長島充-工房通信-THE STUDIO DIARY OF Mitsuru NAGASHIMA

画家・版画家、長島充のブログです。日々の創作活動や工房周辺でのできごとなどを中心に更新していきます。

131.伝説の鳥 『精衛』を描く

2014-02-20 19:50:59 | 絵画・素描

寒い冬が続いている。今月はアトリエの外を深々と雪が降りしきる中、中国の古い伝説に登場する『精衛・せいえい』という幻鳥を水彩画で制作した。

絵画や版画作品は平均して月に3-4点を制作しているのですべてブログで紹介することはできないし、制作の様子を更新してもマンネリになってしまうので選んで紹介している。それから、新作個展に向けて制作しているので全体像を載せることはしていない。作品は展覧会場で見てほしいと思っているからだ。今年は展覧会の予定が少ないが、来年以降はまた発表が続くことになる。なので、しばらくは工房に閉じこもる生活になりそうだ。

それはさておき、『精衛・せいえい』の話題に戻ろう。古代中国の王、「炎帝」には「女娃・じょあい」という美しい娘がいた。箱入り娘として育てたために外出は許さなかった。ある日、帝の留守に家を抜け出した女娃は、東海の大海原を見に出かけ、誤って溺れ死んでしまった。そしてその魂は幻鳥・精衛として生まれ変わった。精衛は無情な海を恨み、埋めてしまおうと山から小石や木切れをくわえていっては海に落とした。長い年月をかければ、いつかは東海が埋まると信じて永遠にこの動作を続けた…という悲話である。中国には今でも「精衛海をうずむ」という言葉が残っていて、「困難を恐れずに最後まで頑張って目的を達成すること」、あるいは「及ばないことを企て徒労に終わること」の象徴とされている。そして、その声は「ジンウェイ(精衛)、ジンウェイ(精衛)…」と中国語で自分の名前を鳴くと伝えられる。

「山海経・せんがいきょう」という古代中国から伝わる博物学書に描かれた精衛は、一見、普通の鳥の姿に見える。野鳥好きの僕の目から見ると、そのプロポーションや羽色からムクドリや九官鳥の仲間に見えるのだが、描いた絵師がモデルとしたのは実際どんな種類の鳥だったのだろうか。画像はトップが制作中の水彩画(部分)。下がアクリル絵の具を出した絵皿と、古文書に登場する精衛の図像。