評価点:73点/2015年/アメリカ/88分
監督・脚本:ジョン・ワッツ
勝負することの哲学が貫くアメリカの荒野。
家出少年の二人、トラヴィス(ジェームズ・フリードソン=ジャクソン)とハリソン(ヘイズ・ウェルフォード)は、アメリカの荒野を歩いていた。
しばらくすると、パトカーがあるのを見つけ、中には誰もいない。
周りを見渡しても誰もいない。
いたずら心で、車に乗り込むと、キーがあった。
面白半分で運転し始めるが、そのパトカーには驚くべき「積み荷」があった。
2017年公開の「スパイダーマン」新シリーズの監督に抜擢されたジョン・ワッツが監督した作品だ。
上映時間も短く、日本でもそれほど話題にならなかった、と思う。
(最近劇場公開の映画の情報を仕入れていないので)
ケヴィン・ベーコンがパトカーを忘れた保安官を演じており、ぴったりの配役だ。
劇中、ほとんど説明的な描写はなく、たんたんと進んでいく。
「そんなことありえんわ」と思わせながら、もしそうだとしたらどうなるのかというおもしろさがある。
あまり親切な映画ではないので、好き嫌いはあるだろうが。
私はけっこう楽しめたが。
▼以下はネタバレあり▼
物語の細かい設定について、ほとんど説明されない。
だから、登場人物たちのセリフから状況を確認していくしかない。
しかし、状況がわかってくると、登場人物のそれぞれの思惑が交錯して緊張感が高まっていく。
理由は示されず、「それからどうなるのか」という問いのみが繰り返される。
いかにも歴史のないアメリカらしい映画だ。
家出というパターンをとっているので、やはり往来の物語である。
子どもたち二人にとっては、いわばロードムービーなのであって、トランクの中の男にとっては復讐の物語である。
ほとんど説明的でなくともあるていど分かるようになっているところ、そしてわかったあたりから急に物語がどこへ転ぶか分からなくなっていくところは、おもしろい。
家出少年二人は、おそらく家庭環境に満足していない。
一人はおばあちゃんに育てられ、もう一人は義父がいる。
ませた子どもたちは、やがて自分の家にいたくないと思い、家を飛び出る。
よくある話だ。
食糧やお金ももたず、無計画で、それでいてパトカーに過度に怖がって、現実をあまり知らない。
子どもなら、一度はしてみたくなる、そんな無謀で、無邪気な家出だ。
その彼らが見つけたのは、悪徳保安官だった。
麻薬を裏で取引し、私腹をこやし、殺人まで犯す。
アメリカなら(?)よくある駄目な保安官だ。
彼は裏切った取引先の兄弟の一人を殺し、もう一人は生きたままトランクに連れ込んだ。
殺した一人を埋めるために人気のないところにパトカーを置き、ゆっくり仕事を終えたところだった。
車がない。
この状況を同僚や他の警官に話せるはずもなく、一人で盗み出した者を探さなければならない。
見つかったとき、自分の運命も終わる。
この緊張感、焦燥感、絶望感といったらない。
少年たちは、トランクの中に気づいてしまう。
トランクには、保安官が捉えた男が入っていた。
しかも、生きた状態で。
ここから三つどもえとなる。
トランクの中の男も、もちろん保安官との裏取引を明るみに出せないので、保安官を殺す以外に選択肢はない。
保安官もまた、ここでトランクの男を殺さなければ、事態は収拾しない。
もちろん、子どもたち二人は、この二人にとって何の障害でもない。
ただ、殺せば良いのだ。
この映画がおもしろいところは、最後まで手の内を見せなかった者が勝つというシンプルなルールに則っている点だろう。
だから、ここには勝負の極意がある。
それは、年齢でも、性別でも、職業でもない。
状況を正しく理解して、自分のカードを見せずに相手の焦りを待つこと。
少年たちはそれができた。
だから勝ったのだ。
跳弾で負傷した少年はおそらく助かるだろう。
なぜなら、家出した者はやがて家に帰るのだから。
監督・脚本:ジョン・ワッツ
勝負することの哲学が貫くアメリカの荒野。
家出少年の二人、トラヴィス(ジェームズ・フリードソン=ジャクソン)とハリソン(ヘイズ・ウェルフォード)は、アメリカの荒野を歩いていた。
しばらくすると、パトカーがあるのを見つけ、中には誰もいない。
周りを見渡しても誰もいない。
いたずら心で、車に乗り込むと、キーがあった。
面白半分で運転し始めるが、そのパトカーには驚くべき「積み荷」があった。
2017年公開の「スパイダーマン」新シリーズの監督に抜擢されたジョン・ワッツが監督した作品だ。
上映時間も短く、日本でもそれほど話題にならなかった、と思う。
(最近劇場公開の映画の情報を仕入れていないので)
ケヴィン・ベーコンがパトカーを忘れた保安官を演じており、ぴったりの配役だ。
劇中、ほとんど説明的な描写はなく、たんたんと進んでいく。
「そんなことありえんわ」と思わせながら、もしそうだとしたらどうなるのかというおもしろさがある。
あまり親切な映画ではないので、好き嫌いはあるだろうが。
私はけっこう楽しめたが。
▼以下はネタバレあり▼
物語の細かい設定について、ほとんど説明されない。
だから、登場人物たちのセリフから状況を確認していくしかない。
しかし、状況がわかってくると、登場人物のそれぞれの思惑が交錯して緊張感が高まっていく。
理由は示されず、「それからどうなるのか」という問いのみが繰り返される。
いかにも歴史のないアメリカらしい映画だ。
家出というパターンをとっているので、やはり往来の物語である。
子どもたち二人にとっては、いわばロードムービーなのであって、トランクの中の男にとっては復讐の物語である。
ほとんど説明的でなくともあるていど分かるようになっているところ、そしてわかったあたりから急に物語がどこへ転ぶか分からなくなっていくところは、おもしろい。
家出少年二人は、おそらく家庭環境に満足していない。
一人はおばあちゃんに育てられ、もう一人は義父がいる。
ませた子どもたちは、やがて自分の家にいたくないと思い、家を飛び出る。
よくある話だ。
食糧やお金ももたず、無計画で、それでいてパトカーに過度に怖がって、現実をあまり知らない。
子どもなら、一度はしてみたくなる、そんな無謀で、無邪気な家出だ。
その彼らが見つけたのは、悪徳保安官だった。
麻薬を裏で取引し、私腹をこやし、殺人まで犯す。
アメリカなら(?)よくある駄目な保安官だ。
彼は裏切った取引先の兄弟の一人を殺し、もう一人は生きたままトランクに連れ込んだ。
殺した一人を埋めるために人気のないところにパトカーを置き、ゆっくり仕事を終えたところだった。
車がない。
この状況を同僚や他の警官に話せるはずもなく、一人で盗み出した者を探さなければならない。
見つかったとき、自分の運命も終わる。
この緊張感、焦燥感、絶望感といったらない。
少年たちは、トランクの中に気づいてしまう。
トランクには、保安官が捉えた男が入っていた。
しかも、生きた状態で。
ここから三つどもえとなる。
トランクの中の男も、もちろん保安官との裏取引を明るみに出せないので、保安官を殺す以外に選択肢はない。
保安官もまた、ここでトランクの男を殺さなければ、事態は収拾しない。
もちろん、子どもたち二人は、この二人にとって何の障害でもない。
ただ、殺せば良いのだ。
この映画がおもしろいところは、最後まで手の内を見せなかった者が勝つというシンプルなルールに則っている点だろう。
だから、ここには勝負の極意がある。
それは、年齢でも、性別でも、職業でもない。
状況を正しく理解して、自分のカードを見せずに相手の焦りを待つこと。
少年たちはそれができた。
だから勝ったのだ。
跳弾で負傷した少年はおそらく助かるだろう。
なぜなら、家出した者はやがて家に帰るのだから。
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