17日。 東京都美術館で開催中の日本版画協会主催による『第82回 版画展』を観に行ってきた。僕も会員として作品を出品している。
日本版画協会は1931年に発足した創作的版画の展示、普及を主旨とする美術団体で、発足当時は木版画作品が中心だったが、現在では銅版画、リトグラフ、シルクスクリーンなど版画表現全般の作家、作品を総合的に展示する美術団体となっている。
初めて出品したのは30年前のこと。当時は桜の季節の3月に審査があり、4月に展覧会だった。4-5点の額装をした重い版画を家から担いで都美術館地下の一般搬入口までえっちら、おっちら汗をかきかき運んで行った。それから美術公募団体の常でお偉い先生方の審査を受けて、作品の入落が決定する。そして運が良ければ受賞ということもある。おかげさまで今まで落選という経験はなかったが、発表があるまでは気が気ではなかった。都美術館の裏口掲示板に入選者の名前が貼り出されたので、毎年のように見に行った。この発表の時期には上野の山のソメイヨシノも満開の時期を過ぎ、パラパラと散り乱れている頃だった。同じ上野ということと、ちょうど季節が同じということもあり、なんだか芸大の受験と記憶の中で重なっていた。
その受験を繰り返し、準会員となって落選がなくなり、会員となって審査をされる側から審査をする側に変わり、いつもまにか30年も経ってしまったんだなぁ。出し始めた頃は1980年代でまだまだ現代版画の世界が元気な時代だった。1970年代のいわゆる『版画ブーム』のなごりもあった。技法を教わったベテランの版画家の人たちの中で、すでに他界されたり、さまざまな事情から退会されたり人も少なくない。その頃にくらべると若い人たちの作品は大型化し、技術的にも随分レベルが高くなってきている。会場を巡りつつ、多くの出品作を眺めながら、ちょうど真ん中にきたあたりで昔のことが頭の中でフィードバックしてきた。近頃、年齢のせいか懐古的になっていけない…5年後、10年後、さらに第100回記念展を開催する頃には、版画をとりまく時代と環境はどんなふうになっているんだろうか。考えてもしかたのないことに想いめぐらしつつ会場を後にした。画像はトップが展覧会場入り口。下が会場の中の展示のようすと東京都美術館正面入り口(展覧会は19日で終了しています)。