22日(水)は夏至にふさわしく、夏本番を思わせる暑さでした。最近、市内は自転車で動いているんですが、帽子に綿マフラーにアームカバーでUVガードしてると、頭皮や首や二の腕がジドーッと湿ってきてこの上なく不快・・・汗をかくのはダイエット的には◎ですけどね。とにかく夏本番まであと●キロ痩せないと、夏服が着れないぞ!と自分を奮い立たせています。
前回の記事で紹介したとおり、昨日は午後から渋谷シダックスホールで開催された地酒試飲イベント『POWER TO THE 東北!北関東!』の2日目、被災地を含む東北・北関東の酒を味わってきました。東京は31℃ぐらいだったみたいですが、渋谷のビル群を歩くと去年の猛暑を思わせる暑さで、会場に到着したとたん、一番入口に近いブースの『豊盃』(青森)さんで仕込み水をがぶ飲みさせてもらっちゃいました。
当ブログでも紹介した宮城県石巻の『日高見』、同じく石巻の『墨廼江』ほか、青森~栃木の蔵元有志31社が参加され、お客さんは前日をしのぐ400人近い人々で大賑わいでした。しかも若い人が多い!平日の昼間っから400人の若者が、料理やつまみが一切ない、酒瓶だけが並んだ会場で、ひたすら日本酒を飲む光景が、不思議であり頼もしくもありました。
前日参加の白隠正宗(沼津)の蔵元・高嶋一孝さんが、大学の友人だという山和(宮城)のブースにいたので、「今日のお客さんって何の仕事してる人?料飲店さんばかりじゃないでしょう?」と訊いたら、「このために会社を休んだという人が多いみたいですよ」とのこと。・・・ここに来ている人は、飲酒人口の中のほんの一握りかもしれないけど、日本酒復権の確かな手応えを感じずにはいられませんでした。
まずは少しテイスティングの印象を。前日も実感したんですが、今の日本酒の味の傾向は、あきらかに高酸タイプ。そして原料米の種類も増えて、各地で開発改良されたご当地米を積極的に使っているようです。
使い手が、どこまでその米の特徴を把握し、精米歩合を決め、酸度(=味の濃淡のめやす)や日本酒度(=甘辛のめやす)を計算して造っているのかわかりませんが、私が信頼する蔵元は、「こういう酒を造りたい」というビジョンや設計図がきちんとある。
そういう酒はお代わりしても呑み飽きせず、地の食材にもうまく合うから、その設計図は正しいんだと信頼できる。静岡は低酸タイプが多いから、造り手が込めた繊細で絶妙なバランスをよくよく吟味してみないとわからない。・・・特徴がわかりやすい酒や1杯で満足したい酒を求める人には、素っ気なく感じるかもしれませんが、もともと日本人の味覚は外国人に比べて繊細で、素材の持ち味や旬を感じ取る感性が高いのですから、静岡酒のような酒の価値も必ず理解されると思っています。『喜久醉』の青島孝さんが、『吟醸王国しずおかパイロット版』のラストメッセージで、「静岡の酒は、酒の王道を行く」と語ったとおりです。
今回、試飲した中で、低酸(1・2)で、地元酒造好適米を22%まで精米した酒がありました。他とは違うかなと期待したんですが、高カプロン酸系酵母を使っていたせいか、香りが立ち過ぎというか、くど過ぎというのか、香りでぜ~んぶ持ってかれて、高精白した意味がイマイチ伝わってこなかった。・・・蔵元には「22%まで磨くには精米機を何時間回したんですか?」と他愛もないことを訊いてしまいましたが(苦笑)。
会場で初めて呑んで自分的に「お代りできる!」と思った銘柄をいくつかメモしておきます。
高嶋さんの友人の蔵『山和・純米吟醸』(宮城)は、酸度は1・7ぐらいあったけど、後口は重くなく、軽い渋みが残って嫌味がなく、静岡っぽい“さばけ方”だなと嬉しくなりました。今回の取り扱い店は坂戸屋商店と 味ノマチダヤ(中野)です。
『磐城壽・純米』(福島) は原料米が「夢の香」、酵母は福島の「小川酵母」で酸度1・4。とても素直で味が丸く、まとまっていました。
蔵元の鈴木酒造店さんは福島原発から近い浪江町にあり、避難を強いられ、被災した蔵を放置せざるをえない、最も厳しい状況にある
蔵元のお一人でした。
ブースの酒は小売店に残っていた21BYのもの。もともと生産量が500石程度の小蔵だったため、今は「売る酒が全くない」状態とのことでした。「小さな蔵なんで小回りが利くというのか、今は別の土地を探してなんとか酒造を継続できるよう頑張ってます」と気丈に語っておられました。・・・こういう蔵元さんを、遠くからでも支援できる手段はないものかと本当に切なくなります。取り扱いは味ノマチダヤ(中野)です。
『大那・純米大吟醸』(栃木) は原料米が那須産五百万石45%精米、酵母は「とちぎ酵母」、酸度1・6。五百万石でも、山田錦並みにきれいに仕上がっていて、お代わりしたくなる一品でした。
「ダイナって素敵な酒名ですね」と訊いたら「大いなる那須という意味ですが、響きが洋風っぽくていいでしょう」と蔵元さん。「ダイナをもう一杯」って言い易そうでイイですよね!取り扱い店は坂戸屋商店(川崎)と味ノマチダヤ(中野)です。
被災した蔵元さんは、ぶ厚い消費パワーと直に触れたことで、少しでも前向きになってくれれば・・・と思います。中にはあまりにも状況が酷く、何もできず、こういう場所にも来れない蔵元さんもいらっしゃるだろうし、今回は首都圏の有力地酒専門店の共同開催ですから、そういう専門店と取引関係のない蔵元さんには(・・・地元消費率の高い地域の酒蔵はとくに)直接声は届かないかもしれません。
でも日本酒は下支えする消費者がちゃんといる、若い世代も育っている、と伝えたいですね。ファンがこんな熱くなれるアルコール飲料って、他にないって、改めて感動しました。
主催された酒販店のみなさま、遠路お集まりになった蔵元のみなさま、本当にお疲れさまでした。