愛知県の病院に70歳代の女性が入院していました。ちょうどお花見の時期がやってきました。
そんなある日、もう結婚して別に住んでいるお孫さんがお見舞いにやってきました。お孫さんは、桜の枝が挿してある花瓶を手に持っていました。聞いてみると、自分の家の庭に咲いていたのを少し切ってもってきたそうです。
女性はベッドの上から美しい桜の花見をしながら、孫の優しい気持ちをしみじみと感じていました。「花見ができない私のことを想い、桜をもってきてくれたんだね」
次の日、若い看護士が女性の病室に入ってきました。すると、桜の枝を見つけ、こんな頼みごとをしました。
「その桜を貸してくださいませんか・・・。」
女性はその訳を聞きました。「ほかの部屋の患者さんにも見せてあげたいと思いまして・・・。」
女性は気づきました。「そうだった。この病院には私のほかにも、桜の花を見られない人がたくさんいるのだった。それなのに、私は自分だけ喜んでいたんだ」と気づいたのでした。
しばらくして看護士が戻ってきて言いました。「みなさん、たいへん喜んでくれましたよ。涙をほろほろと流して喜んでくれた人もいましたよ」
涙をほろほろと流すとは、花びらや葉っぱが落ちるように、涙が静かに流れ落ちることです。
その看護士は、同じ階の病室を1つずつ回って、一人ひとりに花瓶の桜を見せて回ったのでした。
忙しい仕事の合間に、このようなわざわざの心遣いをしてくれる看護士がいたことに、女性は胸が熱くなりました。
世の中には、病気だとか、足腰が弱っていて、花見をしたくても外に出られない人もいます。
世の中が、すべて桜に浮かれているのではないのです。じつは、そのような人びとのことを想いながら、桜は一生懸命に咲いているのかもしれません。
さらに看護士は、桜を見て感じる喜びを、ほかの人にも分けてあげたいと願っていた天使だったのです。これが、「桜のこころ」です。
新入生のみなさん、入学のお祝いに、私から一つ言葉をプレゼントします。
それは、「誰にもピンチは訪れる。そして、誰にも天使は舞い降りる。」この言葉をみなさんに贈ります。
人間が忘れられない感動の出会いをするとき、人っていいなあと思うとき、それは決まって自分がピンチの時です。人生のピンチの時に天使が現れるのです。
思春期の中学3年間です。
「中学生は悩むのが仕事」と言えるほどです。楽しいことやうれしいことがあるでしょう。
しかし、その反面、心が揺れ、悩むとき、困るときもあるかもしれません。
そのときこそ友だちが天使になってください。私は、新入生のみなさんの中から、三年間で、一人でも多くの天使が現れる学年になることを期待しています。
(以下略)
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