9月8日 NHK海外ネットワーク
ロシアにとって今回のAPECは
極東の開発とインフラの整備に
外国からの投資を呼び込もうという狙いがある。
特に力を入れているのが物流網の整備でその中核となるのがシベリア鉄道。
ウラジオストクを起点とするシベリア鉄道は
ソビエト時代は兵器や軍事物資の輸送が優先され
ソビエト崩壊後はダイヤの乱れに加えて盗難が相次ぐなどで
利用客が激減した。
それがプーチン政権になって経済活性化のカギとして近代化を積極的にすすめ
今では海外の企業が注目するまでになっている。
世界最長のシベリア鉄道は全長9,300キロに及ぶ。
ウラジオストクからモスクワまでロシアの東西を貫く大動脈である。
石炭から食料品まで
人々の暮らしや企業の活動に欠かせない物資を運ぶ
“ロシアの背骨”である。
相次ぐ遅れや盗難をなくすため鉄道会社が優先して取り組んだのが
“定時性の確保”。
全国16か所に運行管理センターを整備した。
列車の位置をリアルタイムで把握し事故や列車の遅れを回避。
輸送時間は大幅に短縮された。
機関車は最新型を導入。
最大で70両をけん引する。
線路の枕木も木からコンクリートに変更し
耐用年数は10年から40年に延びた。
シベリア鉄道の可能性にいち早く目をつけたのは韓国。
韓国にはアジア有数の海の物流拠点プサン(釜山)港がある。
ウラジオストクの港に陸揚げし
シベリア鉄道を使って輸送するルートを切り開いた。
ウラジオストクで3年前に生産を始めた韓国車の組立工場では
韓国から運び込んだ車の部品をここで組み立て
モスクワ方面へ運ぶ。
工場の敷地内に線路を引き込み
完成した車を次々に専用の貨車に乗せていく。
工場から直接送り出すことによって
遅れや破損などのリスクを最小限に抑えようという狙いである。
輸送担当者
「ロシア全土に出荷している。
一番遠いところは1万キロ以上も離れている。」
遅れをとるまいと日本の企業も動き出した。
国内最大手の物流会社で働く木村保彦さん(33)。
ウラジオストクに開設したばかりの営業所で
シベリア鉄道を利用した日本企業向けの輸送事業の立ち上げを任されている。
「ロシアという国はビジネスをするにあたって
予想できないことが頻繁に起こる国。
そこを着実にクリアしていくことでやりがいが非常に出てくる。」
木村さんが初めて受注した貨物が
貨物船でウラジオストクの港に入港した。
入手はロシアに進出している日本の機械メーカーで
モスクワ近郊の工場まで部品を届ける。
「本格的にシベリア鉄道を利用した輸送の第一弾。
非常に感慨深い。」
3週間かけての輸送だけに
予定どうり届くのか事故に合わないか
心配は尽きない。
木村さんは貨物の輸送状況をインターネットで毎日欠かさず確認をした。
シベリア鉄道の運営会社が去年始めた位置情報の提供サービスである。
「内心ハラハラしながら最初見ていたが
着実に1日ごとに進んでいるのが一目瞭然でわかる。」
貨物がウラジオストクを出発してから22日後
木村さんはモスクワ近郊の駅に先回りして待ち受けた。
しばらくしてトラックに積み替えられた荷物が出てきた。
コンテナが壊れていないかや
鍵が開けられていないかを急いで確認する。
「ホッとしている。
不安の連続だったがこうして結果が出て
今後につなげていけるのは非常に安心している。
これからも期待が持てると思う。」
アジアとヨーロッパを結ぶ
新たな物流ルートとして注目されるシベリア鉄道。
ロシアがアジアで存在感を増すための強力な武器となっている。
ロシアは世界一の国土を持つといっても
アジア側の3分の2は広大な過疎地である。
発展から取り残され
人口の流失が続いてきたこの地域の開発を進めていかないと
国の弱体化につながるという強い危機感が
プーチン大統領にはある。
アジアとヨーロッパを結ぶ大動脈のシベリア鉄道を整備することで
アジアの活力を取り込んで国の底上げにつなげたいというのが
プーチン大統領の思惑である。
この地域でロシアにとって重要なのは
急速に台頭する中国との関係づくり。
背景にあるのは
経済発展を続ける中国に飲み込まれてしまうという警戒感。
中国とは対立せずに良好な関係を維持しなければならない。
ロシアとしては
日本、アメリカ、韓国などともエネルギーをてこに結びつきを強めながら
この地域の重要なプレーヤーとして存在感を強めていきたい考えである。
ロシア初のAPECは
極東の開発に力を入れるプーチン大統領の意向を強く反映したものとなった。
ロシアとの関係を深める中国や韓国に比べて
日本はどのような対ロシア戦略を描いているのか
また東アジア全体の安定と発展に向けて
各国とどのような関係を築こうとしているのか
明確な戦略が見えてこない。
極東の開発に乗り遅れないためにも
明確なビジョンのもとで官民挙げて取り組むことが重要である。