secret boots

ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

スター・ウォーズ 最後のジェダイ

2017-12-26 09:07:28 | 映画(さ)
評価点:32点/2017年/アメリカ/152分

監督:ライアン・ジョンソン

悪い冗談かと思えるほど、おもしろくない。

フォースに目覚めたレイは、ジェダイとして伝説のルーク(マーク・ハミル)の元に訪れる。
しかし、ルークはレイに関わろうとしない。
一方、共和国レジスタンスは、最後の砦である基地を攻撃される窮地に立たされていた。
なんとか脱出を試みようとしているところだったが、暗黒面に墜ちたファーストオーダーたちが容赦ない攻撃を開始しようとしていた。
フォースの使い手である、カイロ・レン(アダム・ドライバー)はレイとフォースによる対話を続けていた。

「スター・ウォーズ」のエピソード8にあたる。
前作「フォースの覚醒」からすぐの話となっている。
世界中が待ちわびた? 超有名な作品で、もはや私が解説する余地はなさそうだ。

私は、毎回映画館で見にいくようにしているが、それほど熱心なファンではない。
映画の作品の中以上に、詳しく調べたりしたことはない。
だから、私のこれからの批評は的外れかもしれない。
映画という作品である以上、ある程度自律性のあるものであろうという中で、話を進めよう。

前作を見ていない人、このシリーズに全く興味が抱けない人は、見る必要がない。
この作品を見るために、これまでの7作品を見直そう、とか、見たことがないのでとりあえず手を出してみようと思う必要もない。
それほどの作品ではない。
これを見るくらいなら、他に見るべき映画はたくさんある。

▼以下はネタバレあり▼

私は思い入れがない。
別にどんな作品に仕上がろうとも、どんな過去の作品のオマージュやリスペクトが含まれていようとも、あまり興味がない。
いや、正確に言えば、過去の作品を見直そうと思えるほどの、完成度の高い作品ではない。
グッズの一つでも映画館で買おうかとか、分厚いパンフレットの後ろ4分の1くらいについている広告にのっかろうとか、思えるほどの作品ではなかった。
私のこの映画に対する評価は、極めて低い。
もっとハッキリ言えば、駄作だ。

この映画がひどいのは、一つはキャラクター造形が甘すぎるという点にある。
徹頭徹尾、この一言に尽きるかもしれない。
主要な人物となる、レイとカイロは、中盤で邂逅するまでに幾度となく対話する。
まるでアムロとシャアのような関係で、私は観ながらガンダムを実写した方がいいのではないかという既視感に襲われていた。
ともかく、その対話がひどい。
いかにも思わせぶりに、「フォースとは何か」「暗黒面に引き込まれる要素は何か」を二人でやりとりする。
ことごとく、薄っぺらで、短絡的だ。
示唆に富むような、隠喩をきかせたような対話になっていない。
その話は、ほとんどが生い立ちに関するものであり、ステレオタイプにすぎない。

少し話を整理しておこう。
カイロは、ジェダイの修行をルークにつけられているとき、スノーク最高指令官に引き込まれることによって、暗黒面に引き込まれていく。
そのことを悟ったルークは、カイロをこのタイミングで殺すしかないと考えて、手に掛ける。
それを直前に気づいたカイロは、一気にスノークの手に落ちてしまう。
カイロにあったのは、ルークに裏切られたという思いと、そのルークに預けた両親への不信だった。

レイも、自分のフォースへの目覚めを感じ、力の使い方、使い道を迷っていた。
彼女は、両親にあぶく銭のために捨てられ、愛に飢えていた。
それをハン・ソロやルークで補おうとしていた。

という流れだ。
カイロの屈折した思いは、何と四行で説明できてしまった。
まったく薄っぺらだ。
アナキンだったダースベーダ-が暗黒面に墜ちた様子を、丸々エピソード3つ使って冗長に説明したのに対して、カイロは数行で説明できてしまう。
もちろん時間が長ければいいというももではない。
だが、あれほど意味深に対話させて、結局師に裏切られただけ、という意志も意地も性格もなにもない設定を説明するに終始したのはいただけない。
その人間性に、単純に、魅力がない。
だから、物語に引き込まれない。

ブレードランナー」ほど哲学的に描いてほしいとは思わないが、うすっぺらすぎて、議論の余地さえない。

そして、なぜ彼がスノークを裏切ったのかもよくわからない。
新しい時代を築こうという誘いも、そういう思考になっていった理由も、よく分からない。
そもそもファースト・オーダーが何を目指そうとしている組織なのかもよくわからない。
レジスタンスも、何に対してレジストしているのか。

その決定的な疑問が起こるのは、あのカジノの惑星にいったことだ。
そこで、武器商人たちがアメリカとアルカイダ、じゃなかった、レジスタンスとファースト・オーダーとに武器を売っていたことが判明する。
この部分は、かなりこの物語、いやこの戦争がいかがわしいものであることを匂わせる。
そもそも、ファースト・オーダーに飲み込まれた場合、何が問題なのだろう。
武器商人たちが武器を売ることで、戦争を起こすことで金儲けをしているということは、ファースト・オーダーたちが行っていることは、単なる圧政ではないことを示唆する。
それは、現実世界の戦争と同じで、「どっちもどっち」ということを表しているのではないか。
だとしたら、何からレジストしているのだろう。

私は、こうしたそもそも何なのか、という点が、最も大切な点が、映画の世界で揺らいでいるのではないかという危惧を持った。
だから、記号で遊んでいるだけなのだ。
ジェダイであろうと、ファースト・オーダーであろうと、スノークであろうと、レイアであろうと。
そういう対立だけを描く映画であって、その中身がなんなのか、そういう問いが失われている。
だから、勧善懲悪を謳ったヒーローものとなんら変わらない。
無邪気に闘いを繰り返しているだけだ。

この映画、極端に死者が少ない。
いや、死ぬことに対する描き方が生ぬるい。
戦争をしているのに、その喪失感は皆無だ。
レジスタンスがあれだけ死んでいるのに、その重さは感じられない。
あの一人船に残ったおばさんだけが、印象的な死を遂げる。
それ以外は、ただ、CGで死んでいくだけだ。

私は「スターウォーズ」という物語に思い入れはない。
どれだけ改変しても、どれだけ世界観が壊れてしまっても、かまわない。
だが、おもしろくない映画だけはだめだと思う。

それは、バットマンシリーズでノーランが見せた「こんな重たいの、バットマンじゃない」という多くの批判と同じだ。
面白いことが、唯一、その作品をリスペクトする、継承することにつながるのだと思う。
それは、時代に適っているということでもある。
この映画は、ただ惰性で作品を再生産しているだけであって、作品に魅力はない。
こんなことをしていると、いくらディズニーでも斜陽になっていくのではないかと思うのだが。

このシリーズの締めくくりは、エイブラムスに監督を戻す。
さらに3部作を作ることも決定している。
ただ、「面白い作品」を目指してほしい。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ブレードランナー 2049 | トップ | 勝手にふるえてろ »

コメントを投稿

映画(さ)」カテゴリの最新記事