社報「靖國」1月号
巻頭言 「靖濤(せいとう)」
三笠宮妃殿下には、客年十一月十五日午前六時三十二分、聖路加国際病院で薨去(こうきょ)せられた。御年齢は百一歳であられた。誠に哀しみの念に堪えない。茲に謹んで奉悼の意を表する次第である。
念頭にあたり謹んで御遺族・崇敬者各位の御健勝と御隆昌を祈念申し上げます。本年の干支の乙巳(きのとみ)は十干十二支にて、乙は草木の幼芽が未だ伸長し得ず屈曲する状態を表し、一方、巳は「巳」でやむ意を示し、草木が繁盛の極限に到達した様子であるという。令和七年が更なる発展へ向かうと同時に転換点となる年、言わば再生への一歩の年と考えることもできるかもしれない。
十二支元来の意味ではないものの、巳年は〝ヘビ〟とのイメージが定着しており、縁起物や新年の掲出物など様々なところでヘビが描かれる。日本では古事記や日本書紀で著された大蛇をはじめ、神社や祠でお祀りするなど、古くからヘビを自然への畏怖、人知を超えた存在と見る面をもつ。ヘビは困難な地形でもその滑らかな動きで着実に進む事から柔軟性や堅実な努力、そして脱皮による成長は再生や変化なども連想できる。また、絡み合う姿に縁や運命の交差を思い浮かべる人もいるかもしれない。
全ての出来事にはきっかけがあり、そこに繋がる縁によって結果へと導かれる。縁の波はまたどこかで誰かと繋がり拡がっていく。今日を生きる我々には、神代とされる遥か昔から今日まで繋がった時間軸がある。いま現在を「中今(なかいま)」と表現することがあるが、神道事典では過去・未来を意識した中間にある今、という解釈が記される。先人達の御事績から学びを得て、〝みこころ〟を未来へと継いでゆく事も縁あってこそだろう。多くの人がそのような思いのもと日々を丁寧に過ごし、心豊かな充足した一年となる事を願いたい。
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