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ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

スパイダーマン(V)

2008-05-25 11:08:45 | 映画(さ)
評価点:43点/2002年/アメリカ

監督:サム・ライミ

人気アメリカンコミックの完全映画化。

頭脳は明晰だが、度胸がなく体力にも自信がないという典型的な出来杉君タイプの高校生ピーター(トビー・マグワイア)は、
MJ(キルステン・ダストン)という幼馴染の女の子に恋心を持っていた。
ある日、(宇多田ヒカルも在籍していたという)コロンビア大学の、生物研究所に見学に行ったとき、研究所で造られた特殊な蜘蛛に手の甲を刺されてしまう。
そして翌日目覚めるとピーターの体に異変が起こり、超パワーと手首から蜘蛛の糸が出るようになっていた。
育ての親である叔父さんの死に直面してしまった彼は、正義の味方としてニューヨークの街を守ることを決心する。

この映画もニューヨークの街並みを舞台としていて、9・11の影響で公開が延びた作品である。
最近アメコミの映画化が盛んだが、この映画の成功がそれに一役買っているのだろう。
話題性があったのでかなり期待してみたのだが、ちょっと期待はずれだった。

スパイダーマンというアメコミ自体を読んだり見たことはなかったので、
思い入れがなかったせいもあるだろうけれど、どうもノリについていけない。
というか、一言で言うなら全体的に古い印象がぬぐえない。
展開、ギャグ、ヒロイン、敵の衣装、すべてにおいて陳腐であり、時代錯誤を感じてしまった。

まずヒロインが不細工すぎる。
登場シーンからダンストがヒロインであることがわかるが、明らかに不適当である。
別にヒロインが乳のでかい馬鹿女でも、映画が成立品ほどではないが、それでもこの映画の中ではピーターの大きな悩みのひとつが、
恋なのだから、もう少しキャスティングを練る必要があったのではないか。
見た目が9割、とは言わないが、敢えて蹴り倒したくなるヒロインをキャスティングしなくても、と思えてくる。

しかも不細工なだけならまだ許せるが、尻が軽すぎるということは許せない。
クラスメイトの不良っぽい男がなにやら彼女と付き合っているかと思えば、その後再開した後の交際相手は、なんと親友。
「お前が何もしないから」なんて言われても、全然説得力がありません。
高校のクラスメイトを残らず食い尽くすヒロインの「食欲」は、とてもじゃないが守りたいとは思わない。
しかもその親友はお金持ち。
その前のクラスメイトも、誕生日に車を買ってもらうという強者(ツワモノ)。
おいおいおい、もしかして権力や金につられているんじゃないのか?
と疑いたくなる(その後スパイダーマンに惚れるし)。

助けたくなるようなヒロインがいなくても、倒したくなるようなライバル(=敵)がいれば、映画としてなんとかなる。
ところが、そのライバルもミスマッチなのだ。
いつの時代にそんなダサい仮面をかぶって街中を駆け巡ろうと思うのか。
全身緑色の笑える仮面をつけた親友の父親は、もはや哀れと言うしかない。
その上、行動動機がよくわからない。
「首にした役員を殺してやる」という最初の目的を達成した後、なぜか「スパイダーマンよ、手を組もう」。

なんでやねん。
(胸がでかいだけのヒロインでも)惚れた女を、危険な目に合わすような緑の滑稽な奴と手を組むやつがどこにいるのだ。

面白いのは、敵の心の葛藤を鏡に向かって見せている。
明らかに「ジーキル博士とハイド氏」を意識したシーンである。
この葛藤を見るかぎり、敵は更正するのかと思いきや、最後はあっさり死んでしまう。
これではちょっと映画として難しいだろう。
敵を倒すというのは、殺すことではない。
敵の、悪たるアイデンティティを壊してしまうことだ。
それを描ききれなければ、カタルシスは著しく低い。

それでも売れた理由は、映像美だろう。
残念ながらブラウン管ではどうしても暗いシーンは見づらく完全に堪能することは出来なかったが、おそらく映画館ではそうとう興奮できたのだろう。
これだけSFXが進んだ時代に、これだけの稚拙なシナリオを書いてしまう。
それが悲しい。

ガンダムの「ドダイ」のような敵の乗り物も「弱い」し、主人公が正義の味方になろうと思い立ったエピソードも、とても陳腐で笑ってしまう。
原作にこだわりすぎて、現代風にアレンジし切れなかったのかな。
ラストのシーンで星条旗をバックにした画は、現代のアメリカのエゴを象徴しているようで怖かった。

(2003/04/03執筆)

だが、今にして思えば、この映画が撮られたのはテロの前。
妙な哀愁を漂わせているのは、その矛盾にたたき落とされた後だからなのか。

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