2週間ほど前に書いた文章です。
長文を捨てるのも惜しく、引っ張り出してきました。
長い日記ですが、最後まで読んでいただけたら嬉しいです。
ただ、すべて事実で、オカルトではありません。
もし地図があれば、保福寺峠、修那羅峠で検索して、 見ながら読んでください。
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まだ20代の頃、訪れたいと思っていた神社があった。
今日その近くを偶然通りがかり、そこにいくことができた。
この神社には数え切れないほどの石仏が裏庭にあるのだ。
そこは安宮神社といい、修那羅峠の奥にある。
20代の頃は自転車に乗ることが好きで、冬にそこを訪れたくなり、松本駅まで自転車を輪行した。(輪行とは自転車を畳んで電車に乗せることです。)
松本を出発して修那羅峠から青木峠を経由して戻るルートを予定していたが、保福寺峠との岐路で距離の近い保福寺峠から別所温泉に抜けるコースに変更した。
その当時の保福寺峠は、峠を挟んだ4,50キロほどの区間が冬期閉鎖になっていて、ゲートを越えて山に入ったが、途中からは深い雪に自転車が刺さるばかりで、前に漕ぐことができなかった。
雪上には、熊や鳥や犬か狐の足跡などがついているだけで、人の気配はなかった。
峠の頂上までかなりの部分は自転車を担いで登った。
そこから別所温泉はまだかなり距離があったので、そこで引き返したのだが、下りも自転車は刺さるばかりで、数メートル進むとタイヤと泥除けの間に雪が詰まって動かなくなった。
暗い中で、泥除けを取り外したが、それでも雪で重い下り坂を漕いだ。
自転車が動かなくなると担いだり、自転車を持ち上げるようにして転がして松本を目指した。
なんとか松本から列車に飛び乗ったのは深夜になっていた。
その翌朝のニュースで、その当時話題になっていた未解明事件の被害者が、犯人の自供に基づき、修那羅峠の石仏群の中で悲しい姿で発見されたことを知った。
それからもこの峠はずっと気になっていたが、新しい道ができて、峠道を歩く人もほとんどいなくなり、ぼくの記憶からも消えかけていた。
(別所温泉駅)
今日別所温泉近くで仕事があった。帰りは普段は和田峠に向かうのだが、道を覚えようと思い、青木村から麻績に抜けることにした。
新しい舗装路の頂上辺りで車を停めると、修那羅峠という看板が見えた。
何度か通ったことのある場所だったが、修那羅峠であることに気づかなかった。
看板に安宮神社までふたつのルートが書いてあった。
転がりそうな急斜面で、老婆が3人乾いた笑い声を立てながら農作業をしていた。
道を尋ねようと声をかけたが遠くて聞こえないらしく反応がないので、看板の案内を頼りに行ってみることにした。
国道をしばらく下ってから脇道に入り、山深く車は登っていった。
脇道に入ると1台の車と待避所ですれ違ったが、フロントガラス越しにだめだというように左右に手を振った。通行止めだと言うのだろうか・・・
もう5時すぎなので、行ってもだめだというのか・・・
意味がわからなかったが、とりあえず行けるところまで行くことにした。
すれ違いできない細い道はやがてカーナビの地図から消えた。
カーナビのマークは山の中をさ迷っている。
地図にでていない道を何キロもヘッドライトをつけて上がり続けると神社近くの駐車場に辿りついた。
そこから神社へと太い杉林の中の道を歩いた。
冷たく湿った土とひんやりとした空気があった。
暗い道。灯りの消えた神社。
賽銭を投げ入れた。
誰もいないと思っていたら、どこからともなく猫が現れて僕の足に体を寄せてきた。
猫に付いて行くと石仏の庭の入り口に連れて行って僕を見上げた。
「よしよし、わかったよ」
独り言のように猫に話しかけた。
その入り口はかがんでやっと通れるほど狭い。
猫がいなかったら通り過ぎていた。
そこを猫に続いて入った。
僕の足に体をすりつけたあと、猫は石仏の並ぶ細い山道に行って、角の石仏に体を寄せた。
石仏が山の斜面の細い道に並んでいた。
「ここから見ていけばいいのか」
独り言のように呟いた。
ぼくはそこを見て右に曲がると、猫はじっと僕を見てたけど付いてこなかった。その道は神社から出て行く道で、狛犬の先で終わっていた。
また戻ると猫はどこからともなくまた現れて僕に体を寄せてから左に歩き始めた。
「そっちにいけばいいんだね」
と僕はまた猫に話しかけた。
薄暗く細く急な斜面に小さな石仏たちが並んでいた。
猫は先ほどとは違う場所に案内してくれた。
そこは別の出入り口で、やはり体をかがめて出た。
振り返ると猫はいなかった。
暗い参道の湿った土を踏んで足早に僕は車に向かった。
後ろを振り向くのが少し怖かったのだ。
車を走らせ、一般道の人家が見えるまでの時間がとても長く感じられた。
僕の足に体を寄せた猫の重い感触が残っていた。
R-D1 + GR28F2.8
石仏たちはいっぱいあったが、これらの写真は神社の外で撮影したもの。
中での撮影は、暗すぎて一枚もちゃんと写っていなかった。
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とても手入れされているのできっと宮司さんもいるだろうけれど、不思議な体験だった。
青木村には、ユニークな石仏が多い。皆さんも是非訪れてみてください。
長文を捨てるのも惜しく、引っ張り出してきました。
長い日記ですが、最後まで読んでいただけたら嬉しいです。
ただ、すべて事実で、オカルトではありません。
もし地図があれば、保福寺峠、修那羅峠で検索して、 見ながら読んでください。
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まだ20代の頃、訪れたいと思っていた神社があった。
今日その近くを偶然通りがかり、そこにいくことができた。
この神社には数え切れないほどの石仏が裏庭にあるのだ。
そこは安宮神社といい、修那羅峠の奥にある。
20代の頃は自転車に乗ることが好きで、冬にそこを訪れたくなり、松本駅まで自転車を輪行した。(輪行とは自転車を畳んで電車に乗せることです。)
松本を出発して修那羅峠から青木峠を経由して戻るルートを予定していたが、保福寺峠との岐路で距離の近い保福寺峠から別所温泉に抜けるコースに変更した。
その当時の保福寺峠は、峠を挟んだ4,50キロほどの区間が冬期閉鎖になっていて、ゲートを越えて山に入ったが、途中からは深い雪に自転車が刺さるばかりで、前に漕ぐことができなかった。
雪上には、熊や鳥や犬か狐の足跡などがついているだけで、人の気配はなかった。
峠の頂上までかなりの部分は自転車を担いで登った。
そこから別所温泉はまだかなり距離があったので、そこで引き返したのだが、下りも自転車は刺さるばかりで、数メートル進むとタイヤと泥除けの間に雪が詰まって動かなくなった。
暗い中で、泥除けを取り外したが、それでも雪で重い下り坂を漕いだ。
自転車が動かなくなると担いだり、自転車を持ち上げるようにして転がして松本を目指した。
なんとか松本から列車に飛び乗ったのは深夜になっていた。
その翌朝のニュースで、その当時話題になっていた未解明事件の被害者が、犯人の自供に基づき、修那羅峠の石仏群の中で悲しい姿で発見されたことを知った。
それからもこの峠はずっと気になっていたが、新しい道ができて、峠道を歩く人もほとんどいなくなり、ぼくの記憶からも消えかけていた。
(別所温泉駅)
今日別所温泉近くで仕事があった。帰りは普段は和田峠に向かうのだが、道を覚えようと思い、青木村から麻績に抜けることにした。
新しい舗装路の頂上辺りで車を停めると、修那羅峠という看板が見えた。
何度か通ったことのある場所だったが、修那羅峠であることに気づかなかった。
看板に安宮神社までふたつのルートが書いてあった。
転がりそうな急斜面で、老婆が3人乾いた笑い声を立てながら農作業をしていた。
道を尋ねようと声をかけたが遠くて聞こえないらしく反応がないので、看板の案内を頼りに行ってみることにした。
国道をしばらく下ってから脇道に入り、山深く車は登っていった。
脇道に入ると1台の車と待避所ですれ違ったが、フロントガラス越しにだめだというように左右に手を振った。通行止めだと言うのだろうか・・・
もう5時すぎなので、行ってもだめだというのか・・・
意味がわからなかったが、とりあえず行けるところまで行くことにした。
すれ違いできない細い道はやがてカーナビの地図から消えた。
カーナビのマークは山の中をさ迷っている。
地図にでていない道を何キロもヘッドライトをつけて上がり続けると神社近くの駐車場に辿りついた。
そこから神社へと太い杉林の中の道を歩いた。
冷たく湿った土とひんやりとした空気があった。
暗い道。灯りの消えた神社。
賽銭を投げ入れた。
誰もいないと思っていたら、どこからともなく猫が現れて僕の足に体を寄せてきた。
猫に付いて行くと石仏の庭の入り口に連れて行って僕を見上げた。
「よしよし、わかったよ」
独り言のように猫に話しかけた。
その入り口はかがんでやっと通れるほど狭い。
猫がいなかったら通り過ぎていた。
そこを猫に続いて入った。
僕の足に体をすりつけたあと、猫は石仏の並ぶ細い山道に行って、角の石仏に体を寄せた。
石仏が山の斜面の細い道に並んでいた。
「ここから見ていけばいいのか」
独り言のように呟いた。
ぼくはそこを見て右に曲がると、猫はじっと僕を見てたけど付いてこなかった。その道は神社から出て行く道で、狛犬の先で終わっていた。
また戻ると猫はどこからともなくまた現れて僕に体を寄せてから左に歩き始めた。
「そっちにいけばいいんだね」
と僕はまた猫に話しかけた。
薄暗く細く急な斜面に小さな石仏たちが並んでいた。
猫は先ほどとは違う場所に案内してくれた。
そこは別の出入り口で、やはり体をかがめて出た。
振り返ると猫はいなかった。
暗い参道の湿った土を踏んで足早に僕は車に向かった。
後ろを振り向くのが少し怖かったのだ。
車を走らせ、一般道の人家が見えるまでの時間がとても長く感じられた。
僕の足に体を寄せた猫の重い感触が残っていた。
R-D1 + GR28F2.8
石仏たちはいっぱいあったが、これらの写真は神社の外で撮影したもの。
中での撮影は、暗すぎて一枚もちゃんと写っていなかった。
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とても手入れされているのできっと宮司さんもいるだろうけれど、不思議な体験だった。
青木村には、ユニークな石仏が多い。皆さんも是非訪れてみてください。