9月22日 NHK海外ネットワーク
アメリカ フィラデルフィア市警察の刑事が
事件が起こった時に真っ先にすることは
防犯カメラの映像の入手である。
その映像をできるだけ早くYouTubeに載せることが任務。
「これは従来の操作を補う新しい手法だ。
これで電話がかかってきて手がかりが見つかることがある。」
YouTubeやツイッターといったソーシャルメディアの普及が
警察の捜査手法も変化させている。
米フィラデルフィアの防犯カメラがとらえた映像。
二人の子どもが歩いていたところに突然現れた男が
女の子を連れ去ろうとしているが
女の子が必死に抵抗したため男はその場から逃げた。
通報を受けた警察は防犯カメラの映像をすぐにYouTubeえ公開し
情報の提供を呼びかけた。
子どもを狙った犯行の生々しい映像は大きく取り上げられた。
インターネット上やテレビで繰り返し映像が流されたことで
よく似た人物を知っているとの情報が警察に寄せられた。
映像の公開から6時間後に男は警察に出頭し逮捕された。
(被害者の父親)
「これほど早く逮捕できたのは驚きだ。
ソーシャルメディアを操作に使えば
犯罪捜査でよい結果が得られると思う。」
ソーシャルメディアをアメリカの警察が捜査に利用し始めたのは2年ほど前。
地方自治体の財政難による予算削減で
捜査の効率化が求められたことがきっかけだった。
すばやい情報発信と幅広い情報提供が期待できることから
新たな捜査手法として急速に広がっていった。
(フィラデルフィア市警察 レイモンド・エバース報道担当官)
「ソーシャルメディアは犯罪解決に役立つ新たな道具だ。」
ソーシャルメディアは市民の安全を守るための重要な手段にもなっている。
今年5月 シアトルの喫茶店で起きた銃乱射事件。
容疑者の男は5人を殺害し逃走した。
シアトル市警察はツイッターで捜査の進展をつぶさに伝えた。
第一報は発生から9分後。
情報を発信したのは警察のソーシャルメディア担当者である。
事件の発生を受けてすぐさま現場に駆けつけ
犯人の髪の色や服装、逃走に使った車の種類などを次々と伝えた。
市民に対し容疑者に注意するよう促すのが狙いである。
(シアトル市警察ソーシャルメディア担当 ショーン・ウィットコムさん)
「凶悪事件が起こると市民は大きな不安を覚える。
市民の安全を守るためどのような捜査をしているのか
知ってほしかった。」
最終的にツイッターにのせた数は
現場の写真や記者会見の内容、さらに男が自殺を図ったことなど
計40本にのぼった。
大手メディアの記者もツイッターで取材した。
“容疑者が死亡という情報があるが事実なのか?”
“はい。容疑者の死亡を確認した。”
警察は関心が高い事件について細かく情報を提供することで
警察への信頼が高まり
ひいては地域との良好な関係につながると考えている。
(シアトル市警察ソーシャルメディア担当 ショーン・ウィットコムさん)
「市民に直接情報提供することを心がけている。
それで地域社会と協力していけると思う。」
ソーシャルメディアを使った捜査が有効なのは大都市だけではない。
人口5千人の町ルイジアナ州マンスフィールド。
6月6日 2人の女が店に入ってきて盗んだ小切手を交換した。
小型カメラがその時の様子を映していた。
事件の翌日 保安官事務所が映像をフェイスブックに載せたところ
有力な情報が寄せられ
容疑者はその日のうちに逮捕された。
これまでは週に1回発行される地元の新聞が事件の発生を伝えるだけで
警察が独自に広く呼びかける手段はなかった。
(チャト・アトキンス捜査官)
「容疑者の2人は現場から離れた場所に住んでいた。
フェイスブックを使わなかったら特定できなかった。」
保安官事務所によると
ソーシャルメディアを利用し始めた去年
重要犯罪の逮捕件数は前年の2倍近くに増えた。
捜査への利用がすすむなかロサンゼルスの保安官事務所は
捜査員1人1人にソーシャルメディアの正しい利用方法を身に着けてもらおうと
定期的に講習会を開いている。
「読んでいる人が興味を持つように書きましょう。
しかし民事訴訟・刑事訴訟を引き起こす可能性を理解しておいてください。」
人種差別的な表現は使わないことや
噂や確実でない情報は絶対に発信しないことなど
注意を促した。
そのうえで普段から市民とのよい関係を維持することが大切だと教えている。
(講習会の講師 マーク・パーカーさん)
「ソーシャルメディアで警察は大勢の人に
直接 情報を発信できるようになった。
ふだんから市民と意思疎通する必要がある。
そうすればいざという時
警察は市民に助けてもらえる。」
ソーシャルメディアによる警察と市民の新たなつながりは
全米に広がりつつある。
より安全な社会を実現することができるのか
注目される。