仕事柄、いろんなお宅にお邪魔します。坪庭や裏庭のお手入れの為に、薄暗い廊下や細い軒下を、長いハシゴをくぐらせたり、剪定枝用のゴミ袋やら道具やらを運び込んだり。
狭い場所の大きな木を剪定するために2階や塀や屋根に登ったり、作業の合間には、お茶をいただいたり、ちょっと尾籠ではございますが、お手洗いなんかも借りちゃったりして。
さて、今日の気になるポイントは、ずばり、町家の「お手洗い」!!!
今時の働き盛り世代である(!)「ちび庭」庭主は、いろいろかなり引っ越しをして来ましたが、生まれてこの方住まってきたのはやはりほとんどが「今時の」賃貸住宅やらマンションやら。どこにでもある間取り、ごく普通のメーカー仕様。
そんな庭主にとって、ここ京都でお邪魔する古いお家の様子はどこも懐かしくもありながら、新鮮そのもの。目からウロコ、とでも言いましょうか。実に、「お手洗いにも風雅あり」なのでございます。まさに、我が家でハマっております某局の番組、「美の壷」はここにもあり!という感じでございましょうか。
え~、そうですね。まず、目からウロコ、について。一番最初にあった戸惑いは、「あれ?カギがない。」えっと~?次が、「電気、どこ?」
もちろん、カギが付いてるのは基本ですが、付いてないお家も割とある(特に古いお家)。間違ってあけたりしないのだろうか???と、いつもドキドキしたりするのですが、どうもたいていは、入口にスリッパが有る無し、で判断しているらしい(恥ずかしくて確認はしていないけれど)。これは、単にお年寄りのお家だからいざという時の為にそうしているのかもしれませんけれども…。
で、カギが付いてないお家は、大抵引き戸です。日本家屋ですもんね。でも、引き戸というのも庭主には新鮮。しかも。お家によっては、この引き戸が非常に凝っているのです。木戸でも桟に細工がしてあったり、クロチクを装飾的に使っていたり、戸自体が薄いしなやかな板を網代編み(カゴ編みみたいな感じ)にして作られていたり。中には、天上から壁から網代編みの所も!!!柱もまるでお茶室のような趣のある木材が使われていたり、床にもピカピカに磨かれた美しい木目が…。
タイル張りの所もありますが、それも昔の丸い石のようなタイルを、単純にちりばめたものから、いろいろと趣向を凝らして貼ってあるところも。カナリの職人技が見受けられたりもします。どこもかしこも、「手作り」の暖かさ。そういえば、玄関の土間の部分で、炭を混ぜた黒漆喰を、まるでタイルを貼ったかのように筋切りした上ピカピカに仕上げた非常に「通」なお宅もありました。
で、明かり。結局スイッチが見つけられなかったお宅もありましたが(!!!)、明かり取りの大きな窓があったり。ただし、ポットン便所の名残りで下の位置にあって、外から見えるんじゃないかと落ち着かないところも…今では、お年寄りのお宅が多いため、ほとんどがウォシュレットにリフォームされています。この、アケビのツルが編み込まれた大きな窓からのお庭の眺めがイイ!また、網代編みの戸から、木漏れ日のように外の光が入って来たり。じつに「通」です。でも、夜はやはり電気は必要なはずだから、きっとどこかにスイッチがあるのよね???
洗面も昔ながらのタイル張りあり、ロールのトイレットペーパーでなくて今ではほとんど見かけなくなった四角い「ちり紙」だったりもするけれど。どのお宅も隅々までとってもきれいにお手入れがされて、清潔なお手拭きが用意されて、お花がちゃんと活けてある。中には、お香まで焚いてあるところも!!!もう、料亭か旅館並みではないかと。はあ~。お手洗いといえど、古い作りといえど、そこにはお寺のつくばいに感じるような清々しい美が。お手洗いも、立派なおもてなし空間なんですねえ…。
庭主もそれなりにきれいにしていたつもりでしたが。丁寧な暮らしって、こういうものなのね。反省すべきだわ。でも、片や、こういう丁寧な生活って、共働きで家人が家にいる時間が非常に少ない現代では、なかなか難しいよな、とも思ったり。掃除はしても、装飾まで気が回らないというか、極力手間をかけないように何にも置いてません。ウチ。
合理的な生活で忘れられてゆくものがいっぱいあるなあ、と感じた庭主でありました。
☆今日のちび庭気温:0~14℃! ほんとに、どうしちゃったんでしょう???ありがたいけど、こんなにあたたかいと、なんだか心配になっちゃいますね~。(^^;)