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パリ ジュテーム おフランス新婚旅行記その6

2013-10-10 08:11:20 | 旅行記
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最終日。
7日目はほぼ移動だけで終わってしまうので、実質的には観光は最終日となった。
この日はなんのツアーにも参加せずに、完全に自由行動となっていた。
行く前は様々な案があったが、とにかくこれだけは行っておいたほうがよい、と言われた「マレ地区」に向かうことにした。
ガイドブックに載っているルートをほとんどそのままトレースした。
まずはノートルダム大聖堂まで地下鉄を乗り継ぎ、マレ地区へ行くというルートだ。

日本人だからなのか、それとも私たちが勤勉だったからなのか、それとも夜早く寝すぎたからなのか、朝7時すぎには朝食会場に向かい、8時過ぎにはホテルを後にしていた。
ノートルダム大聖堂ちかくの地下鉄の駅まで行き、方向音痴になりながら、ノートルダム大聖堂へたどり着いた。
その日は祝日(祭日)だったようで、ミサが開かれており、荘厳な鐘の音があたりに響いていた。
大きな看板には○○周年記念と書かれており、大きなイベントが開かれていた。

私を驚愕させたのはやはりその大きさと緻密な彫刻だった。
それまでモン・サン・ミッシェルやヴェルサイユ、ルーヴル、凱旋門と回ってきたこともあって、ノートルダム大聖堂についてはそれほど期待していなかった。
驚きの飽和状態だったので、これ以上は驚いたり感動したりすることはないだろうと思っていたのだ。
(だって、単なるでかい教会でしょ?)
しかし、私にとって一番鮮烈な印象を与えたのは、他でもなく、このノートルダム大聖堂だった。
(ラルクの「REAL」のアルバムのジャケットに写真が使われているのは後で知った。)

建物と呼ぶにはあまりにも緻密に象られた彫刻たち、彫刻と呼ぶにはあまりにも巨大な建造物。
ステンド・グラスと呼ぶにはあまりにも大きく美しいガラス細工。
そして、その荘厳さが権力の象徴でもあり人々の信仰そのものなのだと刻みつけられるミサの祈り。
私は、奥さんには言わなかったが、少し目眩すら覚えた。
吐き気すら感じた。
すべてにおいて圧倒的だった。

私がパリでこれだけは見ておけと言うとすれば、きっとこのノートルダム大聖堂だと答えるだろう。
この建物だけは、肌で感じなければ、五感で感じなければ、理解できない。

裏庭に回ると、フランスではよく見かける整列された樹木があった。
日本では考えられないほどまっすぐに碁盤目に整列して植えてある。
さらに刈り込みも見事に立方体を描いている。
ここまでくると、すべての自然を人間のために加工するというエゴイズムを通り越して、こうでなければこの公園に植える価値がないというほどストイックにすら見える。
ルーヴルのチュイルリー庭園の木々も同じように並んでいた。
日本の庭園は自然の再現という色合いが強いが、フランスでは徹底的に人間が管理した左右対称の美だ。
それは不自然であるが故に自然だ。
建物が徹底されているのであれば、必然的に自然に生長する木々も幾何学的でなければならないのだ。

天空へと、上に上に押し上げる見事な彫刻が、心にまで刻みつけられた後は、マレ地区へゆっくりと歩いて行った。
この後再びトイレ・トラブルに巻き込まれたが、やはりカフェに避難して事なきをえた。
マレ地区は、卑近な例で申し訳ないが、京都のセレクト・ショップや代官山(?)の通りに似ている。
オサレな店構えの店が多く、田舎者の私にはすこぶる入りにくい。
ただ店構えが入りにくいだけならいくらでも突入するのだが、早く着きすぎたためにほとんどが営業時間外だった。
だから本当に入れなかった。
アクセサリーの店はどうしても、ということだったので昼食後訪れた。
それ以外も徐々に開店し始めたので、少しだけ中をのぞくことができた。
「こんなの売ってるだけで本当に儲けがあるのか」と思われる店も少なくなかったが、営業できているのだから売れているのだろう。
マトリョーシカや、不思議なアート、謎の雑貨屋さんなどがスーツやシューズの店に紛れて並んでいた。

歩くだけでも十分楽しいが、なかなかそれを日本でも持って帰って着たりするのは難しそうだったのでやめておいた。
ええ、胴長短足の私には似合わないからですよ、ですが何か?

やっぱり歩きっぱなしで疲れてきたので、カフェに入って昼食をとることにした。
時間は11時すぎ。
レ・ミゼラブル」の作家、ヴィクトル・ユゴーゆかりのカフェがあったので、そこにした。
それほどおなかが減っているわけではなかったので、オムレットを頼もうと、メニューで指さし注文した。

しかし。

ここでもカフェの恐ろしさに開いた口がふさがらなかった。
届けられたのは目玉焼き三つが大きな皿に載せられただけのものだった。
そこに塩と胡椒が添えられて、おしまい。
バケットもなし。
「え? 日本人だからってなめられてる?」と思ったが、どうやらこれが私が注文した「オムレット」だったらしい。
朝ご飯にゆで卵を食べたところだった私は、正直かなり気分が悪かった。
まさか卵を合計四つも短時間で食べることになるとは思いも寄らなかった。
恐るべし、フランス。

ちょっとふらふらになりながら、あたりを散策して地下鉄に乗って帰ろうとしていると、マルシェを見つけた。
マルシェ!
そう、奥さんがパリに行くならこれは行っておきたい、とかねてから話をしていたのがマルシェだった。
マルシェとは、日本でいうところの簡易店舗の市場のようなものだ。
祭りの出店のような店舗に、衣類や食材、雑貨などが並ぶ。
場所や時間によっては花のマルシェだったり、食材のマルシェだったり様々だ。
行きたかったのだが、ガイド・ブックに載っていたのは曜日と時間帯、場所が合わないところばかりだったので断念していたのだ。
しかし、この日は祭日だったようで、バスティーユ広場のあたりでマルシェが開かれていたのだ。
石けん、衣類、総菜に魚介類、チーズまで並んでいた。
活気もあり、値段もお手頃なものばかりだった。
お土産にハットを買おうと立ち寄ったが、どうもよさそうなのがなかったので断念した。

奥さんは、チーズがほしかったらしく、悩んでいたが最終日ということもあり食べるにも持って帰るにも厳しそうだったので断念した。
肉料理のお総菜屋さんでは良いにおいが漂っていた。
その後レストランにいく予定にしていたので、結局何も食べずに立ち去ったが、予期せぬマルシェにテンションが上がった。
ただ、私はその頃になって目玉焼き三つランチがボディー・ブローのようにききはじめ、気分が悪かった。
ユゴーめ!!

地下鉄を乗り継ぎ、ホテルまで帰ってきた。
まだ早い時間帯だったが、私たちには一つ目的があった。
それはホテルの近くにあったレストラン。
この老舗レストラン「シャルティエ」は19時くらいになると連日長蛇の列ができていた。
カフェばかり入っていた二人は、最後にレストラン(といっても大衆向けだけれど)に行きたかったのだ。
18時くらいに店に行くとすでに数人が並んでいた。
店内は非常に広いのだが、座席が所狭しと並べられて、それでも行列になるのだから人気店のようだった。
相席になり、隣には日本人女性二人が座った。
大学の先輩後輩のような二人で、一人はフランスに住んでしばらく経っている雰囲気だった。
私はきちんとした料理(目玉焼きやユッケではなく)を食べたかったので、サラダとハンバーグステーキを頼んだ。
もちろん、食前酒と、赤ワインも。
奥さんは、パテとキッシュを注文した。

とてつもない大きさの皿で運ばれてきたらどうしようと思っていたが、丁度良い大きさの一人分だった。
しかも、とても美味しい。
担当してくれたギャルソンがやたらとかっこいいアジア人で、所作がプロフェッショナルだった。
注文した料理をテーブルのナプキンに書き込んで、届いたら消していく。
私が女だったら惚れている。

最後にはキャマンベール・チーズを頼んだ。
(決して「カマンベール」ではない)
チーズの芳醇な香りと、ワインの香りが相俟ってのぼせてしまった。
スーパーでもチーズを食べていたが、ここのチーズは本当に香りが強かった。
香りだけで酔いそうになる。
これまで食べていた日本のカマンベールチーズは嘘だったのだと思い知らされた。

もっと他のメニューも堪能したかったが、さすがにおなかがいっぱいになったし、私たちが食べている間に店の前には長蛇の列ができていたので、精算して帰った。
高級な店にはほとんど入らなかったが、次に行く機械があれば、本当に高い店にも入ってみたいものだ。
世界遺産になったというフランスの高級料理は、やはり本場で楽しんでみたいという思いにさせられた。

帰りに、おきまりのスーパーに寄ってお土産とデザートを買い込んでホテルに戻った。
「ああ、もう帰らないといけないのか」という寂しさと、「はやくご飯と味噌汁を食べたい」という望郷の念を抱いていた。

→ その7

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