ゆうべ(9日)は天晴れ門前塾の“顔見世会”に参加しました。過去ブログでも紹介したとおり、静岡大学の学生が中心となって組織された学生主導の学外ゼミ。社会人講師を招いて新たな価値観を学ぶとともに、“学校を出て学校を元気にしよう”を合言葉に、塾活動の体験を母校にもフィードバックしようと、学生たちがホントに熱心に頑張ってます。
運営をサポートする市民代表の満井義政さん(財団法人満井就職支援振興財団理事長)や石川たか子さん(㈱丸伸社長・シズオカ文化クラブ代表幹事)の紹介で、第4期の講師5人のうちの1人に呼ばれた私。最初、声がかかったときは、「学生を酒蔵見学に連れていけばいいのかな」程度に考えていたのですが、11月から3月ぐらいまで毎月1~2回はゼミを行い、最終的には学生がそれなりの体験発表や意見交換を行う本格的な大学ゼミと知り、青くなってしまいました。具体的に何をやればいいのか考える間もなく、昨日は、受講の意思のある学生が、5人の講師と面談し、どのゼミを受けるか決めるという場に呼ばれてしまいました。
テーブルが5つ用意され、それぞれ講師が学生を迎えてプレゼンをする就職説明会みたいな会場です。とりあえず持ってきた静岡県地酒マップと、吟醸王国しずおか会報誌と、25日のトークセッション&パイロット版試写会の案内を見せながら、静岡酒の歴史や、地酒を学ぶ価値や、映画を作る意義などを短時間ではやしたてまくりました。学生(女子がほとんど)は呆気にとられたような表情…。聞けばまだ19歳になったばかりとか、20歳を過ぎてるけど日本酒を飲んだことがないとか、焼津出身だけど磯自慢をまったく知らないとか、ふだん接している酒飲みの世界からは最も遠い距離にいる人たちなんですね。
酒類業界の人たちは、いつも他人事のように「若者が日本酒を飲まなくなった」とか「底辺の需要開発が大事」と言います。何か対策をとっているかといえば、若者や女性ウケしそうなパッケージの酒やパンフレットを作る程度。中には、日本酒本来の味やおいしさとは程遠い酒を、低アルコールで飲みやすいからといって売り込むメーカーもいます。それはそれで、相応の効果はあるのでしょうが、ハード一辺倒ではなく、もっと若者のフィールドに飛び込んで語りかけるようなソフトづくりも必要じゃないかなぁ…。実際に、学生を前にノドを枯らしながら、そんなことをつらつらと感じました。
それはともかく、世話人の満井さんが締めの言葉で「今の日本人は、目先の変わったことや新しいものにすぐに飛びつく傾向があるが、ノーベル賞受賞の先生方がそうだったように、興味や関心を持ったことを愚直にやり続ける。この愚直さが、これからの時代は大切だと思う」と学生に語りかけたことが心に響きました。
酒を追いかけてたかだか20年…ですが、ゆうべ会った学生たちが生まれるか生まれないかぐらいの頃から追いかけてきた事実を思えば、自分の愚直な性格が、こうして学生に何かを伝える役割に導いたのかもしれないと思えてきます。
酒の蔵元は100年200年と愚直に酒を造り続けてきたわけです。やっぱりすごい人たちです。…短い期間で、その価値が学生にどれだけ伝えられるかわかりませんが、19歳の女子学生にプレゼンするときは「あなたが20歳になったとき、最初に飲むお酒を静岡の地酒にしたくなるように頑張るから」と、自分自身に喝を入れました。
最後に学生向けの書いたプレゼンコピーです。興味を持った学生は(静大以外の学生も参加OK)ぜひ参加してみてください!
天晴れ門前塾第4期 素頭記(すずき)組
「テーマ/呑む、観る、伝える」
日本酒のことを知っておくと、年上の友人が増えます。海外の人ともコミュニケーションがはずみます。
地酒のことを知っておくと、地元の水環境、農業、酒蔵のある地域の歴史もわかります。
酒造りは、自然の発酵物をコントロールする日本人のモノづくりの繊細さとプライドの証し。
知っておくと、日本人であることが、なんだか嬉しくなってきます。
そんな地酒の価値を、今、ドキュメンタリー映画に残すプロジェクトを進めています。
目に見える価値と見えない価値・・・どうやったら第三者に伝えられるか、映像作りの価値も含めて、現場でいろんなこと、体験してみませんか?