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希望を配る人

2011-04-10 07:49:38 | 編集手帳


  

   4月10日付 読売新聞編集手帳


  〈リーダーとは希望のディーラーである〉。
  ナポレオン皇帝の言葉とされる箴言(しんげんの一つだ。
  トランプの札を配る親をディーラーと呼ぶため、
  「希望を配る人」と訳されることが多い。
  「希望を扱う商人」という邦訳もあるが、
  あながち悪い意味ではなかろう。
  天と民、
  あるいは民と民とを結ぶ、
  「希望の特約代理人」といったニュアンスだろうか。
  いずれにせよ、
  政治のリーダーに今、
  求められるものをこれほど端的に示す言葉はない。

  大震災から1か月の節目を前に、
  きょう10日、
  東京をはじめ12都道県の知事選などで投開票が行われる。
  未曽有の災厄が収まらぬ中、
  いや、進行中に実施される統一地方選挙である。

  被災地の苦境を慮(おもんぱか)って、
  静かな舌戦だった。
  ただ、候補者名を連呼するだけの選挙カーが減ったのは良いとしても、
  “自粛”が投票率の低下となって表れるようでは困る。

  震災の影響は、
  これから日本中のさまざまな分野でじわじわと、
  確実に顕在化してくる。
  災い転じて福となすほどのビジョンを示してくれる「希望のディーラー」が必要だ。
  1枚の投票用紙が、
  かつてなく重いものになるだろう。
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