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“いなし”の知恵

2012-09-26 16:58:02 | 報道/ニュース


  9月16日 サンデーモーニング


  東日本大震災から1年半が過ぎて岩手県陸前高田市では
  津波によって立ち枯れの状態にあった“奇跡の一本松”の伐採が行われた。
  住民の中には反対する声もあるが
  防腐処理などを施し
  来年2月にモニュメントとして設置する予定である。

  押し寄せる津波に耐えて唯一残った一本松。
  その姿は壊滅的な被害を受けた地元の人たちの心のよりどころとなってきた。
  伐採のニュースは海外メディアも伝えた。
  そこにはこんな記述が見える。
  海岸では一本松伐採に先立ち
  神道にのっとった儀式が行われた。
  神道は日本古来より伝わる自然崇拝の信仰である。
(テレグラフ12日付)
  
  東京都都市大学教授・造園家 涌井雅之さん
  「日本人のひとつのスピリットなんですね。
   日本人は自然とともに生きていく。
   そういう哲学を日常生活の中に持っている。」

  日本古来の自然観とはー。
  神聖な場所であることを示すしめ縄が張られた古い石。
  そして樹木。
  古くから日本人はこうした自然の中に神や霊魂の存在を感じとり
  信仰の対象としてきた。
  このような自然に対する畏敬の念が
  自然との共生
  土地への愛着
  隣人との助け合いなど
  日本人には親しみのある世界観を育んできたのである。
  その背景には
  美しい風景や四季折々の実りをもたらす気候など
  この国の自然や風土が生む豊かな恵みがあった。
  しかし自然が与えるのは恵みだけではない。
  時に荒々しい牙をむいて人間の生活に襲いかかる自然の脅威。
  しかしその圧倒的な大自然の脅威に繰り返しさらされながらも
  人々は知恵を生み出し
  自然とともに生きる道を切り開いてきた。

  その知恵の例として涌井さんがあげたのが
  相撲でよく見かける“いなし(往なし)”という技。
  正面からぶつかるのではなく体をかわしたり手で払ったりして
  相手の勢いをそらすことである。
  “いなし”の発想はどう応用されてきたか。
  武田信玄が川の氾濫に備えて築いたという霞堤は
  洪水の際 水の一部が堤防の開口部から外に導かれることにより
  水の勢いがやわらげられ被害を少なくするという
  “いなし”の知恵である。
  日本古来の建築 五重塔にも“いなし”がある。
  五重塔の中央を貫く1本の心柱と各層の骨組みを独立させ
  別々に揺れるようにすることで地震の力を分散させるのである。
  この知恵は東京スカイツリーにも生かされている。

  こうした日本人の知恵は被災地でも見直され始めているという。

  涌井雅之さん
  「防潮堤の高さをものすごく高くするという考え方とは別に
   多重防御という考え方。
   多重な防御によって津波の勢いを減じていく。
   これは我々が祖先から学んだ英知。」
  「今 世界は力と力の対立になっている。
   力と力の対立は破壊しか生まない。
   しかし日本人は戦後の経済優先主義 市場原理主義の中に巻き込まれて
   “いなし”の知恵を忘れた。
   祖先の知恵をしっかり見つめ直して
   世界に対して提示することが求められる。」

  

  

  
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