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2005年 杭州・上海旅行記 その4

2009-07-09 00:37:02 | 旅行記
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【三日目】
二日目にしてようやく、専属の通訳・ガイド(友人D)が付いたこともあり、僕らは、本格的に中国を楽しみ始めていた。
一時は、無事生きて帰る事が、最大の目的になっていた旅行だったが、ようやく観光に来たという実感がわいてきた。

さて、三日目の予定は杭州の観光スポットめぐり。
霊隠寺という有名な仏像が並ぶお寺と、杭州で最も有名な湖の西湖。
この二つは、日本のガイドブックにも必ずといって良いほど掲載されている。
しかも、「オススメ・スポット」として紹介されているほど、有名だ。
それは、海外だけではなく、中国国内でも、非常に有名で、土曜日ということもあり、どちらもかなりの人だかりが出来ていた。
僕は、この二つの歴史的背景や、文化的な価値を知らないので、眼についた面白い光景だけ紹介しておこう。

上海も、杭州も、シーズンは春夏秋あたり。
行事によっても、多少異なるけれど、少なくとも真冬は完全なオフシーズン。
それでも霊隠寺には、たくさんの人が詰め掛けていた。
霊隠寺は、大きく二つ見るところがあって、山に仏像を300体以上彫った「飛来峰造像」というところと、奈良の大仏を小ぶりにして、カラフルにした仏像があるお寺とがある。
それぞれ近接していて、同時に見回ることができるので、お買い得感が満点なのだ(別料金だけど)。

どちらも、スケールがでかい。
日本なら、仏像一つ作るだけで満足してしまうところを、ここでは大量に作られている。
妙にカラフルなのが、日本と決定的に違うところだろうが、やはり大陸の大きさと発想の大きさが比例するのか、とにかく大きく、そして多い。
数々の仏像を見ていると、日本の仏像との違いに気づかされるし、もっときちんと日本の文化を知っていれば違いを楽しめたのに、と悔しい思いもする。

僕は日本人なので、どうしても中国人の行動を観察してしまう。
この霊隠寺でも、中国人観光客を意識しないうちに、観察していた。

すこし昔、日本人が欧米でどのようなイメージをもたれていたか。
眼鏡に、7:3の髪型、のっぺりとした顔立ちに、ウォークマンと、カメラ。
これが、少し前までの日本人観光客のイメージだった。
自動車、ウォークマン、そしてカメラで儲けた日本人は、海外の観光地に行くと必ずカメラを持ち歩いた。
というイメージがあった。
実際、今でもやたらと写真を撮りたがる女子高生を見ていると、そのイメージもあながち間違っているとは言いがたいだろう。

霊隠寺でも、それと同じ体験をした。
といっても、逆に、僕が中国人観光客のカメラ狂を目の当たりにしたのだが。
霊隠寺の仏像は、日本と同じように、基本的に撮影禁止。
撮影していると、お坊さんのような人が、注意しに来る。
しかし、そんなことはお構いなしに、どんどんシャッターを切る。
建物の中から撮っているとうるさいので、建物の入り口から、ばしばしフラッシュをたく。
もちろん、僕も同じように、それに紛れてデジカメで撮影しまくったのだが、中国人の熱の入れようは、それ以上のものがあった。
息子を仏像の前に立たせて、大きなカメラでシャッターを切る。
それはさながら、一昔前の日本人のようだった。
まさに、欧米人の目にも、こんなふうに写ったのではないだろうか。

それだけではない。
考えることは、みんな同じ。
「いいアングルで、写真を撮りたい」
だから、有名な仏像の前では、「仏像の取り合い」になるのだ。
息子娘を、恋人を、家族たちを……われ先にと立たせて、いいポジションを取ろうとする。
特に、山を削って仏像を彫った「飛来峰造像」では、観光客は実際に仏像に触ることができる。
だから、有名な仏像、大きな仏像の前では、写真を撮るのに、余計に争奪戦になるのだ。
しかも、日本のように「並ぶ」なんていうことはしない。
さきに撮ったもの勝ちなのだ。
だから、奥ゆかしい僕ら日本人はどうしてもその闘いに負けて譲ってしまう。
その「写真を撮りたい」というパワーで、発電できるのではないか、と思えるくらいすごいものがあった。

昼食は、なぜか中国で韓国料理を食べて、西湖の遊覧船に乗った。

僕らが中国に旅行する際、もっとも不安だったのが治安だったが、もう一つ心配していたのが、天候だった。
ネットで調べたところ、上海・杭州ともにずっと雨、という予報だったのだ。
しかし、行ってみればほとんど雨に見舞われることなく、過ごすことができた。
二日目に少し降られたくらいで、あとは、太陽を拝むことさえできた。
聞くところによると、それまで杭州では三週間ほど雨が続いていて、太陽を見ることさえ久しぶりだったよう。
曇った空を見て、友人Dは、「今日はいい天気やな」と言っていたほど、雨が多かったそうだ。

その意味でも、冬とはいえ、西湖に行って遊覧船に乗ることが出来たのはラッキーだった。
特に、湖の西側と東側でまったく景色が違うのには驚いた。
湖の東側は、とても近代的で、できたばかりの高級ホテル「ハイアット・リー・ジェンシー」も構えている。
一方、反対側の西側では、タイム・スリップしたかのように、中国の昔の風景が広がっている(詳しい時代はわからないが)。
この対比は、恐らく遊覧船に乗らないとわからないだろう。
今の中国を象徴しているようで、なんとも趣深かった。

しかし、それでもオフシーズンの冬。
たいした冬を経験したことがない僕らにとっては、すさまじく底冷えのする空気の中、さらに気持ちよいくらいに吹きすさぶ風に吹かれて、芯から冷えてしまった。
それでなくても、僕が連れてきた友人マィクは、旅行の前から風邪を引いていたので、かなりきつそうだった。
ちなみに、その後、案内してくれたDは、ずっと洟をズルズル言わせていた。

身体が冷え切った僕たちは、下船したあと、
日本でも見かけるカフェの「スター・バックス」へ。
注文の仕方などは、日本と全く同じ。
しかし、ここでは友人Dのサディストが発揮されて、
「じゃあ、ここはmenfithが頼んで来て~。俺は席とっておくから」
「まじで?」
ということで、カタコトの英語で、先に行った友人マィクの真似をしながら、必死に注文した。
「ここで飲んでいくの? それともテイクアウト?」と店員。(もちろん英語)
「ヒ、ヒアー」と僕。(ビビリながら)
「何にしますか?」
「カ、カプティーノ。トゥー・カプティーノ!!」(指はVサインで)
「サイズはどうしますか?」
「レギュラー」

これだけのやりとりだったのだが、もう緊張しまくり。
値段が日本とどれくらい違うのかも報告したいが、緊張のあまり、いくら払ったかも忘れてしまった。
おそらく中国の一般庶民から言えば、高いほうだと思う。

何とか体温を取り戻した僕たちは、夕飯までの時間を、カルフールで、お土産と晩にホテルで飲食するための食料を調達した。
月末・週末ということもあり、前日に行ったときとはうってかわって、ものすごい人がいた。
どこも謳い文句は同じである。
「日用品、月末更低!」と大きな看板が出ていた……。

「低」の部分だけが、やたらと強調されているあたりが、東アジアの各国共通なのである。

さて、夕飯は、僕のリクエストで、中国で人気の(?)「火鍋」。
これは、鍋が二つに区切ってあり、辛いのと、普通のスープに区切られている。
そこに野菜や肉、魚介類などを煮て食べるという中国の鍋である。
知らない間にすっかり現地人化していたDの、お勧めの火鍋料理屋で、火鍋を食べることにした。

日本だと、鍋を注文すると、たいてい、白菜、菊菜、しいたけ、エノキダケなどの具材が、一人前ワンセットがど~んと来る。
しかし、中国の火鍋では、どちらかというと日本の「焼肉」に近いスタイル。
好きなスープを選び、好きな食材だけを注文する。
僕らが行った店では、スープは三種類に区切られていて、そこに、具材をどんどん注文して入れていった。
「白菜」「レタス」「チンゲンサイ」「羊肉」「豚の脳みそ」(!)「モチ」「しいたけ」「肉団子」「ワンタン」などなど、どんどん入れていく。

羊の肉は、中国ではごく一般的に食べられていて、牛肉よりもっと普及しているそうだ。
高級嗜好の日本人なら、クセのある印象を受けるかもしれないが、僕はイメージしていたよりも、美味しく食べることができた。
スープも、思ったより辛くなく、これも美味しく食べられる程度の辛さだった。
続けて食べていると辛くなってくるので、違うスープのものを食べることで、舌のバランスはとりやすかった。

ただし、これを食べるときにつけるタレ(日本の鍋で言えばポン酢のようなもの)にも、辛いものから甘いものまで選ぶことができる。
このタレを辛いものばかりつけていると、さすがに舌が痛々しいことになるので、チャレンジャー以外には勧めない。

僕は食べながら、この鍋のスタイルは日本でも絶対に「当たる」と思った。
好きなだけ食べられるし、嫌いなものは食べなくてもいい。
日本でもなぜ今までこのスタイルがなかったのか、不思議なくらいだ。
火鍋じたいも、日本でおそらく受け入れられると思う。
いろんな味を楽しむという楽しみは、日本の若い世代が最も好むものだろう。
確かに中国独特のクセがあるが、それも日本風にアレンジすることは、十分に可能だ。
キムチ鍋や、ジンギスカン鍋の次は、「火鍋」で決まりだ。
(って、2009年でも全然流行ってないね。)

ここですっかりあったまった僕たちは、再び夜の街を散歩したために、ホテルに帰る頃にはすっかり身体が冷え切ったのだった……。

ホテルにて、二次会を行なった。
カルフールで買い込んだ食べ物に加えて、日本で買って行ったお菓子などを酒の肴にして、日中の違いについて、激論を交わした。

日本で買ったお菓子の中には、黒いパッケージが印象的な「ハバネロ」チップスがあった。
激辛でひーひー言わせてやる、と思って買って行ったのだ。
だが、先ほど火鍋で「本当の激辛」を知った僕たちは、「そんなに辛くないな。美味しいじゃん」と普通に食べていたのだった。
(そのほかの肴は、近くのスーパーで買ったキムチ……って辛いのばっかりじゃん)

カルフールで買ったお菓子の中に、レモン味のポテトチップスがあった。
現地人Dのオススメのお菓子で、これは本当に美味しかった。
「関西だしじょうゆ」なんて苦しい味まで登場している日本の市場にも、このような思い切った味付けに挑戦してほしいものである。

さらに、ハム味のビスケットなるものも、美味しかった。
クラッカーに、ハム味のクリームがサンドされているのだ。
日本で、ビスケットに挟むクリームは、たいてい甘いものか、せいぜいチーズのクリームくらいだ。
だが、中国ではハム味のクリーム。
この発想の違いが、実に面白い。

イチゴの果肉風味入りジュースなるものもあった。
ストロベリーのジュースなのだが、中に黒いツブツブが入っている。
それが沈殿せずに容器一杯に溜まっているから不思議だ。
食感は、ゼリーに近い。どろっとしている。
これはまずかった。
見た目がまず気持ち悪い。変な幼虫の卵のように見える。
加えて、その黒いツブツブが何かわからない。
イチゴの果肉なら、そんな大きい黒いツブツブがあるはずがない。
だから「果肉風味入り」なのだ。

飲み干せそうにないので、マィクがトイレの便器に流してしまった。
だが、それがまたサイアク。
便器の中に溜まった黒いツブツブのジュースが、カビか害虫の卵のようにみえるのだ。
トイレに入ろうとしてびっくり。
「ぎゃー! なんじゃこれ!」
マィクよ、トイレに捨てるならせめて流してくれ。

楽しい宴も、翌日に差し障るということで、一時すぎにはお開きになった。
移動と観光の連続で、さすがに疲れてしまった。

(2005/4/24執筆)

ちなみに、ニュージーランドでもスターバックスに訪れた。
こちらはふつうに英語で通じて、しかもスタイルも同じだった。
このときは一人で店に入って、一人で注文した。
かなり緊張したが、やっぱりスタバって感じで、雰囲気を味わえた。
都合であまりゆっくり飲んでいられなかったので、ほとんど一気飲みだったのがつらかったが。

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(2005/4/26執筆)

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