4月11日付 読売新聞編集手帳
「普段通りの生活をしても、死者を悼むのを止(や)めたことにはならない。
犠牲を無駄にしないため我々がまずできることは、普段の生活を取り戻すことだ」
10年前に起きた米同時テロの11日後、
当時のルドルフ・ジュリアーニ・ニューヨーク市長は市民にこう語りかけた。
市民以外の人々にも、
ニューヨークに買い物に来るよう呼びかけた。
「いつも混んでる店も今なら空(す)いている」と。
同時テロと今回の震災を安易に比べることはできないが、
災厄がもたらした悲しみを乗り越え、
前進しようという人々の強い決意は変わらない。
自粛が行き過ぎ、
社会の活力が失われてしまっては復興は遠のくばかりだ。
米紙は震災後、
繁華街から人混みが消え、
選挙運動までおとなしくなった日本の様子を、
「ジシュクが国民的な強迫観念になった」と皮肉った。
だが、桜が満開になった東京では、
宴会自粛の看板をはずす公園もあり、
花見客も増えてきた。
震災から1か月。
余震や原発事故に苦しむ被災者のためにも、
家に閉じこもらず、
思い切って外に出かけよう。
普段の生活に戻るのが、
日本の活力を取り戻す第一歩だ。