長島充-工房通信-THE STUDIO DIARY OF Mitsuru NAGASHIMA

画家・版画家、長島充のブログです。日々の創作活動や工房周辺でのできごとなどを中心に更新していきます。

162.天使を描く。

2014-10-16 20:51:55 | 絵画・素描

工房通信というブログ名をつけながら、近頃、絵画や版画に関係のない内容を更新することが多くなった。絵画や版画の制作は日々、おこなっているので画像や文章内容がパターン化してしまうということもあるのだが。

…というわけで、今回は絵画制作の話題。今月に入って『天使・エンジェル』をモチーフとした水彩画の制作をしている。主にシルクロード文化圏に伝わる神話や伝説の中に登場する翼を主題とした『伝説の翼シリーズ』の絵画作品も大小含めて、40点以上を制作した。この流れで翼幻想を描いている以上、一度は制作しなければならないと思い続けてきたのがこの『天使・エンジェル』である。古典から近現代まで西洋美術の中では繰り返し登場するモチーフだが、自分にとってはなかなか難しい題材である。言葉にすると誤解を招くが、ストレートに描くと通俗的な表現から出られないのではないかという危惧があったからだ。

そうは言っても、避けては通れない「翼」である。エスキースの段階からいろいろと迷った挙句、イタリア・ルネッサンス絵画にたびたび登場する『受胎告知』のエンジェルを手掛かりに描くことに決定した。しかし、これだけではまだ古典絵画の写しとなってしまうので、場の設定を星空を中心とした宇宙的な空間とし、さらにコスチュームにオリエント風のイメージをミックスしてみた。もともとこのシリーズ、シルクロードによって人間の文化は繋がっているということを根底としているのである。実際に、西洋にみられる天使像は東に行くとさまざまなタイプの「有翼人」に変容する。エジプト~中央アジア~インド~中国~東南アジア~日本までいろいろな種類が分布しているが、その多くは天上界からの使者ということになっている。

星空とオリエント風コスチュームとしたことで、イメージがしっくりと落ち着いてきた。ここからはいつものように手漉きの紙に下絵をトレースし、線描によるデッサン、水彩絵の具とアクリル絵の具により着色のプロセスに入る。どんな天使像に仕上がったかは個展での発表をお楽しみに。画像はトップが制作途中の水彩画の部分。下がレオナルド・ダ・ヴィンチの『受胎告知』の中に登場する天使と制作中の絵の具や絵筆。