温泉が遠い。なかなか着かない。
でも、温泉はあるのだ。道を間違えただけだ。決して温泉が逃げ回っているのではない!
ややこしくても、間違えて着けない此方に非があるのだ。ああだこうだと嘘をついたり、言い訳を重ねて自ら袋小路に入り込んでフリーズ前の悪あがき、
「いや!違う!オレが悪いんじゃない!威嚇飛行をしてきた哨戒機が悪いのだ!恐怖だった。謝罪しろ!」
なんて言う気はない。火器管制レーダーは照射したのだ!
・・・あれ?
改めて幹線を東進。今度は間違えず、橋の手前で左折、細くなる道を記憶のままに進む。
温泉は当然、開いていた。
下足室、休憩室、脱衣場、浴場の順に真直ぐ奥に向かって伸びている。ウナギの寝床みたいな建物。
防寒用重装備のバイクファッション。倍ぐらいに着膨れしてるんだけど、温泉に行くにあたり、何が心配かと言って、この着ている物が全部脱衣場のロッカーに入るかどうか以上の心配はなかった。
案の定、だった。何度か詰め直して無理矢理鍵をかけた。こんなことなら一枚脱ぐ度に脱衣場の床に置いて、ちゃんと畳んで重ね挙げていけばよかった、と思ったけど、後の祭り。
素っ裸になっているのに、パンツ一枚だけでも穿き直して脱いだ服みんな引っ張り出して床に放り出して畳み直し・・・なんてねえ・・・。
計画性のないジイさん。
何だかミスター・ビーンが旅行準備のトランク詰めをしているみたいな雰囲気。
とにかく、服は強引にロッカーに押し込み、鍵をかけ、浴場まで前進。
中はぬるめの湯、電気風呂、普通の温度の湯、と奥に向かって並び、最後がちょっと離れて別格みたいに、熱めの湯。
折角だから全部入ってやろう、と思って、先ずは偵察にそぞろ歩き。そして熱めの湯に手を入れてみた。
「あっツゥゥ~!」
ここだけはパスしようと決める。熱過ぎる。
でも、変なところで意地を張る。下手くそなギャンブラーみたいだけど、たまには熱い風呂に平然とした顔で入ってみたい。ただし人が見ている時に限る。人が居なけりゃ、まず入らない。
大体、風呂の熱いのは嫌いだ。風呂は好きだが熱いのは嫌だ。
三瓶温泉みたいに39度、なんてぬるいのも嫌だ。ちょうどいいのが好きだ。41~42度くらいかな。
郷里の温泉津(ゆのつ)温泉は、熱い浴槽は50度近い。だから数字を聞いただけで恐れをなして入ったことがない。
数年前、久し振りに行ったら、やっぱり入っているジイさんは、いた。
通常の湯に入り、少し温まった。
次はぬるめの湯に入る。何だか物足りない。
じゃあ、初体験、電気風呂!
・・・・何だ?何がどう違うんだ?さっぱり分からない。他のと同じじゃないのか???
しばらく浸かっていたが、どうも電気の神秘を分かる勘を持っていないらしいと悟る。
しょうがないな。もう一度、通常の湯に入ろう。
しばらく浮いていた。飽きて来た。やっぱり物足りなくなってきた。
「熱めの湯」の、壺形に深くなっているらしい浴槽が視界の端に入ってくる。
「熱いから。やめとこ」
と思いながら、目はつい、そちらに向いてしまう。
誘惑に弱いタイプだ。だから未だに酒がやめられない。
「足だけでも浸けてみる?」
腰痛治療に来たんでしょ?みんな入ってみない?
誘惑の魔女に手を引かれた。
壺形に深くなっている浴槽。底まで一メートルはある。
熱い。もしかしてこの下で直接火を焚いてて、底に足を着けたらやけどするんじゃないか、と思うくらい熱い。
手をつけてみただけでもあんなに熱かったんだから。
けど、そこに入っていた人もいる。今、上がって腰痛体操してるけど。
入れないことはない(はずだ)。
温泉津の湯にはジイさん連中が平気な顔して入っていた。
「温感機能が壊れてんだ、きっと」
と負け惜しみの目で見ていた。
今はオレだって入れるかもしれない。ジイさんの仲間入りしたし。だから温感機能、壊れたかもしれないし。
あれに比べりゃここは追い焚きしてるんだから、少しはマシだろう。
話のタネに入ってみよう。
(次でおしまい)
でも、温泉はあるのだ。道を間違えただけだ。決して温泉が逃げ回っているのではない!
ややこしくても、間違えて着けない此方に非があるのだ。ああだこうだと嘘をついたり、言い訳を重ねて自ら袋小路に入り込んでフリーズ前の悪あがき、
「いや!違う!オレが悪いんじゃない!威嚇飛行をしてきた哨戒機が悪いのだ!恐怖だった。謝罪しろ!」
なんて言う気はない。火器管制レーダーは照射したのだ!
・・・あれ?
改めて幹線を東進。今度は間違えず、橋の手前で左折、細くなる道を記憶のままに進む。
温泉は当然、開いていた。
下足室、休憩室、脱衣場、浴場の順に真直ぐ奥に向かって伸びている。ウナギの寝床みたいな建物。
防寒用重装備のバイクファッション。倍ぐらいに着膨れしてるんだけど、温泉に行くにあたり、何が心配かと言って、この着ている物が全部脱衣場のロッカーに入るかどうか以上の心配はなかった。
案の定、だった。何度か詰め直して無理矢理鍵をかけた。こんなことなら一枚脱ぐ度に脱衣場の床に置いて、ちゃんと畳んで重ね挙げていけばよかった、と思ったけど、後の祭り。
素っ裸になっているのに、パンツ一枚だけでも穿き直して脱いだ服みんな引っ張り出して床に放り出して畳み直し・・・なんてねえ・・・。
計画性のないジイさん。
何だかミスター・ビーンが旅行準備のトランク詰めをしているみたいな雰囲気。
とにかく、服は強引にロッカーに押し込み、鍵をかけ、浴場まで前進。
中はぬるめの湯、電気風呂、普通の温度の湯、と奥に向かって並び、最後がちょっと離れて別格みたいに、熱めの湯。
折角だから全部入ってやろう、と思って、先ずは偵察にそぞろ歩き。そして熱めの湯に手を入れてみた。
「あっツゥゥ~!」
ここだけはパスしようと決める。熱過ぎる。
でも、変なところで意地を張る。下手くそなギャンブラーみたいだけど、たまには熱い風呂に平然とした顔で入ってみたい。ただし人が見ている時に限る。人が居なけりゃ、まず入らない。
大体、風呂の熱いのは嫌いだ。風呂は好きだが熱いのは嫌だ。
三瓶温泉みたいに39度、なんてぬるいのも嫌だ。ちょうどいいのが好きだ。41~42度くらいかな。
郷里の温泉津(ゆのつ)温泉は、熱い浴槽は50度近い。だから数字を聞いただけで恐れをなして入ったことがない。
数年前、久し振りに行ったら、やっぱり入っているジイさんは、いた。
通常の湯に入り、少し温まった。
次はぬるめの湯に入る。何だか物足りない。
じゃあ、初体験、電気風呂!
・・・・何だ?何がどう違うんだ?さっぱり分からない。他のと同じじゃないのか???
しばらく浸かっていたが、どうも電気の神秘を分かる勘を持っていないらしいと悟る。
しょうがないな。もう一度、通常の湯に入ろう。
しばらく浮いていた。飽きて来た。やっぱり物足りなくなってきた。
「熱めの湯」の、壺形に深くなっているらしい浴槽が視界の端に入ってくる。
「熱いから。やめとこ」
と思いながら、目はつい、そちらに向いてしまう。
誘惑に弱いタイプだ。だから未だに酒がやめられない。
「足だけでも浸けてみる?」
腰痛治療に来たんでしょ?みんな入ってみない?
誘惑の魔女に手を引かれた。
壺形に深くなっている浴槽。底まで一メートルはある。
熱い。もしかしてこの下で直接火を焚いてて、底に足を着けたらやけどするんじゃないか、と思うくらい熱い。
手をつけてみただけでもあんなに熱かったんだから。
けど、そこに入っていた人もいる。今、上がって腰痛体操してるけど。
入れないことはない(はずだ)。
温泉津の湯にはジイさん連中が平気な顔して入っていた。
「温感機能が壊れてんだ、きっと」
と負け惜しみの目で見ていた。
今はオレだって入れるかもしれない。ジイさんの仲間入りしたし。だから温感機能、壊れたかもしれないし。
あれに比べりゃここは追い焚きしてるんだから、少しはマシだろう。
話のタネに入ってみよう。
(次でおしまい)
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