9月1日 NHK海外ネットワーク
ラオスの首都ビエンチャンで街を行く女性たちが身に着けているのは
伝統衣装のスカート シン。
裾などにあしらわれた模様が特徴である。
「この色が好き。
裾が気に入っている。
フォーマルな場所にも合う。」
伝統のラオス織は色とりどりの絹の糸で織りこまれた独特の複雑な模様。
約50の少数民族が暮らすラオスで
それぞれの民族が独自の色使いや模様の織物を受け継いできた。
水の神とされている蛇、
神の使いの鳥 ガルーダ。
ラオス織は農家の副業として家族の中で受け継がれてきた。
子どものころから30年以上機織りをしてきたというブンターさん。
17歳になる娘のビエンカムさんも小さいころから機織りを手伝ってきた。
「親から教わった機織りを娘に教えた。
孫にも伝わると思う。」
ラオス織の最大の特徴は手作業で表現された複雑で繊細な模様。
丁寧に美しい模様を織り込んでいく。
独特のデザインは近年は海外からも高く評価されている。
ヨーロッパ向けにアレンジされたブラウスやスカーフも生産。
ラオス織の売り上げの大半は今や海外への輸出によるものである。
日本の着物業界もラオス織に高い関心を寄せている。
呉服卸会社で商品開発を担当する泉晃司さん。
「最初に見たとき
色も柄も織り方も
これはいけると瞬間的に感覚で思った。」
泉さんはラオス織の工房と協力して
着物向けの生地の商品化を進めている。
農家の副業として受け継がれてきたラオス織だが
海外からも注目が集まる中
専門の職人を集めた工房が次々と誕生している。
ラオス織工房社長
「輸出に活路を求めている。
ラオス織が日本の着物や帯に使われたら素晴らしい。」
熱帯に適した薄い生地のラオス織を着物にするには工夫が必要である。
正座したり帯を締めたりして
強い力が加わっても大丈夫なように縦糸を強くした。
また着物向けの場合に求められる品質の違いもある。
「織り方で品質を改善できることを一緒に考えながら
共存共栄したい。」
帰国した泉さんはラオス織が
新たな着物の需要の掘り起しや新しい顧客の開拓につながればと期待している。
以前から関心を示している呉服店に完成した織物を持ち込んだ。
まず取り出したのは
着物の生地として日本向けにあえて淡い色合いで織り上げたもの。
「これだとラオスらしさがまったくない。
日本のものと区別がつかない。」
一方 ラオス織独特の模様が織り込まれた帯を目にすると
「これだよ。
こっち作らなきゃ。
日本で作ったら100万円超える。」
呉服店 花岡隆三代表取締役
「ラオスで織られている伝統的なものを
そっくり帯に当てはめた方が面白い。
着物が大好きな人にとって見たことない
風合い 柄 色
ぜひそれを着物に取り込んで合わせてみたいという欲求が芽生える。
そういう品物かなと思う。」
泉さん
「ラオスの織物が日本の着物市場に受け入れられる確信が持てた。
今後も頑張っていきたい。」
長年にわたり受け継がれてきた伝統のラオス織が
日本の着物の世界に新しい風を吹き込むことができるのか
関係者の期待が高まっている。