5/14(土)、5/15(日)の2日間にわたって開催された『佐倉モノづくりFesta 2016』の会場で今年も消しゴム版画のワークショップを開催した。当工房は初回から今回で5年目の出演である。このフェスは市の産業振興課が主催するものだが、市内の一般企業、商店、飲食店、博物館、個人の工芸作家などが参加する。このイベントも5年目ということで広く近隣の住民の方々に浸透し連日、多くの来場者で賑わっていた。
消しゴム版画を使ったワークショップを始めて今年で8年目になる。きっかけは、それまで公共施設や美術館で銅版画や木版画のワークショップを依頼され開いていたのだが、好評をいただいていて「来場者の流れる場所やテントブースなどでも教えてもらえないか」という要望が増えてきた。さすがにテントの下などに銅版画のプレス機などは持ち込めないし雨風のことも考えると紙やインクも扱いずらい。困っていたところ、たまたま東京で開催されていた「スタンプ・カーニヴァル」というゴム製の版や消しゴム版により制作されたクラフトアート作品の展示会場を見に行ったところ、それまでの版画技法にはない新鮮な刺激を受けた。これならばできるのでは…と、試してみたところがイベントにうまくはまったので続けて来たのである。正直なところ「苦肉の策」というところでもある。この9年間、野鳥系のネイチャーセンター、植物園、美術館、博物館、自然系のフェスティバル会場、など多くの場所でこの消しゴム版画によるワークショップを開催してきた。その地域も地元の千葉県内を中心に東京、新潟、山梨など広域にわたっている。まさに「消しゴム巡業」と言っていいかもしれない。たかだか消しゴム、されど消しゴムなのである。
今はこのゴム版や消しゴムを使用したクラフト作品が、出会った当時よりもさらにさかんになり日本だけでなく海外にも専門のアーティストが増えている。紙のカードなどに擦り取るだけでなく、特殊なインクで布や皮、石材など、さまざまな素材にも印刷されたりしている。一般には「スタンプアート」や「消しゴムはんこ」などと呼ばれているが、僕は版画家なので「消しゴム版画」と呼んで彫刻刀を使い版画的に制作してもらうことにこだわっている。版画制作者の意地かもしれない。
2日間、共通で午前1回、午後1回、各回1時間半の内容、会場では制作も見せるのが趣旨なので僕が目の前で1点、彫って摺って見せている。割合としては過半数が親子連れだが、中には中高年の大人の方もいる。こちらがあらかじめ用意した下絵から選んで彫ってハガキに擦ってもらうのだがモチーフとしては市内で観察できる植物、野鳥、動物、昆虫などが中心で作りながら野生生物に親しんでもらうという、もう一つの狙いもある。5回目となると中にはリピーターとなっている親子もいて「3回目だね。手慣れたもんだねぇ」などと挨拶を交わすのも嬉しい。何はともあれ子どもたちを中心に楽しんでもらうのが一番なのだが家族で参加して熱中してくると、お父さんが夢中になってしまうのも毎年のことである。多忙な仕事の合間に参加され、頭の中で子供の頃の図画工作の授業が蘇っているのかもしれない。2日間、天候に恵まれたせいか参加者も多く、事前に用意していたセットもすべて完売してしまい嬉しい悲鳴となった。
今年もたくさんのカラフルで楽しい「いきものカード」が生まれた。今回も楽しいイベントにお誘いいただいた佐倉市産業振興課の方々、設営などでお世話になった会場担当スタッフの方々、活動を取材してくださった地元テレビの方々、そして素敵なカードを制作した多くの参加者のみなさん、ありがとうございました。感謝いたします。画像はトップが消しゴムの版の彫り方の実演、下が向って左からワークショップ会場のようす6点、イベント会場のようす2点、以前の参加者が制作したカード作品1点。