は今川家の菩提寺で、曹洞宗でもかなり格式の高いお寺です。

 

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 寺の在る一角は京都嵯峨野を思わせるようなたたずまい。本堂は宝暦12年3月(1763)に火事で全焼し、同年に庫裡、翌年に本堂が再建されました。ちなみに庫裡と本堂は区内最古の大型木造建築物だそうです。

 

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 墓地には今川氏真をはじめ、明治20年(1887)に亡くなった26代範叙など一族の墓が保存、供養されています。氏真は大変な教養人で灌漑事業等にも尽力した人物。桶狭間で父・義元があんな敗け方をしなかったら、いい殿様になっていたのかもしれませんね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 次いで訪ねたのは青梅街道にある井草八幡宮。流鏑馬で知られた神社ですね。南に善福寺川の清流を望む 旧井草村の鎮守で、広さでは区内で明治神宮、大宮八幡宮に続く古大社です。

 源頼朝が奥州征伐のとき戦勝祈願をし、Dsc00271松を手植えしました。この老松は天然記念物に指定された名木でしたが、昭和48年に枯れてしまい、今はその樹根の一部が社殿の回廊に飾られています。

 

 社殿は徳川家光が造営し、歴代徳川将軍に大切にされました。氏子さんの結束も強く、訪れたときも大太鼓の練習をしていました。流鏑馬は5年に1度行われ、今年、開催年。前回(2007年)は雨で中止になったので10年ぶりの開催となるそうです。好天に恵まれるといいですね!

 

 

 

 

 

 駆け足で回った「駿府から始まる江戸」探訪ツアー、内容盛り沢山で大いに勉強になりました。自分が住んでいる静岡やよく訪ねる東京のことなのに、知らないことがありすぎて恥ずかしくなりましたが、知らないことを知るという愉しみを、また一つ肌で実感できたと思います。企画してくださったしずおか時の会のみなさま&黒澤脩先生、本当にありがとうございました。