先月17日。地元カルチャ-教室での版画の指導の後、千葉市美術館で開催中の『川瀬巴水展 -郷愁の日本風景-』を観に行ってきた。美術好きのブロガーのみなさん、いつもブログへのアップが遅くなり展覧会レポがリアルタイムでなくてすみません。
川瀬巴水(かわせ はすい 1883~1957年)と言えば大正から昭和にかけて活躍し、人気を得た風景版画家である。この時代衰退していた浮世絵版画(錦絵)の再興を目指した版元(今でいう出版社)の渡辺庄三郎と組み多くの木版画を制作した。日本中に取材したその風景版画は『昭和の広重』と称賛され、現在でも国内をはじめ海外にも多くの熱心なファンを持っていることでも知られている。版元を通し、浮世絵版画の彫り師や刷り師とのコラボレーションによって生まれた木版画は完成度が高く、とても充実した内容となっている。版画というものは本来において西洋でも東洋でもこうした共同作業、共同出版から生み出されるものなのである。
千葉市美術館は今展で来場者が200万人を超えたという。市立という規模としてはたいへんなことである。今までも伊藤若冲、曽我蕭白、田中一村などの個性的な画家の企画展を開催し好評を得てきている。美術館の志向性がぶれずにしっかりとしているということだ。
午後遅めに到着、千葉の街が一望できる7階のレストランで日替わりランチを食べてから、2つの階に分かれた会場に向かった。額装され整然とかけられたカレンダーサイズの風景木版画が約300点。その数に圧倒され、見始めは「全部見られるだろうか?」という気持ちが先立ち、飛ばし気味に観てしまう。巴水の作品の中で僕が特に好きなものは雪景色を主題にしたものと、画面全体に深いブルー系の色調をおびたもの。今回の作品群の中からもけっこう見つけることができた。「雪と青」この2つの表現に作家の特色が強く出ているものだと思っている。それから良かったのは版画の下絵や日本各地に取材した個人コレクションのスケッチ・ブックが多く見られたこと。走るような鉛筆の線やラフに塗られた水彩に現場での作者の息づかいまでも感じることができた。
それにしても作品数が少し多すぎた。ほぼ同寸法、同じような密度の木版画なので、余計そのように感じた。1点1点の印象が薄くなってしまったように思う。もったいない。欲を言えばテーマ別に2期ぐらいに分けて展示してほしかった。画像はトップが川瀬巴水作木版画 『芝増上寺 東京二十景』部分。下が同じく『前橋敷島河原』部分、風景取材したスケッチブック(以上、展覧会図録より複写)。美術館入り口の看板。
※展覧会は1/19に終了しています。