ART COMMUNICATION IN SHIMANE みるみるの会の活動報告

島根の美術教育関係者が集まって立ち上げた対話型鑑賞の普及に努める「みるみるの会」の活動情報をお知らせするブログです。

光中の子どもたちの感想を一挙掲載!!わくわくしますよ!!

2014-07-19 09:08:31 | 対話型鑑賞
光中の生徒の感想をお届けします。また、再度、男子生徒の読み取りと、その生徒の感想も最後に掲載します。生徒の感想を読んで、対話型鑑賞の授業実践を迷っておられる方、勇気の一歩を踏み出してほしいと思います。それに見合う以上のものを子どもたちは見せてくれますよ。本当に子どもたちはすごいですよ!!

 なおこの文は光中生徒向けに発行している「みる・考える・話す・聴く」通信の№4号ですので、生徒に語りかける文体になっていることをご了承ください。

(女子A)
 とても難しいと思いました。イメージするのがとても難しく、とくになぜ手を差しのべたのかが、分かりませんでした。でも、とても考えることが楽しかったし、たくさんの意見を聞いて、考えの幅も広がってよかったと思いました。

(男子B)
 今日は、一つの絵しかみませんでしたが、一枚をふかく見ることができたのでよかったです。つぎからは、疑問に思ったことは、手を挙げて言おうと思います。

(女子C)
 だんだん鑑賞が楽しくなってきて、いつもよりも発表することができたように思いました。「ええ~~そんなこと思ってたんだ!!」とびっくりするような友だちの意見もあって、聞いていて飽きませんでした。早く、次の授業をしたいです!!

(女子D)
 今日は、なかなか思いうかばなかったけど、友達の考えも聞いて共感したり、ちがう意見が見つかったりと自分の考えを深めることができたのでよかったです。

(男子E)
 今日の授業は、前よりもすごく難しかったです。みんなそれぞれの意見があって、「いいなあー。」と思ったし、自分も意見を言えたので良かったです。

(男子F)
 今日の鑑賞では、日本の絵を鑑賞して、少しだけ難しかったけど、皆が積極的に発表していたのでとても素晴らしいと思いました。自分は少しとまどっていたけど皆に向かって発表することができて良かったです。次は、いろいろな人の意見を聞いて自分なりに発表できるといいです。

(女子G)
 今日の画は今までのと少し違いました。今までのは、ゴッホの描いた洋画でしたが、今日は有名な雪舟が描いた水墨画でした。2人の人間のまわりの岩のようなものが細かくきれいだなと思います。また2人の人間の白い服の人は着ている服もそうですが、座禅のように座っているため、だるまさんを連想させました。

(女子H)
 今日の鑑賞はとても難しかったです。奥が海に見えた人とか陸に見えた人とか、いろんな考えを聞いて自分の考えを深めることができました。

 (女子I)
 今日の授業で、発表をするというのができなかったので、次こそはできるようにしたいです。今回の絵もまた難しくなりましたが、みんなの想像したことが聞けて、とても楽しかったです。

 (女子J)
 今日の鑑賞では、いままではゴッホとか西洋っぽい絵だったけど、今日は水墨画でいつもと違っていておもしろかったです。水墨画のような掛け軸もあまり真剣に見たことがなかったけど今日の授業で見てそういう絵にも何かしらのストーリーがあるのかなと思いました。見ているといろいろと想像できて楽しかったです。次はどんな絵を見るか楽しみです。

 (女子K)
 今日の授業はこの前のゴッホの絵の時よりもいろんな考えがうかびました。皆の発表した意見も自分の考えの参考になったりもしたし、それは違うだろ、や、ああ確かにそうだ、という風にいろいろ感心しました。たくさん考えがうかんで楽しかったし、今回の授業はおもしろかったです。
 また、鑑賞の授業やりたいなあ、と思いました。ありがとうございました。

 最後に、一人の男子生徒の読み取りと、感想を全文掲載します。「みる・考える・話す・聴く」通信№3で皆さんの読み取りのうち2人の関係について記述してある所を抜粋して紹介しましたが、以下に示すものは、2人の関係性もついてもですが、「どこから思ったのか?」についてがきちんと記述できている点でもしっかりと考えをまとめて書くことができているので、今後の皆さんの参考にしてほしいと思いました。

この場所は始め、洞窟の中か森の中かなと思った。なぜなら、水墨画だからかもしれないが暗い場所のような印象を受けた。しかし木にしてはゴツゴツしているし、全体に広がっているようだったので洞窟の中だと思う。2人の人の関係について、初めは、白い服を着た人が集中してなにかをとなえているのを日本の和尚さんが自分の参考にしようと見ているものだと思った。しかし、よく見てみると和尚さんの持っている手が離れていることに気付いた。そして、僕は白い服の人が悪いことをしてしまったので自分の腕を切り落として和尚さんに預けて白い服の人がこれから死のうと思って心を整理するために集中しているものだと考えた。だが、あの手は和尚さんのものだということが分かってからはかなり悩みました。2人をみていると白い服の人はドカンと座って自分の世界に入り込んでいるようだったけれど、和尚さんはその人に遠慮しているように見えた。なので、和尚さんが弟子で白い服の人が師匠だと思った。だから、和尚さんは自分の腕を切り落とすという強い意志を白い服の人(師匠)に伝えて何かをお願いしているのだと考えた。その何かというのは、座禅だと思った。それは白い服の人の足の組み方や手の位置が座禅のようだったから。でも、何で洞窟の中で座禅なのかなという疑問が残ったが、それは仏教によってそれぞれ違うものなのかなと思った。

そして、彼の感想です。

今日の授業では、最初にみて感じたことから細かくみんなで見ることによってどんどん考えが変化していってるのでおもしろかった。今回はこれまでよりも絵が難しかったのでより深く考えることができた。次は、絵のストーリーを考えるだけではなく、描いた人が何を思ってその絵を描いたかについても考えてみたいです。

 彼も書いているように、仲間とみて話すことによって、考えがどんどん変わっていくのって素晴らしいと思いませんか。一人だとこうはいきませんよね。そこがこの鑑賞の楽しくて面白いところだと思います。そして、大事なことは「どこからそう思う?」「そこからどう思う?」です。次回もお楽しみに!!
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日本の中のはまだの美術展の2回目の実践レポートのナビに注釈をつけてお届けします。

2014-07-19 00:27:23 | 対話型鑑賞
「日本の中のはまだの美術」展 協賛企画 第2弾のナビゲーターは上坂会員でした。上坂会員からの詳細なレポートが届きました。ちょっと、今回は課題満載だったので、本人レポートの途中途中に私が注釈を加えているのでそちらも併せてご覧いただけると幸いです。

平成26年6月22日(土)14:00~
浜田市こども美術館 「はまだの美術」    ナビ  上坂 美礼
会場 伊藤 素軒(いとう そけん)の部屋
来場者  高校生2名 
 浜田市内から「みるみるの会」を求めて来場した女性 3名くらい
 描く連のみなさま 4名
 みるみるの会員 4名
 市内学芸員 2名
 大阪より  1名

初めて参加する方もいたので、これから始まる鑑賞会は、作品を見て、自分の感じたことや見えたことについて、話をしながら作品を味わう時間であることを伝え、その妙味は、他の人の話を聞くことで自分の感じていたことや考えていたことが途中で変わることでもあり、その変容こそが対話をしながら鑑賞することの面白さであることを述べた。
(ここでこの鑑賞の妙味をあらかじめ伝えるのはいかがなものかと思う。それは、参加者が鑑賞後に自ら感じればよい価値であると思う。)

そして、参加者に守ってほしいルールを3つ、しっかりと絵を見ること、人の話をしっかり聞くこと、自分が発言できるのは指名されたからであることを伝えて、「では、しばらく作品をご覧ください。」と勧めた。最初は、板に描かれた鯉の絵を見た。
(このルール確認はとても大事だが、押さえがやや弱かったように思う。参加者を見ながら、皆の表情を確認しながら伝えるという態度がほしい。声量も必要。多人数ほど声量を上げること。)

最初の発言者は「水が描かれていないのに、鯉たちが生き生きと描かれている。」と述べた。ナビである私は心のなかで(描かれていないものについて述べた!すごい!)と感激しながらも平静を装い、「生き生きとした感じがするのですね。」と相手の発言を受けとめた(つもりでいた)。そして「それは、どのようなところから感じられるでしょうか。」と問うた。根拠を求めたのだ。
(この鑑賞では「根拠を問う」ことは大事にされなくてはならないが、初発の意見から「根拠を問う」と発言者が怯むことが懸念される。「何か意見を言うと、突っ込まれると、答えに困るかもしれないから、言わずにいよう。」と思われたら意見が出なくなる。最初は発言してくれたことを大切にして、あえて根拠まで問わず、意見の言いやすい雰囲気をつくる方が得策ではないかと私は思って実践している。3人から5人くらいの発言が出るまで、根拠を問わずに意見を言いたいだけ言ってもらって、言いやすい雰囲気をつくった方が良いと思う。いずれ、後々、深く考えなくてはならない場面に遭遇することになるのだから、その時にしっかり考えて意見を言ってもらうためにも、言いやすい雰囲気づくりを最初にめざすほうが、興味を持って参加してくださった不特定の成人でこの場限りの場合は有効ではないかと私は思っているが、どうだろう。)

微妙な沈黙の後、
 (この微妙な沈黙が、戸惑いを表している。根拠を明らかにしながらこの鑑賞が進んでいくことは私たちみるみるの会員にとっては周知の事実であるが、初体験の方にはなじまない。いくら最初に口で説明しても実際にその場に居合わせて問われたら、戸惑うと思われる。そこで、前述したように、最初は何でも言える雰囲気を大事にした方が良いと思うのである。)

他の方が「鯉の周囲が明るくなっていて、尾の周囲が淡くなっているので、動きを感じるのでは。」と発言したので、「どの辺りですか。」と問い、発言者に指でさしてもらうよう促した。触れてはならない作品なので、手振りで「この辺ですね。」と確認し、周知を求めた。そのうち、また別の方が「水の波紋が見える。とても淡い調子だけれど、これは描かれたものか、削ってあるのか。どちらでしょうか。」と発言した。
(質問には質問返しが鉄則である。鑑賞者からナビに「~~~はどうなのですか?」と問われたら「あなたは~~~についてどう思いますか?」と自身の考えを尋ね、自分の意見を述べさせる方が、鑑賞者の考えが深まると思う。不思議なことに鑑賞者は疑問に感じたことを「あなたはどう思いますか?」と聞き返すと、考えようとする。大事なことは鑑賞者に考えてもらうことで、答えを聞くことではないことをナビは心しておかなければならない。しかも、このとき、ナビは問い返さず、答えを考えようとしていたので、問い返すようにアイコンタクトしたのは私だ!!)

すかさず私は「いずれかのうち、どちらだと思いますか。」と問うたが、
(どちらかを選ぶという二者択一ではなく、どうなのかを考えることが大事だ。そこに疑問を感じたあなたの考えはどうかか?」が大事で、そこを大切にするのが基本的なスタンスであることを忘れないでほしい。)

なんだかうまく伝わらなかった。「ご存じないのですか。」と問われ、「私は存じ上げないのです。」と答えた。
(知らないと答えるのはまずいと思う。知っているか知っていないかはこの場では重要ではない。また、別の角度から言えば、そのことに対する知識がないことを明かすことでナビの信頼を失う(そんなことも知らないで、この場に立っているのかという)ようなことになることも避けなければならない。「知らない。」と答えるのではなく、「その疑問、なかなか鋭いですね。あなたはどう考えますか?」などと、常に鑑賞者に考えさせることを促すように投げかけることが大事であることを忘れてはいけない。)

後から思い返せば「実は私、詳しい工程は存じ上げないのですが、この作品を初めて見たときに、木彫のように削られたレリーフの作品かと思ったくらいです。」と、率直な初見の感想について述べてしまった方がよかったかもしれない。なぜなら、「描かれているか、削られているのか、定かではないが、淡く波紋が見える。」と発言者は見えたものについて推測したのであるから、その着眼点を受けとめ、「削られているのかも。」という感じ方について共感を示すことこそが発言者の真意を受けとめる要所だったのではないかと考え、反省するところである。
(その通りである。また、ナビが私見を述べることは、ナビも鑑賞者の一人であるというスタンスであれば構わないが、ナビが発言することで、ナビの考えを聴く鑑賞にならないように配慮することが大切であると思う。ナビがうまく鑑賞自体をコントロールできないのなら、ナビも鑑賞者の一人であるというスタンスを取ることは、鑑賞自体の進め方を困難にすることも想定されるので、あえてその危険は冒さない方がよいのではないかと私は思っている。)

発言の真意は、描かれているのか削られているのかを知りたいというより、淡く施された波紋に注目したことにあるように思われる(後から、考えると…)。発言者の着眼点を受けとめることこそ、ナビの務めだったのに。そもそも「いずれのうち、どちらか。」という聞き方がなっていない。
(しかり、この反省を次回に生かそう!!)

「水がはっきりと描かれていないのに、水の中を生き生きと泳いでいるように見える。」という認識は、鑑賞者のなかに共通理解として生まれていたと思われる。しかし、明快な根拠は示されずにいた。そのようななかで「生き生きと見えるのは、通常、我々が泳いでいる鯉を見下ろす時のようなアングルで描かれているから。目の描かれ方が特に顕著。」という発言が出た。また、「水の中を泳ぐ鯉たちの姿から、水中の深さや水場の奥行が感じられる。」ということや「板の木目も、水文を表すような効果が感じられる。」という発言もあった。木目の模様の効果について指摘があった前後に、鯉の群れが四枚の板に描かれているが、すき間のある建具の様子について、「すき間ができているのは水没したのかとも推測できる。しかし、水没した作品ならもっと絵の具が剥落しているはず。そう考えると、水没もしていないのにすき間のあるような調度品となれば、あまり高価な材料ではないのでは。」と支持体である木材へも話題が移った。そしてまた、「節の見える板だから、あまり高価な材料とはいえない。」と、支持体である板の節にも注目した発言があった。すると、四枚の板の節に注目して「木の節の位置が作品の左右対称にあるから、この四枚の襖は、大きな1本の木から裁断してできた板で作ったと考えられる。そんな贅沢なことは、なかなかできないことだから、この鯉の絵は財力のある人が描かせたものでは。」と、支持体の様子から依頼主の財力の大きさが伺えるという見解も述べられた。そのうち、「最も大きな黒い鯉が、投げこなれたエサを得ようとしている。」と、鯉の集団の関係性について述べた人も現れた。そして、鯉の集団が織りなすグループに注目し、三つのグループが旋回している様子が描かれているからこそ、水が明快に描かれていなくても、水の動きが感じられるのではないか、という発言もあった。ナビ担当の私は、もう、すっかり鑑賞者の一人として、板に描かれた鯉の作品の魅力について、多くの人から話を聞いて満足していた。
(その通りで、はっきり言って、途中からナビすることを忘れ、ナビ自身が作品を見入るようであった。重要な発言が次々に繰り出される中で、発言をパラフレーズしたり、小まとめしながら進めれば、鯉の描かれ方や水面の表現に板の木目が生かされていること、そもそも板に描かれるということ自体の意味、板は家屋の建具であり、この建具であることが意味することは何なのかということに話題が段階的に広がるというか、上がっていけば、この絵をこの板に描かせた人物像までもが浮かび上がってきたはずである。順を経て、参加者の誰もが少なからず納得しながら読み取りが進んで行くことが大事である。そのためにナビは会話をコントロールする必要がある。画家と依頼主との関係性にまで話は及んで行ったのであるが、その背景には、みるみる会員が鑑賞者として発言を適宜行い、ナビの補助的な役割を担っていたことでナビは助けられていたということも含めて、自身のナビの在り様を振り返る必要がある。)

そして、やや唐突かなーと内心思いながらもしっかりと強引に、次の作品へと視線を移すよう促した。
(まさに、唐突であった。やはり複数の作品を鑑賞する場合の流れは自然に関心が次作に移るように仕向ける必要がある。つなぎの言葉を考えることが重要である。「会話が盛り上がっています。この板戸に描かれている鯉と類似した作品を実はこの作家はほかにも描いています。その作品を次は見ていきたいと思います。」という感じで、鯉つながりであるとか、作家つながりであることを引き合いに出しながら、次作への関心を維持する工夫も必要ではないかと思う。)

 1作目についての振り返りに対して、注釈を入れてみました。上坂会員は美術館でボランティアもしていた経験もあり、作品に対する造詣がとても深く、思いが先行する傾向にあります。その思いとナビとのバランスをどのように取っていくのかが今後の課題だと思います。ついつい鑑賞者の発言に聴き入り、ナビを忘れてしまう傾向を今後改善し、自身の作品に関する造詣の深さをナビに盛り込んでいくことができれば、優秀なナビゲーターに進化すると確信しているのは、私だけではないと思います。
 引き続き、2作品目のレポートが続いていますが、その件に関しては、次回以降をお待ちください。
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光中での実践を生徒向けのお便りにしたものをお届けします!!

2014-07-16 21:56:49 | 対話型鑑賞
光中の生徒とは対話型鑑賞の授業の時にしか会いません。1か月に1回です。そのため、生徒のワークシートに記述されたものを拾って「美術通信」を発行しています。今回は三回目の実践ですので、お便りは№3です。
記事は生徒向けにしてありますので、そのつもりで読んでください。
今回は実践後のこの便りで「慧可断臂図」のネタばらしをしました。ネタばらしをしても大丈夫なくらいの読み取りを生徒がしていたからです。まあ、読んでいただければわかると思います。

3回目の対話型鑑賞を雪舟の「慧可断臂図」で行いました!!

皆さんの読み取りを紹介します。

☆ワークシートの最初のアンケートの回答結果です。(回答者は16名)

A)しっかり絵をみることができた                 ④15名 ③1名 ②0名 ①0名
B)絵をみてしっかり考えることができた              ④14名 ③2名 ②1名
C)自分の意見を言うことができた                 ④ 7名 ③6名 ②2名 ①1名
D)友達の意見をしっかり聴くことができた             ④15名 ③1名 ②0名 ①0名
E)友だちの意見を聴いて、自分の考えをより深めることができた   ④13名 ③3名 ②0名 ①0名
F)このような鑑賞をまたやりたい                 ④15名 ③1名 ②0名 ①0名 

☆作品は雪舟の「慧可断臂図(えかだんぴず)」(国宝:斎年寺蔵)でした。作品に描かれている二人の人物について考えてもらいました。二人の関係性について記述された部分を紹介します。

男子A)
 (前略)左下の人が自分の手を切って白い服の人にささげているところだと思ったし、手をささげることで何かが叶うんじゃないかと考えた。(中略) 右上の人は何かを叶える神様的な人だと思いました。目線が上を向いていたのですが、神経を集中しているところだと思います。服もだぶだぶで肌を出 さないところが神様を想像させました。
女子B)
 (前略)この二人の関係は、まず立ち位置からして、上というか、奥まで行っているのが白い人で、位が下の人が上の人の前に立つっていうのはないな と思い、師弟子の関係ではないかと思いました。白い服の人は顔の色が黒く、ひげも濃く、布も羽織っている様子から、インドとかアジアの暑い国の人 ではないかと思いました。逆に手前の人は日本のお坊さんみたいな服装っぽいので日本人だと思いました。(後略)
女子C)
 (前略)2人の人の関係性は、白い布を身に付けている人のほうが位が高いと思いました。理由は2人の居る所から白い布の人のほうが上がわに描かれて いるからです。それに、お坊さん下がり眉毛の表情と、体からなんかビクビクしている、猫背で肩が力んでいる感じなので、恐る恐る近づいていって  る感じがしました。(後略)
男子D)
 (前略)この2人の関係は、洞窟の中の岩には遠近法を使って手前は大きく、奥は小さく描き、奥行きが表されているのに人は手前の日本人のお坊さん よりも奥にいる白い服を着た中東の外国人らしき人の方が大きく描いてあるのを見て、その2人の大きさの差には2人の身分の差が表現されていると  思ったので、日本人のお坊さんの方が白い服を着た中東の外国人よりも身分が低く、白い服を着た中東の外国人とはかしこまった関係なのかなと感じま した。そして、このことからお坊さんが外国人に何かの技術か宗教を教えてもらうために、自分の腕を切断してささげているのかなと思いました。
女子E)
  この2人は左下のお坊さんが身を縮こめていますし、白い服の人がくっきりしていて神々しく感じられるので。師弟の関係なのではないかと思いま  す。また、白い服の人は目や口などの表情からこの世を捨てていくような感じなので、悟りをひらくために修行中なのではないかと思います。そして、 お坊さんの方は、白い服の人が修行のために断食みたいなことをしているため、食料をあげるため自分の手をささげているのではないかと思いました。
男子F)
 (前略)自分としては、場所はみんなの言うとおりどこかの洞窟で、中に座っている白い人は、人間じゃなくて神のような存在なのではないかと思いま す。白い服を着ているのでなんとなく神のように思えてきました。自分的には神といえば白っぽいイメージがあるのであの白い服の人は神的な存在かな と思いました。(後略)
女子G)
 (前略)2人の関係は白い服を着ている人が位が高い人で、手前の人が弟子だと思いました。理由は奥の人は座っていて、手前の人に背を向けている  し、手前の人の背中が縮こまっているように見えたからです。

 皆さんの考えを見ていくと二人はどうやら「師弟関係」で、白い服の人が位が上、つまり「師」で、左下のお坊さんが「弟子」だと考えているようです。それは画面に描かれている二人の位置や、人物の大きさから読み取っているようです。また、「師」の身なりが「白い衣」をまとっているので「神」のような存在、神々しさを感じている人もいます。二人が向き合っていないことから、白い衣の「師」は修行中だと考えた人もいました。

 みんな素晴らしいです。ここに記述を掲載していない人も、ほとんどの人が、似たようなことを考えていました。全く的外れなことを記述した人はいませんでした。実はこの絵にはちゃんとした逸話があります。作品には今回のような「逸話」に基づいたものを描いたものもあれば、作家が自由に描いたものもあります。ゴッホの「椅子」は自由に描いた作品です。
 そして、何と!!皆さんの読み取りは、ほとんどこの作品の「逸話」に近づいています。本来は作品の情報を積極的には与えませんが、今回は、知らせておこうと思います。
 この「慧可断臂(えかだんぴ)」は、白い服の人(実は達磨大師)が修行中に、達磨大師に弟子入りしたいと思った慧可という僧侶が訪れます。しかし、達磨大師は修行に専念したいので弟子入りを拒みます。それでも慧可は弟子にして欲しくて、自分の腕を切り落とし、その決意の固さを示して、弟子入りを果たすという仏教でも禅宗でよく知られている逸話を雪舟が描いたのです。皆さんは、そのような逸話を全く知らなかったと思いますが、雪舟の描いた作品をじっくりとよくみて、考えて、話し合って、その話をしっかり聴いていけば、作品の本質に近づいていくことができるという、この対話型鑑賞のだいご味を味わうことができています。みんなの話をつなげている私は実はとても驚きながら感動していました。本当に皆さんの真剣な取り組みが生んだ素晴らしい成果だと思います。次作もしっかり「みて・考えて・話して・聴き」ましょう!!

以上が「美術通信」の全文です。次号は「感想文集」にしようと考えています。
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みるみるの会の夏季研修会にご参加ください!!

2014-07-15 22:22:05 | 対話型鑑賞
みるみるの会が主催し、江津市教育研究会に協賛いただいて夏季研修会を開催します。江津市教研会員以外の方の参加も大歓迎です。開催の地の江津市は日本で一番航空機の利用アクセスの不便な市として話題になりましたが、万葉歌人 柿本人麻呂にゆかりの深い土地であります。こんなことでもないと訪れようとは思わないところかも知れませんので、ぜひお越しになってみてください。お泊りは、浜田市のほうがホテルはたくさんあります。前泊なら浜田で夜はみるみる会員が楽しい宴を企画していますので参加も大歓迎です。

では、研修会の案内です。

「みる・考える・話す・聴く」ことについて考えよう

主催:ART COMMUNICATION IN SHIMANE みるみるの会
共催:江津市教育研究会 造形部会

 「言語活動の充実」が叫ばれていますが、現場での実践事例の紹介は多いとは言えません。先生方もどのような方策があるのかを試行錯誤されている毎日ではないかと思います。そこで、「みる・話す・考える・聴く」ことを通して「言語活動の充実」をめざすワークショップを体験する中で、「みえているものをどう伝えるのか」を参加者の皆さんと考えたいと思います。そしてそこから「言語活動」を「充実」させるための手立てがみえてくるとよいと考え、今回この研修会を企画しました。
 講師は京都造形芸術大学のアートプロデュース学科で講師をされている北野 諒氏です。北野氏は「みる・考える・話す・聴く」をACOPと称した活動の中で京都造形大学生を指導されています。また、「ブラインド・トーク」では、学生のみならず、一般社会人や企業の人材育成担当者対象のセミナーも開催され、幅広く活動されている若手ながら実力のある方です。
 今回の研修会の開催に際しては「みるみるの会」という図工・美術教育関係者で結成した研修サークルが主体となって研修会を展開しますが、図工・美術教育関係者のみならず、「言語活動の充実」に興味のある先生方の多数のご参加をお待ちしています。
 研修会の詳細は下記に示す通りです。



1.期 日   平成26年8月20日(水)

2.場 所   江津市立青陵中学校 多目的ホール

3.日 程   ①受付                   ~  9:00
        ②開会行事              9:00 ~  9:10
        ③ブラインド・トーク ワークショップ   9:15 ~ 10:15
        ④休憩                 10:15 ~ 10:30
        ⑤ヴィジュアル・シンキング・タイム   10:30 ~ 11:30
        ⑥研修会についての質疑応答       11:30 ~ 11:50
        ⑦閉会行事               11:50 ~ 12:00

4.付 記
 A)ブラインド・トークとは「目隠しをした人に対して見えている人が見ているものについて話して伝える」というワーク・ショップです。

 B)ヴィジュアル・シンキング・タイムとは「見えているものについてグループで話し合いながら、見えているものが何なのかについてグループ・ディス  カッションを行う」ことです。

5.その他
  研修会に参加いただいた方には京都造形芸術大学アートプロデュース学科とみるみるの会が協力して作成した「みる・考える・話す・聴く」副読本を 差し上げます。

 みるみる会員と江津市教研会員以外で参加希望の方は、下記までメールでお知らせください。

 u-marine@i2-sp.net

 申込み記載事項

 ①名前(ふりがな)
 ②連絡先(住所:携帯電話番号)
 ③差支えなければ、職業
 ④差支えなければ 年齢:性別
 ⑤参加の動機
 ⑥前日の懇親会(会費5,000円)の参加の有無
 ⑦自由記述(参加の動機や気になることなど)

 多数の参加をお待ちしています。参加費は一般の方(江津市教研会員以外)500円(資料代等)
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日本の中のはまだの美術展での最後の対話型鑑賞の実践です!!

2014-07-14 20:46:44 | 対話型鑑賞
日本の中のはまだの美術展での最後の対話型鑑賞の実践です!!


いつものリピーターの方々に加えて、浜田で絵画制作に親しんでおられる方々や、展覧作品にゆかりのある方々が集まり、20名を超える鑑賞者でいつになく熱い対話が交わされました。しかも3作品鑑賞するという内容の濃い鑑賞会でしたが、参加者の皆さんは時間を忘れ、1時間を超える鑑賞会となりました。詳細なレポートはナビゲーターの正田さんから届くと思いますので、今回は画像で様子をお伝えしておきます。
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